選択肢に抗えない   作:さいしん

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疑わしきは追い求む、というお話。


第156話 渦中ト成リ

 

 此処はIS学園のある日本ではない何処か。

 朧な薄明が野に吸われる頃、二人の女性が何やら話を弾ませていた。

 

「なぁ、スコール。ホントに行くのかよぉ~?」

 

「もう……何度も言ったでしょう? そんな眼で見ないでちょうだい、オータム」

 

「でもよぉ、ISの試合つっても所詮はガキ同士のお遊戯なんだぜ?」

 

 それは近々IS学園で行われる学年別トーナメントの事を指していた。各国政府関係者、研究所員、企業エージェントなども足を運ぶ、まさに最大級のイベントと言っても過言ではない。しかしオータムと呼ばれた女性は、歳不相応に頬を膨らませて不満っぷりをアピールしている。

 

「否定はしないわ。でもね、今年は違うのよ。分かるでしょう?」

 

 今年は例年とは違う。

 その言葉が意味するのは一つ。

 

「けっ……織斑一夏、だっけか? 男のくせにISを起動させちまったトンデモ野郎はよ。でもソイツは織斑千冬が関係してるかもって言ってなかったか?」

 

「ええ、そうね。世界で初めてのIS男性起動者。そしてそれは織斑一夏君以外にもう一人いる。……私が興味あるのは、そのもう一人の方なの」

 

 スコールの言葉で、ますますオータムは眉間に皺を寄せる。

 

「いやいやもう一人の方って、確かアレだろ? 専用機も貰えてねぇただのオマケじゃなかったのかよ?」

 

「その認識を改める必要が出てきたの」

 

 何かあったのか。

 オータムは目で先を促す。

 

「二人目の起動者は確かに専用機は貰えていない。けど、その子は専用機無しで代表候補生に勝ったらしいの。もちろん、専用機持ちのね」

 

「なに……? レインからの報告か?」

 

「ええ、あの子が言うなら信憑性は高いとみていいでしょう」

 

「まぁそこは疑ってねぇんだけどよぉ……でも、うーん……」

 

 それでもオータムは納得がいっていないようだ。

 確かに訓練機で専用機に勝つのは大したモノだが、裏を返せばそれだけだ。実際、オータムも仮に自分が訓練機であったとしても、IS学園の小娘相手になら専用機持ちだろうが勝てる自信がある。故に、スコールほどの実力者がわざわざ足を運ぶにはまだまだ理由が弱いと感じていた。

 

「驚くのはここからよ。レイン曰く、二人目の子は生身で臨んで勝ったらしいの」

 

「なんだと!?」

 

 そんなバカな!

 ありえない!

 

 さすがのオータムもこれには目を見開かざるを得なかった。

 

「しかも辛勝ではなく" 圧勝 " したそうよ」

 

「なんだと!?」

 

 そんなバカな!

 ありえない!

 

 さすがのオータムもこれには目を見開かざるを得なかった。

 

「レインの調査によれば、なんと相手をアへ顔にさせたらしいわ」

 

「な、なんだとぅ!?」

 

 そんなハレンチな!

 ありえない!

 

 さすがのオータムもこれには頬を赤らめざるを得なかった。そんなウブっ子オータムを見てスコールも頬を紅潮させずにはいられなかった。

 

「でも二人目の子もアヘ顔になったそうよ」

 

「はぁ!?」

 

「ちなみにその試合を観ていた織斑一夏君もアへ顔になったらしいわ」

 

「いやなんでだよ!?」

 

「レインも実際に見たってわけじゃあないからねぇ。噂には尾ひれが付くものよ」

 

「付きすぎにも程があるだろ、はひれまで付いちまってんじゃねぇか」

 

 呆れながらもオータムの不満は薄れていた。レインの報告が確かなら、スコールが興味を持つのも頷ける話だからだ。

 

「まぁアヘ顔云々は置いておくにしても、生身の方は捨て置けないわ」

 

「それこそホラだと思うけどな。ありえねぇだろ、常識的に考えて」

 

「……どうかしらねぇ」

 

「何だよ、引っかかる言い方するじゃねぇか」

 

「あなたは彼の映像は観ていないのかしら?」

 

「映像…? ああ、何かISを起動する調査会場で暴れたってヤツだろ。アタシは男に興味ねぇし観てねぇな」

 

 オータムは男に興味なかった!

