選択肢に抗えない   作:さいしん

68 / 158
鈴の加入で変わるモノ、というお話。



第68話 ようこそ1組へ!

 

「皆さん、おはようございます。今日はなんと! 私達のクラスに新しいお友達が増えますよ~!」

 

 今朝のショートホームルーム。 

 教壇に立つ山田先生が、ニコニコ顔で発表した。小学校かな? 

 確かに山田先生は高校の教師っていうよりは、小学校のせんせーという雰囲気だもんな。しかし、陰気くさい雰囲気よりよっぽど良い。

 

 扉をガラッと開けて入って来たのは、もちろん鈴だ。

 よっ、昨日ぶり。

 

「中国代表候補生、凰鈴音よ! よろしくね!」(初めて日本に来た時は、知らない奴ばっかりのトコロに放り込まれて正直ブルッちゃってたけど……えへへ…! 今回は全然怖くないわね!)

 

 うむうむ。

 特に気後れもしてなさそうで何よりだ。

 

 昨日の一件もあって、初めて来た1組でも、知らない奴ばっかのクラスじゃなくなっている。大いに安心するがいい、鈴よ。このクラスはアウェーに非ず。既にホームなんだぜ!

 

「知ってる~!」

 

「知ってるよ~!」

 

「改めてよろしくね、鈴ちゃん!」

 

 布仏を筆頭に相川と鷹月もそれに続いて鈴を歓迎してくれた。ナイスすぎるアシストである。流石は1組が誇る聖人三銃士だ、ホントにいい仕事してくれますねぇ! 俺と一夏でワッショイ祭りを企画した甲斐もあったってなモンだ。

 

 

 

 

 ホームルームも終わり、一夏がダベりに俺の席までやって来る。少し遅れて鈴もやって来た。

 

「昨日ぶりね! というか久しぶりね、旋焚玖、一夏!」

 

「ああ」

 

「おう! 久しぶりだな、鈴!」

 

 一夏は一緒に中国に行けなかったから1年ぶりって事になるのか。俺と違って積る話もあるだろう。昨日は歓迎だけで解散したからな。落ち着いた状態で話せばいいさ。

 

「ちょうど丸一年ぶりになるのか。元気にしてたか?」

 

「まぁね。アンタこそ、ビックリしたわよ? テレビ観てたら、アンタの(´・ω・`)がいきなり出てきたんだから」

 

「いや、あの時はマジでビビッてたんだって」

 

 ああ、あの時はまだ唯一の男性起動者だったもんなぁ。一夏からしたら天涯孤独すぎる状況だし、不安ってレベルじゃなかったんだろう。

 

「おばさん達は元気か?」

 

「ええ、もちろん!」

 

 その笑顔に陰りは無し。

 ジュテームな仲って言ってたし、俺も奮闘して良かったわ。

 

「そういえば、鈴もセシリアと同じ代表候補生なんだよな?」

 

「ええ、そうよ?」

 

 心なしか鈴がドヤ顔しているように見える。

 

「おほほほ!」

 

「うわビックリした!?」

 

 鈴の言葉にいち早く反応してみせたのは、俺の後ろの席なセシリアだった。一夏じゃなくてもビックリするわ。

 そして、そのまま勢いよく立ち上がるオホホなセシリアさん。今朝もキマってんなぁ。

 

「皆まで言わずとも分かってますわ、鈴さん! きっと中国がわたくしの存在を今更ながらに危ぶんでの転入ですわね!」

 

 で、出たー!

 淑女にのみ許された、セシリアのセシリアによるセシリアのための淑女ポーズだぁー! 

