まずは緒戦、というお話。
(※ 意味不明なバグは修正しましたm(_ _)m)
大胆不敵。
刺客だと言われて笑みを浮かべてみせるか。可愛い。
「……私の目的はあなたを此処に留まらせておく事」
「む……それはどういう…!?」
クロニクルの身体が小さく沈むと同時に、地を駆け俺の方へと跳び込んできた。ヒェッ……闘氣まで放って闘る気満々じゃないですか!
【いったい誰に喧嘩を売ってるのか身をもって理解させる】
【暴力を暴力で迎え撃つは安直。丁重になだめるべし。関西弁で】
さっきからやけに関西弁推してくるなお前な。
内容はひとまず置いておくとして。【上】はバイオレンスな青春への引き金となりそうだ。【下】を選べば、まだラブコメなハイスクールライフを継続させられる気がする!
ラブコメタイム継続!
俺は【下】を選ぶぜ!
「……ぼんやり立っていていいのですか?」
いや速いなコイツ!?
もう眼前とか常識から逸脱してんぞ!
「貰います…!」
貰う訳ないだろバカ!
貰ったら痛いだろバカ!
顎下から唸り上がる拳を半歩下がって回避。は己の意思で。しかし、同時に口が開く。己の意思とは関係なく。
「やめましょうやぁ……」
は?
「……は?」(迫真)
アカン。
◇
旋焚玖が刺客と化したクロエを関西弁で丁重になだめている頃、第3アリーナでは一夏とヴィシュヌによる試合が火花を散らして繰り広げられていた。
「うおおおおっ!」
「甘いですっ!」
「ぐぅっ!?」
試合が開始されてから、もう何度目かになるブレードを突き立てた一夏の突進を、回し蹴りで軽くいなしてみせるヴィシュヌは声を上げる。
「気合がぼけていますよ、一夏!」
「はぁっ、はぁっ…! や、やっぱ代表候補生は凄ェな…!」
壁に激突寸前のところで何とか体勢を立て直した一夏。自分から攻撃を仕掛け続けているものの、これまで全てカウンター気味にあしらわれており、機体のダメージは早くも両者で明白に差が出ていた。
「んもうっ! 何やってんのよー! もっとがんばんなさいよぉ!」
「……難しいかもしれんな。2人とも同じ近接型だが、ヴィシュヌは…」
「う~……分かってるわよぉ。ヴィシュヌは接近戦にかなり長けているわ。あたしでも勝てるかどうか……正直、微妙よ」
ヴィシュヌの纏いしIS【ドゥルガー・シン】は蹴りを攻撃主体とされた機体である。
武器を持たない両腕で上手く攻撃を捌き、両脚をもって相手にダメージを与える戦術。観客席で応援している鈴と箒はそんな印象を受けていた。
「一夏もそれは一合目の競り合いで気付いたのだろう。接近戦では分が悪いと、ヒットアンドアウェイにすぐさま切り替える思い切りの良さは買いたいが……むぅ」
ヴィシュヌへと突進し【雪片弐型】で斬りつける。結果がどうあれ攻撃するのは一振りのみ。すぐさま離れては、突進して一撃を。お世辞にもヒットアンドアウェイと評すには程遠い。
「アイツはまだまだ初心者よ。しかも【零落白夜】まで封印しちゃってるんだから、戦術が乏しいのは仕方ないわ。ただ……」
「ああ。ヴィシュヌは一度も一夏の斬撃を喰らわず、逆に必ず一撃を入れている。ほんの少しもミスる事なく冷静にな。精神的にも見事と言う他ない」
遠距離型のセシリアとは異なり、ヴィシュヌの戦闘スタイルは一夏と噛み合い過ぎているのも一因だった。同じ土俵だと誤魔化しはきかない。余計に地力の差が明確に出てしまう。
「へっ…! まだまだァッ!!」
圧倒的な差を一番理解しているのは本人である一夏だった。それでも少年は決して弱音は吐かない。勇猛果敢にヴィシュヌへと挑み続けるのであった。
(不格好に足掻いてこそ男の矜持! そうだよな、旋焚玖! 俺はまだまだ頑張れるぜ!)
◇
「やめましょうやぁ……やめましょうやぁ……」
「……くっ!」
パンチ。
避ける。
「やめましょうやぁ……」
なだめる(?)
「このっ…!」
キック。
避ける。
「やめましょうやぁ……」
なだめる(?)
