選択肢に抗えない   作:さいしん

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受け止めた結果、というお話。



第16話 青春白書

 

 

 

【篠ノ之は今、精神的に参っている。上手く言葉で誑かせばコイツは俺の女になる】

【外道な真似はしない。落ち込む篠ノ之に全力で発破をかけてこそ、真の男である】

 

 

 むぅ……これは分岐点なのかもしれない。篠ノ之が落ち込んでいるのは確かだし、選択肢がここまで強気で言ってくるくらいなんだから、篠ノ之が既に俺を少なからず良いと思ってくれているのも、マジだと捉えて良いのかもしれない。

 

 俺の女……彼女かぁ……。

 こんな美人な子が恋人になってくれたらさぁ……俺もようやくこの世界に来て良かったと、思えるかもしんないんだよなぁ……ちなみに、今まで一度たりとも思った事はない。

 

 確かに優しい両親と巡り会えたし、仲の良い友達だって出来た。それでも嫌な事の方が圧倒的に多すぎるし大きすぎてさ、まったく釣り合ってないんだよ。

 

 この世界に生まれ落ちてから今まで『悲』を感じたのが90%くらいだとして、『嬉』はせいぜい3%くらいなんだよ。3パーて、昔の消費税かお前。バランスおかしいだろ、誰だよ「希望と絶望は差し引きゼロ」とか言った奴、嘘ツいてんじゃねぇよ、差し引かれてねぇぞオイ。

 

 いや、今が差し引かれる時なのかもしれない。

 篠ノ之は美人だ、とても美人だ。こんないい女を隣りに侍らせたら、きっと『嬉』も3パーから急上昇してくれるだろう。上がった分『悲』も下がってくれるだろうし。

 

 ああ、もう、俺には上の選択肢しか見えない。下の選択肢? 知るか! 外道? ゲス? おおいに結構だね! 心で何を思おうがバレなきゃいいんだよ!

 

 よぉぉし、選ぶぞぉ……ふーっ、ふーっ……俺は上を選んでやるぞぉ……ふぅぅ……選んでやるんだぁ……今日から篠ノ之は俺のマイハ……ん?

 

 もう一度、改めて読んでみる。

 

 

【篠ノ之は今、精神的に参っている。上手く言葉で誑かせばコイツは俺の女になる】

 

 

 『上手く言葉で誑かせば』恋人になれるんだよな? え、じゃあさ、上手く言葉で誑かせられなかった場合、どうなんの…? 前にフラれた時みたいな、気まずくなるだけで済むの? 済まないよね? 絶対、済まないよね、このパターンって。

 

 しかも誰が言葉考えんの?

 俺じゃないんでしょ? 選択肢なんでしょ? 選択肢が自称上手い言葉を俺に言わせるだけなんでしょ? え、そんなん無理じゃね? だってコイツ…………すっげぇバカなんだぜ? 

 

 あっっっっ……ぶねぇぇぇ…!

 もうちょっとで暗黒面に堕ちるところだったぜぇぇぇ…! やっぱり人間、ゲスな行動はしちゃイカンよ。目先の誘惑に囚われて、真っ当な人間をヤメるには早すぎる。まだ中学生だもん、俺の人生はまだまだこれからよ。

 

 ここは大人しく下を選ぼう。

 外道はイカンよ外道は。しっかり発破を掛けてやろうぜ!

 

「頑張れ頑張れ出来る出来る! 絶対出来る! 頑張れ! もっとやれるって! やれる! 気持ちの問題だ! 頑張れ頑張れ! そこだ! そこで諦めるな! 積極的にポジティブに頑張れ! がんば「お前に何が分かるッ!!」……ッ…」

 

 やっぱりバカじゃないか(呆れ)

 そういうノリで発破を掛けて良い場面じゃないから。そりゃあ、篠ノ之も途中でキレるわ。

 

 言わされた身としては、すぐにでも頭を下げて謝りたいところなんだが……まだ拘束が解けないでいる。なんでぇ?

 

「お前にも話しただろう! 私がこれまでどんな目に遭ってきたか! この数年だけで私がどれだけ転校させられたと思う!? 友達なんか出来やしない! 朝も帰りも警護と称して黒塗りの車が待ち構えてるんだぞ! その度にどんな視線を浴びてきたか、お前になど分かるまいッ!」

 

 め、めっちゃヒートアップしてらっしゃる。俺の身体が動かないって事は、ここは見に回るって事なのか…? まだ動くべき時ではないという事でいいんだな?