 

「なら今観てみなさいな。彼の体術は相当なモノよ?」

 

 パソコンを立ち上げたスコールは、そのまま動画サイト『あなたちゅ~ぶ』のページを開き、小気味いい音で検索ワードを打ち込んでいく。

 

「大乱闘スマッシュブラザーズX…? なんだそのタイトル?」

 

「さぁ…? 日本の文化はよく分からないわ」

 

 そんなやり取りをしている間にお目当てのサムネイルが見つかる。

 

「オイオイ、何だよこの視聴回数!? 1,145,148,101,919,893回も再生されてるじゃねぇか!?」

 

「意外と人気みたいよ、彼。特に同性からの支持がすこぶる高いらしいわ」

 

「はんっ……モブ共の救世主ってヤツかぁ? でも、とっくに男の時代は終わったんだ。期待しても虚しくなるだけだと思うがよぉ~……ん?」

 

 

『3人に勝てる訳ないだろ!』(顔にモザイク)

 

『馬鹿野郎お前俺は勝つぞお前!』

 

 

「んんん?」

 

「彼よ、彼。このモザイクの掛かっていない方が例の二人目よ」

 

「いやそれは分かってるんだけど……ちょ、ちょっとストップさせてくれ」

 

 動画を止めたオータムは、例の二人目の顔をまじまじと見つめる。

 

「……コイツぁ」

 

「なぁに? もしかしてタイプだったりするのかしら?」

 

「全然」(即答)

 

 別にブサイクとは言ってないし、オータムは男に興味ないからセーフ。

 

「いやそうじゃなくてよ……コイツ、アレだよ、アレ! ほら、ちょこちょこ話してる言葉博士だよ!」

 

「言葉博士って……確かあなたがナンパされたと思ったら何故かしりとり勝負を挑まれていたっていう変な少年の……え、この子なの!?」(※ 第19話参照)

 

「そうそう、コイツだ! 間違いねぇって!」

 

「へぇ……世界は案外狭いのねぇ……いやちょっと待ちなさい。あなた、この子とメル友じゃなかったかしら?」

 

「しりとり友な。しりとり以外のやり取りしてねぇし」

 

「そうだったわね。私も何度か見せてもらったけど、あなた達のシンプルすぎるやり取り、嫌いじゃないわよ……って今はそんな事はどうでもいいの!」

 

 スコールにとって、今はそんな事はどうでもよかった!

 

「いい、オータム? あなたは世界でたった二人しかいない男性起動者の連絡先を押さえているのよ?」

 

「まぁそうだな」

 

「それはつまり、外部からの接触はかなり厳しいであろう彼と、あなたはいつでも連絡ができる仲というわけね」

 

「しりとりしかしてねぇけどな」

 

「しりとりから離れなさいよ」

 

 スコールが何が言いたいのか、いまいちピンときていないオータムは、二人目の男だろうがしりとり友達でしかなかった。しかしスコールからすれば、これほどオイシイ仲はない。

 

「彼ならレインですら調べられない情報もたくさん持っている筈よ。それを上手く聞きだせれば、私達の今後は俄然有利に運ぶわよねぇ……うふふ」

 

「ああ、そういう事か! んじゃあアタシの仕事は……コイツの篭絡ってわけだな?」

 

「ふふ、理解が早くて素敵よ。性欲盛りの15歳が突如女子高に放り込まれたカオスな環境で、しかも顔はフツメンときている。悲しいかな、きっと彼の恋人は右手といったところでしょうね」

 

「左手かもしれないぜ?」

 

「そこは掘り下げなくていいでしょ」

 

「お、おう」

 

 とか言いつつ、スコールはオータム独特の感性が気に入っていたりする。

 

「話を戻しましょう。そんな性欲を持て余しつつも女性に相手にされてない少年が、年上の美人なお姉さんから誘惑されたらどうなるかしら?」

 

「そりゃあもうイチコロだろうよ」

 

「ええ。イチコロにしてやりなさい、オータム」

 

