選択肢に抗えない   作:さいしん

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ドゥドゥドゥペーイが惹き起こしたモノ、というお話。




第42話 ルームメイトとお友達

 

 

 

「……ふぅ。これくらいにしておきましょうか」

 

 今日の授業で習ったところの復習は終わりですわ。

 と言っても、まだ入学してから2日しか経っていないですもの。IS関連は勿論のこと、他の科目も大して進んでいる訳ではありません。復習といってもノートと教科書に目を通すくらいで、まだまだ十分ですわね。

 

 さて、紅茶でも淹れましょうか。

 本日は……そうですわね、アッサムな気分ですわ。

 

「んーっ……いい香りですわ」

 

 自室でのんびり、されど優雅に紅茶のひとときを嗜む。これこそ、まさに淑女の嗜好。このセシリア・オルコットが一日の中で最も癒される時間と言えましょう。しかし優雅なだけでは居られません。

 

 わたくしは淑女であり、エリート。

 そう、エリートなのです! 真のエリートは時間を惜しみ、努力を惜しまぬもの! イギリス本場な紅茶でテンションも上がりましたわ! さっそくアリーナに行ってISの調整をしましょう! 

 

「お、オルコットさん、居る!?」

 

「オルコットさ~ん!」

 

「なんですの、騒々しい」

 

 同居人の相川さんと、もう1人は……確か鷹月さん、でしたか。この2人が忙しなく扉を開けて入ってきましたわ。まったく……どうしてこのわたくしが他生徒とルームシェアをしなくちゃいけないんですの? 学園の規則とはいえプンプンしちゃいますわ。

 

「あのねあのね! 大変なの!」

 

「頼れるのはオルコットさんだけなの!」

 

 どうやらお困りのご様子ですわね。

 頼れるのはわたくしだけ、ときましたか。ふふふ、エルィィィトに相応しいお言葉ですわね! そこまで言われれば仕方ありませんわ、話くらいは聞いて差し上げましょう。

 

「お2人とも、少しは落ち着きなさいな。それで……何がありましたの?」

 

「えっとね、学園寮の前でね、主車くんがね!」

 

 あ、もう嫌な予感しかしませんわ。

 

「磯野さんを野球に誘っているの!」

 

 そして意味不明ですわ。

 磯野さんって誰ですの。

 

「でも磯野さんなんて子は、このIS学園にいなくて…!」

 

「ああ、なるほど。それは主車さんのアレですわね、奇行ですわね」

 

「さ、流石はオルコットさん! 主車くんの意味不明な行動に動じないだなんて!」

 

「ふふん、わたくしはエリートですから」

 

 しかし出会ってまだ2日ですのに、もう主車さんの奇行に慣れてしまっているってどうなのでしょうか。それだけあの男は変人なのですわ、常に変人なのですわ、絶え間なく変人なのですわ!

 

「それでね、オルコットさんに何とかしてほしいなって」

 

「寮の入口付近に居るから、その……みんな主車くんを怖がっちゃって」

 

 なるほど、確かに絵は浮かんできましたわ。

 ですが1つだけ、というか最重要事項が残っていますわ!

 

「それをどうしてわたくしに言ってきますの?」

 

 わたくしでなければならない理由などありませんわ! 邪魔なら邪魔だと言えばよろしいだけでしょうに! それが嫌ならスルーすればよいでしょう! 主車さんは無闇に手を出してくる人ではございませんわ!

 

「え、だって……ねぇ、清香」

 

「うんうん。オルコットさん、主車くんと仲良しじゃん」

 

「はぁぁぁぁッ!? ど、どこをどう見れば、そういう判断になりますの!?」

 

 今日一番のプンプンですわ!

 わたくしが、主車さんと仲良し!? 寝言は寝て言えですわ! 理由を言いなさいな、理由を! 根拠を伴わない言動は狂言にして虚言ッ! あ、今の、とってもカッコいい言葉だった気がしますわ。いつか使いましょう。

 

「えー、だってオルコットさん、休み時間になると主車くんとおしゃべりしてるし」

 

 異議あり! ですわ!

 

「それは主車さんから話し掛けてきますから、仕方なくですわ」

 

「お昼ご飯も一緒に食べてたよね」

 

 うぐっ……そ、それも異議あり! ですわ!