 

 どうやらセシリアの調子は絶好調なようである。

 気分良く「むふんっ♪」とか言ってドヤってるし。初めて見た鈴も「うわぁ…」って顔してるし。しかし何も言わないだけ大人なのである。んで、それを聞きつけた相川がなんかダッシュでやって来た。

 

「はいはい、セシリアはしゅごいねぇ~」

 

「な、何ですの清香さん!? どうして頭をナデナデしますの!?」

 

 流石は相川、これは揺るぎないセシリアの保護者ですね。誰も何も言わないって事がもう全てを物語っている。相川こそが、そのポジションに相応しいのだと。1組の面々も認めているって事だ。

 

「1組の代表候補生はこれで2人になった訳だが、他のクラスはどうなんだろうな」

 

 俺の前の席な篠ノ之も話に入ってきた。

 あれ…? この光景ってよくよく考えたら凄くね? だって俺を中心に美少女(一夏を除く)が集まってるんですよ? これはハーレム王旋焚玖ですね、間違いない。

 

「あー、もしかしてアレ? 箒が気にしてるのってクラス対抗戦?」

 

「ああ、そうだ。鈴は察しが早いな」

 

 ちなみに、クラス対抗戦ってのは、来週に行われるクラス代表同士によるリーグマッチだ。ガチな試合というよりも、どっちかと言うとクラス単位での交流やら、団結力を強めるためのイベントだって千冬さんが言ってた。

 

「旋焚玖から聞いたけど、1組は一夏が代表なのよね?」

 

「おう」

 

「ぶっちゃけ、どうなのよ? 勝てる自信あんの?」

 

「全然ないゾ」

 

「うわはははは!」

 

「あははははは!」

 

「笑わすなツってんだろ!」

 

「その顔ヤメろツったでしょ!」(うっはー! このノリちょー懐かしい! 中学の頃を思い出すわね! いきなりテンション上がるぅ!)

 

 おぉ、なんか中学の時を思い出す一幕だ。俺もそうだが、やっぱ鈴もまだ笑っちまうんだな。だってツボだもん。一夏のコレだけは、明日死ぬとしても笑う自信あるわ。

 

「そんな弱気じゃダメだよ織斑くん!」

 

「そうだよ、おりむ~!」

 

「織斑くんが勝たないと1組が幸せになれないよ!」

 

 おお、相川だけだと思ってたら、いつの間にか布仏と鷹月も居てた。ワッショイ祭りメンバー大集合だな。

 

 鷹月の言う「幸せ」ってのはアレだ。今回のクラス対抗戦で1位になったら、なんと優勝賞品として学食デザートの半年フリーパスが配られるらしい。何とも女子校らしいチョイスである。俺もチョイスだけど(自己紹介)

 

「景品を抜きにしても、やはり友には勝ってもらいたいものだ。なぁ、主車」

 

「当然だ」

 

 ま、篠ノ之の言う通りだな。

 ダチが負けて良い気分にはならんよ。

 

「へっ…旋焚玖にそこまで言われちゃあ、俺もいつまでも弱気じゃいられないぜ!」

 

 当然だ、しか言ってねぇよ。

 まぁ一夏のモチベーションが上がったんならいいか。

 

「その意気ですわ一夏さん! では今日からは一旦クラス対抗戦に向けて、ISでの実戦的な訓練に切り替えましょう。鈴さんにも手伝っていただければありがたいのですが」

 

「あたしも1組の一員だしね! もちろん、手伝わせてもらうわ。あれ、でも、それじゃあ今まではどうしてたのよ?」

 

 セシリア先生による座学講習だな。アシスタント役に篠ノ之先生だ。俺も一夏も他の奴に比べて圧倒的にIS知識が不足しているからな。

 まずはそこから埋めていこうって事でお勉強していたのである。ただ、もう一つ大きな理由もあったりする。

 

「私と主車は専用機を持っていないからな」

 

 つまり皆で一緒にISを使って……というのは難しいんだよ。訓練機の申請やら許可とかいう弊害のせいでな。

 ぶっちゃけ、俺はともかく篠ノ之は訓練機くらいなら自由に使っても良くないか? 狙われる立場的な意味で。それが無理なら、せめて俺と【たけし】がやってる夜の鍛錬に篠ノ之も参加させるとかさ。

 今度、千冬さんに相談してみるか。

 

「だが流石にもう、私と主車に気は遣わなくていい。セシリアの言うように、一夏も実戦的な訓練をした方が身に付くだろうし」

 

「俺も篠ノ之の意見に賛成だ」

 

 そうなったら俺と篠ノ之が暇になっちまうが、まぁセシリア達を見学でもしつつ、篠ノ之に解説でもしてもらえば良かろうもん……ん?