「分かったぜ!」

 

 年上の美人なお姉さん、例の少年に誘惑メールをポチポチ中。

 

「……………よし、送ったぜ!」

 

「ご苦労様。これはどんな返事が来るか楽しみ『ピロリン♪』あらあら、もう返ってきたの? チェリーボーイ君には刺激が強すぎたかしら、うふふ」

 

「……何だこりゃ?」

 

 怪訝な反応を示すオータムの背後からスコールも返事の文面を覗き見た。

 

 

『(´_ゝ`)』

 

 

「……なにこれ?」

 

「こっちが聞きてぇよ、何のつもりだアイツ」

 

「ちょっとあなたが送ったのも見せて」

 

「ん」

 

 

『うっふ~ん……♥ 今夜は何だかいけないキ・ブ・ン…♥』

 

 

「( ゚д゚ )」

 

「ぶはははははは! な、何だよスコールその顔!? ぶはっ、ははははは「ていっ!」イテッ…!? な、何すんだよ!?」

 

「それはこっちのセリフよ! 何が『うっふ~ん』よ、小学生か!」

 

「何言ってんだ? アタシは23歳だぜ?」

 

「知ってるわよぉ! そうじゃないのよぉ!」

 

 いったい彼女は何に倣ってして送ったのか。

 スコールはよくオータムを誘惑してニャンニャンするのだが、それでも自分はこんな感じで彼女を誘ってはいない筈……何故かスコールの背中に伝う汗は冷たかった。

 

「いいわ、次は私が送りましょう」

 

「そうか? じゃあ頼む」

 

 

『実はずっとアナタの事が気になっているの。しりとり以外のやり取りだってしたいし、アナタともっと親密な関係になりたいと思っているわ。お姉さんに興味はないかしら…?』

 

 

「まぁこんなところね」

 

「おお、すげぇぜスコール! これならアイツもイチコロだろ!」

 

 意気揚々と送信。

 再び秒で返信。

 

 

『ボンバイエ』

 

 

「……?」

「……?」

 

 そして目が点になる美人なお姉さん方。

 

「ぼんばいえ……? な、何だこの言葉、聞いたことねぇぞ……スコール?」

 

「……………」(私も聞いた事はない。引っかかるのは、さっきの返事と違って脈略がなさすぎる事。もしや遠まわしに何かを伝えようとしている…? 暗号? 例えば文字を組み換えたら、別の言葉が……)

 

 そこまで考えてスコールは自嘲気味に笑った。

 

「はぁ……バカバカしい。ただの子供相手に何を本気になって『ピロリン♪』え、またメール?」

 

 

『ちなみに秋を表す英語には【Autumn】の他に【Fall】もあります』

 

 

「「!!?」」

 

 今度こそ二人は驚愕した。

 相変わらず脈略は不明だが、それでも二人にとって決して見過ごせないワードを突き付けられてしまったのだから。

 

「お、おい……スコール、これはいったい…」

 

 開いた口が塞がらないとはこの事。

 自分はコイツには『巻紙礼子』としか名乗っていない筈。猪突猛進型でちょいとポンコツ気質なところはあっても、コードネームの【オータム】まで教えているわけがない。

 

 オータムが初めてこの少年に対し畏怖を感じた瞬間である。しかし、その隣りに立つもう一人の女性は違うようで――。

 

「あはっ……あははははっ! 面白い! とてつもなく面白いわ、二人目…いいえ、主車旋焚玖! これほど心が搔き立てられたのは何年ぶりかしら!」

 

 この瞬間、スコールの中で最優先事項が変わった。

 自分がIS学園に行く理由は、ブリュンヒルデの織斑千冬でも暗部当主の更識楯無でも世界初IS男性起動者の織斑一夏でもない。

 

「ふふふ……会うのが楽しみね、主車旋焚玖君…」

 

 波乱の幕開けは近い。

 

 






Q.ボンバイエの意味を教えてください
A.すいません


Q.何で更新サボッてたん?
A.ホロライブにはまって配信追いかけてたら時間がなくなったでござる。本当に申し訳ない(博士)

でも今後はまた少しずつ更新していくつもりなのら。んなああああああああああああああ!!(決意表明)
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