選択肢に抗えない   作:さいしん

43 / 158

思いがけぬ勝負、というお話。



第43話 vs.セシリア

 

 

 

「わたくしに会いに来られたと?」

 

「ああ、少し聞きたい事があってな」

 

 や、やっと身体に自由が戻った。

 しかしオルコットが来てくれて本当に助かった。まさか【磯野呼び】を延々ループさせられるとは思ってなかったわ。それでも寮に侵入して心身的フルボッコにされるより、視線的フルボッコの方がマシだし、俺の選択は間違ってなかった筈である。

 

「……いいでしょう」

 

 それに、だ。

 いちいち磯野呼びに深くツっこんでこないのもありがたい。好奇心よりも効率を選んでくれる。こういうところがオルコットの美点である! 

 

 それに他の生徒とも仲良くなれたみたいだし、俺のドゥドゥドゥペーイはやっぱり無駄じゃなかったんだ…! それが何よりも嬉しいぜ…!(羞恥に耐えた的な意味で)

 

「えっと……し、しつも~ん! あ、私は相川清香! あの、セシリアとは同じ部屋でさ!」

 

 見覚えがある顔だって事は同じクラスだな。

 相川清香……よし、覚えたぜ!

 

 

【誰だてめェ…? まずは名乗れ】

【「オルコットをよろしく頼む」と土下座する】

 

 

 相川清香だよ!

 今まさに名乗ったろ! 脳みそニワトリってんじゃねぇぞコラァッ!! 言っとくけど俺だって普通に友達がほしいんだからな! 変な印象と悪い印象はベツモノなの! ご飯とスイーツくらいベツモノなの! 

 

「オルコットをよろしく頼むぅぅぅ―――ッ!!」

 

「「「!!?」」」

 

 目の前広がる地面。

 なのにとっても分かるよー、ビックリしているのが分かるよー。でへへ、変な人だと思ってくれて構わんよー、悪人扱いされるよりマシなんだよーう。

 

「ちょっ!? しゅ、主車さん!? 一体なにをなさっているのですか!?」

 

「オルコットも目に焼き付けるがいいッ! これがジャパニーズDO・GE・ZAでいッ!」

 

「こ、これが噂に名高いドゲ……ハッ…!? ま、またそうやって! あなたはわたくしを混乱させるおつもりですわね!? ほら、もう立ちなさいな!」

 

 無理やり腕を引っ張ってオルコットが俺を立たせる。言っている事はよく分からんが、感謝するオルコット…!

 

「あ、あはは……主車くんって、やっぱり変わってるんだね」

 

「そうだね、思ってた人とは違うかも……ちょっと違う意味で怖いけど」

 

「……気にするな」

 

 及第点である!

 身も蓋もないレベルで怖がられるよりも、ドン引きされるよりも、じゃっかん引かれているくらいが良いのである! それ以上求めはしないのである! 俺って超謙虚(メンタル処世術)

 

「それで、何か質問があるのか?」

 

「う、うん! えっとね、主車くんはセシリアに用事があったんだよね?」

 

「ああ」

 

「じゃあさ、どうして寮に入ってこなかったの?」

 

「それは私も思った。セシリアが磯野さんだとしても、叫ぶよりも早いよね。あ、ちなみに私は鷹月静寐。同じクラスだから、よろしくね主車くん」

 

「一応言っておきますけれど、わたくしは磯野ではありませんからね? そういう意味でスルーしていますからね?」

 

 ふむ……確かに当然の疑問だ。

 しかし、俺はあの【選択肢】が出なくても、学園寮に入りはしなかっただろう。それだけ、あのアンケートが心の楔になってるってこったな。

 寮に住んで欲しくないナンバー1の男が寮に入ったらイカンでしょ。入口に立つくらいは許してくれ。

 

 別に嘘をつく必要もなし。

 虚勢を張る必要もなし。

 

 俺は素直に理由を説明した。

 

「……学園アンケート、ですか…確かにありましたわね」

 

「あ~……あれかぁ、ごめんね、主車くん! 私、反対に丸しちゃった」

 

「わ、私も反対に丸しちゃった。その、ケンカが大好きって噂だったし」

 

「気にするな。俺も気にしていない」

 

「…………………」(……本当にそうでしょうか? その不敵な笑み……それは偽りではなくって…?)