 

「政府から何度も何度も同じ事を聞かれる毎日! 私が姉さんの妹ってだけでだ! 父さん達とも連絡は取れないし、私は一人なんだぞ!? 楽しいと思えた日なんてないッ、好きだった剣道も今じゃストレスの捌け口になって……いつからか剣筋もおかしくなって……でもヤメられなくて……!」

 

「……………………」

 

「私の苦しみなどッ、お前には分からない! 分かる訳がないんだッ!」

 

 むぅ……掛ける言葉が見つからん。

 

「……で、不幸自慢は終わったか?」

 

「……なんだと?」

 

 なんだと?

 この状況でどうして煽る必要があるんですか?

 

「傷一つなく生きている奴なんていやしない。誰一人な…! 誰だって嫌な事と向き合って、それでも必死に生きている…! お前みたいに拗ねたりせず、必死で生きてんだよ!」

 

 いやいや、まぁ言ってる事(言わされている事)は分かるけどさ。篠ノ之の場合、嫌な事の度合いが大きすぎるだろ。あれ……なんかさっきも似たような事、思ったような気が……。

 

「う、うるさいッ! お前に何が……お前なんかに何が…!」

 

「そうやって悲劇のヒロイン振って、いつまで現実から逃げる気だ?」

 

「黙れ…!」

 

 黙りたい(切望)

 

「そんな弱い心してっから、剣道もブレるんだよ」

 

「黙れッ!」

 

 黙れない(諦め)

 

「ハッ……もういいだろ? ゴチャゴチャ言葉で語るのは柄じゃねぇだろ、俺も……お前も…!」

 

 めちゃくちゃ語ってたじゃん! 

 あ、おいッ、何で拳構えんの!?

 

「こっからは武でかかって来い、篠ノ之…! お前の溜まってるモン、全部まとめて俺が受け止めてやるよ」

 

 あ、身体が動く。

 いやここで俺に投げんなよ! やるなら最後までお前がやれよ! 何でこっから俺に任せんの!? 丸投げしていい時と悪い時があるだろ!?

 

 アレかお前! わざと篠ノ之を怒らせて、煽って、暴れさせて、発散させて、最後は「どうだ? こういうのもたまには悪くはないだろ?」的なセリフで締めるつもりだっただろ!? 

 

 そういう青春の1ページみてぇなノリ、ほんとキツいんだけど!? 中学生日記かお前! 何で俺の嫌がる方向に全力なんだよ! 【全力で発破をかける】ってそういう意味じゃねぇだろ!?

 

「主車……お前、まさかわざと私を怒らせて…?」

 

「……!」

 

 理解力MAXな篠ノ之の知性に感謝…!

 圧倒的多謝…ッ!

 

「まぁな」

 

 やった…!

 篠ノ之が意図を汲んでくれているなら、わざわざ戦う必要はないっしょ! 身体が動くって素晴らしい! 俺も拳下ろしちゃうもんねー! わーい!

 

「やはり、か。お前は無意味に人を傷付ける言動をするような男ではないからな。途中からもしや、とは思っていた」

 

 篠ノ之からの評価が高くて良かった。低かったら、間違いなく向かって来られてたよな……ここぞという時の誠実な振る舞い、超大事!

 

「ありがとう、主車。あんなに叫んだのは久しぶりだ。私には叫べる相手も居なかったからな」

 

「気にするな」

 

 フフフ、しかも感謝までされる始末でござる。

 篠ノ之も笑みを見せてくれたし、これで良いんだよ。なぁぁにが「武でかかって来い」だっての。言葉だけで俺たちは十分なんだよ。

 

「ん? どうして構えを解いたのだ?」

 

「……んん?」

 

「私の鬱憤を受け止めてくれるのだろう?」

 

「……んんん?」

 

 そう言って、篠ノ之は肩から掛けている竹刀袋に手を伸ばす。ちょっと待って……ちょっと待ってよ篠ノ之さん。もうソレは終わったんじゃないの? そういう感じだったじゃん、今!

