選択肢に抗えない   作:さいしん

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人脈大事、というお話。




第75話 ヴィシュヌを探せ

 

 

 さっそくIS学園までカムバックしてきた俺と箒。IS学園は部活動も充実しているらしく、一般的な高校に比べても、同好会も入れたらかなりの数になるらしい。

 そんな中をしらみつぶしにあたっても、効率的とは言えないだろう。ギャラクシー本人と偶然会えたら一番いいが、果たして……む?

 

「あ、主車君じゃん。それに箒ちゃんも」

 

 はぐれジャーナリストが現れた! 

 

「こんにちは、黛先輩」

 

 これはもしかして、ナイスな偶然ではなかろうか。新聞部って言うくらいだし、生徒の情報は色々持ってそうである。少なくとも俺たちよりかは知ってそうだ。

 

「旋焚玖、黛先輩に聞いてみたらどうだろうか」

 

 

【お前に言われんでも分かっとる!】

【で、間接キッスの感想は?】

 

 

 じ、時間差攻撃はズルいぞ!? 

 コーラのくだりは前回で終わったじゃん! 

 

 そういうハメ技、俺のシマではノーカンだから。無しね無し。断固として俺はこの選択肢を受け入れる事を拒否する。裁判沙汰も辞さない、決死の覚悟で抗わせてもらう。

 

…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!(逃れられぬカルマ)

 

 

 くそっ、くそっ! 

 なんなんだだこの2択!? 【上】も【上】でよく考えなくてもおかしいし! くそぅ、だけど…! 【上】選んで箒にしょんぼりされるくらいなら、俺は【下】を選んでキモいと罵られる方がマシだ、ちくせぅ! 

 

 でもね、お願いがあるの、箒さん。

 せめて口撃だけにしてね?

 木刀ブンブン丸だけはヤメてね?

 

「……で、間接キッスの感想は?」

 

「なっ…! な、な、な…!」(ここで更に私を試してくるのか! どれだけ私に試練を与えてくるのだお前は! くそぅ、何て言えばいいんだ! 甘い恋の味がした♥って言ってもいいのか!? だ、ダメだ、そんな乙女すぎるセリフなんて私には似合わない! というかまだ付き合ってもないのに、そんな事言ったらキモいだろ!? 旋焚玖に引かれてしまうのがオチだ!)

 

 ひぇっ……箒さんが、すっごく百面相っていらっしゃる。しかし、木刀をプルプルさせていないところを見ると、怒ってはなさそう…? なさそうじゃない…? 

 

 いや、安心するにはまだ早い。

 ここで調子コイて声を掛けたら最後。それは導火線に火をつけると同義である。何事も無かったように、さっさと話を進めちまうに限る!

 

「黛先輩、1年2組のヴィシュヌ・イサ・ギャラクシーって知ってますか?」

 

「勿論知ってるわよ? 学園でも数少ない代表候補生だしね」

 

 やったぜ。

 展開が進んでくれるぜ。

 

「何か部活とかってしてますか?」

 

「私の調査によると、あの子は同好会を作ってるわね」

 

 ふんふむ。

 部活ではなく同好会とな。

 しかも、入ったのではなく自ら作ったのか。ギャラクシーは随分アグレッシブな性格をしているという事もこれで分かったな。

 

 後はその同好会に突訪問して、直にギャラクシーを調査だ。

 

「なんて名前の同好会ですか?」

 

「そうねぇ……教えてあげてもいいけど、対価は?」

 

 む?

 

「タダで情報を教える記者なんていないわよ、主車君。それなりに報酬をくれないと、ね♪」

 

 ふむぅ……確かに一理あるな。

 タダで何でもかんでも聞き出すってのは虫が良すぎたか。

 

 

【デート1回!】

【敗北をプレゼントしよう】

 

 

 ノリが違いすぎる2択やめてよぉ!

 【上】がクラウドで【下】は死刑囚か!? どっちも違うわ! ただの可愛らしい情報通な先輩じゃい! デートさせろコラァッ!!

 

「敗北をプレゼントしよう」

 

「へ?……あ、あれ…!?」(なんか急に視界がボヤけて見える…?)

