選択肢に抗えない   作:さいしん

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奥の手と奥の手、というお話。



第145話 模擬戦-後半-

 

 

「ぬぉぉぉおおおおお――ッ!!」

 

「むっ!?」(なっ……ふつめんがコッチに向かってきている? しかも何をトチ狂ったか、生身で……ッ!?)

 

 驚いてる時点でカモと知れい!

 そのままセシリアと鈴を締め付けてる紐っぽいのをいい感じにピーンと張っててね!

 

「斬ッ!!」

 

「むおっ!?」(なんと…! ワイヤー・ブレードを手刀で切り裂いてみせるかッ!!)

 

 おやおや?

 両目……じゃねぇや、ボーデヴィッヒの場合。片目を見開いて驚きを顕わにしてるじゃねぇか。ならば俺も胸を張って言葉を紡いじゃうぞ(調子乗り旋ちゃん)

 

「ユーアンダースタン?」(独歩)

 

「む…?」

 

「こちとら五体が既に武器であり凶器なんだぜ?」

 

 かつて一夏と箒に披露した瓶斬りなんて序の口も序の口。アラミド繊維だろうが針金だろうが、手刀でブッた斬るまで帰れま旋焚玖を強要された事もしょっちゅうある俺をナメんでないよ!

 

「……なるほど。己が肉体に絶対的な自信があるからこそ、ISを纏わずに突っ込んできたという訳か」

 

「フッ……」

 

 そんな訳ないじゃん。

 俺だって意思を尊重される立場だったら、間違いなくISに乗っていたさ。まぁでも【たけし】に乗った時点でドンムブが掛かるんだし、俺はその場から動けなくなるんだけどな、HAHAHA!

 

≪ ( ゚∀゚) アハハハハノヽノヽノ \ / \ / \ ≫

 

 なに笑とんじゃクルァァァ!!

 

「なんという……なんという……」

 

 ん?

 なにやらボーデヴィッヒがプルプルしているのも気になるが、それよりセシリアと鈴は……。

 

「……きゅう」

「きゅ~」

 

 うぅむ、だいぶポコポコにされてたのか、お目目をグルグル回してバタンキュ~ってるな。2人仲良くたれぱんだと化しとるわ。

 

(疾風と見紛うほどの脚力に、ワイヤー・ブレードを斬って落とす強靭な肉体…! もはや逸材などという陳腐な一言で片づけてられん。……逸材オブ逸材だな! しかし、だからといって私の邪魔をしていい道理はないぞう!)

 

「おい、ふつめん! 何故、私の邪魔をしたのだ!」

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「むぅ…?」

 

 可愛らしく首を傾げてもダメなもんはダメなんじゃい! 相手がすこぶる美人でもNOと言える日本人なのだよ俺はな! 

 

「喧嘩にも限度ってモンがあるだろが。ましてこれは模擬戦だしな。さっきのお前は明らかにやりすぎだ」

 

「フッ……お前程の男が何を甘い事言っているのだ」

 

「む?」

 

「勝者に生殺与奪の権利在り、敗者に慈悲は無し。そうであろう?」

 

 言葉の羅列っぷりがカッコいいと思った(厨二並感)

 でもやっぱりダメなもんはダメなんじゃい! いやまぁぶっちゃけ言いたい事は分かるんだけどね。武の教えと軍の教えはちょこちょこ似てるんだな。

 

 それでも認める訳にはイカンでしょ。

 そんな事しちまったら最後、せっかくここまで苦心して築き上げてきた俺のラブコメハイスクールライフがバイオレンスハイスクールライフに早変わりしちゃうだろうが! 俺の性春にバイオレンスはフヨウラ!

