選択肢に抗えない   作:さいしん

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文化交流、というお話。



第76話 ヨガ同好会

 

 

 やって来ました、ヨガ同好会!

 潜入取材班である俺と箒は扉の前で最終チェックだ。

 

「で、これからどうするつもりなんだ?」

 

「とりあえず『体験してみたい』というテイでいこうと思う」

 

「体験……ヨガの?」

 

「ヨガフレイム」

 

「は?」

 

「気にするな」

 

 あくまで体験は名目だ。

 ギャラクシーの強さと戦術を少しでも探るために、俺たちは此処へ来ている。それを忘れてはいかんよ。

 

 という訳で、イクゾー。

 扉を開いてこんにちは!

 

「アナタ達は……」

 

 割とさっきぶりだな。

 その節は迷惑かけてすまんね。

 

「……何の用ですか?」

 

 む……何やら警戒されているな。

 いや、当然だろ。何言ってんだ、俺(72話参照)

 

「文化交流しに来た」

 

「え?」(ど、どういう意味かしら…? というか、改まって男の子と話すのって緊張するわね…)

 

 俺が相手だとギャラクシーも話しにくいかもしれん。だが、案ずることなかれ。何のために箒と一緒に行動していると思う…! こういう時のためだろう! 

 

「箒」

 

「む?」

 

「続きを頼む」

 

「むぁっ…!? いや…ンンッ……分かった」(そうだ、ずっと黙っているなど、何の役にも立っていないと同義じゃないか! 私もしっかりせねば…!)

 

 そのための箒あとそのための質実剛健。

 

「あ、あっと、だな……そ、その、わ、私と旋焚玖は、ま、前々からヨガに興味があってだな」

 

 目が泳ぎまくってんだよこのヤロウ! 

 嘘をつき慣れてないのがバレバレじゃねぇか! なんだお前良い子か! 惚れ直したぞコラァッ!!

 

「……冷やかしですか?」

 

 箒の良い子攻撃!

 しかしギャラクシーには通じなかった!

 

 あらやだ、視線が鋭くなっちゃってますね。

 

(うぅ……せ、旋焚玖、どうしよう…!? 怒らせちゃったぞ!)

(気にするな、お前は悪くない)

 

 後は任せろー。

 

「俺たちがヨガに興味がないと?」

 

「ええ。本当は別の目的があって、此処に来たのではありませんか? 例えば、対抗戦に備えて私の偵察……だったりしませんか?」

 

 ふんふむ。

 いいやり取りが出来た。これでギャラクシーは聡いという事も分かったし。だが、どうしようか。ここでコイツの言葉を認めちまうか、あえて反論してみせるか。

 

 

【駆け引きなんざいらねェ!! かかって来いオラァッ!!】

【俺の凄さを魅せつける】

 

 

 暴力はいけない(カミーユ)

 

 とはいえ、ぶっちゃけ【上】が手っ取り早い方法だったりするんだよなぁ。必ずしも生身の強さがISの技量に直結するとは限らないが、それでも何らかの手掛かりにはなるかもしれないし。

 それに冷静な状態よりも激昂している方が口も軽くなる。そうなったら、ポロッとISでの戦い方を吐く事だって期待できる。

 

 ただ、それはそれで、ギャラクシーと険悪な関係になってしまうリスクを背負う事になっちまう。こんな美女と自分から関係を悪化させていくなんてとんでもない。

 

 ここはギャラクシーも思わず唸っちまうくらい、俺の凄さを魅せつけてやるぜ! ヨガ的に!

 

「オラァッ!!」

 

「なっ…!? 開脚したまま腰を下ろした!?」(これは…ッ! 180度開脚座り!?)

 

「まだまだァ!!」

 

「ななっ…!? そのまま前へと上体をッ…!」(地面にお腹をぺったりつけた!? なんという柔軟性ッ…!)