 

 箒が居なかったら迷わず【上】を選んでいた。なので俺はヘタレじゃない。そんな俺の手のひらには、とある物が握られている。それは―――。

 

「先輩は視力は悪い方かい?」

 

「え? え、ええ……だから普段はメガネを……えっ!?」(主車くんから差し出された手の上にある物…! それは見間違える筈のない、私の眼鏡…ッ! そんなバカな…!?)

 

「なら、ちゃんと掛けておかないとな」

 

 眼鏡美人って眼鏡外してもやっぱり美人なんだな。また一つ、女のことが理解ってしまったか。

 

「ウッソでしょ……い、いつの間に?」(いやいやいやいや! 一体どんなトリック使ったの!? 眼鏡を外された本人が気付かないとかありえないでしょ!?)

 

「……?」(むむむ……悶々トリップから帰還してきたら、何故か旋焚玖が不敵な笑みを浮かべて、黛先輩の眼鏡を持っていた……なんで? けど、ここで驚いたら、私が脳内乙女会議に耽っていた事がバレてしまうではないか! まるでよく分からんが、ここは何も言わずに傍観しておこう、そうしよう)

 

「アンタが俺の間合いに入った時……こいつでな」

 

 そのための右手あとそのためのスピード(どやぁ)

 

「眼鏡を過信し……近づきすぎたのがアンタの敗因だ」

 

「う、うん、そうだね」(眼鏡を過信ってなんだろう…? そして敗因ってなんだろう…? 私はいったい何の勝負を仕掛けられてたんだろう…? でも、それを私に追及させない凄みがこの子にはある…ッ! なるほど、たっちゃんが一目置く訳だわ。確かに興味が尽きない子だね、色んな意味で)

 

「……うむ」(一体何の話をしているんだろう。でも、とりあえず私は普段通り「うむ」って言っておけば大丈夫かな)

 

 手段なんか何でもいいんだよ。

 とりあえず何か凄いっぽい事してりゃ、勝手に流れも付いてくるのさ。後は真っ当なツっこみをさせない威圧感! よゆーよゆー。俺、威圧感◎のステータス持ちだから。大物っぽいフリをするのは任せろー。

 

「ふふっ、いいわ。よく分かんないけど、面白かったから教えてあげるね」

 

 やったぜ。

 

「私の調査によると、ヴィシュヌちゃんはヨガ同好会を作ってるわね。会員は今のところヴィシュヌちゃんだけみたい」

 

 一人なのに同好会とはこれ如何に。

 というか、よく学園が許可をくれたな。普通、そういうのって何人以上とか条件があるんじゃないのか?

 

「ヴィシュヌちゃんは一般生じゃないからね。そういう特権を持つのが専用機持ちなのよねぇ」

 

 専用機持ちってしゅごい。

 

「ありがとうございます、黛先輩」

 

 よし、これでギャラクシーの居る場所も分かったな。後はヨガ同好会とやらに乗り込むだけだぜ!

 

 

【その前に職員室に顔を出す】

【その前にアリーナに顔を出す】

 

 

 いや行かせてくれよ!

 どうして毎度毎度回り道をさせたがるのか……コレガワカラナイ。まぁアリーナは百歩譲ってまだ分かるとして。

 

 職員室に行く意味がまるで分かんねぇよ! 

 言っとくけど、生徒がそんなホイホイ行く所じゃないからね、職員室って。しかも、もう目的は黛先輩のおかげで達成したし。何しに行くの? 用事ないじゃん。

 教師じゃないんだから、用事ないのに気軽に行っていい場所じゃないと思うんだよね。千冬さんだって普通に仕事してるだろうし、何も用事なく行ったら「めっ」て言われちゃうだろぉ!

 

 という訳で、今回は【下】だな。

 今頃頑張ってるだろうし、一夏の応援でもしてからギャラクシーの元へ行こう。

 

 とはいえ、だ。

 このままじゃ、何だかんだで千冬さんの事も頭の片隅に残っちまって、いろいろと集中できない気がするな(旋焚玖理論)

 

 部活繋がりで千冬さんに聞いてみるのも有りだな!