「~~~~~ッ!!」
乱打乱打乱打。
避けて避けて避けまくる。
「やめましょうやぁ……やめましょうやぁ……」
なだめてなだめてなだめまくる(?)
いや、これ、ホントになだめてんの?
自分で言っててアレだが、結構イラッとくるヤツだと思うんだが。訛り方といい、ねっとりトーンといい。
俺が日本人だからそう感じるだけか? 外国人にはなだめられているって捉えられるモノなのかな。
「……随分と煽り上手なのですね」(なるほど……これが束様が仰っていた人を食った態度、ですか)
やっぱり苛立たせてるじゃないか!
どうすんだよ! なだめるどころか絶賛真逆な効果発揮中じゃねぇか!
何がラブコメタイムだ!
イライラタイムになっちまってるじゃねぇか! 勝手に高確移行してんじゃねぇよ!
【仕込刀を抜いたならば、敬意をもってお相手いたす】
【まずは俺の暴れん坊将軍を抜いてみせる】
急にド下ネタぶっ込んでくるのやめろや!
暴れん坊将軍ってお前それチンチンだろぉ!? 刺客に襲われてチンコ出す奴見た事あんのかお前! 100歩譲ってもキチガイすぎんぞコラァッ!! 刺客も逃げ出すわ! 違う意味で逃げ出すわ! 任務放棄待ったなしだわ!………あれ? 襲われなくなるなら、それでいいんじゃ……いやいやダメだ、結果は良くても過程がチンコすぎる。
「仕込刀を抜いたならば、敬意をもってお相手いたす」
クロニクルの持つ杖から、何やら重苦しい空気は感じていたが、まさかの仕込刀ってるんですか? 北条氏康(無双)ってるんですか?
いやいや、待ってくださいよ。もう言っちゃったけどさ、そういうのはいけない。俺の言葉なんか気にせず、このままステゴロでいきましょうよ!
「……フフ、見て取られていましたか」(なるほど……これが束様が仰っていた洞察力、ですね)
ひゃぁぁ……ま、マジで仕込んでますよ!
本日一番の笑顔で抜かれましたよ!
銃刀法違反ですよ銃刀法違反!
警察に通報してやるからなお前な!
「……参ります…!」
俺の身に迫り来る刃。
いやちょっとは躊躇してもいいのよ!?
うわわ!
避けよう! 斬られたら痛いもん!
スススっと避けたら口が勝手に一言物申す。
「やめましょうやぁ……」
「……(ピキッ)」
うわわ…まだソレ終わってなかったのか。
敬意とはいったい(困惑)
またまた斬りかかってくるクロニクル。
ヒェッ……笑顔が消えてます。
とりあえず、よ、避けよう。
斬!
避ける!
「やめましょうやぁ……」
「くぬっ…!」
斬!
避ける!
「やめましょうやぁ……」
「くぬくぬくぬっ…!」
斬斬斬!
避けて避けて避けまくる!
「やめましょうやぁ……やめましょうやぁ…」
「はぁっ…はぁっ…はぁっ……何なんですか、あなたは…!」
我は主車旋焚玖、選択肢の咎から逃れられぬ者也!(厨二心)
ええい、今はそんな事どうでもいいわ!
「敬意をもって」(キリッ)からの再煽りとか、手が込みすぎてんだよこのヤロウ!
ラブコメタイムかと思っていたら実はイライラタイムでさらにその上プンスカタイムになってんじゃねぇか! なに上乗せしてんの!? 特化ゾーンかこのヤロウ!
「はぁ…はぁ……ふぅ……あなたは随分、人を苛立たせる事に長けているようですね」(これは……正直、束様から聞いていた以上です……クロエの頬が勝手にピクピクしてしまいます)
これはプンスカしてますね、間違いない。
「……これを観ても、まだその余裕を保てますか?」
俺とクロニクルの間に、ディスプレイが浮かび上がる。空中投影ディスプレイってヤツですね。何の映像を観せるつもりなのか。
「む…?」
アリーナ?
ああ、今ちょうど一夏とヴィシュヌの試合ってるもんな。
「これは…」
いやちょっと待て、一夏とヴィシュヌの他に何か変なのも居るぞ! 何だあの黒い物体X!?
物体X:すいませ~ん、ゴーレムですけど~、ま~だ時間かかりそうですかね~?
一夏:うおおおおっ!
ヴィシュヌ:はぁぁぁっ!
物体X:何やってんだあいつら・・・(IQゴーレム)