 

「ふふっ……こんな気分で剣を振るのはいつ振りだろう…!」

 

 あ、アカン…!

 めちゃくちゃ、その気になってらっしゃる! ここで変にグズッたりでもしたら、「さっきの言葉は嘘だったのか!?」とかまで言われかねん…!

 

 クソッ、くそぅッ!

 結局こうなんのかよ! ああぁぁぁッ! もうっッ! 闘ってやる、闘ってやるよ! 

 

「いいぜ、言い出したのは俺だし。遠慮せずかかってきな…!」

 

 竹刀くらいなら無手のままでも何とかいけるだろ。手加減は出来ねぇけどな、全国大会優勝者に手ェ抜く余裕ねぇわ…!

 

「ああ、言われずとも…!」

 

 やる気満々な篠ノ之は、袋から取り出した得物を構えてみせた。

 

「……篠ノ之さん」

 

「むっ、なんだ…?」

 

「貴女がお持ちになられているソレは何でしょう?」

 

「木刀だが?」

 

 や、やる気じゃねぇ、コイツ俺を殺る気だ! 

 さも当たり前のように言いやがって! 何でお前が首傾げてんの!? 首傾げんのは俺だろこの場合! 

 

「中学に上がってから木刀に替えたんだ。それでもお前との差は縮まってる気はしない。だからこそ、本気で挑める…!」

 

 そこまでの評価は求めてない。

 性格だけを評価してくれよぉ! 武術的な方面で謎の信頼ヤメてくれよぉ! 木刀で殴られたら痛いだろぉ! 骨だって折れちゃうかもしんないだろぉ!

 

「篠ノ之流柔術の肝は武芸百般、だったな? 私はこの通り、コレを使わせてもらうんだ。お前も遠慮せず、武器を使え」

 

 当たり前じゃアホ!

 木刀女に誰が遠慮するか! 

 こうなりゃ、俺もマジでいかせてもらうかんな!

 

「そう言う事なら……」

 

 七色の道具が入ってるポケットから俺も得物を出す。

 

「俺はコレを使わせてもらう」

 

「それは……?」

 

「メリケン。カイザーナックルとも言うか。見たまんま、金属品だ。これで殴られたら痛ェじゃ済まねぇぞ? いいよな、そっちも木刀なんだしよ?」

 

 ドンキで買った。378円で。

 金属品だなんて嘘だ、中身はプラスチックのおもちゃだ。安いしハッタリ用で買っただけだし……コレで篠ノ之もビビッてくれねぇたら儲けモンなんだが……。

 

「……ッ……望むところだ…!」

 

 望まれちゃった。

 もう後には引けねぇ…!

 

 篠ノ之が構え、改めて俺も構えてみせた。

 

 

 

 

 

 

「……む…」

 

 主車の利き手は右の筈……それなのに何故、左拳にソレをハメる…? 普通は逆じゃないのか…? もしや、距離を縮める為の工夫…?

 

 メリケンとやらが攻撃力を高めたところで、木刀を持つ私の方が遥かに間合いは広い…! それに左構えの左拳にハメたからといって、そこまで間合いが縮まるとは思えん。

 

「どうした、篠ノ之…? 来ないのか?」

 

 既に主車は私の間合いに入っている。

 それは主車だって分かっている筈だ。それなのにコイツはまるで、自分の左手を打ってみろと言わんばかりだ。

 

……誘っているのか?

 何を狙っているのかは知らんがその誘い、乗ってやる…!

 

「はぁぁぁッ!」

 

 前へと進むと同時に左手めがけて振り下ろす。既のところで、主車の左手が後ろへ引かれる。やはりか…!

 そうするだろうと読んでいた。私はお前が後ろに手を引く事を読んでいた! 私が何の為に前へと進んだと思っている? 

 

 小手の間合いを面まで広げる為…! 

 今度は外さない、勝負だ主車ッ!

 

 

 

 

 

 

 ひぃぃぃぃッ!

 そんな気はしてたけど、マジで脳天に振り下ろしてきた!? こんなの喰らったら頭割れちゃう! マジで逝っちまうぅッ!

 

「……ッ!」

 

 振り下ろされた木刀に向かって、左拳を繰り出す。メリケンをハメたのは防御の為だッ…!