 

 別に今更どうこう言うつもりはない。

 まだ2日目だけど、ペンション・シュプールだって住み心地は悪くないしな。むしろ広くて快適さ。

 それに鷹月の言うように、俺は世間的にはわざわざ声明文でも世界にケンカ売るような危険人物だし。華の女子高生がそんな奴と寮を共にしたいって思う方が不自然だっての。

 

「わたくしは反対に丸しませんでしたわ!」(寮に住めない事を気にしていないですって? 織斑さんは住めて、自分は住めないのに? そんな筈ありませんわ! あなたのそういう大人ぶった態度……何故だか気に入りませんわ!)

 

 それは意外だ。

 自らを女尊男卑だと宣言しているオルコットが、賛成に丸をしたとな?

 

「反対を大反対に書き直して提出しましたもの! オーッホッホッホッホ!!」(さぁ、主車さん…! あなたのそのお顔は偽りでしょう!? 本当は気にしていますのでしょう!? さぁ、表情を曇らせてみなさいな! 無駄な強がりなど剥がして差し上げますわ!)

 

 

【何だとクソアマぁッ!! ブチコロがすぞクルァァァァッ!!】

【素直に泣く。(´;ω;`)な顔で泣く】

 

 

 暴言はよくない。

 というか、ここでキレたら図星なのがバレちゃうじゃないか! それは嫌だ。なら泣いてやる! 泣いて泣いて最後に笑うのは俺だ! 

 

 魅せてやるぜ、オルコット…! 

 これが俺の実力だッ!!

 

「(´;ω;`)」

 

「はぁッ!? ちょっ、ちょ、ちょ、主車さん!?」

 

「(´;ω;`)」

 

「うわっ!? 泣ーかした、泣ーかした!」

 

「何て事を言うのセシリア! 今のは普通にダメでしょ!?」

 

「えぇぇぇッ!? だ、だって、そんな、こんな感じになるとは思いもしませんでしたもの!」

 

「何言ってんのさ! 流石に私もさっきのはどうかと思うよ!」

 

「(´;ω;`)」

 

「うっ……ううぅ…!」(た、確かにこんな反応は、わたくしの見たかったモノではありませんわ! わたくしはただ、主車さんがアワアワするところが見たいと思っただけで、泣かせるつもりなどなかったのですから! 言葉の刃で心を傷つける……そんなの淑女じゃありませんわ!)

 

「す、すみません、主車さん! 今のは、その、冗談! そう、冗談ですわ! わたくしも普通に反対に丸しただけですから!」

 

「……フッ…なんてな」

 

 俺の……勝ちだ…!

 誰に? 決まってるだろ、アホの選択肢にじゃい!

 

「なっ……!? あ、あなた…! あなた、その笑みは……まさか…!」 

 

「涙は女だけの専売特許か? 誰がそう決めた?」

 

「きぃぃぃぃッ!! あなたって人は! またわたくしを弄びましたのね!?」

 

「どう捉えてもらっても構わん。だが、そろそろ俺も本題に入らせてもらおう」

 

 や~~~っと、当初の目的を果たせるか。

 たった一言オルコットに質問するだけなのに、何でこんなに時間が掛かるのか……コレガワカラナイ。いや分かってるけど。だいたいアホのせいだし。

 

 さて、気持ちを切り替えよう。後はどういう風に聞くか、だな。俺が知りたいのはオルコットの戦術だし、シンプルに近距離型か遠距離型か~?みたいな感じで聞いてみるか?

 だが、少しあからさまな気もする。どんな武器を使っているのか聞いて、そこから想像に任せた方が良いか?

 

 ううむ……変にトンチ利かして、そんなに使っていない武器を教えられても厄介だ。ここはド直球勝負。素直に戦術を聞こう。

 

「オルコット、お前のISはどんな戦術が得意なんだ?」

 

「……言いたくありませんわ(プイッ)」

 

 ぐっ……コイツ、明らかに機嫌が悪くなってやがる…! 顔をプイッてしやがった。心なしか『プイッ』って声まで聞こえた気さえしたぞ。

 でも今更謝るのも違うだろ、そもそも何て謝るんだよ。嘘泣きしてごめんってか? 嘘じゃないもん、涙は流したもん。じゃあ、えっと……涙は流したけど、悲しみで流さず、オルコットを騙す為に涙を流してごめん……って長いわ!

