選択肢に抗えない   作:さいしん

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実は1対4、というお話。



第144話 模擬戦-中盤-

 

 

【相川に奪われたたけしを奪い返す】

【もうリヴァイヴちゃんに乗り換える】

 

 

 うん。

 もうどっからツッコミ入れたらいいか分からんね。

 

 奪い返すてお前。

 乗り換えるてお前。

 

 浮気をテーマにしたエロゲかな? 

 

 しかしせめて対象は人にしてくれ。ISが相手の恋愛ゲームとか時代を先行し過ぎなんだよ。そんなんだから日本は他国から『アイツら未来に生きてんな』とかって引き気味で言われんだよ。

 

 うん、で……まぁ選ぶとしたら【上】一択なんだけどね。【奪い返す】ってのがアレだが、だからと言って【たけし】以外のモンに自分から乗ったらイカンでしょ。ソレを見た【たけし】はどう思うよ?

 

たけし「自分から乗りに行くのか…」(困惑)

 

 ってなられてもな。

 今日明日に限った事じゃない。少なくとも高校生活3年の間は【たけし】と付き合っていく予定なのに、こんなトコで微妙な感情を抱かせたらイカンでしょ。

 【たけし】が気にしてないと言っても、きっとそれは僅かなシコリとして【たけし】の心に残り続け、やがて俺達の関係も何処かぎこちなくなり、自然と距離が開いてしまい、気付けば俺もその余所余所しさに耐え兼ねて、ついリヴァイヴちゃんに……ってエロゲか!(ノリツッコミ)

 

 という訳で【上】だよね。

 

「返せお前相川このヤロウ!」

 

「うわビックリした!? ど、どうしたの、主車くん!?」

 

 どうしたもこうしたもあるかい!

 理路整然にクドクド訴えるより、勢いに任せてバカっぽく訴えた方が、まだ引かれないと思ったんだよぉ!

 

「その【打鉄】は僕のです! だから返してくださいこのヤロウ!」

 

「ちょっ、意味分かんないし、ど、土下座しないでいいよぉ!」

 

「だったら返してくださいこのヤロウ!」

 

「わ、分かった! 分かったから! 主車くんは【打鉄】に乗りたいんだね!?」

 

「そうだよ」(威風堂々な便乗)

 

「え、なにそのポーズは…?」

 

「コロンビア」

 

 思った以上にすんなりいけたからね。

 これは歓喜の便乗ですよ。

 

 

【あっちむいてホイで勝ったら返してくれ】

【あ、やっぱ缶蹴りで!】

【あ、やっぱかくれんぼで!】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 もう相川から了承得た! 

 得たんだよぉ!

 

 何でぶり返す必要があるんですか!(憤怒)

 ボーデヴィッヒが居なくなった途端に、しゃしゃり出てくるんだなお前な! 

 

「じゃあ、私はいったん【打鉄】から降りるねー」

 

「あー、それなんだが……あっちむいてホイで勝ったら返してくれんかね?」

 

≪ (゚Д゚)ハァ? ≫

 

 腹立つ顔で疑問を表すのやめろ。

 

「へ? いや、普通に返すってば」

 

 相川も冷静に応えないで。

 僕のメンタルがチクチクしちゃうの。

 

「いやいや、あっちむいてホイしてからでいいじゃん」

 

「いやいやいや、別にしなくていいじゃん。フフッ……そんな事しなくていいから」(良心)

 

 含みある念押しの仕方やめろ。

 鷹月も含みある笑み浮かべんな。別に笑うような事言ってねぇだろ。

 

 それはそれとして、俺も相川が返すツってくれてんだから、ゴリ押ししたくはないんだけどね。ただ、ここで相川の厚意に、安易に乗ってはいけない。そんな事したらアホの【選択肢】からの物言い待ったなしだからな。

 

「しなくていいって事は、裏を返せばしてもいいって事でもある。そうは思わんかね?」

 

「む……それは一理ありますねぇ!」

 

「ありますねぇ!」

 

 セシリアいない時までバカっぽく振舞わなくていいから(良心)

 

 

【もう無理矢理あっちむいてホイる!】

【ちゃんと説得する。星くんのノリで】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 ゴリ押ししてないのに出てこないでよぉ! 何だお前このヤロウ! 最近影薄かったからって挽回しようとしてんじゃないよ! 誰も得しないんだよこのヤロウ!

