選択肢に抗えない   作:さいしん

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3人はどういう集まりなんだっけ?というお話。



第37話 初日の夜はあたたかい

 

 

 

 これから3年間、俺がお世話になる部屋の設備等々の説明を終えた千冬さんは、会議があるとかで学園に戻っていった。1人になった俺は改めて部屋の探索をする。千冬さんの説明を受けている時も思ったが、夢の女子寮生活は叶わなかったとしても、これはこれで良いと本心から思えるようになっていた。

 

「普通のベッドに普通のテーブル。普通のキッチンに普通の家具。なんだよ、ちゃんと一式揃えてくれてんだな」

 

 家具0も覚悟していたが、どうやら俺に人権はまだ残っていたらしい。何より嬉しいのは風呂がちゃんと設置されてあるって事だ。しかもバスタブ付きだぜ? アレかな、何も無かったら俺が暴れだすとか思われてたりして…? フフフ、そんな事でいちいち暴れませんよ、僕の意思はね!

 

 部屋の広さも十分、というか自宅の俺の部屋より余裕で広い。1人じゃ持て余すスペースだ。ぐふふ、学園ぐるみで俺に彼女を作れと。お泊りしちゃう関係な子をたくさん作れと。そう言っている訳だね、うひひ。

 

 しかし腹減った。

 時計を見れば、もういい時間じゃないか。

 

 俺はテーブルの上に置いてあるメニューに手を伸ばす。

 

 千冬さんは、食事に関しては寮の食堂を利用しても良い、と言ってくれたが……なぁ? 行きにくさMAXだろ。寮に住んでほしくない男ナンバーワンの俺が、寮に出現したらイカンでしょ。流石の俺でもこればっかりは「住んではないからセーフ」ツって、トンチを利かすつもりはない。女から嫌な目で見られたくないし。

 

 ってな訳で食堂に電話だ。

 なんでも寮内食堂はデリバリーサービスもやってるんだとか。テイクアウトだって出来るらしい。食堂で食べずに部屋で静かに食べたい子だっているし、そういう子たちの為の配慮だろう。良かった、俺もそれのおかげで救われるわ。

 

「……あ、もしもし? デリバリー頼みたいんですけど」

 

『ああ、主車くんね? 話は既に聞いてるよ』

 

 おお、スムーズだな。

 こういうのって地味に嬉しい。

 

「えっと……ミックスグリル&ハンバーグセットとフライドポテトとコーラで」

 

『……はい、注文承ったよ。アンタの部屋は少し距離があるから、だいたい15分くらい見てくれると助かるよ』

 

「はーい」

 

 んじゃ、待ってる間も有効活用しないとな。

 さっそく、カバンからアレを取り出す。わざわざ自宅から持ってきたアレだ。漢の必需品! とても分厚く太い本。太ぉい本! 全部持ってくるのは量的に無理だったから、厳選に厳選を重ねた俺のお気に入りだけだ! 1人暮らしだから気兼ねなく本棚に飾れるぜ!

 

 刮目せよ!

 漢らしく、俺は堂々と飾ってやるぜ! 篠ノ之流柔術皆伝書をな! 厳選した結果、全巻持ってくるしかなかったんだぜ! とても重かったし量がハンパなかったんだぜ。そのせいでエロ本持ってこれなかったんだぜ……ちくせぅ。

 

 

 

 

 

 

 一通り荷物の整理が終わったところで、部屋の扉が叩かれる。い~ぃタイミングだ。音もいい。

 

「はーい」

 

「よっ、旋焚玖!」

 

「……えと、その…来てしまった」

 

 外に立っていたのは食堂のおばちゃんではなく、一夏と篠ノ之の2人だった。

 

「どうしたんだ、お前ら」

 

「たまたま食堂で注文してる時に、旋焚玖の話を聞いてな。俺たちがお前の商品を預かってきたんだ」

 

「寮内食堂はテイクアウトも可能だから……その、私も食堂で食べるより、主車と3人で食べる方が落ち着くから…なんというか…まぁ、来てしまったんだ」

 

 2人共、わざわざ1人寂しく飯をカッ喰らう俺を心配して来てくれたのか。まったく……いいダチを持ったぜ、マジで。

 

「ありがとよ、一夏、篠ノ之。ほら、上がれよ。此処が俺の城だぜ」

 

 いつまでも玄関で話している必要もなし。

 俺は2人を歓迎した。

 

「おぉ…! めちゃくちゃ広いじゃないか!」

 

「……これは…思っていたより、ちゃんと設備が整っているのだな。良かった……」

 

 食卓についてからもキョロキョロしまくる一夏と、どこか安堵の表情をみせる篠ノ之。いやいや、どんな部屋を想像してたんだよ。もしかしてタコ部屋とか思われてたんかな。

 

「いやぁ、良かったな箒!」

 

「な、なにがだ?」

 

「お前、旋焚玖の事めちゃくちゃ心配してただろ」

 

 え、そうなの?

 美人な女の子に心配されるとか、超嬉しいんだけど。

 

「なぁっ……! そ、そんな事ない!」(ぬあぁぁ……ここで当然だ、と言えないのが私なんだぁ……)

 

 そんな事ないのかぁ。

 

「嘘つけよ。お前、山田先生に食って掛かってたろ」

 

「そ、それは…!」(これはもしや…! 私への好感度が上がる予感…! い、いいぞ一夏! もっと言ってくれ! 私だけじゃアピールできないかわりに、お前が私をアピールするんだ!)