 

 ヨガ的だろ?(どやぁ)

 

「これでもまだ冷やかしと言うかい?」

 

「むむぅ……そうですね、先ほどのは失言でした。しかし、とても身体が柔らかいんですね」

 

「旋焚玖は武道やってるからな」

 

 お、そうだな。

 

 いや冗談っぽく頷いたが、これは箒の言う通りである。ましてや俺レベルの武術家となりゃ、もう身体も間接も体操選手やヨガ行者が逃げ出すレベルさ。

 

 まぁ、ダルシムからは逃げ出したけど。アホの選択肢名物、毎夜恒例の想像上の相手との組手でな。腕がみょーんと伸びて余裕で捕まったけど。

 

『どうやって腕とか足とか伸ばしてるんですか?』

 

『気合いで』

 

 やっぱダルシムって凄ェわ。

 伊達に火は噴いてねぇぜ。

 

「もしやアナタも……?」

 

 む……ギャラクシーが箒を見ている。

 いや、けっこう期待した目で見ている!

 

「え、いや、私は……」

 

 何を遠慮する事があるか。

 お前も存分に魅せてやれい。

 

「箒も武道やってるからな」

 

「なるほど!」

 

「うぐ……わ、分かった。見せてやる」

 

 ちょこんと床に座った箒さん。

 両脚を開かず、真っすぐにしたまま上体を前へと持っていく。

 

「んーっ…………んぬーっ……!」

 

「こ、これは…!」

 

「……ふむ」

 

 両脚ピーン、腕もピーン。

 なお上体は全然動いてない模様。

 

「…………見せたぞ」

 

「お、そうだな」

 

 これ以上は何も言うまい。

 俺に死体蹴りの趣味はないのである。

 

「篠ノ之さんは身体がカチコチなんですね」

 

「うっ…!」

 

 やめて差し上げろ。

 いや、振った俺も悪かったな。

 

「身体が硬い奴はヨガに興味を持ってはいけない、なんて決まりは無いだろう?」

 

「それもそうですね。いえ、私も変にアナタ達に対して邪険にしてすみませんでした」

 

「あ、いや、頭を下げる事はないぞ! えっと…それで、ギャラクシーさんは普段は此処でどんな事をやっているんだ?」

 

 おぉ、箒が攻めに転じたか!

 フォローは任せろい!

 

「そうですね、お二人が来た時はちょうど瞑想をしているところでした」

 

 瞑想とな。

 中々に中二心をくすぐる響きである。

 

「ふむ……心を無にする、か。剣道に通じるものがあるな」

 

「ふふ、そんなに堅苦しいものではありませんよ。瞑想は、ヨガの要素の一つなんです」

 

 あらやだ、笑顔で会話なさっている。

 やっぱり異性よりも同性の方が仲良くなりやすいんだな。

 

「心が落ち着きますし、身体もリラックス出来るんですよ。良ければ、一緒にやってみますか?」

 

「私は興味あるな。旋焚玖はどうだ?」

 

「ああ、教えてもらおう」

 

 敵対する必要は無し。

 クラス対抗戦イベントも、他クラスの生徒との交流を目的としているって千冬さん達も言ってたしな。積極的に交流を持つべきだろう。褐色美女だし。

 

「さぁ、それでは始めましょう。私と同じポーズをしてみてください」

 

 ふんふむ……胡坐をかいて、と。

 

「手は指で円を作って、膝の上に乗せてください。あとは、肩の力を抜いて、自然に背筋を伸ばします」

 

 おぉぉ……なんか、それっぽい…!

 

「目を閉じて……呼吸を……深く……」

 

 

【2人とも目つぶってるし、ちょっとくらいおちんちん出してもバレへんか】

【10分間息を吸い続けて、10分間吐き続ける(波紋鍛錬法)】

 

 

 お前アホちゃう?(真顔)

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 お前ほんとアホじゃねぇの!? おちんちん!? おちんちんときましたか!? 少しは言葉のチョイス考えろよ何歳だお前! 【ちょっとくらい】もクソもねぇんだよ! 1ミリでも薄目られたらアウトじゃねぇか! 退学どころかマジで逮捕案件出してくんじゃねぇよバカ! 

