ポコポコって何かね、というお話。
俺のトーナメント戦不出場が一夏的に認められて、ついでに一夏のタッグパートナーも決まったその夜。公約していた通り、ボーデヴィッヒがアリーナへとやって来たでござる。
一人ではなく乱と一緒に来ているところを見ると、二人の仲は良好だと思って良さそうだ。とても嬉しいのである!
嬉しいのだが。
アリーナに現れた時からプンスカプンなオーラを醸し出しまくりな乱は、ボーデヴィッヒと何故か俺にまで正座を強いてきたのだ。
まぁ大人しく強いられてるけどね。
乱は怒った時の方がママ化が顕著だからね。
(おい……おい、ふつめん)
(……なんだ?)
ボーデヴィッヒが小声で耳打ちしてきたでござる。
流石にまだ心会話するには絆ポイントが足りんか。
(なぜ私達は正座させられているのだ?)
お前は当然なんだよなぁ。
放課後の模擬戦だよ。鈴に対してもセシリアに対しても、明らかにボーデヴィッヒはやりすぎだったからな。というかお前が常識の範囲内で攻撃を止めてたら、俺だって生身で突撃せんですんだんとちゃうんか!(プンスカ旋ちゃん)
まぁそれも済んだ話だ。
それよりも、だ。
(というかお前も正座するんだな)
そっちの方が驚きだわ。
まだまだ短い付き合いではあるが、コイツが千冬さん以外でも素直に従っている姿とか、中々にレアな光景なんじゃないのか。
(うむぅ……乱は…何と言えばいいか。教官とはまた違った迫力というか、なんか逆らってはいけないと思わせる凄みがあるのだ)
凄み(母性)
俺も同じ境地を去年の夏に味わったぜ。これでお前も年下のおなごにバブみを感じる罪深き咎人という訳だ。しかし責めるつもりは毛頭なし。俺たちは名実共に同志になったんだからな。
我と共に生きるは冷厳なる勇者(変態)、出でよ!
まぁ出でよも何も隣りでちょこんと正座してるんだけどな。
(とはいえ私とて正当な理由を提示されなければ抗うつもりだぞ!)
(お前に関しては正当な理由なんだよなぁ)
(むぅ?)
そんな可愛らしく首を傾げてみせても、俺にしか通用しないんだよなぁ。同性ガールな乱にはきっと無駄だと思うぞ。
「身に覚えのないって顔してるね、ラウラさん」
「当然だ! いくらお友達の乱でも、して良い事と悪い事があるんだぞ!」
なお本人はママの迫力に屈している模様。
正座的な意味で。
「そうだね。ラウラさんは今日の放課後、したら悪い事しちゃったよね?」
「むぅ?」
「そんな可愛らしく首を傾げてみせても、アタシには通用しないよ! アリーナでの模擬戦だよっ! ラウラさんってば鈴姉とセシリアさんを必要以上にボコボコにしたでしょ!」
そうだよ(便乗)
しかし今思えば、あの時俺が割って入ってなかったら、もしかしてもっとやべぇ状況に陥ってたんじゃなかろうか。なんかコイツも殴りながら『ふはははは!』とか爆笑してたし。……爆笑しながら人を殴るのか(唖然)
「フッ……何を言うかと思えば」
「む!」
おぉ、ボーデヴィッヒが乱に反旗を翻すっぽいぞ! 俺に出来ねぇ事を平然とやってのけてるが別に痺れないし憧れねぇな!(乱ママ派宣言)
「私はボコボコになどしてない」
「いやいやいや。二人共もう少しでダメージレベルCを超えるとこだったって山田先生から聞いたんだけど?」
そうだったのか。
確かISってダメージレベルCを超えたら、修復するのにかなり時間を要するんだっけか。何かそんな事を授業でやーまだ先生が言ってたような気がする。
「フッ……認識の違いだな」
「にゅ?」
「私にとってのソレはボコボコではない……ポコポコだ!」
何言ってだコイツ(ン抜き言葉)
何の言葉遊びだよ。しかしまぁ何だ、ポコポコの方がボコボコよりダメージは軽いって事は分かったな。
だから何だよ。
しかもボーデヴィッヒの言葉を借りるなら、アレは誰がどう見てもボコボコなんだよなぁ。それなのに何でお前はそんな一点の曇りもない感じなんだよ。アレでポコポコとかお前のポコポコすっげぇポコポコしてんな(ポコポコ旋ちゃん)
「へぇ……ラウラさん的にはアレでポコポコなんだ?」
「うむ! アレは私的にはポコポコだ。故に私が乱に叱られる筋合いはないな!」
「む」
あんたはさっきからポコポコと言っている。鈴とセシリアをたれぱんだ化させる程のダメージを与えて、ポコポコポコポコと言っている。……ポコポコって、何かね?
