選択肢に抗えない   作:さいしん

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絶対壁壊すマン、というお話。



第39話 壁も溝も不要

 

 

 

「……という訳で、ISにも意識に似たようなものがあります。ですので、ISは道具として扱うのではなく、パートナーとして認識する事が大事なのです」

 

 引き続きISの授業の真っ最中である。

 クラスの女子連中はどうか知らんが、少なくとも俺と一夏はISに関して言えば、知識もそんなに持っていないズブの素人だ。故に山田先生の基礎の基礎からしっかり丁寧に…的な授業の進行具合は普通にありがたい。闇雲にひたすら参考書を読むのと、人から教わるのとじゃ全然違うって事だな。

 

「ところで織斑、お前のISだが準備まで時間が掛かる」

 

「へ?」

 

「予備機がない。だから少し待て。学園で専用機を用意するそうだ」

 

「専用機……?」

 

 首を傾げる一夏に、千冬さんが眉を潜める。

 バカ、一夏…! 専用機の部分は一緒に勉強したぞ! 俺でも何となく覚えてるわ! っていうか忘れててもそこは覚えてるフリしとけって! 千冬さんとか、バカ正直に首傾げちゃイカン相手だろうが!

 

「……貴様、予習してきた筈だよなァ?」

 

「ひぇっ……え、えっと、えっと…!」(た、助けてくれ旋焚玖! 専用機ってなんだっけ!? 薄らとしか覚えてねぇから説明できねぇよ!)

 

 あのアホアホマン…!

 せめて眼だけ向けろよ! 顔ごと俺の方見てんじゃねぇよ! 思いきり千冬さんもこっち見てきてんじゃねぇか! 

 

「…………………」

 

 いや千冬さん、こっち向いてる一夏越しに俺を見てくるのヤメてもらえません!? 一夏のスタンドみたいで笑いそうになるだろ! 

 

 あーもう、黙ってるって事は伝えていいんだな!?

 

(一言だけなら許可してやる)

 

 ひぇっ……俺の心を読まないでくださいよぅ。

 しかし教えていいのか。千冬さんって厳しいのか甘いのか、よく分からん時があるな。まぁ許可も下りたし、それなら遠慮なく教えてやるとしよう。

 

(なんか凄い奴だけが乗れる凄いヤツだ!)

 

(な、なるほど…! 助かったぜ旋焚玖!)

 

 俺だって全部を覚えてる訳じゃないからアレだけど、だいたいこんな感じで合ってると思う。後はそれを高校生らしい言葉で補えば十分だろ。

 

「なんか凄い奴だけが乗れる凄いヤツだ!」

 

「小学生か!」

 

「へぶっ!?」

 

 完コピしてんじゃねぇよバカ!

 俺への信頼度マックスかお前! 

 

 いやいや、何でそのまま言ってイケると思ったんだお前。そこが聞きたいわ。しかもちょっと胸張って言ったろ。そりゃ千冬さんもドツくわ。

 

「……教科書の6ページを音読しろ、織斑」

 

「は、はい……えっと…『現在世界中にあるIS467機、その全てのコアは篠ノ之博士が作成したもので―――』」

 

 ISの心臓部であるコアってヤツは、篠ノ之の姉ちゃんしか作れないと。んで、全世界でもISは467機しかなくて、各国家やら企業やらにコアが割り振られて、研究などがされているらしい。

 

「本来なら、IS専用機は国家あるいは企業に所属する人間しか与えられない。が、お前の場合は状況が状況なので、データ収集を目的として専用機が用意される事になったという訳だ。理解できたな?」

 

「な、なんとなく……じゃあ、旋焚玖も専用機が貰えるって事だよな?」

 

「あー…いや…」

 

 一夏の言葉に千冬さんの表情が曇る。

 ハハッ、俺が貰える訳ないんだよなぁ。ちなみにその話はもう千冬さんから聞いているから、別に今更落ち込んだりはしないけどね。

 

 データ収集なら1人で事足りる。

 なら他に需要があるとすれば、企業のアピールがメインになってくるのだが。いわゆるスポンサーって言えばいいのか。

 ただまぁ……なんだ。俺が1ヶ月前に受けたISの試験結果(指をクイクイって動かしたアレ)を踏まえて、ISに携わる全企業が今回は俺へのスポンサー打診を見送ったらしい。

 

 大変賢明な判断であり、先見の明があると言えよう(自虐心)

 

「主車には用意されていない」

 

「な、何でだよ!? ま、まさか…! また寄ってたかって旋焚玖を傷つける気かよ!?」

 

 き、傷ついてねぇし! 

 いやホント全然ヘーキだし。

 ヘコんでねぇし。だって俺強ェもん。

 

 むしろそういう表現されると、意識しちゃって泣きそうになっちゃうからヤメてくれ。いいのかよ? 15歳の男の子が女子校で「うぇぇ~んッ!」って泣いちゃうぞ? ほら泣くぞ? 俺に泣いてほしくなかったら、そういう風には言わないことだな!