 

「無理やり主車さんが誘ってくるから、仕方なくですわ」

 

「主車くんのあだ名もオルコットさんが付けてたよね。それってもう友達じゃん」

 

 ぐ、ぐぬぬ…!

 それを言われてしまいますと……くっ、わたくしとした事が上手く反論できない…!

 

「まぁまぁお待ちくださいな、お2人とも。別にわたくしがわざわざ出張る必要はないでしょう? 相川さんも鷹月さんも同じクラスメイトなのですから、あなた達が主車さんにお声を掛ければ済むじゃありませんか」

 

「えっ!? あー、いやぁ、そ、それは、まだちょっと…」

 

「あ、あはは……まだ、声を掛けるには勇気が足りないかなぁって…」

 

「はぁ……一体あなた達は主車さんをどういう風に見てますの? あの人は確かに変な人ですが、そこまで怖がる必要もないでしょうに」

 

 むしろわたくしには、アホアホしい振る舞いを、あろうことかIS学園で堂々としてみせる主車さんが新鮮に思えたりしますわ。

 イギリスに居た頃、わたくしの周りの男といえば、とてもつまらない人ばかりでしたもの。下心丸出しで言い寄ってくる者、媚び諂ってくる者など……はぁ、思い出しただけでもため息が出てしまいますわ。

 

「というか、わたくし以外にも居るでしょう? 篠ノ之さんや織斑さんに言えばいいではありませんか」

 

「その2人が見当たらないんだよ~」

 

「では、布仏さんは?」

 

「本音の姿も見えないの」

 

 ふむ……でしたら後は、織斑先生か山田先生に伝えるのがベストでしょうか。むっ……何やら相川さんから意味深な視線を感じますわ…! 

 

「……なんですの相川さん、その眼は。言いたい事があるならハッキリ言いなさいな」

 

「あ、いや、えっと……怒らない?」

 

「ええ、もちろん。わたくしを短気な女性だと勘違いされては困りますわ」

 

 わたくしが厳しく接するのは、あくまで弱々しい男だけですわ。同じ女性には慎ましやかに。それがわたくしのモットーですってよ。

 

「えっとね、そこまで頑なに行きたがらないって事は……オルコットさんも、実は主車くんを怖がってる説! なぁーんちゃって―――」

 

「風穴あけますわよあなたァッ!!」

 

「ひゃっ!? や、やっぱり怒ったぁ! 結構ガチめに怒ったぁ!」

 

 相川さんが慌てて隣りの鷹月さんの背中に隠れる。出てきなさいな、このッ! 言っていい事と悪い事がありましてよ!? 今のは明らかに悪い事ですわ!

 

「お、落ち着いてオルコットさん! 怒らないって言ったでしょ!」

 

「おどきなさい、鷹月さん! わたくしは別に怒っていませんわ!」

 

 怒ってないから隠れてないで出てきないさい! 誰があんな人を怖がるもんですか! 相川さんの今の発言はわたくしへの侮辱! ですがこれからも同じ部屋を共にするパートナーでもありますし、ここはデコピン1発で許して差し上げますわ!

 

「シュッシュッ…! 早く出てきなさい、相川さん。わたくしは何もしませんわ、シュッシュッ…!」

 

「う、嘘だぁ! おもいきりデコピンの素振りしてるじゃん! シュッシュッとか言ってるじゃん! もうシャドーボクシングなノリじゃん!」

 

「ま、まぁまぁ……オルコットさんも清香を許してあげて、ね? ここで怒ったらそれこそ図星だって思われちゃうよ、ね? 一旦、落ち着こ?」

 

「むむむ……」

 

 確かに鷹月さんの言う通りですわね。

 それにわたくしも怒らないと言った手前、ここで簡単に怒るのは淑女として如何なものでしょうか。相川さんも悪気があって言った訳では無さそうですし、ここは寛大な心を持って許してこそエリートですわね。

 

「(何故か言わなきゃいけない気がする…!)なにがむむむだ!」

 

「ちょっ!?」

 

「や、やはりケンカ売ってますのね!? いいですわ、買って差し上げますわ!! おどきなさい、鷹月さんッ!」

 

「うん、どくね。今のは清香が悪い」

 

「そ、そんなぁぁぁ!? せめてデコピンだけでお願い! それ以上したら泣いちゃうよ!?」

 

