選択肢に抗えない   作:さいしん

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試合よりも出会い、というお話。


第157話 再会あれば出会いあり

 

 

 今日は待ちに待った学年別トーナメント戦である! 俺は既に不出場の免罪符をゲットしてるから待ちに待ってても平気なのである!

 

 というか別に罪ちゃうわ!

 俺はまだボーデヴィッヒが動けなくしてくれないと動けるようにならないんだから(矛盾スタイル)

 

 まぁアレだ。

 俺の方はボチボチやっていく精神でいくわ。入学前までの不動無明剣喰らったレベルから比較すりゃ進歩も進歩、大進歩よ。

 

 

【え、ちんぽ?】

【お前そんなに大きくないやろ】

 

 

 なんだコイツ!?

 変な会話しようとしてくんなお前バカか!

 

「え、ちんぽ?」

 

 【上】を選んだらしっかり発声させられたでござる。周りには誰も居ないし、てっきり心の声で済む系かと思ったらコレだよ。

 清々しい朝に高校一年生が独り言で小学生並みの下ネタときたか……何か面倒な事が起きる予兆じゃないだろな。

 

 いやいや、俺はトーナメント戦には出ないんだし、刺客っぽい立ち位置のクロエも『今日はクロックタワーゴーストヘッドをするので行きません(≧◡≦)』って言ってたし。

 

 大丈夫、大丈夫。

 いつもみたいに元気に学校へイクゾー。

 

 

 

 

 キタゾー。

 さすがIS学園が誇る目玉イベントなだけあって、普段の校内の風景とは全然違う。何処ぞのお偉いさんっぽい人やら、なんか研究者っぽい人の姿も見て取れるなぁ。パッと見た感じ、男より女の方が多いってのも時代を物語ってるよなぁ。

 

 まぁとりあえず、だ。

 IS関連の方々なら俺の面は割れてるだろうし、下手に騒ぎになれば学園にも迷惑が掛かるってなモンよ。ここは疾風と化して見つからないように移動するに限るぜ!

 

 

【派手に自分を売り込む】

【派手に喧嘩を売り込む】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

「あ、どうもどうも~! なんと僕、世界でたった二人の男性起動者の片割れだったりするんです!」

 

「ヒッ…!?」(被害者1)

 

「どうですこの男? ほら、この驚異的な身体能力!」(宇宙一の速さで反復横跳び披露する事によって派手さを演出)

 

「ひゃあぁああぁぁ!? ふ、増えたぁ!?」(被害者2)

 

「ほらほら、こんなにも分身できるのにまだ無所属! 専用機を持て余してるならチャンスですよ!」

 

「い、いえ、いいです、持て余してませんから!」(被害者3)

 

 

【まだ粘る】

【ネバネバになる】

 

 

 ネバネバって何だよ!

 言葉遊びが過ぎるぞコラァッ!! 怖くて【下】選べねぇよぉ! 物理的にネバネバになったらどうすんの!? 溶けちゃったらさすがの旋焚玖さんも死んじゃいますよ!?

 

「どうです、この肉体! 僕ほどになると全身をパンプアップさせる事など造作もないんですよ!」(一応派手さを演出)

 

「ひょわぁぁあぁぁぁ!? お、大きくなったぁ!?」(被害者4)

 

「全地球全生物統一無差別級チャンピオン! ライオン・トラ・象・シャチ・癌細胞だって敵わない男ですよ、コイツ!」

 

「オーガ!?」(刃牙愛読者)

 

「どうですか、今なら支配下登録いや育成選手契約でもにっこりサインしますよ!? お手軽ですよお手軽!」

 

「う、ウチは間に合ってますから!」(被害者5)

 

 ううむ。

 不本意ながら全力で売り込んでみたが、思ってた以上に拒否られてんな俺な。やっぱ品行方正って大事だわ。最初のニュースでアホみたいな声明文出してりゃ、そらこうなるわ(※ 第29話参照)

 

 どんなん出したんだっけ。

 変態糞土方…だっけ?(記憶曖昧)

 

「君がこれほどISに情熱を持つとは……正直驚きだ」

 

「む」

 

 何奴!?