 

「まぁお前の言い分も分かる」

 

 

【分かるぅ↑↑】

【わっかんねーすべてがわっかんねー】

 

 

 わっかんねーお前の意図がわっかんねー。どういう思考回路してたら、分かるツった直後にこの【選択肢】を出そうと思えるのか。

 お前はホントにアレだな、大局に影響が及ばない程度に混沌を巻き起こす事にかけては世界随一だな。一応言っておくけど1ミリたりとも褒めてないからな、このうんこ女神が。

 

「分かるぅ↑↑」

 

「何故2回言った?」

 

「それくらい分かるって事だ」

 

「なるほどな。しかし、ならばなおさら解せん。私の言った事が分かる――」

 

 

【分かるぅ↑↑】

【わっかんねーすべてがわっかんねー】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 大局に響きかけてんぞコラァッ!! 少なくとも既に展開遅延行為へと至ってるぞコラァッ!!

 

「分かるぅ↑↑」

 

「む?」

 

 ボーデヴィッヒは首を傾げた。

 

「分かるぅ↑↑って言ってくれ。語尾を上げる感じで言ってくれ」

 

「何故だ?」

 

 しwらwなwいwよw

 

「その方が説得力が増すのさ」(うそっぱち)

 

「ほう……日本語は私が思っている以上に複雑なのだな」

 

「お、そうだな」

 

 嬉しいです。

 ボーデヴィッヒが素直だから。

 

「ならば……えっとえっと…私の言った事が、わ、分かるぅ↑↑お前が何故止めに入るのだ?」

 

 分かるぅ↑↑の言い方が可愛いと思った(小並感)

 しかし、だからといってお前の行為が肯定される事はぬぁい! しっかり説得してやるぞこのヤロウ!

 

「ここはISを扱うとはいえ、武で死合う場でもないし、ましてやお前の居た軍隊でもない一般ぴーぷるで溢れる学園だぞ」

 

「だから何だ? 常在戦場の軍人である私に他人の道理など関係ない」

 

 軍人こわい。

 軍隊ってトコはアレなんか、臨機応変というか、時と場所によっては対応を変えていきましょう的な事は教えないのかね。

 

「まぁまぁ聞いてくださいな、ボーデヴィッヒさん」

 

「な、なんだ急に気持ち悪いな」

 

 ノルマ達成!

 次にイクゾー!

 

「『郷に入れば郷に従え』という言葉があるくらいだ。我を通し続けるだけが処世の術じゃないだろ?」

 

「フッ……知らんなそんなスワヒリ語」(千冬直伝ツッパネ)

 

 俺が言いそうな事言ってんじゃねぇぞコラァッ!! 誰の入り知恵だこのヤロウ! そして俺にその返しが効くと思う事なかれ、だ!

 

「Andere Länder, andere Sitten」(ドヤァ)

 

「むっ……ふつめんはドイツ語が話せるのか?」

 

「俺の智嚢はトリビアの泉レベルだからな」

 

 話せないし聞き取れないし会話なんて不可能だけどな! だが諺なら異国語でもだいたいまかせろー。

 

「日本語でもなくスワヒリ語でもなくドイツ語で言われてしまったら、流石の私も突っぱねる事は出来んな」

 

 やったぜ。

 持ってて良かった独和辞典!

 

「好奇心で聞くが、スワヒリ語でなら何と言うんだ?」

 

「……ふむ」

 

 知らんわそんな国の言葉! だいたいツっただろぉ! 何でそんなにスワヒリ語に固執する必要があるんですか!

 

 しかしここで『知らん』と言うのは沽券に関わる。『なんだよコイツの泉ずいぶん浅ェなぁ』とか思わるのは癪である。故に伝家の宝刀を抜かせてもらうぜ!

 

「何でも俺が答えるのは忍びない。後で山田先生に聞いてみるんだな」

 

「ふぅむ。お前もそうだが、山田教諭も何でも知ってるんだな!」

 

「お、そうだな」

 

 多分やーまだ先生でも知らんと思うけど。別に二次元が関わっているネタじゃないし。ボーデヴィッヒが山田先生に聞く前に、あとでグーグル先生で調べておくか。

 

「で、話を戻すが……どうなんだ、ボーデヴィッヒ」

 

「うむ、お前の言わんとしてる事は分かった」

 

 やったぜ。

 話が横道から戻ってきたぜ。

 

「しかし私は何処であろうとも私をヤメるつもりはない」

 

「……ほう」

 

 何か今日のボーデヴィッヒは、ちょこちょこ言い回しがカッコいいな。さっきの言葉といい、絶妙な加減で俺の厨二心をコチョコチョしてきよるわ。

 

 

【か、かっこいいたる~】

【キメ顔でナニ述べちゃってんすかwwww】

 

 

 【下】がウザさMAXすぎて草も生えないんだよナニ生やしまくってんだよこのヤロウ! 空気読めない後輩キャラとかいらねぇんだよ!