「オホホホッ! 安心なさいな、1発で仕留めて差し上げますわ! 喰らいなさい、このッ……えいっ!」

 

 

 ぺちんっ

 

 

「あうっ…! 痛ったぁ~…く、ない?」

 

 目を『><』な感じにして、ギュッと瞑って待っていた相川さん。きっと強い衝撃が来ると思っていたのでしょう。どこか拍子抜けといったご様子ですが当然ですわ。

 

「ルームメイトの相川さんに本気で手を上げる訳がないでしょう」

 

 ふふ、相川さんと鷹月さんから尊敬の眼差しを感じますわ! そうですわ、そういう視線こそ、わたくしが求めていたもの! エルィィィトかつエレガントなセシリア・オルコットに相応しいのです!

 

「お、オルコットさん…! いや、オルコットの姉貴!」

 

「誰が姉貴ですか!?」

 

 全然エレガントじゃないですわ!

 

「そうだよ、清香。せめてセシリアの姉貴って呼ばないと失礼だよ」

 

「あ、そっかぁ」

 

「どこに納得する部分がありますの!? ちょっとお待ちなさいな、普通でいいですから、普通に呼び合いましょう」

 

 わたくしの努力もありまして、お二人からは普通にセシリアと呼ばれる事になりました。わたくしも苗字ではなく清香さん、静寐さんと呼ぶ事に。日本の文化は難しいですわね、まったく…!

 

「はぁ……もう怒り疲れましたわ。どうせアリーナに行く予定でしたし、まだ主車さんが居るなら、訳を聞いてみますわ」

 

「やったね!」

 

「成し遂げたね!」

 

 嬉しそうにハイタッチを交わす清香さんと静寐さん。

 それは良いのですが。

 

「……その掛け合いって日本で流行ってますの? 何やら主車さんと織斑さんも、同じような事を言っていたような…」

 

「それ以上いけない」(良心)

 

「え、清香さん?」

 

「そんな事気にしなくていいから」(良心)

 

「な、なんですの、静寐さんまで」

 

 そんな迫真な表情をされては、逆に気になってしまいますわね。まぁそれは今は置いておきましょうか。

 

「では、行ってきますわ。あなた達はどうされますの?」

 

 と言っても、わたくしの目的は主車さんではなくアリーナです。あくまで主車さんの奇行は通過点に過ぎませんわ!

 

「そうだね、まだ怖いけど……よし、セシリアだけに任せるのも気が引けるし、私も付いて行くよ!」

 

「本音も怖い人じゃないって言ってたし……そうだね、私も勇気を出して話し掛けてみようかな」

 

 そこまで意気込む程の人ではありませんのに。ニュースの映像やら噂で、何かと暴力的なイメージが付き纏っているようですが、わたくしから見ればただの変な人ですわ。それ以上でもそれ以下でもありませんわ!

 

 

 

 

 

 

 清香さんと静寐さんと共に、学園寮の入口までやって来た。確かに主車さんが居ますわ。しかも、まるで誰も通さないと言わんばかりの立ち塞ぎっぷり……これは確かに他の生徒が怖がるかもしれませんわね。

 

「ちょっと主車さん」

 

「おぉ…! おぉぉぉッ!」

 

 な、なんですの、そのお喜びようは。

 まぁ、このエリートかつエレガントなわたくしの尊い魅力を前にしてしまうと、殿方であれば嬉しくなってしまうのも仕方ありませんわね。

 

「待ってたぜ、磯野!」

 

「誰が磯野ですか!?」

 

「セシリアまさかの磯野説」

 

「なに言ってますの清香さん!?」

 

 主車旋焚玖…! 

 

 昨日からアナタという人は…!

 そうやってわたくしの心を容易に掻き乱して! いい気になってますのね!? なっていますのでしょう!? いいですわ……そっちがその気でしたら、わたくしにも考えがございましてよ! 

 

「わたくしに会いに来られたと?」

 

「ああ、少し聞きたい事があってな」

 

「……いいでしょう」

 

 で・す・が!

 わたくしが簡単に答えると思ったら大間違いですからね! つまらない質問であれば、そのまま無視して行ってやりますわ!

 

 





セシリアと1組の仲は良好なんだ(*´ω`*)
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