 

「ちょ、な、なんだ、鈴…!? おいっ、腕を引っ張るな!」

 

「い・い・か・ら! こっち来なさいアンタ!」

 

 鈴が篠ノ之を引っ張って行った。

 唐突すぎんだろ、どうしたんだアイツ。

 

 

(アンタ昨日は旋焚玖って呼んでなかった?)

(昨日はその、鈴への対抗心で呼べただけで、普段は恥ずかしくて中々…)

(照れ屋な乙女か! 思春期すぎるでしょ!)

(し、仕方ないだろ!? 意外と度胸がいるんだぞ!?) 

(……なぁーんだ。初めて出会った恋敵(ライバル)は、強敵(とも)じゃなくてヘタレだったかぁ)

(ヘタレ!? この私がヘタレだとぅ!? くそ、見てろ!)

 

 

「旋焚玖ぅッ!!」

 

 うわビックリした!?

 

「……なんだ、篠ノ之?」

 

 名前で呼んだなコイツ!

 というか叫んだなコイツ!

 

「篠ノ之じゃない! 私もお前を名前で呼んだんだ! 旋焚玖も私の名を言ってみろ!」(おぉ…! 言えている…! 私が呼べているぞ、旋焚玖と! あれだけ恥ずかしくて言えなかったのに! これはテンションも上がりまくりだ!)

 

 いや、言ってみろてお前…。

 どうしたお前、やけにハイになってんな。

 

 

【ジャギ様】

【ケンシロウ】

 

 

 えぇ…?

 これってどっちが正解なの? 

 

 というか、ホントにそういうネタ的な意味で振ってきてんの? 違くない? だって篠ノ之だぞ? 真面目なコイツが北斗の拳を読んでるとは思えないんだけど。いやでも、読んでる可能性があるからこその【選択肢】か?

 

「……ジャギ様?」

 

「誰だそれは! 違うだろ!」

 

 やっぱり違うじゃないか(憤怒)

 

「冗談だ、箒……これでいいか?」

 

 おぉ……初めてコイツの名前を呼んだ気がするぞ。初めて出会ったのが小2ってのを踏まえたら、中々に感無量だな。

 

「う、うむ! これからは名前で呼ぶように! 私も呼ぶからな!」

 

「ああ」

 

 何かよく分からんけど、俺もやっと篠ノ之…じゃねぇや、箒と名前を呼び合えるようになったんだな! やったぜ! 鈴がウンウン頷いてるのもよく分からんけど、とりあえず嬉しいんだぜ!

 

 ん?

 また箒と鈴がこそこそ話してる。

 

 

(……ありがとう、鈴)

(気にしなくていいわよ)

(でも良かったのか? 敵に塩を送ったんだぞ?)

(はんっ…! 張り合いがなくちゃ、あたしも燃えないのよ!)

(そうか……いや、改めてよろしく頼む。強敵(とも)として…!)

(ふふっ、そうこなくちゃね!)

 

 

 なんかガッチリ握手までしてるぞ。

 なんだなんだ、昨日会ったばかりなのに、もう仲良しになってんのか? 性格的に2人の波長は合いにくいと思ってたんだが、世の中分からんモンだなぁ。

 

 チャイムが鳴り、皆も席に戻っていく。

 さぁ、今日も1日が始まるな。

 

 

 

 

「じゅばばばッ…! 今朝の話の続きだけど…ずぞぞぞぞぉッ…!」

 

「り、鈴さん!? お行儀悪すぎですわよ!?」

 

 昼休み。

 いつもの面子に鈴も加わり、学食へやって来た。各々が券売機で好きなモンを頼んで、「いただきます」をしたまでは良かったんだが。

 

「セシリアの言う通りだぞ! 何だその食べ方は!」

 

 鈴が頼んだのはラーメンである。

 いつ見ても豪快な啜りっぷりよな。しかし、淑女なセシリアと大和撫子な箒から不興を買ってしまったようだ。

 

「なによ、ラーメンは豪快に喰ってナンボでしょ?」

 

 そらそうよ。

 これに関しては俺も完全に鈴派だ。一夏も頷いてるし。

 

「し、しかしだな……おい、レンゲはどうした?」

 

「んなモン要らないわよ。何に使うのよ?」

 

 おうおう、鈴の漢っぷりが光ってますねぇ!