 

「か、かっこいいたる~」

 

「む、なんだそれは?」

 

「気にするな」

 

「いや気にするだろ、教えろ」

 

 ぐぬぬ。

 そういやコイツには『気にするな』が効かないんだった。

 

「……普通のカッコいいより更にカッコいい時に使われる言葉だ」

 

「ほう……日本語は私が思っている以上にヘンテコなんだな」

 

「お、そうだな」

 

 今度千冬さんにでも言ってみたらいいよ。ケンカ売ってんのかと思われるから(いたずらっこ旋ちゃん)

 

「で、今度こそ話を戻すが……お前はお前の道理を貫くと?」

 

「当然だ。どうして他の奴らの都合に合わせねばならん」

 

 あくまで唯我独尊を地で行くつもりか、ボーデヴィッヒよ。そのブレない姿勢は買いだが、俺の求めるラブコメだと落第点も落第点である! 

 普段であれば、他人に自分の意見をアレコレ押し付ける事を良しとしない旋焚玖さんでも、コレに関してはとことん粘ってやるからな。

 

 恨むなら自分の顔面偏差値の高さを恨みな! 年頃の少女なら割と過敏に反応するワードを言ってやるぜ!

 

「そんな事言ってたら皆に嫌われちゃうぞ」

 

「ふん。興味ない」

 

 うげ……そういやコイツ、転校初日から余裕で孤高ガールってたんだった。

 ま、まだだ…! まだ諦めんよ!

 

「そんな事言ってたら友達できないぞ」

 

「友達なら乱とふつめんがいる。それだけで私は十分だ」

 

「キュン…♥」

 

 やだ、柄にもなくときめいちゃう。

 だって男の子だもん(ぶりっこ旋ちゃん)

 

 右のストレートでダウンさせようと思ったら、ジョルトでカウンター喰らった気分である。お前中々いいカウンター持ってんじゃねぇか…! 

 

「そう言ってもらえるのは光栄だが、それでもお前がこれ以上コイツ達をポコるのはやっぱり看過できんよ」

 

 当たり前だよなぁ?

 俺をこれ以上惚れさせようが、ダメなもんはダメなんじゃい! 何を言おうが何をしようが、俺の前では無駄と知れい!

 

「フッ……ならば力ずくで止めるか? 元よりそのつもりでお前は突っ込んできたのだろうがな。しかし生身で飛び込む危険性より、ISを纏う時間すらも惜しんでみせたその胆力と勇気。フッ……流石だ」(教官と私が認めるだけの事はあるな!)

 

 何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

 サスガダァ…じゃねぇんだよバカ! 千冬さんかお前! 弟子だからってそういうとこまで似なくていいから、いやマジで。

 

 え、なに、闘んの?

 闘らないですよ?

 

 ISに生身で挑むバカがいる訳ないだろいい加減にしろ! 

 昨日みたいに意識を刈るのもちょいと厳しそうだしなぁ。俺のしゅごさを魅せすぎたせいで、今のコイツからは油断の欠片も感じない。もっと隙を見せてくれてもいいのよ? 優しく、優しく昏睡させてあげるから!

 

「とはいえ、今のお前と手合わせする気は私にはないからな」

 

「マジすか?」

 

「は?」

 

「マジすか学園というドラマが最近再放送してるんだ。つい名前を滑らせてしまうくらい楽しみなのさ」

 

「そ、そうか」

 

 見た事ないけどな。

 

 それはそうと危ない危ない。

 俺とした事が、思わず素で返しちまったぜ。

 

 しかし俺はボーデヴィッヒから、それくらい素っ頓狂な言葉を投げかけられたのである! この流れ、そして好戦的なボーデヴィッヒの性格から考えても、闘らなくていいとか逆に不自然極まりないんだが……もしや、俺を油断させて昨日の意趣返しをするつもり……ん?

