選択肢に抗えない   作:さいしん

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新たな絆、というお話。



第87話 闘いの後は

 

 

 俺たちの前に浮かんでいたディスプレイが消えた。消える寸前に映ったのは、勝利に笑顔を咲かせる一夏たちの嬉しそうな様子だった。俺も嬉しいぜ!

 

 屋上の人質解放戦。

 観客席の混乱鎮静戦。

 アリーナの無人機討伐戦。

 

 3タテだよ3タテ。

 一つの取りこぼしもなく、完全勝利と言えよう。

 

 クロニクルに負けた? 

 知りませんねぇ、ちょっと気まずい雰囲気になっただけで、別に敗北した訳じゃないから。というか相手はクロニクルじゃなくて、アホの選択肢だからノーカンだよノーカン。

 

「……クロエたちの負け、ですか」(屋上に続き観客席、アリーナと悉く敗北を喫してしまいました。これだけ完敗だと、ぐうの音も出ません。束様……クロエはどうしたら…)

 

 そうだよ。

 

「これから、クロエをどうするおつもりですか?」

 

 あ?

 そんなモンお前、千冬さんに突き出すに決まってんだろ。美人だったらナニしても許されると思うなよ、思う事なかれ! 犯罪は犯罪である! ちゃんと線引きできる俺は偉いのである!

 

 

【お前は今日から俺の肉便器になるのだ】

【お前は今日から俺のメル友になるのだ】

 

 

 極端すぎィ!!

 お前ホント0か100な脳みそしてんな! 肉便器てお前古いんだよもう死語じゃねぇか! おっさんか! おっさんだろ! お前今年でいくつだ!? 言ってみろコラァッ!!

 

 負けたからヤらせろとか完全に悪役のソレじゃねぇか! 純情な感情を持つ(童貞の隠語)俺にそんな事言える勇気があると本気で思ってんのかよ!

 

「……お前は今日から俺のメル友になるのだ」

 

 侵入者を負かした挙句「メル友になろう」と投げかける奴が居るらしいですよ(困惑)

 

「……は?」(は? え、は…? めるとも? いいえ、メル友くらいクロエも知っています! えっと、確か電子メールを利用する「メール友達」の略称だった筈です)

 

 クロニクルはとても唖然としている!

 俺もソーナノ。

 

「ちょっと何言ってるか分からないです」(……友達? クロエが? 主車さんと?)

 

 クロニクルはとても困惑している!

 俺もソーナノ。

 

「……少し、整理させてください」(もしかしてクロエの認識が違う? いえ、そんな筈がありません。クロエは束様に拾われてから、たくさんお勉強しました。俗世の事もちゃんとwikikipediaで調べました! 確かメル友というものは、もともと友人関係になかった者同士が、ウェブサイトなどで知り合い、頻繁にメールをやり取りするような親しい間柄になる、というのが一般的な定義だった筈です。……ウェブサイト? 屋上はウェブサイトだった…?)

 

 クロニクルはとても混乱している!

 俺もソーナノ。

 

「……ふんふむ」(しかし、実際に会っている者同士でも、電子メールを頻繁に利用すれば「メル友」と呼称する場合もある、と記されていました。つまり、主車さんの言葉は理に適っていない訳でもない…?)

 

 クロニクルは何やら頷いている!

 なんでぇ?

 

「一つ、質問させてください」

 

「……聞こう」

 

「クロエとあなたは友達なのですか?」

 

 

【んな訳ねぇだろ何様だてめぇ殺すぞ】

【当たり前だよなぁ?】

 

 

 怖すぎィ!!

 友達かどうか聞かれただけで殺すとかキチガイすぎるだろ! お前が何様なんだこのヤロウ!

 

「当たり前だよなぁ?」

 

「……何故?」(クロエに友達なんていません。だから理解できません。どうしてクロエと主車さんが友達なのか)

 

 そんなモンお前俺が聞きたいわ!

 いつ俺がコイツと友達になったんだよ! 誰だコイツ!? クロエ・クロニクルだよ! 名前しか知らねぇよ!

 

 あぁもうっ!

 何故かコイツもメル友な方向に傾いてるし、もういいんだな!? 俺もそっち方面に全力していいんだな!?