 

「なッ!?」

 

「~~~~~~ッ!!」

 

 あばばばばッ!

 衝撃がメリケン(プラスチック製)を通って、俺の身体に伝ってくるぅぅッ! 電気が走ったみてぇにビリビリするぅぅぅ! でもここで止まれねぇッ!

 

「くぅッ…!」

 

 篠ノ之が後ろに下がった!? 

 チッ、いい勘してやがる! だが俺も止まれねぇ! 痺れる身体で下がる篠ノ之へと踏み込む…! 

 

 こんな奇襲2度は通じねぇッ、必ず一合で決めるッ! 

 狙うは篠ノ之の顎…ッ!

 

「―――ッ!!」

 

「~~ッ!?」

 

 躱された…ッ!? 

 半歩足りなかったか、手応えらしいモンがない……くそっ、ミスッたか…! それに……やっぱり378円ならこんなモンだよな。

 

 メリケンにヒビが入っていた。

 これじゃあもう、木刀は防げねぇや。もともと雀の涙ほどだったし、こうなるとは思っていた。

 だからこそ、一合で終わらせたかった……顎を狙ったのも脳を揺らしちまうつもりだったんだが、当てが外れちまった。

 

 どうする…?

 もう武器らしいモンは持ってねぇぞ。

 

「……あ、危なかった…! まさかその武器を攻撃でなく受けに使うなんてな。だが、私は避け……ッ!?」

 

 態勢を整えようとしたところで、篠ノ之の腰がガクッと落ちた。

 

「……?」

 

「くっ、な、どうして…! 足に力が入らない…ッ!」

 

 膝を突いたまま、立とうと藻掻くが、それでもやはり立てないでいる。

 

「……!」

 

 どうやら、良い感じに掠ってくれていたか。直撃させるよりも、思いがけず篠ノ之の脳を揺らせたらしい……ら、ラッキーすぎる…。

 

「まさか主車…! お前はこれを狙って…!?」

 

「…………………」

 

 どうしよう。

 たまたまだし、ここは素直にマグレだって言っておいた方が、俺への過信も少しは下がってくれるかな。

 

「そうなんだな!? 最初からお前はそこまで見越していたんだな!?」

 

 ぐっ……そんな目をキラキラさせて言うなよ! 違うって言える雰囲気じゃなくなっちゃったじゃないか! 正直に言ったらお前ガッカリしちゃうだろぉ!? いや、コイツの事だ、「隠しても私には分かる」とか言って勘違いを余計に増幅しかねん…!

 

「……まぁな」

 

「や、やはりか! くっ……どこまで高みに居るのだ、お前という男は!」

 

 負けたのに何やら嬉しそうに悔しがる篠ノ之さんの姿が見れて、僕もこれで良かったんだと思いました。

 

 

【フッ……これからは俺に勝つのを目標に剣を振るといい】

【お前が雑魚すぎるんだよ、バーカバーカ!】

 

 

 バカはお前だバカ!

 煽ったらまた最初からやり直す羽目になっちまうだろが! エンドレスループほど怖いもんはないからな!? それならまだ上の方がマシだ、もう勘違いされてんだし、このまま道を示す的なキャラでいこう!

 

「フッ……これからは俺に勝つのを目標に剣を振るといい」

 

「お前を?」

 

「ああ、俺を超えてみろ。明確な目標があれば、篠ノ之を取り巻く環境にも惑わされないだろう? お前の心が弱いなんて思わねぇよ。篠ノ之の剣道はもう曇ったりはしないさ」

 

「主車……」

 

 どうなんだオラァッ!

 グッときたかコラァッ!

 こういうの自分で考えて言うのって、すっげぇ恥ずかしいんだぞ! だからハイって言えこのヤロウ! むしろ感涙しろこのヤロウ!

 

「そう、だな……これからは主車を目標に……」

 

 うむうむ。

 今日みたいな事がまたあるかもしれないし、篠ノ之の場合はマジで強くなっておいて損はないと思うぞ。俺はどうせ強制だし。

 

「お前を想って鍛錬しようと思う…」(ボソッ)

 

「……………………」

 

 いや聞こえてるんだけど。

 なんかニュアンス変わってない?

 なんでわざわざ言い直すの? なんで言い直した時だけ声が小さくなるの? 俺はそれを聞いてどうすればいいんですか? 「え、なんだって?」って聞き返せばいいんですか?

