選択肢に抗えない   作:さいしん

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不敗伝説最強の、というお話。



第139話 ラウラのお誘い

 

 

「今日はこれまでとする。月末のトーナメントに向けて、放課後を無駄に過ごさぬようにな」

 

「起立……礼…!」

 

 千冬さんの言葉の後に、クラス委員な一夏が締める。

 今日の授業も全部終わり、やって来ました放課後タイム!

 

「おい、ふつめん。放課後の予定はあるか?」

 

「いや……何かあるのか?」

 

 呼び名については、もう何も言うまい。

 俺は『名』より『実』を取る男。

 

 何処に出しても恥ずかしい呼び『名』ではあるが、それよりも俺はドイツな眼帯美女が積極的に俺に話し掛けてくる事『実』の方を重視したい。いやでもホント、昨日と立場が真逆じゃないか?

 

 昨日は休み時間のたびに俺がボーデヴィッヒに話し掛けさせられ続けていたが、今日はアホの【選択肢】が出しゃばらずとも、授業が終わるごとにボーデヴィッヒの方から俺の元へやって来たのだ。トテトテやって来たのだ。

 

 来るたびに『お前はヤンキー100億人を相手に小指だけで倒したのか?』とか『雷を素手で切り裂いたのか?』とか意味不明な事を聞かれ続けたが。そこでアホの【選択肢】が出番だと勘違い。

 

 

【泣きながら弁明する】

【薄笑を浮かべるに留める】

 

 

 よって俺はボーデヴィッヒの疑問に対し、多くは語らず『フッ……』とかそれっぽい笑みを浮かべるに徹したのだ。これは勘違いされたかな(慣れっこ旋ちゃん)

 

「話がある。お前の今後に関わる大事な話だ」

 

 なにその意味深な感じ。

 基本的恋愛脳の尊重な俺でも、流石にこれは告白じゃないって分かるぅ。

 

「ちなみにその話ってのは俺1人かね?」

 

「いや、教官にも話があると既に伝えてある」

 

 千冬さんも?

 なら、ますます真面目な話っぽいな。

 

 俺達がそんな話をしているうちに、いつもの面子はもう教室から出払っていた。今月のトーナメントが急遽2人一組に変更されたってな訳で、みんなそれぞれパートナー探しの旅に出たらしい。まぁ俺には関係ないけどな!

 

「どこで話すんだ? 職員室に行くんか?」

 

「いや、中庭だ」

 

 中庭か。

 

 

【もしかしたら上庭かもしれない】

【いや、下庭の可能性も……?】

 

 

 意味が分からんぞコラァッ!!

 みんな居ないせいで、お決まりの『誰か誘う』系【選択肢】出せないからって俺に当たらないでよぉ!

 

「いや、下庭の可能性も……?」(白目)

 

「お前は一体何を言っているんだ」

 

 素で返さないでよぉ。

 

「まぁまぁ聞いてくださいなボーデヴィッヒさん」

 

「な、なんだ急に、気持ち悪いな」

 

 ノルマ達成!

 

「『中』があるって事は『上』と『下』があってもおかしくはないだろう?」

 

「む……確かに一理あるな」

 

 中庭に関しては一理ない。

 

 『中庭』とは建築物などで周囲を囲まれた、屋根のない場所を指すのである! 自分で言ってて悲しくなるのである! もう慣れっこである!

 

「しかし、私が待ち合わせをしたのは中庭だから今は関係ないな」

 

「お、そうだな」

 

 無駄なやり取りもしたし、気を取り直してイクゾー。

 

 

 

 

 ツイタゾー。

 でも千冬さんの姿はまだナイゾー。

 

「ちなみに何時に話をするって伝えてあるのかね?」

 

「16時30分だな」

 

「……なるほどな」

 

 まだ16時なんですがそれは(困惑)

 ちょっと着くの早すぎたんとちゃう?

 

「案ずるな。私が早めにお前を連れて来たのは理由があるのだ」

 

「聞こう」

 

 あ、愛の告白だったりして(童貞脳)

 

「私達は昨日会ったばかりだが……」

 

 実は惚れしてしまったのだ!(予測)

 

「私はお前を高く買っている」

 

 お、おう…?

 評価が高いのは普通に嬉しいんだが、期待してた感じと何か違うぞ。そんでもって、この時点で俺の第六感はビンビンだ。こういう風に言われた時ってのは、たいていアレなんですよ。

 

「不意討ちとはいえ、私の意識を刈ってみせたお前の身体能力は敬服に値する。不意討ちとはいえな」

 

「……ああ」

 

 褒められてる筈なのに嫌な予感プンプンですよ。やけに不意討ち言ってくるし、念のためにアレは奥にやっておこ。

 

「しかし、だ。あくまで私はお前の凄さ――」

 

 ぁ?

 

 

【しゅごいッ…ひぃぃぃぃぃん!!】

【しゅごさ】

 

 

 なんだあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 意味不明なタイミングで入ってくんじゃねぇよ! 何のこだわりだお前コラァッ!!