 

「久しいな、主車君」

 

「あなたは……」

 

 

【日本政府のお偉いさんっぽい人!?】

【日本政府の研究者っぽい人!?】

 

 

 どっちもなんだよなぁ。

 

 この人は俺が初めてISを起動させたあの日から、今までずっとお世話になっている日本政府のお偉いさん兼研究者な人である。

 学園寮に住むことが許されない俺の家(シュプール)とか、アリーナ使い放題権限とかもこの人が携わってくれたおかげでスムーズにいったのである。故に、俺にとっては足を向けて寝れない御仁なのである!

 

 そんな御人に失礼仕る。

 

「日本政府のお偉いさんっぽい人!?」

 

「……ああ、変わったかと思ったが変わってなかったな」

 

「アッハイ。お久しぶりです、芹沢博士」

 

「うむ。君も元気そうで何よりだ」

 

 何だかんだ楽しくやってるからな。

 色々ハプニングは多いけど、裏を返せばそれだけ退屈してないって事だもんよ。

 

「しかし主車君は……」

 

 ん?

 なんか周りを見渡してるぞ。

 

「相変わらず評判が悪いな、HAHAHA!」

 

 なにわろてんねん(憤怒)

 いや笑うトコちゃうやろ! 無所属と言いつつ後々には日本の企業にお世話になるであろう未来のエース様にそんな態度を取っても宜しいんですかい!?

 

 言っとくけど俺は千冬さんと違って、そこまで義理固くないんだからね。待遇さえ良かったらアメリカ国籍だろうがホイホイ取っちまう男なんだぜ? それが嫌なら俺への扱いは、もっと慎重に行うんだな!

 

「まぁそれが君の処世術だというのは十分承知しているのだがね。入学後の奇天烈な行動もそうなのであろう?」(耳うちー)

 

 膳膳(サントリー)

 芹沢博士も千冬さんに似てきたな、変な勘違いっぷりが。まぁでも、ここはこの人の言葉に乗らないでか。ただの変人だと思われるよりよっぽどマシだ。

 

 

【そうかなぁ】

【そうかもぉ】

 

 

 濁すなよぉ!

 絶妙なトコでよぉ!

 

「……そうかなぁ」

 

「フッ……深慮遠謀な君ならそういうと思ったよ」

 

 アッハイ。

 意外と評価が高くて助かります。

 

 

 

 

 芹沢博士やモブ関係者の群れから離れて移動なう。そろそろ第一試合が始まる時間だが、俺は観客席に行くつもりはナッシング。俺には別の場所が用意されているのさ!

 

「おお、ふつめん! ふつめんではないか!」

 

 そういう君はボーデヴィッヒ。

 もう大衆の面前でのふつめん呼びも慣れたよ僕。

 

「アタシもいるよ~!」

 

 隣りには乱も居たでござる。

 アンタたち、ホントに仲いいわね(霊夢)

 

 そういやこの二人も今回のトーナメント戦には出ないんだった。おそらくこのまま観客席で一緒に観戦するんだろう。

 

「私はじゃじゃ馬の影響でISの損傷が激しいからな」

 

 VTシステムをもうじゃじゃ馬呼ばわりしてるんか。この分だとそう遠くないうちに、ボーデヴィッヒはそのじゃじゃ馬さんも乗りこなせちまうかもな。

 

「んで、乱は出なくていいのか? 別に調子が悪いとかじゃないんだろ?」

 

「個人戦なら出てたんだけどねぃ。タッグ戦となったら話は別だよ~」

 

「む、何故だ?」

 

 なるほど、チームワークの大切さってヤツか。乱は既にそこも理解しているってわけだ。これで俺達よりも年下だってんだから末恐ろしい娘だよ。

 

 これまで孤高で在り続けた弊害か、いまいちボーデヴィッヒはピンときていないらしい。ならばヒントを出すのが俺の役目よ。ヒントってのがミソね。そっちの方がなんか大物っぽいじゃん?(小物)

 

「ふたり組というのは1足す1だが、答えが2とは限らない」(ドヤァ)

 

「ふつめん…!」

 

 フッ……柄にもなくキマッちまったぜ。これにはボーデヴィッヒさんも尊敬の眼差し待ったなしですね。

 

「お前、算数もできないのか?」

 