とまぁ俺のポコポコ定義は置いておくとして、これは中々に見ものかもしれん。
駄々をこねる娘に対し、果たして乱はどういう風に言い聞かせるのか。しかもボーデヴィッヒは、生半可な駄々っ子じゃないときている。
コイツはちっちゃなころから軍人で15で軍人と呼ばれたからな。そらもう一般人とは倫理観が異なりまくりよ。そんなボーデヴィッヒにテンプレな諭し方など通用しまい。
[旋ちゃんシミュレート]
『お前もセシリア達と同じ事をされたら嫌だろ?』
『うむ、嫌だぞ』
『分かってんじゃねぇか!』
『嫌だから私は敗者にならないように頑張るぞ』
『分かってねぇじゃねぇか!』
うん、ダメだな。
俺にはどう諫めたら良いのか思い付かんわ。
だがしかし。
駄菓子菓子。
俺には出来なくても乱なら話は別だ。
乱は俺のママになった女だぞ、ナメんなよ。……うん。全然カッコよくねぇなこれ。むしろ気持ち悪いだけだな。俺的には牧さんをイメージしたつもりなんだけどね。
『海南のユニフォームをとった男だぞ、ナメんなよ』(イメージ)
『俺のママになった女だぞ、ナメんなよ』(現実)
ぜんぜん違ぇなコレ。
まぁでも語尾は合ってるし、ほとんど一緒みたいなモンやろ。
【海南のユニフォームをとった男だぞ、ナメんなよ】
【俺のママになった女だぞ、ナメんなよ】
一緒ちゃうわ!
ちょっとしたお茶目やんけ! というか言わせようとしないでよぉ! 心の中でくらい遊ばせてよぉ!
「海南のユニフォームをとった男だぞ、ナメんなよ」
「は? なんだ急に?」
「気にするな」
「いや気にするだろ、説明しろ」
「お、そうだな」
辛いです。
ボーデヴィッヒが聞きたがりだから。
~旋ちゃん説明中~
「という訳で、この前『SLAM DUNK』の映画化が発表されたんだ」
「公開されたら3人で観に行こうよ!」
「うむ! 私もそそられたぞ!」
辛くないです。
両手に華な未来が確約されたから。
「しかし今の状況とは全く関係ない話だったな!」
「お、そうだな」
そこに気付くとは……というか、だからこれを教訓にしてくれ。今後は俺が『気にするな』と言ったら気にしないでいいのだ。気にしたら話が100億%脱線するのだ。
「でさ、話を戻すよ?」
すまんな、乱。
アホの選択肢のせいで苦労かける。
「ラウラさん的にはポコポコって言ってたけど、鈴姉もセシリアさんもばたんきゅ~ってるんだよ? それはちょっとやりすぎじゃないかなぁ?」
「ばたんきゅ~ってるくらいが私のポコポコだからな! 私的にはやりすぎの範疇に届いてないな!」
つまり今後ボーデヴィッヒがポコポコ宣言をしたら、相手は保健室直行ルートが確定されてしまうのか。ポコポコな言葉の響きに対してダメージがデカすぎだろ。
「じゃあアレくらいはラウラさん的には普通なの?」
「普通だな」
【僕ふつめん!】
【僕いけめん!】
【36】
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
「僕ふつめん!」
「ん? どうしたお前急に。出たがりか?」
「お、そうだな」
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
「むぷぷ。旋ちゃんはかまってちゃんなところがあるからねぇ」
「お、そうだな」
あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!