 

「しゅごさ」

 

「ん?」

 

「しゅごさ」

 

「いや、しゅごさではなく凄さで「しゅごさ」……むぅ…?」

 

 コテンと首を傾げる仕草が可愛らしいと思った。

 

「もしや、凄さとしゅごさは違うのか?」

 

「違う」

 

 男が言うとキモさが跳ね上がるが、女が言うと可愛さが跳ね上がるくらい違う。でもそんな説明をしたところで、俺のキモさが跳ね上がるだけなので、聞かれる前に伝家の宝刀を抜いておく。

 

「違いは後で山田先生に聞くといい」

 

「うむ。で、話を戻すが、私は昨日お前の凄さ――」

 

 

【しゅごいッ…ひぃぃぃぃぃん!!】

【ジョッ リィヒヒィィ~~~~ン!!(グェス)】

【しゅごさ】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 ひぃぃんの元ネタそれかコラァッ!!

 少し賢くなったぞコラァッ!!

 

「しゅごさ」(白目)

 

「む?」

 

「しゅごさ」(白目)

 

「ふむぅ……もしかしてお前は『凄さ』ではなく『しゅごさ』と表現される側なのか?」

 

 そんな仰々しい言い回ししなくていいから(良心)

 しかも内容が内容なだけに、わざわざ訂正して一から説明すんのもクソめんどくせぇよ。

 

 こういう時は肯定して場を流すに限る!

 

「まぁな」

 

「……日本語は思っている以上に奥が深い」

 

 そんな真面目に捉えなくていいから(良心)

 

 でもこの瞬間だけは『しゅごさ』で頼む。

 またループしちゃうからね、しょうがないね。

 

「では改めて」

 

「ああ」

 

「私は昨日、お前のしゅごさを垣間見たに過ぎん。文字通り、一瞬の出来事だったしな」(この男が本物か否か。確かめるには、やはりあの手が一番だろう)

 

「……そうだったかな」

 

 アカンアカンアカン…!

 この台詞は非常にヤバい兆し…!

 

 コイツは、どういう奴だった?

 転校初日から好戦的な性格を隠そうとせず、むしろバリバリ前面に出しまくりなボーデヴィッヒさんなんだぜ? 

 

 こんなモンお前、兆しどころか本前兆ですよ本前兆! 確実に『手合わせしたい』的な展開になる流れじゃねぇか!

 

 ヤメロォ!(本音)

 ヤメロォ!(本音)

 

 昨日から急速にバイオレンス色が強くなってきてんだよこのヤロウ! 俺が求めてやまないラブコメ性春と正反対やんけ! 

 

 しかもタチの悪い事に、ボーデヴィッヒは軍隊所属ときている始末…! それが一体どういう事なのか、分かってんのかこのヤロウ!

 

「俺の実力をちゃんと確かめたい…ってな口ぶりだな?」

 

 違っててもいいのよ?

 全然そんな事なくてもいいのよ?

 

「フッ……よく分かっているじゃないか」(頭の回転も悪くない。ラウラポイント1アップだ)

 

 分かりたくなかったでござる。

 間違っててほしい推理の時に限って、必ず当てる迷探偵主車少年の事件簿ってか。

 

 よし、激ウマ自虐ギャグも言ったし切り替えよう。いつまでも現実逃避に浸っている訳にゃイカンでしょ。

 

 バイオレンスは確かに嫌だが、腑抜けた状態でポコポコにヤラれて『なんやコイツ、雑魚やんけ! 好きになりかけてたけどやっぱり嫌い!』ってなる方がもっと嫌だ。当たり前だよなぁ?

 

 で、ここからが問題だ。

 ボーデヴィッヒはおそらく、昨日の不意討ちを根に持っているとみた。それはさっきの言葉から十分に察せる。という事は…?

 

 不意討ちに備えて待つのがベストでェーす! その間……猫足立ちするのはいけないことでしょお~か!?(ジョセフ&シーザー)

 

「どうやら、断るつもりはないらしいな?」

 

「当然だ」(震え声)

 

「ほう……武者震いまでしてみせるか…!」

 

 何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

 

 しかしその手の勘違いには慣れてるぜ。

 故に動揺は無し!

 

 さぁ、眼を凝らせ。

 重心の傾きを感じろ。

 

「フッ……」(物怖じするどころか猛りを見せる。さらにラウラポイント2アップだ。しかし本命はここからだぞ、ふつめん…! まずは不敗伝説最強の不意討ちを喰らえ!)

 

 毎夜毎夜【選択肢】が創造出してくるバカげたキャラクターが相手じゃなければ、俺だって後の先を取れるってところを魅せてやるずぇ! ハイレベルな不意討ちカマしてこいよ!

 

「あっ! あれは…!」(迫真)

 

 唐突に空を指差すボーデヴィッヒさん。

 

「空飛ぶ教官だ!」(迫真)

 

 え、なにそれは…(困惑)

 

 






(`・ω●´):フッ……勝ったな!

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