 

「一回きりあっちむいてホイしてくれれば、それで僕は満足するんだDA☆」

 

「なにそれ? あ、星くん?」

 

 コイツ元ネタ知ってんのか(困惑)

 もしや、やーまだ先生と同等だったり…?

 

「でも主車くんは美少年からかけ離れてるよね」

 

 鷹月も知ってるのか(唖然)

 そして君は実に失礼だな(プチ怒)

 

 しかしネタが通じてるなら話は早いし、何より俺の羞恥心も薄まる。じゃけんパパパッとパロディって展開を進めちゃいましょうね~。

 

「お願いだから、ネネ、いいだろう?」

 

「でもぉ、みんなが真似すると私、困るから!」

 

 別に困らないんだよなぁ。

 というか別に相川までパロディる必要はないです。普通に、普通に流してくれていいですから。

 

「ボク絶対しゃべらない「しゃぶらない」……ぁ?」

 

「そこは『しゃべらない』じゃなくて『しゃぶらない』でしょ?」(迫真)

 

 え、なにその訂正は(困惑)

 というか相川…さん、ちょっと……あ、圧が凄いんですけど。え、そんな威圧感持ちでしたっけ、アナタ…?

 

「なに勝手に変えてんの? 星くんは『しゃぶらない』って言ってたよね? 何で変えるの? 変えてもいい台詞と変えちゃいけない台詞ってあるよね?」(迫真)

 

 た、鷹月?

 え、鷹月…さん、ですよね?

 

 いや、でも『しゃぶらない』とは言ってないと思うんですよ。台詞は『しゃべらない』であって、たんに空耳で『しゃぶらない』って聞こえてしまうだけで。だから僕は間違ってないと思うんですけど。……なんか怖いから言わないけど。

 

「真似るならちゃんと真似きる!」

 

「その覚悟がないなら、最初から真似るんじゃない!」

 

「………………ごめんなさい」

 

 めっちゃ怒られた。

 決してそういう場面じゃない筈なのに、本気で叱られた。言語を理解しないピクルですら理解できるレベルでクラスメートの女子に叱られた。

 

≪ (´゚c_,゚` )プッ ≫

 

 なに笑とんねん。

 お前あとでシバくからな。

 

「もう横着しない?」

 

「アッハイ」

 

 横着とは言わんやろ。

 いや指摘しないけど。

 

「今度はちゃんと出来る?」

 

「アッハイ」

 

 お前ら子供に言い聞かせるみたいに言うのやめろ。その程度の母性を振り翳して乱と並ぼうとは、何と嘆かわしい、何と烏滸がましい事か…!(譲れない想い)

 

「……ボク絶対しゃぶらないよ」(棒読み)

 

「「(ニッコリ)」」

 

 ニッコリすんな!

 

「……だから、ね? させてくれるかい?」

 

「いいよー」

 

 軽っ!? 

 

「うんうん、よく頑張ったね、主車くん」

 

 褒められても嬉しくねぇよ!

 何なんだお前ら、一体どういう立ち位置目指してんの!? 

 

 いやいや、相川と鷹月ってこんな感じのキャラだっけ? 他のクラスメートと一線を画しすぎだろ…(戦慄) 

 

「花も恥じらう女子高生相手に下ネタぶっこんできた主車くんの度胸に免じて、あっちむいてホイに付き合ってあげるよ!」

 

 嫌な言い方すんなよ!

 言いたくて言ったんじゃないわ!

 

 えぇい、今のコイツらのノリは俺の手に余る勢いだ…! ここはもうさっさとあっちむいてホイるに限る!

 

 

【の前にハッタる】

【ハッタらない】

 

 

 ハッタる事が男の勲章である。

 ハッタリでせめてもの意趣返しをしてやるんだい! まぁ、ただの自己満足なんですけどね。

 

「おっと、相川。ISから降りんでいい。むしろ纏っていたまえ」

 

≪ (゚Д゚)ハァ? ≫

 

 無視。

 

「へ? 何で?」

 

「オイオイ、生身で俺とあっちむいてホイるつもりか?」

 

「いやおかしくない? な、何でそんな物騒な感じで言うのかな? え、あっちむいてホイだよね?」

 

「まぁ聞け。まず常人とのじゃんけんで俺が負ける事はない」

 

 指の動きが視えるからね(ドヤァ)

 