 

「俺が山田先生に寮を案内されている時に箒と会ったんだ。そこで旋焚玖だけ寮には住めない事を箒も知ってな。『IS学園はそんなあからさまな差別をするんですか!?』って声を荒げただろ」

 

「篠ノ之……お前…」

 

「と、当然の事を言ったまでだ!」(ふぉぉぉッ! ありがとう一夏! 私は最高の友を持ったよ…!)

 

 俺の中で篠ノ之株が急上昇。

 篠ノ之が反論したところで何も変わらない。そんな事は分かっているし、どうでもいいんだ。彼女の気持ちこそが嬉しいんじゃないか。篠ノ之に対して、何か出来る事はないかな。

 

 

【熱い抱擁で感謝の気持ちを伝える。抱擁の相手はもちろん篠ノ之】

【熱い抱擁で感謝の気持ちを伝える。抱擁の相手は虚を突いて一夏】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 肉体的じゃねぇよバカ!

 調子ブッこいて抱擁なんかカマしてみろや! せっかく、ちょっと好感度高いかも?みたいな感じになってきてんのに、一気に落ちるだろぉ! 落ちちゃうだろぉ! 一度落ちた好感度をまた上げるキツさを見くびってんじゃねぇぞ!

 

「篠ノ之ォ!!」

 

「え、俺一夏だけど」

 

「うるせぇ! じっとしてろお前!!」

 

「ちょっ、なんだよ旋焚玖!? うわぁ!?」

 

「お、おい、主車…!?」(な、なにを!?)

 

 俺からの熱い抱擁、受け取れ篠ノ之ォッ!!(相手は一夏)

 

「ありがとよ、篠ノ之! お前のその言葉だけで俺は救われる!」

 

「い、いや……私は別に…」(何故か旋焚玖が一夏を抱きしめている。ぎゅっと抱きしめている。もし2人きりだったら、旋焚玖は照れずに私を抱きしめてくれただろうか……なんてな。私と旋焚玖の仲はまだ全然進展していないのだから……まずは一夏を追い越さねば抱擁も受けられないという事か…!)

 

 

この時篠ノ之箒、一夏を恋のライバルであると認識するに至る。

 

 

 な、なんか篠ノ之さん、拳を握りしめていやしませんか? いや、アレだぞ? 俺、そっちの趣味はないからな!? 俺こう見えて女の子大好きだから! 篠ノ之とかもう、超好きだから!

 

 言えない葛藤の代わりに、抱きしめた一夏の背中をバシバシ叩く。

 バッシバシ叩く! クソつまんねぇ骨格しやがってこのヤロウ!! 女と違ってゴツゴツじゃねぇか! まるで嬉しくねぇよ! 

 

「そ、そうか! 箒に抱き付いたらセクハラになっちまうもんな! そこで俺を通して感謝の気持ち(抱擁)を箒に伝えてるんだな!」

 

 そうだよチクショウ!

 今夜も一夏のフォローが光るぜぇ! 光りまくってるぜぇ! 

 

 ぬわぁぁぁんッ! 篠ノ之に抱き付いてみたいよぉ! ぜったい柔らかいし、良いにほひ(匂い)するに決まってるんだもんよぉ! 

 

「よし、箒! 俺はどうすればいい!?」

 

「な、なにがだ?」

 

「今の俺は旋焚玖にとっての箒なんだぜ? お前の代わりに俺が旋焚玖に何でもしてやるよ!」

 

 やめろバカ!

 じっとしてろバカ!

 

「そ、そんな事を言われても分かるか!」(わ、私だったら…! 私だったら……うぅ~…私も旋焚玖に抱きしめられてみたい……でも今日はいいんだ。多分、恥ずかしくて突き飛ばしてしまうだろうしな)

 

「何もないのか? ならとりあえず、俺からも抱きしめ返すぜ!」

 

 ぎゅっ♥って擬音が聞こえました。

 

「ぎゃぁぁぁぁッ!! やめろこのヤロウ! 俺にそんな趣味はねェッ!!」

 

「ハハハ! 俺たち、ズッ友だよなぁ!」

 

「ズッ友だから放せコラァッ!!」

 

「なんだよぅ♪ お前が放せばいいだけだろぉ♪」

 

 謎の上機嫌やめろコラァッ!!

 俺からは放せないんだよぉ!(強制力) お前が放れてくれねぇと放れられないだろぉ!

 

「ふふ……まったくお前らは……本当に変わってないな」(またこうやって笑える日が来るなんて思っていなかった。行きたくもない決められた進学に曇る心。それでも今、私が笑顔になれるのは、お前達が居てくれるからだ、旋焚玖、一夏…)

 

 

 不安と緊張でいっぱいだった入学初日。

 だが少年たちは、孤独じゃないと気付かされる。

 

 今夜だけはISの事を忘れよう。

 3人はその後も思い出話に華を咲かせ、賑やかな夜を楽しむのだった。

 

 





優しい世界(*´ω`*)
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