 

「なにってお前…」

 

「色々ありますわ! スープを掬ったり、お麺を乗せてミ…」

 

「あたし、レンゲでミニラーメン作ってチュルチュルしてる奴見たらブッコロがしたくなるのよね」

 

「みっ!?……みんみんぜみ」

 

 何言ってだこの淑女。

 殺意の波動にでも飲まれたか?

 

「ングングッ…! ぷはーっ、ごちそうさま!」

 

 仕上げはどんぶりを持ってのスープ飲み。

 いい喰い方してますよぉ…(恍惚)

 

 

 

 

「今朝の話に戻るけどさ。ほら、他のクラスの話よ」

 

 ああ、そういや中断したままだったか。

 

「わたくしの出番ですわね!」

 

 ババーンと立ち上がるセシリア。

 え、なに、実は情報通なの?

 

「他国の代表候補生はそれなりにチェックしてますからね。わたくしの記憶が正しければ、2組にタイの、4組に日本の代表候補生が居た筈ですわ。3組には居なかったと思います」

 

 ふんふむ、なるほど。

 3組は置いておくとして、セシリアの言う通りなら、2組と4組からクラス対抗戦に出てくる奴は、その2人だと考えるのが妥当か。

 

 つまり、セシリアや鈴と同等クラスだと思っていいだろう。

 

「相手が3組だったらどうだ? 勝てる自信はあるか?」

 

「おう!」

 

 箒の問いに大きく頷いてみせる一夏。

 

 い~い返事だ。貌つきもいい。

 この前の試合で、曲がりなりにも一夏はセシリア程の実力者を追い詰めたんだからな。モブ相手なら余裕だろ。

 

「問題は2組か4組と当たった時ですわ。一夏さん、勝てますか?」

 

「無理だゾ」

 

「うわはははは!」

 

「あははははは!」

 

「「 笑わすな! 」」

 

 今朝からまだ数時間しか経ってねぇぞコラァッ!! このメンタルバカ! 上がるのも早いけど下がるのもあっという間だな! お前のメンタル、ガバガバじゃねぇか!

 

「そんな弱気でどうする一夏!」

 

「そうですわ! 今朝の勇ましい一夏さんは何処へ行かれましたの!?」

 

「アンタ男でしょ! 闘る前から諦めてんじゃないわよ! ねぇ、旋焚玖!」

 

「当然だ」

 

 闘る前に負ける事考えるバカいるかよ(闘魂)

 俺は考えるけど。

 

「そうだな……旋焚玖にそこまで言われちゃあ、俺もいつまでも弱気じゃいられないぜ!」

 

 だから俺は当然だ、しか言ってねぇよ。

 相変わらずガバガバなモチベーションしてんな、お前な。

 

「では予定通り、今日の放課後からはISで特訓しましょう」

 

「ちょっと待ったぁ~!」

 

 布仏からちょっと待ったコールだ!

 

「今日の放課後は、おりむ~のクラス代表おめでと&ようこそリンリン歓迎ぱーちーがあるんだよ~!」

 

 ぱーちーか。

 学園青春らしいナイスなイベントじゃないか! それを疎かにするなんてとんでもない!

 

「む……主役を欠席させる訳にはいきませんわね。それなら明日からにしましょう」

 

「いや、歓迎してくれるのは普通に嬉しいんだけどさ。リンリンはヤメてほしいわね」

 

 俺もヤメてほしい。

 左奥歯を失ったトラウマが蘇るっての。

 

「という訳で、放課後は食堂にしゅーごーだよ~!」

 

 はい!(ウキウキ)

 





選択肢:はい!(ウキウキ)

旋焚玖:やめてくれよ・・・
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。