「さすれば、必然的に俺がホイる権利を得る訳だが……」

 

「「 だが? 」」

 

≪ ( ・ω・)モニュ? ≫

 

 可愛い子ぶんな。

 

「俺が向ける指先の爆風でお前の首は数十回回転し、そのまま千切れるだろうよ」

 

「「 なにそれこわい 」」

 

≪ (((( ;゚д゚)))アワワワワ ≫

 

 怖いよねぇ。

 俺も首が数十回回転して、そのまま千切れた事あるから分かるよ。猿王とあっちむいてホイをしてはいけない(戒め)

 

 というか最近【選択肢】から出される『トレーニング相手』もとい『俺を鍛えてくれる先生』の面子がちょくちょく異次元すぎて笑えないんだよね。八王の一角提示してくるとか頭おかしいだろ。そんなレベルに達してねぇから俺。掠りもしてねぇよ。

 

「という訳で、だ。絶対防御……あった方がいいんじゃないかね?」

 

「そ、そうだね、うん。仲良くなってつい忘れてたけど、主車くんって主車くんなんだよね」

 

 何か言い方おかしくないですか?

 いやまぁ、言わんとしてる事は分かるんだけど。

 

「危なかったね、清香。もう少しで超えちゃいけないライン……ん?」

 

 ん?

 鷹月は一体どこを見て……あ?

 

「ふはははは! どうした、貴様らの力はこんなモノか!」

 

 俺達が愉快なノリに耽っていた頃、離れた場所ではボーデヴィッヒがセシリアと鈴をワイヤーみたいなモンで縛り付けては、2人の全身へ隈なく殴打を繰り返していた。……えぇ(ドン引き)

 

「ちょ、ちょっと、やりすぎなんじゃない?」

 

「だよね、いくら模擬戦でもあれは……」

 

 ああ、そうだ。

 相川と鷹月の言う通り、どう見ても既にフルポッコの域は超えている。仮にこれが喧嘩だとしても、モノには限度ってモンがあるだろう。

 

 何より鈴たちを痛めつけてる今のアイツ……もしや、悦に浸ってないか?

 

「ど、どうする、清香? 止める?」

 

「う、う~ん……怖いけど…うん、ヤバいくらい怖いけど、でも止めなきゃ…!」

 

 戦いを終了らせる権利を持つのは勝者のみである。そこに第三者が介入する余地は無し。武の世界に在る不文律だ。俺もかつて柳韻師匠にそう教わった。

 

 そして柳韻師匠はその後、こうも言っていた。

 

 

『だが篠ノ之流は少し異なる。この不文律を守るのは、せいぜい相手が赤の他人の時だけでいい。大切な者が不当に傷付けられているのに何が不文律か。そんなクソッタレな掟など犬に食わせてしまえ』

 

 

『【ワン! ワンワン!】』

『【か、かっこいいたる~】』

 

 

 ああ、そういやそんな【選択肢】が出てきたっけな。でも別に【選択肢】の回想まで入れなくていいから。【下】選んだに決まってんだろ。「は?」って真顔で返されたわ。

 

 まぁ何だ。

 つまりこの状況、篠ノ之流的にも第三者の介入は全然OK!って事だ! 故に相川と鷹月は胸を張って助けに行けい! 

 

 俺は止めん! 

 止めないどころか応援してるよ!

 

 

【お前らさっさと行って来いよ(好感度スーパーマイナス確定)】

【助けに行くのは任せろー!(好感度アップな可能性が無きにしも非ず。ただし行くなら生身でよろしくぅ)】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 行きたくない! 

 行きたくないでござる! 

 

 せめて【たけし】纏わせてよぉ! 生身で突貫なんて正気の沙汰じゃないだろぉ! えぇい、好感度なんか知るか! 恋も青春も命あっての物種なんだよ! 

 

 お前らさっさと行って来いよ! 

 あくしろよ!

 

「……ぅ…ぅう…」

 

「主車くん?」

 

 恋も青春も命あっての物種な気がしたが。

 

「……ぬぉぉぉおおおおお――ッ!!」

 

 別にそんな事は無かったぜ!

 

「「 しゅ、主車くーん!? 」」

 

 旋焚玖の勇気が世界を救うと信じて! 

 ご愛読ありがとうございましたあああああッ!!(特攻宣言)

 

 






今度こそ見つけた
両親の仇!!(意味浅)


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