 

 

【ここで一夏に泣きついたら念願の黄色い声をゲットだぜ!】

【ここで多くは語るまい。お茶をにごす感じでいこう】

 

 

 そういう黄色い声は求めてねぇよバカ! 俺が欲しいのは「しゅてきぃぃぃッ♥」とか「カッコいぃぃぃんッ♥」とか「しゅきぃぃぃぃッ♥」みたいなキャーキャーなんだよ! 「うほっ♥ いい抱擁ォ…♥」みたいなキャーキャーとか寒気しかしねぇわ!

 

「落ち着け一夏。俺ほどの男(IS適正値:E)になると専用機なんざ不要だ。既に千冬さんにも言ってある」

 

 まさにどっちの意味にも取れる風な言い方だ。どう受け取るかは個人の好きにしてくれ。昨日の夜はISの話をしなかったし、後で一夏と篠ノ之には、ちゃんと俺がIS技量ウンチだって事は言っておこう。

 

「そ、そうなのか? なら良いけどよ」

 

 どうやら納得してくれたようだ。

 まぁアレだ。今の俺が専用機を与えられたところで、何の意味もないからな。まずは人並み程度に動かせるようになって、適正値もCくらいまで上がったら企業も再び名乗り出るらしい。そう政府のおっちゃんが言ってた。

 

「あの、先生。篠ノ之さんって、もしかして篠ノ之博士の関係者なんでしょうか……?」

 

 女子の1人がおずおずと千冬さんに質問する。話題が切り替わった瞬間である。まぁ、篠ノ之なんて珍しい苗字だし、ここはIS学園だしな。バレない方がおかしいレベルだ。

 

 千冬さんが篠ノ之をチラッと見る。俺は真後ろの席だから、今コイツがどんな表情を浮かべているのかまでは流石に分からない。

 

「はぁ……いずれ分かる事だしな。確かに篠ノ之はアイツの妹だ」

 

 遅いか早いかの違いだし、篠ノ之も偽名を用いていないって事はそういう事なのだろう。どうせ知られるのなら、入学したてのこのタイミングが案外ベストなのかもしれない。

 

「ええええーっ! しゅ、しゅごいぃぃッ!! このクラス有名人の身内が2人も居るよ!」

 

「ねぇねぇっ! 篠ノ之博士ってどんな人!? やっぱり天才なの!?」

 

「篠ノ之さんも天才だったり!? 今度ISの操縦教えて教えて!」

 

 授業中にもかかわらず、篠ノ之の席にわらわら女子が群がる。篠ノ之の席って事は、つまり俺の席も少なからず巻き込まれる訳で。しかし一夏だけでなく、篠ノ之まで女子にキャーキャー言われている訳で。

 

 それはとっても羨ましいかなぁって。

 俺だけ、なんか疎外感喰らうかなぁって……ん…? 篠ノ之の後ろ姿がプルプル震えている。これは……キレだす予感がプンプンだ…! 

 

 篠ノ之からしたら、あのキチガイうさぎのせいで、人生狂わされちまったと言っても過言じゃないしな。俺が篠ノ之の立場だったら普通にブッコロ案件だわ。

 

 しかしこのまま放っておくと、間違いなく篠ノ之は声を荒げて、クラスに気まずい雰囲気が流れるだろう。もしかしたら腫れ物扱いされてしまうかもしれない。

 

 

【自分も篠ノ之に群がる1人でありたい】

【今の心情を素直にブチ撒ける】

 

 

 キレるツってんだろ! 何で俺まで一緒に群がんの!? バカじゃないの!? そんな事したら篠ノ之に嫌われるだろバカ! 篠ノ之に嫌われるくらいなら俺は【下】を選び……たくないよぉ! 

 

 今の心情ってアレだろぉ!? キャーキャー言われて羨ましいなぁってヤツの事を指してんだろぉ!? 

 嫌だよ言いたくないよ! キモいよ! 絶対キモがられるよ! 怖い上にキモいとか、そんなのダメだよ! もうボッチ商店街の入口まで来ちゃってるから! それ言っちゃったら中へ歓迎されちゃうよぉ!

 

 篠ノ之に嫌われるか、クラスの皆にキモがられるか……これは究極の二択だぜぇ……久々に背筋が凍るぜぇ…………ん…? いや、待てよ…?

 

 

 その時、旋焚玖に電流走る。

 

 

「しゅごいぃぃぃぃッ!!」(野太い声)

 

「「「!!?」」」

 

 篠ノ之がキレるよりも早く、バーンと机を叩き、力強くそう叫ぶ。誰に向かって? 驚いてこっちを見てる、篠ノ之に群がったモブ女共にだよぉッ!! 散れオラッ!! 俺に群がらせろコラァッ!! 

 

 どかねぇってんなら―――ッ!!

