カタカナorひらがな、というお話。
嵐の予感ビンビンな2人が転校してきた次の日。
今朝も元気モリモリに登校してきた俺です。
「来たか…!」
「ん?」
教室に入るや否や、席に座っていたボーデヴィッヒがトテトテ俺の方までやって来たでござる。
う~む。
昨日の放課後の一件を境に、俺に対するボーデヴィッヒの態度がずいぶん和らいだ気がするんだが……。
何で和らぐ必要があるんですか!(自問)
俺に惚れたからだと思います!(自答)
「私はこれからお前を何と呼べばいい?」
どゆこと?
【挨拶をせんかァァッッ!!】
【靴を脱がんかァァッッ!!】
克己はそんな事言わない。
いや【下】は言ってるけど【上】は言ってない。
なのにこの場面、この状況において、史実な【下】だとまるで意味不明で【上】の方がまだ自然な流れというね。なんだそれ。
頼れる智謀やーまだ先生が居ない時に【下】を選ぶのは、中々にリスクが高い。リカバリー的な意味で。という訳で【上】かぁ……トホホ。
しかし、ただで転ぶ俺じゃ無し!
身体の自由は……よし、自在に動ける…!
という事は、つまり――。
「むっ? あ、おい、どこへ行く?」
別にどこで言っても構わんのだろう?
「挨拶をせんかァァッッ!!」
「ぴゃっ!?」
セシリアの背後からこんにちは!
「んもうっ、旋焚玖さん! 急に大声を出すのはビックリするからダメですわ!」
その言葉が聞きたかった(ブラックジャック)
「まぁな」
「いえそこで『まぁな』の意味が全く分かりませんわ」
魔法の言葉『気にするな』のレベル2ってとこだな。例を挙げるなら、ファイアからのファイラ。始解からの卍解といったところか。
でも俺だってそこまで悪くない筈だ。
何度やっても100%の確率で、カワイイ!反応を魅せるセシリアにも罪はある。むしろ8:2でセシリアが悪いまである。
「という訳で。まずは『おはよう』だ、ボーデヴィッヒ」
「ふむ……確かに挨拶は基本だな。疎かにした私が悪かった」
素直っぷりも健在ときた。
これでさらに俺に惚れてる説の信頼度が上がりますねぇ! 鉄拳チャンスくらい期待できますねぇ!
「ンン……では改めて、おはよう」
「ああ、おはよう。で、さっきの言葉はどういう意味だ?」
「昨夜、乱から言われてな。フルネームで呼ぶのは如何なものか、と」
そういや昨日はひたすらフルネーム呼びだったな。そんでもって、今の『乱』呼びとボーデヴィッヒの表情から察するに、乱はコイツと良い関係を築けたと見える。やっぱ乱のコミュ力って群を抜いてしゅごい。
「なるほど。なら俺への呼び方も変えるって訳だな?」
「うむ。だが勘違いするなよ! 私がフルネームで呼ばないのはお前と乱だけだからな!」
「……ああ」
日本語がおかしいと思った(小並感)
まぁでもドイツ人だし、多少はね?(寛大)
「それで、私はこれからお前を何と呼べばいい?」
んで、最初の言葉に戻る、と。
まぁ別に旋ちゃん以外なら俺も何て呼ばれようが気にはしないが。今のところ苗字か名前かちょいす~か。この3つくらいだしなぁ。
あえて言うなら名前呼びかね。
名前で呼ばれた方が距離感も縮まった気がするし。その上、それが美少女だってんなら、そらもう格別よ。
「そうだな……ここは普通に――ぁ?」
【イケメン】
【きしめん】
【フツメン】
きしめえ゛え゛え゛え゛え゛んッ!!
バカかお前コラァッ!!
誰が見た目を呼び名にしろツったんだよぉ! 自分で自分の容姿を女に語る男のイタさ加減を見くびってんじゃねぇぞコラァッ!!
きしめんだきしめん!
これなら容姿もクソもねぇ!
俺の事はきしめ……あ、アッー! だ、ダメだぁ! 相手はあのボーデヴィッヒだぞ…! 好奇心旺盛知的探求心の塊みてぇなコイツに【きしめん】なんて脈略不明意味不明な事を口走ってみろ。
そんなモンお前。
『きしめん? 何だそれは教えろ!』
『デュフフ……きしめんの元ネタはエッチなゲームのOPでぇ…コポォwww』
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
絶対に嫌だぁぁぁぁぁ!!
女子校でナニ言わせようとしてんだコラァッ!! 生物的に恐い男から生理的に怖い男に格上げされちまうだろぉ!