 

『千冬さんは何か部の顧問とかしてるんですか?』

 

 ほい、送信。

 返信は如何に。

 

 ピロリン♪

 

『私は茶道部を顧問している。だが部員は女子しか居なくてな。たまには男子にも足を運んでもらいたいものだが(/ω・\)チラッ』

 

 いや男子て千冬さん。

 99.8%女子校で何言ってだこの人(ン抜き言葉)

 これはもしや、来てほしいアピールなのかな? 最後に寄るのも一興だな。

 

 というか、俺がもしこの学園で部活に入るとしたら、現状でいけば千冬さんか山田先生が居る部くらいになるだろう。精神衛生的に。

 

「む…? 旋焚玖、そっちは玄関だぞ?」

 

「一夏達の様子を見てから行こうと思う」

 

「ふむ……ISでの訓練と言っていたな。どんな感じでやっているのだろう」

 

 それを今から見に行くのである!

 

 

 

 

「またズレましたわよ一夏さん! それでは30度ではありませんか! 20度ですわ!」

 

「(´・ω・`)」

 

「身体の声をちゃんと聞きなさいよ! 耳を澄ますの! 自分勝手に動いてんじゃないわよ!」

 

「(´・ω・`)」

 

 どうやら、一夏の道は中々に道中険しいらしい。

 

「……セシリアも鈴も案外スパルタなんだな」

 

 箒の言う通りである。

 だが、それだけ真剣に教えてくれているって事だ。

 

 しかし見ている感じだと、セシリアは理論派で鈴は感覚派らしいな。

 

「箒だったら一夏にどんな風に教えている?」

 

「む? そうだな、私ならこう…ずばーっとやってから、がきんっ! どかんっ! という感じで教えているな」

 

 箒は希少種擬音派、と。

 

「ちょ、ちょっと休憩しないか? 流石に少し疲れてきたっていうか…」

 

「何を言ってますの!? 膝を突くにはまだ早いですわよ一夏さん!」

 

「そうよ! そんなんじゃ対抗戦でもフルボッコにされて終わりよ!?」 

 

 おぉ、かなり熱が入っているな。

 顔を出しに来て何だが、真面目に頑張ってる3人に水を差すのは気が引ける。見つからない間にとっとと抜け出すか。

 

 

【応援でもしてやるか】

【乱入でもしてやるか】

 

 

 気が引けるツってんだろ!

 日本語分かんねぇのかコラァッ!! 実は外国人なのかお前コラァッ!! はうまっちあーゆー!?

 

 生身で乱入とか完全におフザけの領域だし、ここは普通に応援するぞオイ!

 

 

【がんばれ♥ がんばれ♥】

【頑張れ頑張れ出来る出来る!(以下省略)】

 

 

 バブみ、感じるんですよね?

 

 ってこのバカぁッ!!

 俺がバブみ利かせてどうすんだバカ! 一夏をバブバブさせてどうすんだバカ!

 

「頑張れ頑張れ出来る出来る! 絶対出来る! 頑張れ! もっとやれるって! やれる! 気持ちの問題だ! 頑張れ頑張れ! そこだ! そこで諦めるな! 積極的にポジティブに頑張れ!」

 

「せ、旋焚玖!?」

 

 あらやだ、一夏達をはじめ他の生徒達からも見られまくりな状態、まさに注目の的になってしまったでござる。俺だけが見られるのは恥ずかしいのである。

 

「箒、お前も応援してやれ」

 

「うえぇぇっ!? わ、私も言うのか!? みんながこっちを見てるのに!?」

 

 当たり前だよなぁ!

 俺にばっか恥ずかしい思いさせてんじゃねぇよ! 一蓮托生だコラァッ!! バシッと凛とした声をアリーナに轟かせてやれ、凄絶に!

 

「……が、がんばれ~…」(赤面&小声)

 

 可愛い(小並感)

 

 これはツっこめませんわ。

 

「へへっ、旋焚玖たちに情けない格好は見せられねぇぜ! ほら、セシリア、鈴! 何休んでんだ、はやく続きを頼むぜ!」

 

「んもう、アンタがヘトヘトになってたんでしょうが」

 

「うふふ、いいではありませんか鈴さん。さぁ、参りましょう」

 

 練習再開か。

 これで心おきなく俺たちもミッション再開できるな。

 

 ギャラクシーに会いにイクゾー。

 

 





100話までにはフランスドイツ組を出す。


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