 

 くっそぅ……お前マジで覚えてろよ…!

 絶対いつか波紋疾走喰らわせてやるからなマジで。絶対に溶かす。溶かして伸ばして金太郎飴にして喰ってやるからなマジで。

 

「……こォオオオオオ…!」

 

 俺の肺活量ナメんなよオラァッ!!

 やってやる、やってやるよ…!

 

「……いえ、『こぉぉ~』ではなく……主車さん…?」

 

「こォオオオオオ…!」

 

「お、おい旋焚玖?」

 

 

 

 

 

 

……(3分経過)

 

 

「こ、こぉぉ~……ぉぉ~……ケプッ、ケホッ、ゴホッ…!」

 

「あぁっ、旋焚玖!?」

 

 ハイ、無理でした。

 息を止め続けるのと、息を吸い続けるのは違うんだなって思いました。波紋使いってやべぇ。

 

「急に意味不明な無茶をするな馬鹿者!」

 

 とか言いつつ背中をさすってくれる箒さんマジ天使。

 いやでも、マジですまんね。アホの選択肢が今日も今日とてご迷惑お掛けします。俺も頑張って抵抗したんだけど(約3分)流石に今回は負けちゃったよ。おちんちん出してりゃ良かった。

 

「……主車さんって、普段からこんな感じなんですか?」

 

 こんな感じって言うなよ!

 それだといつも俺がアホアホしてるみたいじゃないか!

 

「……う、うむ。まぁこんな感じだな」

 

 箒が言うなら間違いないな!

 いや、マジでウチの選択肢が迷惑かけてすんません。

 

 

【お返しに俺の武を見せてやる】

【お返しに日本の文化を見せてやる】

 

 

 ちょこちょこ俺を暴れさせようとするのヤメてほしいんだけど。好戦的なキャラ付けとか求めてないから。ラブコメにバイオレンス要素はフヨウラ!

 

 そういやギャラクシーも言ってたっけ。この学園に来たのは、文化交流も含まれているって。これは渡りに船じゃないか。

 よし、日本の誇れる文化を教えてやるぜ!

 

 

【HENTAI文化を今すぐ教える】

【HENTAI文化は後日に教える】

 

 

 絶対に教える系ヤメてよぉ!

 遅いか早いかの違いだろぉ!

 

 後に決まってんだろバカ! 嫌な事を先延ばしして何が悪いか! というかほぼ初対面な関係で教えられる訳ないだろアホ! 仲良くなってからでもキツいわ! 

 

 教えるまでにクッソ仲良くなってやる…! 教えても『日本は未来に生きてるのですね』って苦笑いで済ましてくれる仲にならねば…!

 

 よし、もう切り替えよう!

 とにかく、今からは普通の! 普通の日本の文化を教えるのだ!

 

「ギャラクシーは茶道に興味はないか?」

 

「茶道、ですか? どうして急に?」

 

「ヨガの体験をさせてくれたお礼だ。あと、文化交流だな」

 

 茶道部なら千冬さんも居るしな!

 恐れるものは何もない!

 

「文化交流……ええ、興味あります」

 

「よし、なら今から茶道部に行くぞ。一緒に体験しようぜ」

 

「い、今からですか?」

 

「ふむ……思い立ったが吉日、だな?」

 

 いいアシストしてくれますねぇ!

 

 というか絶対に拒否させねぇからな。断られたら、強制的にHENTAI文化紹介へ移行させられる気配がプンプンなんだよ。

 

「分かりました。では、共に行かせてもらいます」

 

 やったぜ。

 なら茶道部に行くぜ!

 





ならサ店に行くぜ!

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