 

 

『あっ! あれは…! 空飛ぶ教官だ!』(迫真)

 

 

 うん、ないな。

 コイツにそんな高等テクは使えんでしょ。

 

 だったらマジでアレか? 

 言葉だけでボーデヴィッヒを説得できた? もしかして、できちゃった系ですかぁ~!?(舞い上がり旋ちゃん)

 

「ふつめん自身のしゅごさは既にこの身に刻まれているからな。次に私がお前と手合わせする時は互いにISを纏っている時に限る。故に、ここは……」

 

 俺の類稀なる胆力と勇気に免じて、この場は矛を収めてくれるんですね分かります。勝ったな、ボーデヴィッヒと飯食ってくる。

 

「ふつめんはソコで停止しているがいい!」

 

「は?……むぉっ…!?」

 

 ちょっ……か、身体が動かぬぇ!? 身体を拘束するが如く、見えないナニかが纏わり付いているような嫌な感覚…!

 

 いやいやなんで!? 

 時が止まったのか!? 

 

「フッ……お前程の男であっても私の【停止結界】からは逃れられんよ」

 

 アホの【選択肢】による新手の嫌がらせとか思ったが実はそんな事はなかったぜ…! しかしなんだ【停止結界】って超能力者かお前!?

 

 いや落ち着け、落ち着いて考えるんだ。

 俺の辞書にパニックという言葉はあるが、内心落ち着いてないのに落ち着いている風を装えるという言葉も載っている。

 

 要は身体が動かせないって事なんだろ。はんっ、俺のご鞭撻履歴をナメんでないよ! こちとら謎の力で拘束されんのは初めてじゃないのである!

 

 何よりガキの頃からただ架空キャラに、ひたすらボコられまくるだけで満足するようなMっ気なんざ俺は持ち合わせてない。しっかりボコられた後は、ばっちりアドバイスを頂いてきたからこそ、今の俺のしゅごさがあると知れい!

 

 例えば【心の一方】を喰らった時はどうだった? あの時も今みたいに動けなくなった俺に、先生は何と教えてくれた?

 

 

『刃衛先生! 心の一方を解くにはどうすればいいですか! 剣気とかよく分かんないっす!』

 

『ぶっちゃけ気合いだねぇ』

 

『気合いかぁ』

 

『あ、今からお前の呼吸も止めるから』

 

『ファッ!?』

 

『窒息死は汚く醜い。死体が涎、糞尿を垂れ流す……うふふ』

 

『い、嫌だあ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!』

 

 

 はい、回想終わり!

 要は気合いだ気合い!

 

「ぬぅぅ~……ゥオオオオオ――ッ!!」

 

「む!?」

 

 気合いがあれば!

 

「ぬぉぉぉオオオオ――ッ!!」

 

 なんでもできる!

 

 

 

 

「うん、まぁ無理だったんだけどね」

 

「当たり前だ。精神論が通用するほど我が【シュヴァルツェア・レーゲン】は甘くない。というか現実はそんなに甘くない」

 

 そりゃそうだ。

 元気があれば何でもできるが、気合いがあっても何でもできるとは限らんよ。というか見えないナニかが相手だろうが、物理的に拘束されてんなら、無理矢理振り解いちまえばいいんじゃね?