意味不明な【数字】選ばなかった結果がコレだよ! 二人の率直な言葉がグサグサ刺さったよ!
でも、きっとこれで良かったんだ。結果として俺は二人から虚誕な辱めを受ける事になったが、それでも展開の停滞を免れたんだからな。そう思わせて、ホントに。
「でさ、またまた話を戻すよ?」
すまんな、乱。
アホの選択肢のせいで苦労かける。
「ラウラさんは普通って言ったけど、もし自分が同じ事されたら?」
「む?」
うぅむ……乱も俺のシミュレートと同じ感じで攻めてきたか。しかし、その諭し方だと多分ボーデヴィッヒには通用しねぇと思うぞ。
「嫌でしょ?」
「うむ、嫌だぞ」
「でしょでしょ? 自分がされて嫌な事は相手にもしちゃダメだよね?」
お、分岐した。
さて、どうなる?
「されて嫌な事はさせなければいいだろう。ポコポコにされたくなかったのなら私に勝てば良かっただけの話じゃないか」
うぅむ。
極端な考え方ではあるが、ぶっちゃけ勝負事に関しては俺もボーデヴィッヒの意見を否定できないんだよなぁ。むしろ負けた奴の都合なんか知ったこっちゃねぇよな。とか言ったら確実に嫌われるから言わんけど。
そんでもって、さすがの乱も手詰まりじゃないのか。
一般的な理詰めで攻めたところで、相手がボーデヴィッヒなら暖簾に腕押しだからなぁ。
「じゃあラウラさんのポコポコは別に悪い事じゃないんだね?」
「うむ!」
「そっかぁ…」
乱でも諭せない、か。
難しいな。たぶんボーデヴィッヒは『自分じゃなくて他人がされて嫌な事は~』って言い換えても同じ返事をするだろうし。
「ならウサミンがポコポコにされてもいいんだね!」
は?
ウサミン?
「!?!?!!?!?!?」
うわ、なんかすっげぇ反応したぞコイツ!?
え、ウサミンって誰?
え、あのウサミン? アイドルの……えーっと…なんだっけ、ミミミンミミミンとか言うてるアレ? え、ボーデヴィッヒさんはウサミンのファンなの?
「ポコポコするのは悪い事じゃないってラウラさんのお墨付きだし。あ、そうだ。今からアタシがポコポコにしてくるよ!」
いやいや待て待て乱さん!
そんな事したら逮捕されちゃいますよ!? 普通に暴行ですよ暴行! 犯罪ですよ犯罪!
「や、やめろ乱! そんなことしちゃいけない!」
「うわははははは!」
「なぜ笑うふつめん!?」
いや今のは笑うだろ。
なにお前アテムの真似してんだよ。
「そんなアテムの真似されたってさぁ。ポコポコは悪い事じゃないんでしょ~? ラウラさんが言ったんだよ~?」
「う゛っ…!? そ、それは…!」
というか乱もそんな気軽に会える相手じゃなくね? 向こうは今をときめくアイドルなんだろ? え、もしかして乱さんってアイドルに知り合いがいるんですか? なら自分は高垣楓さんを紹介してほしいです!(ミーハー旋ちゃん)
「……うん。もうアタシもうるさく言う必要はなくなったかな」
確かに。
ボーデヴィッヒはポコりに行く宣言をした乱を必死に止めたんだからな。それは無意識だったかもしれないが、ポコポコはやりすぎだって認めたと同義よ。
「これからはさ、ウサミンがされて嫌な事はラウラさんも控えた方がいいかもね」
「う、うむ……そうだな、うん」
マ・ジ・か!
マジであのボーデヴィッヒを言い聞かせちゃいましたよこの子! 俺らより年下なんですよこの子! 乱の奴、ここにきてママとしての才能を開花させたな…!
しかしそれだけに疑問が残る。
過剰ポコポコの罪に問われるボーデヴィッヒが正座させられているのは分かりまくるが、どうして俺まで正座させられているのかね!
そして俺はボーデヴィッヒのように甘くはない。たとえ乱が相手でも、正当な理由を提示されなければ抗うつもりだぞ!
意外と早く堕ちたな~(予告)