 

「しゅごいよなぁぁぁぁぁッ!?」(重低音)

 

「「「 ひぃぃッ!? 」」」

 

 迫り来る謎の威圧感を前にし、蜘蛛の子を散らすように席に駆け戻る少女たち。ごめんよー、ちょっとだけ覇気っちゃったよー(強者の狂言)

 

 呆然とする篠ノ之の肩をポンと叩いて、再び席に座る。はい、俺の群がりこれで完了! キモがられるくらいなら怖がられよう。篠ノ之に嫌われるくらいならもっと怖がられよう! それが俺の判断だ…!

 

「……ほう」(斬新な手で篠ノ之を救ってみせたか。昨日のオルコットの件といい、旋焚玖の優しさは東洋一の神秘だな)

 

「主車……」(わ、私を気遣ってくれたのか…? 旋焚玖が何もしなかったら、私は感情のままに声を荒げていただろう。『あの人は関係ない!』って。きっとそれは私とクラスの間に不和を生じさせるモノだったに違いない。それに気付いて……?)

 

 千冬さんと篠ノ之から、何やら熱い視線を感じる。これはもしや期待してもよろしいのかもしれない。俺の意図に気付いてくれた可能性…!

 

「ンンッ…! 私と篠ノ之博士は確かに姉妹だが、それだけの関係だ。もう何年も会ってないし、ISに関しては私も皆と同じ素人に過ぎない。出来れば、その……私の事はただの一クラスメイトとして…その……接してほしい…」

 

 だんだん篠ノ之の声は小さくなっていった。それでも俺の耳には、はっきり聞こえたぜ。最後まで言い切るのに、篠ノ之も相当な勇気を振り絞った筈だ。

 

 彼女の勇気に報いるにはどうすればいい? あと、俺のさっきのアホ言動を皆の記憶から薄めるにはどうすればいい?

 

 この流れに乗ればいい…!

 先導するのはこの俺だ…!

 

「当たり前だよなぁ? なぁ、一夏よ」

 

「おう! 言われるまでもないぜ!」

 

「なぁ、布仏よ」

 

「モチのロンだよ~」

 

「なぁ、オルコットよ」

 

「わ、わたくしにまで振りますの? まぁ、答えは当然イエスですけれど。優秀な身内が居るから何だと言うのです? そんなコトでわたくしは、接し方をいちいち変えたりしませんわ」

 

 これはイギリスの誇れるエリート。

 やっぱりイギリス人女性って淑女なんだよね。特にオルコットは美人だし気品もあるし、美人だし代表候補生として相応しい人格者だよね。

 

「権威に媚びる下賎な輩など、私のクラスには居ない。そうだろう?」

 

「「「 は、はいッ! 」」」

 

「フッ……では授業の続きだ」

 

 最後は千冬さんが締めて授業が再開された。

 いいとこ持っていくなぁ、千冬さん。まぁいいけど。篠ノ之もクラスとの間に変な壁が出来ないで済んだし。俺のアレも有耶無耶になったと思うし……なってるよな…? なっている! なっているに決まってるんだ!

 

 

 

 

 

 

「安心しましたわ。まさかこのわたくしに、このエルィィィトなわたくしに、よもや訓練機で対戦しようとは思ってなかったでしょうけど」

 

 あれはイギリスの驕れるエルィィィト。

 昼休み、俺の席までやって来る一夏の前にわざわざ立ちはだかって、これまた仰々しく腰に手を当てる昨日からお馴染みのポーズを取ってみせているオルコットさん。

 

 アレかな。

 俺と一夏と接する時だけエルィィィトになるのかな。

 

「まあ? 一応? 勝負は見えていますけど? 見えていますけど? 流石にフェアではありませんものね」

 

「なんでだ?」

 

 なんか一夏にクドクド言ってる。

 そんでもってそれが終わったら、次は俺に絡んでくる未来が容易に見える。意味合いはどうあれ「センヨウキナドフヨウラ!」発言をした俺を、オルコットが放っておく筈がない。

 

 一夏には悪いが先に食堂に逃げておこう。

 

 

【クラスの皆を誘って食堂に行こう!】

【断られまくる未来しか見えないので、少数精鋭で行こう!】

 

 

 うるせぇッ!!

 断られるかどうかなんてまだ分かんないだろ! 意外に俺のことを「まぁ……アリナシで言えばアリかなぁ……」って思ってくれてる子だって居るかもしれないだろ! まぁ選ぶのは【下】だけどね。現実と理想を混同しちゃイカンよ。

 

「篠ノ之、飯行こうぜ」

 

「う、うむ!」

 

「布仏、飯行こうぜ」

 

「いいよ~」

 

「一夏、オルコット、飯行こうぜ」

 

「おう!」

 

「はぁぁぁッ!?」

 

 1組最強のペンタゴンで食堂にイクゾー!

 

 






どうして原作に入ってからの方が展開が遅いんですかねぇ(自問自答)
ロースピード学園バトル(?)ラブコメかな(納得)
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