 

「ふ……ふぬぬぬぬ…!」

 

「無理に決まってるだろ。人間の力でどうこう出来たら、ISがここまで世界的に需要をもたらす筈もない」

 

 うん、素の力じゃビクともしませんね。

 なら潜在能力開放するか。しかし、どういう引き出し方すっかなぁ俺もなぁ。

 

 

武芸百般な篠ノ之流に加え、選択肢百般という特殊な女神を授けられた旋焚玖。少年の引き出しの豊富さといえば、毎夜欠かさず行われる架空キャラクター達からのご指導ご鞭撻歴に基づいていると言っても過言ではない。

 

そんな旋焚玖の引き出しは、潜在能力に関するモノだけでも割と多かった。

 

①エンドルフィン

②憑鬼の術

③ゾーン

④無我の境地

⑤無極

 

などなど。

名称も違えば、とうぜん能力の上昇率や継続率も違う。

ちなみに①~⑤を全て同時発生させる事で、最強の【界王拳】に大化けするのだが【選択肢】の許可がなければ使用不可だったりする。

 

 

 自力じゃ使えない【界王拳】は論外。んでもって、この拘束をブッ壊すには、きっと持続力よりも瞬発力の方が肝だろう。

 

 なら、選ぶモンなんか一つしかないよなぁ? 

 継続率はほぼ皆無。しかし瞬間最大風速は随一の。

 

 

 " 無極――ッ!! "

 

 

「あ、解けた」

 

「ファー!?」

 

 いや、ファーてボーデヴィッヒさん。

 

「変な驚き方だなぁ。それがドイツ式か?」

 

「いや待て待て待て! ちょっと待て! なに普通に動いてるんだお前!?」

 

「そらお前……動くだろ」

 

「なんで!?」

 

「む」

 

 これは……上手く説明してやれば、さらにボーデヴィッヒから尊敬される兆し…! ふふふ、コイツは俺の『武』についてだけ言えば、もうホの字もホの字ゾッコンラヴな訳だからな。

 

 そんな俺が優しく丁寧に説明してやればどうなる? 俺への好感度は『武』だけに留まる事をやめるが如くさらに倍率ドンちゃん大花火。はらたいらさんも裸足で逃げ出すレベルな倍倍ゲームになる事間違いなしなんだぜ。うひひ。

 

 

【お前がクソ雑魚ナメクジだからだよ言わせんな恥ずかしい】

【ひ・み・ちゅ…♥】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 ヘイトを溜めたいとは一言も言ってない! 言ってないよぉ! ゾッコンラヴから真逆じゃねぇかこのバカ! バカバカバカぁ!!

 

「ひ・み・ちゅ…♥」(白目)

 

「そんな気色の悪い感じになっても誤魔化されんぞ!」

 

 うん、まぁ……うん。

 ボーデヴィッヒってナチュラルに暴言吐いてくるよね。今更ながら、コイツ美人じゃなかったらもう100回くらい背中に毛虫入れてるわ(小者旋ちゃん)

 

「とはいえ、【シュヴァルツェア・レーゲン】の【AIC】を破る程のモノなのだ。きっとお前は何かしら奥の手を使ったのだろう。強さに関する奥の手を公言したくないお前の気持ちも分かる」

 

「お、そうだな」

 

 何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

 

 千冬さんばりに好解釈してんなお前な。

 あの人の愛弟子を自負してるからって、別にそんなとこまで似なくてもいいんですよ? 

 

 とか言いつつ、今回ばかりは助かったぜ。

 しかしAICってなんだろう。さっきコイツが言ってた停止結界の科学的呼称かね。AICって言ってるくらいだし、頭文字がAとIとCで始まる3つの単語の略なんだろうけど……全然わがんね。

 

 まぁいいや。

 聞いたら呆れられそうだし、あとで一夏にでも聞いておこ。

 

 

【MK5】

【QBK】

 

 

 いやなに変な対抗心燃やしてんの!?

 知ってる略語の数で張り合おうとするとかバカかお前! そんなバカを具現化させられる俺の身にもなってくれよぉ!

 

「MK5」(げっそり)

 

 これだとまるで、AICの意味は知らんけど、僕は他の略語なら知ってるんだい!って苦し紛れにアピールしてるみたいじゃないか。潔さの欠片もなくて自分の言動にドン引きですよ。

 

「ほう……それが先程見せた奥の手の技名か…!」

 

「え?」

 

「え?」

 

「いや、その通りだ」

 

 

 喰らえッ!!