 

 そもそも俺が謝るのって根本的におかしくね? オルコットが先に挑発してきたんだし、俺はそれに乗った形じゃねぇか。むしろナイスなカウンターだって褒められてもおかしくね? 少なくとも千冬さんと師匠なら褒めてくれるな、間違いない。

 

 

【言わねぇなら吐かせればいい。指の1、2本折ればいいだろ】

【ここは簡単な勝負で決めるべきである】

 

 

 怖いよ!

 唐突すぎるリョナ嗜好とかマジでビビるからヤメろ!

 

「なら、俺と簡単な勝負しないか?」

 

「勝負…ですって?」

 

 お、食いついた。

 流石はエリートを自負しているだけあって、負けん気も人一倍だな。勝負と言われれば無視できねぇらしい。

 

「俺が勝ったら教えてくれ。負けたらそのまま退散するよ」

 

「……いいでしょう。望むところですわ…! して、勝負内容は?」

 

「そうだな、俺も……それに見たところオルコットも用事を控えている身だろうし、時間が掛からん簡単なモンがいいな」

 

 さて、なにかあるかな。

 適当に勝負するつもりはない。オルコットの戦術を聞き出すために来てるんだし、当然俺は勝ちに行くつもりだが……変に俺から提案して、アレコレ言われるのも避けたい。ここはオルコットに提案させるか?

 

「じゃあさ、じゃあさ! じゃんけんでいいんじゃない?」

 

 提案者はオルコットではなく相川だった。

 ふむ、悪くない。だが、一つ問題があったりする。

 

「オルコットはじゃんけんを知っているか?」

 

「ば、バカにしないでくださいまし! イギリスでもありますわ!」

 

 問題はオルコットが知っている事ではない。

 俺が普通にじゃんけんに臨めば、100%勝ってしまうってところにある。だって指の動きが視えるもん(ドヤぁ)

 

 ただ、それは如何なものか。

 それにオルコットの様子を見る限り……。

 

「いいでしょう。わたくしは運もエリートである事をお見せして差し上げますわ!」

 

 やっぱ運勝負である事を信じて疑っていないな。

 さて、どうしよう。目を瞑ってオルコットと同じ立場で臨むか、普通に視て勝ちを掻っ攫うか。

 

【視えるのは後天的鍛錬によるモノである。何を引け目に感じる事がある?】

【これは運勝負では無し。駆け引き(アドリブ)の妙をお魅せしよう…!】

 

 ほう……これは中々良い選択肢、というよりも後押し系だな。何も出てこなかったら、多分なんだかんだで【下】に近い事をやってただろうし。

 良い機会だ。俺って男が実は頭脳派だって事をオルコットに刻んでやるのも一興。主車旋焚玖の神算、とくと御覧じよッ!

 

「……用意はいいか?」

 

「いつでもよろしくてよ?」

 

 フッ……音頭は俺が取れと?

 既にそこは俺の術中だ、喰らえオルコットッ!

 

「さーいしょは―――ッ!!」

 

「!?」

 

 同時に手を出す。

 

 セシリア……『グー』

 旋焚玖………『パー』

 

「やったぁぁぁッ! 俺の勝ちだぁぁぁッ!」

 

「お、お待ちなさいッ! い、今のは無しですわ!」

 

「何故だ?」

 

「何故って……だって、あなた『最初は』って言ったではありませんか!」

 

 ああ、言った。

 確かに言った。

 

 だが、それのどこに問題があると言うのかね?

 

「『最初は』しか言ってない。『最初はグー』と言って俺が『パー』を出したのなら非難も受け入れよう。が、俺は言ってない、『グー』まで言ってないんだよオルコット…!」

 

「ぐっ、ぐぬぬ…! で、ですが、『最初は』って言われたら、まずは『グー』を出し合うと思うではありませんか!」

 

「ほう、それがイギリス式か」

 

「『日本と仲良くなろう大辞典』に載っていたモノですわよ!」

 

 え、なにそれは。

 うさん臭さマックスなんだけど。

 え、そんな辞典があるの? 書店で売ってんの? 数ある本の中からわざわざこれを手に取って「ああ^~ずっとこれが欲しかったのですわぁ♥」って頬ずりして買ったの?