【真ん中】が消えた今、俺に残されるは【上】か【下】か…! ここで忘れちゃいけねぇのが、ボーデヴィッヒは聞きたがりガールな性格に加えて、歯に衣着せぬ奴だって事だ。
昨日だけで俺がコイツに何回『気持ち悪い』言われたと思ってんだ。というかおかしくね? 俺達、昨日初めて会ったばかりだよね? 遠慮しなさすぎだろ何だコイツ。
とまぁそんな訳で。
いくら俺がおちゃらけた雰囲気で『イケメンと呼んでくれぃ!』と宣ったところで、コイツからは絶対零度な反応が返ってくる事は明白。それだけならまだしも、全力で否定してくる可能性も余裕であるからな。
みんなの前でそんな事された日には、流石の俺でもメンタル壊れちゃ~う。ならもう消去法で【下】しかないじゃないか。
でも嫌だなぁ。
フツメンを自称して否定された日には、流石の俺でもメンタル壊れちゃ~う。……どっちにしろ壊れちゃ~うのか(がっくり)
むむっ……弱気になるな、俺。
信じるのだ。俺を信じるのではない。以前、俺を『見事なフツメン』だと評した乱を信じろ。乱がそう言ったんだから間違いない、むぁーちがいない!
「……フツメンと呼んでくれ」
「む……ふつうにふつめん…? やけに長いがどういう事だ?」
違うそうじゃない。
確かに『フツメン』の前に『普通に』とは言ったが、それは副詞的用法な意味で使っただけだから、呼び名には含まれてないの! な・い・の!
「『普通に』はいらん。フツメンだけでいいフツメンだけで」
「ふつめん……どういう意味だ?」
どっちにしろ聞かれるのか(がっくり)
自分で自分の容姿をフツメンと称し、その意味も自分で説明するのか(がっくり)
「ふ、普通の顔だ」
「何故言い淀んだ?」
う、うるさいな!
自信の無さの表れだよ察してくれよぉ!
「気にするな」
ここは気にするなよマジで…!
こんなトコを深く掘り下げられたら、流石の俺でもメンタル壊れちゃ~う! 結局壊れちゃ~う!
「……まぁいいだろう」
やったぜ。
安堵&安堵。
「つまりお前の顔は普通なのか?」
そういう確認の仕方やめてよぉ!
何でそういうコトを素で聞けるのコイツ!? 朝っぱらから精神攻撃してきてんじゃねぇぞコラァッ!!
【箒に聞く】
【鈴に聞く】
【セシリアに聞く】
【シャルに聞く】
【一夏に聞けばイケメンだって言ってくれるよ】
【一番下】だけ異彩を放ちまくってるんですがそれは…(困惑)
そしてコレだけは絶対に選んではいけない。イケメンの一夏が俺をイケメンだと言った時のクラスの反応は……想像したら恐怖が創造できました。
つまり実質4択って訳だ。
まぁ正直、この4人なら誰であろうと抵抗感なく聞ける。それくらいの信頼関係は築いてきたつもりさ。
【この4人なら誰であろうと抵抗感なく聞けるから4人に聞く】
【一夏に聞けばイケメンだって言ってくれるよ】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
4人全員に聞きたいとは言ってないよぉ!
というか問題はそこじゃねぇぞコラァッ!!
まださっきの【選択肢】選び終わってないのに、なに普通に割り込んできてんの!? 選んでないウチに【選択肢】を変更してくるとか、ルール違反ですよルール違反!
とか真っ当な批難したところで、超暖簾に腕押しなんだよなぁ……トホホ。
「セシリア」(後ろの席)
「はい?」
「兄弟」(前の席)
「なぁに?」
「箒」(前々の席)
「む?」
「鈴」
しかし鈴の返答はなかった。
ふぇぇ……席が遠くて聞こえてないよぉ(ぶりっこ旋ちゃん)
「りーん!」
「なーにー!」
「こっちゃこーい!」
「んもう~、なぁによ~?」
な、何かニヤニヤしてやって来たでござる。
「頬が緩んでるぞ、鈴」
箒も疑問に思ったのか、鈴に指摘している。
「当たり前よねぇ?」
当たり前なのか……なんでぇ?
まぁいい。とりあえず4人揃ったんだし、聞く事聞いてさっさと終わらせよう! パパパッとやってハイッて感じで。
「お前ら、俺はフツメンか?」
「「「「 フツメン 」」」」
速いよねぇ、アナウンスがねぇ。
一糸乱れぬ返答に嬉しいような悲しいような。1人くらい少しは迷ってくれても良かったのよ? 角度を変えればイケメンに見えない事もないとか。世界一の動体視力の持ち主が見逃すレベルで一瞬だけイケメンとかな。……HAHAHA!
「な? 俺はフツメンだ。この4人が証人さ」
「うむ。お前はフツメンなのだな。で、私はこれからお前をふつめんと呼べばいいのか?」
いいわけないだろ!
何が悲しくてそんな風に呼ばれなきゃなんねぇんだ!
【あ、いいっすよ】
【ふつめんじゃなくてフツメンでしょ!】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
主車旋焚玖、今日この刻、新たな呼び名を得るに至る。
ふつめん(*´ω`*)