 

 こういう時こそさぁ、選択肢が出てくれよなぁ。こういう時の対処法って、いまいち俺だけじゃ分かんないだよ。

 

 

【お前もしかして、アイツの事が好きなのか?(青春)】

【お前もしかして、俺の事が好きなのか?(純愛)】

 

 

 困らせろとは言っていない(真顔)

 

 下なんか選べるか!

 何が純愛だ、ウソつけ! 上げて落とされるのはもう……色々キツいんだよ! これでまた「違う」とか言われたどうすんだ!? 気まずい上に、俺は2度同じ女にフラれる事になるんだぞ!

 

 意味不明だが上を選ぼう。

 

「お前もしかして、アイツの事が好きなのか?」

 

「す、好き!?………待て、アイツだと…? おいアイツって誰だ?」

 

 それは俺も聞きたいけどスルーだスルー。

 どうせ選択肢に深い意味なんてないし、いつものアホアホなノリに決まってる。いちいち気にしてちゃあ、身が持たんわ。

 

「気にするな。それよりそろそろ此処を出よう」

 

「う、うむ……」(アイツというのはまさか……私が以前、主車に言った「私の好きな人」の事を言っているんじゃ……だ、だけど今の私は―――ッ…!)

 

「篠ノ之…? 出ないのか?」

 

「……いや、出るよ」(私は何を言おうとした……わざわざコイツの想いを断った私が今更……そんな虫のいい事なんて言える訳がない、恥を知れ篠ノ之箒…!)

 

 え、何でこの子自分にビンタしてんの?

 ああ、なるほど。まだ外にアイツらが居る可能性もゼロじゃないからな。確かに最後まで気を抜くモンじゃねぇや。

 

 

.

...

......

 

 

 危惧していた事も起こらず、無事俺たちは篠ノ之の身辺警護の者に保護された。篠ノ之が「勝手に出て行ってすいませんでした」と頭を下げ、向こうも向こうでめちゃくちゃ頭を下げて謝っていた。

 

 まぁ俺は別に保護なんちゃらの対象じゃないから、華麗にスルーされたけど。この感じは、どうやらここでお開きって事らしい。

 

「じゃあな。そろそろ俺も帰るわ」

 

「ああ……私達はまた、会えるかな?」

 

「そうだな…」

 

 どうなんだろうな。

 俺はまだ高校は決まってないが、篠ノ之はIS学園に進学する事が既に決まっているらしい。これで同じ高校って可能性は潰えた。だってIS学園って女子高だもん。俺が行ったら捕まっちまうな、HAHAHA!

 

「いつかまた会えるさ。その時はガキの頃みたいに一夏と3人で遊ぼうぜ。だからそんな泣きそうな顔してんなよ」

 

「だ、誰が泣きそうな顔をしているか!」

 

 してるんだよなぁ。

 まぁ、それ以上イジるつもりはないけど。

 

「またな、篠ノ之」

 

「ああ、またな……せ、旋焚玖…」

 

「あ? 今、お前……」

 

 俺が何か言うより早く、身辺警護の奴に連れられて、篠ノ之は行ってしまった。爆弾投下して行きやがった…! 何でよりによって、このタイミングで初めて名前で呼ぶんだ…! 

 

 思慮深い男に見えて、実は俺は単純なんだぞ! 

 そんな事されたら簡単に惚れちゃうだろ!

 それくらい単純なんだよぉ!

 

 でも、純情な感情を弄ばれた以外は何も起こらず篠ノ之と別れられた事に対して、俺は少なからずホッとしていた。

 

 篠ノ之へのパンツ口撃がいつ来るか、冷や冷やしてたんだ。会った時にはなかったし、別れ際には必ず来ると思っていたんだが……俺が備えていたせいかな、そこまで選択肢も単純じゃないって事か……アホには変わりないけど。

 

 もう此処に居ても仕方ない。

 お土産でも買って帰ろう!

 

 

【友との再会は素晴らしい。鈴にも会いに泳いで行こう!】

【友との再会は素晴らしい。鈴にも会いに飛行機で行こう!】

 

 

 やっぱりアホじゃないか!

 

 





鈴にも会いに行くのか(困惑)

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