 マジで恋する5秒前――ッ!!(MK5)

 

 

 どんな技だよ(自問)

 

「しかしお前だけに奥の手があると思わない事だ」

 

「む」

 

「流石に【AIC】を破られた時は面食らってしまった。それは認めよう」

 

 ファーとか言うてたもんな。

 割と面白な顔だったし、もう一回見てみたい気もする。

 

「予想外ではある。しかし想定外ではない!」

 

 日本人じゃないのに言葉遊びが巧いと思った。

 

「私がドイツでいったい誰から技術を学んだと思っている? ブレード一本で世界を相手にブイブイいわせていた織斑教官だぞう!」

 

「む…?」

 

 なんかテンション高めに眼帯を外したと思ったら、さらに両腕をこちらへ突き出してきたでござる。さっきは片腕だけだったのに、ぬぁ~んで急にそんな真似するんですかねぇ?(第六感超発動)

 

 何をするつもりか知らんが、やってしまいましたなぁ、ボーデヴィッヒさん。仕掛ける時は音もなく気配も消すのが常套だろうが。

 ましてや俺は天下の旋焚玖さんですよ? 危機察知能力に長けた俺が、そんなあからさまなモンを前にして動かない訳ねぇだ……ぉん?

 

 

その場から避けようとした旋焚玖の視界に、眼帯で覆われていたラウラの眼が入る。彼女が普段から晒している右眼とは、まるで違った色の左眼が視えてしまった。

 

 

 はぇ~、ボーデヴィッヒはオッドアイな少女だったんか……ん? 

 

 オッドアイなんですね。 

 銀髪でオッドアイなんですね。

 さらには端正な顔立ち……ってお前それ昔一時流行ったオリ主じゃねぇか!? え、なに、転生者? ボーデヴィッヒさんは転生者だった!? 

 

「初めて隙を見せたな、ふつめん!」

 

「あ……むぉっ!?」

 

 ま、また身体が動かんようになった!?

 しかもさっきよりも強くなっ……ひ、膝から崩れる…!?

 

「フッ……これが織斑教官から授かった私の奥の手。【停止結界×2】だ。左目の封印を解かねばならんし、両腕を必要とするが……文字通り2倍の効力を生む織斑教官から授かった私の奥の手だ!」

 

 なんで2回言った? 

 ×2で2倍だからか? 

 そんなとこまで2倍にしなくていいから(良心)

 それに千冬さんから教わったアピールされて嫉妬するのは一夏であって俺じゃないぞ。

 

 うん、問題は今そっちじゃねぇな。

 マジで拘束力が強まっている。

 正直【無極】でも解ける気がしないレベルだぞオイ。というか、そもそも【×2】ってなんだよ【×2】って。

 なに普通に言っちゃってんだよ、2倍なんだぞオイ。千冬さんからどういう感じで教わったんかは知らんが、片腕から両腕に変えて2倍になるとかウォーズマンかお前。

 

 

【100万パワー+100万パワーで200万パワー!!】

【いつもの2倍のジャンプが加わって200万×2の400万パワーっ!!】

【そしていつもの3倍の回転を加えれば400万×3の…!】

 

 

 そうそう、そうやってな、ベアクローを二刀流にして2倍のジャンプで3倍の回転したらな、バッファローマンを上回る1200万パワーになってな…って違うわ! コイツにウォーズマン理論の説明してどうすんだよ! 

 乱も言ってただろうが、昨日ボンチューネタを分かってもらえなかったってよぉ! ボンチューも知らん奴がキン肉マンを知ってる訳ねぇだろ! 

 

 いや知ってんのか…? 

 実は知ってんのか?

 だから『両腕で2倍に~』とか嬉しそうに言ってんのかこのヤロウ! 実はお前の方からウォーズマンネタに寄せてきてたんかオイ!

 

「100万パワー+100万パワーで200万パワー!!」(ほのかな期待)

 

「は?」

 

 そらそうよ。

 

 






オチたので区切りんぐ(*´ω`*)

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