 とか思ってたけど全然そんな事はなかったぜ……ちくせぅ。純情な感情による悪意なき言葉のナイフの切れ味って凄いよね。説明する気力が湧いてこないもん。

 

「乱、頼む」

 

「頼まれた! あのね、ラウラさん! 今の旋ちゃんの言葉の意図はね――」

 

「ふむ……ふむふむ……」

 

 乱の乱による俺のためのフォローが光り輝いている。ホントすまんね、IS学園でもお世話になります。

 

「なるほど、解ったぞふつめん! お前は連携力の事を言っていたんだな!」(以前の私なら鼻で笑っていただろうが、私を何度も負かしたふつめんとマブダチの乱が言うのであればそうなのだろう)

 

 

【そうかなぁ】

【そうかもぉ】

 

 

 断言させろや!

 変に濁す癖やめてよぉ!

 

「……そうかもぉ」

 

「ん? 何だお前その感じは……あ、拗ねているのか?」

 

 誰が拗ねるかアホ!

 子供みたいな扱いやめろ、乱の前なんだぞ!

 

「強い旋ちゃんもまだまだ幼いとこあるもんねぇ」(ママみ)

 

「ぐぬぬ」

 

 慈愛の目を向けてくれるな、乱よ。

 それは俺に効く(ハイポーション)

 

「ふふっ、でも旋ちゃんの言う通りだよ。タッグ戦は個々の強さより連携が勝負のカギを握るからね! アタシは転入してきて間もないし、誰かと組んでも絆を深めるには時間が足りないから今回はパスなのだ!」

 

 いいんじゃないか。

 トーナメント戦は別に今年だけじゃない。来年も再来年もあるだろうしな。俺も来年の今頃は、きっとたけしと共にブイブイいわせてるだろうよ、多分。

 

「あっ、そうだ! 旋ちゃんもアタシ達と一緒に観ようYO!!」

 

 誘ってくれて嬉しいYO!!

 しかし、悲しいかな。

 

「丁重にお断りする」

 

「えぇっ!? なんでなんで~?」

 

「観客席だと他の生徒がたくさんいるからな」

 

「……そうか、お前のしゅごさを解からぬ凡愚共の存在か」

 

 1年の奴らとは強制的に交流を持ち続けた結果、嬉しいことにだいぶ物怖じしなくなってくれたが、2年3年はまだまだ無理よ。俺が出てきた瞬間、黄色い悲鳴が轟くわい。

 

「ふむ……軟弱者の集いにふつめんが現れたら、あえんびえんと化す、か」

 

 亜鉛鼻炎…?

 俺も知らない四字熟語だと…(唖然)

 

 ドイツの故事成語かな?

 

「んーとんーと……あっ! それはきっと阿鼻叫喚とみた!」

 

「おお、それだそれ。さすがは乱だな!」

 

「えへへ、まぁね!」

 

 ほう……ボキャブラリー分野で俺の先を往くか乱よ。我、此処に言葉博士の二代目を見つけたり! お前になら免許皆伝を授けても良かろう!

 

「という訳で、俺は別の場所で観戦させてもらうよ」

 

「む……何処か心当たりがあるのか?」

 

「ああ、千冬さんがな」

 

 

『周りの反応が鬱陶しいなら、我々の居る観察室で観てもいいぞ?』

 

『それって教師しか入れない的な場所ですよね? いいんですか? 職権乱用とかに引っかかるんじゃ?』

 

『フッ……私はブリュンヒルデだからな!』(ドヤァ)

 

『アッハイ』

 

 

 ブリュンヒルデってしゅごい。

 というか地位にモノいわせて我を通す千冬さんがしゅごい。それでいて周りから反発がないのは、きっと千冬さんのドヤ顔が年齢不相応に可愛らしくて、反感の芽が根こそぎ刈り取られてしまうんだろう。

 

 やはり可愛いは正義か(真理)

 

「さすがは教官だな! 自分もいつかそんな感じで振る舞いたいぞ!」

 

「そのためにはラウラさんもブリュンヒルデにならなきゃね!」

 

「うむ! がんばるぞ~!」

 