 

「日本国外籍の代表候補生、そして専用機持ちは必然的に『日本』と関わり合う事が多くなりますからね。限られた立場の留学生は事前に渡され、必読とされているのですわ」

 

 チッ、自分で買いに行った訳じゃねぇのか。

 

「なら、仕切り直しだ」

 

「ええ、仕切り直しですわ。ただし、もうあなたに音頭は任せられません。わたくしが仕切らせていただきますわ!」

 

 まぁしゃーない。

 切り替えていこう。

 

 

【油断するな、オルコットがどんな音頭を奏でるか聞いておく必要がある】

【音頭の前に「来週もまた観てくださいね」という台詞を付け足してもらう】

 

 

 お前それサザエさんじゃねぇか!

 磯野に寄せていくのやめろコラァッ!! サブリミナルでも狙ってんのかコラァッ!! 美人と話してんのにカツオの顔がダブッて見えてくるとか何の嫌がらせだコラァッ!!

 

「……どんな音頭でいくつもりだ?」

 

「む……そうですわね、普通でいいでしょう。『じゃんけん、ほい』でよろしいでしょう?」

 

 

【「じゃんけん、ぽんっ」でいこう】

【「じゃんけん、ぽいっ」でいこう】

 

 

 謎のこだわりやめろ。

 と、言いたいところだが……まぁ、分かる。オルコットの奏でる『ぽんっ』も『ぽいっ』も可愛いに決まっているからな。まさに約束された勝利。どちらを選んだところで、俺の穢れた心は癒されるが……あえて言うなら『ぽいっ』だな。

 

 『ぽんっ』は昼休みに堪能した『ぷんぷん』なる発音に近いモノがある。正直、あまり新鮮な感動は味わえないだろう。故に俺は【下】を選ぶのだ!

 

「『じゃんけん、ぽいっ』でいこう」

 

「そうですか? なら、そうしましょう」

 

 

【一度、リハーサルしておいた方が良くないか?】

【一回だけ『ぽい~』って言ってみてくれ。出来れば甘えた感じで言ってくれ】

 

 

 流石に自重しろや!

 【下】は普通にダメだって、アウトだって! 超キモい余裕でキモい! 承諾してくれるほど、まだ好感度も上がってないし! 【上】だ【上】。そっちなら俺もフォローできる。

 

「一度、リハーサルしておいた方が良くないか?」

 

「はぁ? リハーサルも何も、普通に言うだけでしょう?」

 

「『じゃんけん』と『ぽいっ』の間隔がどれくらいか知っておきたい。それほど、俺はこの勝負に懸けてんだ」

 

「むぅ……それは確かに一理ありますわね」

 

 万里ない。

 オルコットが素直な良い子で助かるぅ↑↑(超助かるの意)

 

「では……ンンッ……じゃんけん…ぽいっ!」

 

 可愛い。

 

 

【相川に感想を聞いてみる】

【鷹月に感想を聞いてみる】

 

 

 お前マジでふざけんな!

 どうしたお前マジで! 何がお前をそうさせてんの!? ここ、そんなに引っ張るところじゃないだろ!? さっさと勝負させろよ! 普通に俺、はやく済ませて一夏たちと練習したいんだけど!? 何でじゃんけんでそんなに引っ張んの!?

 

「……相川」

 

「な、なにかな?」

 

 ほら見ろ、急に振られてビクッてしてるじゃん! まだまだ壁があるんだって! このタイミングで声掛けても良い仲になってないんだって!

 

「オルコットのじゃんけん音頭……感想を言ってくれ」

 

「へ!? え、えっと……そうだね、えっと……うん、そうだね………えっと……そうだね」

 

 俺もソーナノ(意味不明)

 

「よし、闘るぞオルコット!」

 

「は、はいですわ!」(清香さんへのアレは何だったのでしょう……ハッ…いけませんわ、セシリア…! きっと先程の問いかけも主車さんの策…! わたくしの精神を乱す策に違いありませんわ! 集中なさい、セシリア・オルコット!)

 

「奏でるがいい、凄絶にな!」

 

「(な、何ですのそのカッコいい台詞は!? くっ、惑わされてはいけません!)じゃんけん…ぽいっ!」

 

 セシリア……『グー』

 旋焚玖………『チョキ』

 

「や、やりましたわ! わたくしの勝ちで―――」

 

 目先の形に囚われる事勿れ。

 勝負はここからだ、オルコット…!

 

 旋焚玖の『鋏み』がセシリアの『岩』に襲い掛かる。

 

「え、ちょっ、何をしますの!?」

 

 セシリアの最大の失敗は、旋焚玖に抗議を唱えてしまい、己の手を引っ込めなかった事である。そんな隙を見逃す筈も無し。セシリアの『岩』は旋焚玖の『鋏み』に悠々と挟まれてしまった。

 

「3秒耐えてみせろ。そしたらお前の勝ちだ」

 

「はぁぁぁッ!? そ、そんなルール知りま「学べ代表候補生…! これが日本に伝わる本当のじゃんけんだ…!」な、なんですって…!?」

 

 かかったな良い子が!

 

 3秒あれば十分…! 万力が込められた人差し指と中指で、オルコットの『岩』つまり『グー』を無理やり『パー』へと開かせる。

 

「んにっ!? に゛、に゛、に゛、に゛ぃぃぃ~~~ッ……あ、ダメっ、開いちゃうぅッ!」

 

 言い方ァ!!

 なんかエロいなコラァッ!! 俺にそういう攻撃はメチャ効くぞコラァッ!! だが時既に遅しだクソがぁッ!!

 

 セシリア……『パー』

 旋焚玖………『チョキ』

 

「やったぁぁぁッ! 今度こそ俺の勝ちだぁぁぁッ!」

 

「い、異議ありですわ! そういうルールなら最初からそう言うべきですわ! あなたはそれを怠りました! なのに土壇場になってそんな事を言うなんて、不公平としか思えませんわ!」

 

 これは熱い正論。

 正論で来られたら勝てないって、それ一番言われてるから。

 

「なら、仕切り直しだ」

 

「ええ、仕切り直しですわ。今度こそ、正々堂々な勝負を期待していますわよ…! 清香さん、静寐さん、音頭をお願いしますわ!」(喰らいなさい、今度はわたくしの番ですわよ!)

 

 正々堂々、出し抜いてやるか?

 

「「 じゃ~んけ~ん 」」

 

 いや、よそう。

 たまには運に身を任せてみるのもアリかもしれない。

 

「「 ぽいっ! 」」

 

 オルコットの腕から下を視界に収めないようにして手を出した。

 

 旋焚玖………『パー』

 セシリア……『フレミング』

 

「……なんだ、それは?」

 

「グー・チョキ・パーに勝つ、最強の手ですわ!」

 

 オルコットの差し出した手は、小指と薬指が折りたたまれ、中指と人差し指と親指を広げた状態になっている。確かに一見、グーにもチョキにもパーにも見える。

 

「あ、うん、そうか…」

 

 あ、やべ、つい素になっちまった…!

 ま、まだ立て直せるか?

 

「え、ええ、そうなのですわ…」(あ、あれ……? もしかして、わたくし……やってしまったパターンでしょうか…?)

 

「そうか……そうだな、すごい手だな」

 

 ああ、もうダメだ。

 こっからテンション上げても不自然すぎる。俺の判断ミスだなこれは。躊躇わずにソッコーでテンション爆上げすべきだった。

 

「ええ……そうですわね、すごいですわね」(うぅ……なにやら気まずいですわね…)

 

 「それって1人あいこな状態じゃね?」とか、ツっこむのも億劫になるくらい気まずいんですけど。何とも言えん空気、こういう微妙な空気感こそ耐え難いんですけど。相川と鷹月はあらぬ方向を向いてるし……いい勘してやがる。

 

「あーっと……俺の負けだな」

 

「あ、ハイ……わたくしの勝ちですわね」

 

「えっと……あ、俺、そろそろ塾の時間だし、行かなきゃ」

 

「そ、そうですか? では、引き止めるのも悪いですわね」

 

「あっと……ばいばい」

 

「え? あ、ハイ。えっと…ばいばい、ですわ」

 

 すまぬ、一夏。

 俺、オルコットに勝てなかったよ。

 

 






熱い勝負だった(満足)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。