 右腕を天高く伸ばして『オーッ!』ってしてるでござる。強さはまだまだ発展途中だが、可愛らしさは既にしっかり継承されているようだ。これには兄弟子っぽいポジションの旋焚玖さんもにっこりよ。

 

「ちなみに旋ちゃんはどのペアが優勝すると思う?」

 

 それはまた難しい質問だな。

 今日は個人戦じゃなくタッグ戦だからなぁ。順当にいけば専用機持ちが居るペアなんだろうが、だからこそ一般生徒なパートナーが肝になると思ふ。でも俺はそれぞれのペアを全部把握してるわけじゃないし。

 

「専用機持ちを軸に考えたら……シャルの兄弟が居るペアだろうな」

 

「ほう……奴は強いのか?」

 

「ああ、強いよ」

 

 オールレンジに対応できる武器装備に練度も高い。攻守にも欠点らしい欠点は見当たらないし、一撃必殺も持っている。総合的に見るなら、今回出場する代表候補生の中でも兄弟が頭一つ抜きん出ているんじゃないか? VTシステム無しのボーデヴィッヒより、ちょい上って感じかなぁ。

 

 まぁISに関しちゃ基本的にドンムブな俺の物差しで測ったところで、あんまり説得力はないけどな、HAHAHA!

 

「ふむ……機会があれば手合わせしたいものだ」

 

 アホみたいに喧嘩売らなければOK。

 ボーデヴィッヒも悪気はないんだが、絶妙に口下手だからなぁ。そういうトコも千冬さんに似てるし、また一歩ブリュンヒルデに近づいたなコイツ!

 

「大丈夫だよ、旋ちゃん! ラウラさんとクラスのみんなの仲はアタシが取り持つから!」

 

 むぁーかせた!

 孤高なんて流行らねぇんだよ! 

 時代は仲良しこよしだぜ!

 

 俺も出来ればもっとクラスメイトとお話したいぜ!(願望)

 

「ううむ……乱がそう言うなら甘んじて受けよう」

 

「それがいい。乱からしっかり道徳的観念を学ばれませい」

 

「分かった」

 

 強さは俺にまかせろー。

 

 

 

 

 さてさてとてとて。

 二人もアリーナに向かったし、俺も観察室とやらに向か……んぁ? いや……おいおい、ちょっと待て……何だアレ…?

 

 

その時、旋焚玖が感じたモノを一言で表すなら『特異』。

1人の女性が廊下の壁に背を預けて立っているのが視線に入っただけ。そして彼女の方は、別にこちらに顔を向けているわけでもない。しかし旋焚玖の本能が視られていると告げてくる。

 

 

 白衣を羽織っているし、どっかの研究員か…?

 横顔しか見えねぇけど、超が付くほどの美人さんだ。白衣を着た金髪美女のお姉さんとか、日本男児たるもの鼻の下を伸ばすのが礼儀の筈…!

 

 なのに伸びるのは背筋かよオイ。

 そもそも何なんだよ、アレの纏う雰囲気は…? 武術をやってる箒やヴィシュヌの雰囲気とは何か違う。何て言うか、禍々しさも加わってて……ああ、変態会長に似てるんだわ。

 

 ただ、コイツは……イカンでしょ。

 あの会長が可愛く見えるレベルとかヤヴァイでしょ。

 

 問題はどっちの意味で色濃くなってるか、だな。果たして変態度合いか、それとも強さ度合いか。最悪なのはどっちも……って待てオイ、それだとお前アレじゃねぇか! 

 

 キチガイ兎じゃねぇかフザけんな!

 あんなバケモンが世に2人といてたまるか!

 

「………?」

 

 あ、こっち向いた。

 さすがに視すぎたか。

 

 まぁいいけどね。

 もう奴がトンデモ人間だろうが、実は俺の杞憂でただの一般美女な研究員だろうが、関係ないのである。

 

 万全を期しまくる俺は引き返すぞ!

 触らぬ美女に祟りなしだ!

 

 

【おwばwさwんw おばさんwww】

【俺んとこ来ないか?】

 

 

 きゃんゆーますたべいべっそぉろぉぉぉお゛お゛お゛お゛ん!!

 






束:バケモンッ! バケモンッ!(クシャミ)

クロエ:Σ(゚д゚lll)


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