 

「日本人じゃないお前には難しいかもしれないが、日本にはこんな言葉がある『拳を交えた者は友となり、死合った果てには親友となる』ってな」

 

「そんな言葉が…!?」

 

 ありません。

 いや、一応あるにはあるか。

 俺も最近、拳志郎に殺されかけた後で朋友になったし。北斗神拳ってしゅごい。

 

「先の攻防で俺たちはもう友達になっていたのさ」

 

「……そうだったのですか」

 

 そうだよ(自己暗示)

 

「そうじゃなきゃ、2人肩を並べて観戦なんてしないだろう?」

 

「それは……確かに、仰る通りですね」

 

 これはもう友達な関係を根拠付けで受け入れていますね。やっぱ俺って口先の魔術師だわ(どやぁ)

 

 こうして俺とクロニクルはメル友になった!

 なんでぇ?

 

「でも、クロエはメールというものを送った事がありません」

 

「む……?」

 

 そういやアドレス交換も何やらたどたどしかったっけな。現代の若者には珍しいアナログ派なのかもしれない。俺をおびき寄せたのも手紙だったし。あ、そうだ手紙だ! 思い出したぞコイツの文面!

 

 

【前半の文面について聞いてみる】

【虚を突いてスリーサイズを聞いてみる】

 

 

 コイツの見た目からしてキュッキュッキュなんですが。

 そういうのはボンキュッボンだから聞きたくなる訳で。あ、今回は別にいいです。俺は身体で優劣を決めるような男じゃないから(至言)

 

「あの手紙は何を思って書いたんだ?」

 

「……ああ、あれですか。クロエはお手紙を書くのも初めてだったのです」

 

 初めてであんな卑猥な文章を思いつくのか(困惑)

 コイツすげぇ変態だぜ?

 

「なので、インターネットで調べました」

 

 なるほど、自分で考えた訳じゃないんだな。つまり、コイツは変態ではないと。嬉しくもあり、ちょっぴり悲しくもある男子高生な気分だぜ。

 

「ネット界には世界各国の猛者が集まるという凄い掲示板があるのです」

 

 ん?

 

「そこで男性の気を引く手紙の書き方を聞いたのです」

 

「……それはすぐに教えてもらえたのか?」

 

「いいえ、最初は皆さん理解できない言葉を羅列されていました」

 

「……下げろカスって言われたか?」

 

「い、言われました!」(……なんと。この人は見識も深いのですね……流石は束様に一目置かれているだけの事はあります…!)

 

 お前それ〇ちゃんじゃねぇか!

 そんなトコで聞いたらそらそうなるわ!

 

「ですが途中からは皆さんが親身に文章を練ってくれました!」

 

 親身に練った果てが「変態糞娘」なのか……オモチャにされてるだけだと思うんですけど(凡推理)

 

「メールの打ち方も教えてもらいます。これで安心ですね」

 

 

 不安しかないんですがそれは…。

 

 

【ネットの変態共に任せられるか! 俺が手取り足取り腰取り教えてやる!】

【これで安心ですね!】

 

 

 【腰取り】が書かれた時点で【上】も変態なんだよなぁ。俺は変態にはなりたくない、なりたくなぁい! 

 

「これで安心ですね!」

 

 すまん、クロニクル。

 俺の名誉のためにネット社会に穢されてくれ。これも経験だ、きっと大人になれば笑えるさ。乾いた笑いだろうがな。その時は一緒に笑ってやるさ。俺は指さして嘲笑うだろうがな。

 

「はい」(うふふ、まさかクロエにもお友達が出来るなんて思いもしませんでした。しかもこのような場所で。あ、そうだ、束様に頼んでパケ放題にしてもらわなきゃです…!)

 

 一礼して俺から背を向けるクロニクル。

 今回の件でIS学園の守備は世界一ザルって事も分かったし、きっと誰にも見つからず此処から去って行くのだろう。

 

 というか、普通に逃がしていいのか?

 冷静に考えて……いや、冷静に考えなくてもイカンでしょ。可愛い顔してるけど、コイツすっげぇ侵入者だぜ? 

 

 やっぱり、とっ捕まえて千冬さんに差し出すのが無難だろ。

 

「おい……―――」

 

 

【エッチッチなメールを待ってるぜ!】

【インパクトなメールを待ってるぜ!】

 

 

 【上】コラァッ!!

 性欲持て余した中坊かコラァッ!!

 

 

 

 

「例の解析結果は出たか?」

 

「はい。これを見てください」

 

千冬は真耶から渡された紙に目を通す。

あの激闘から3時間ほど経った今、2人は学園の地下五十メートルにある特殊棟に来ていた。そこはレベル4権限を持つ関係者しか入れず、一般生には存在の有無すら知らされていない特別な空間である。

 

「……やはり無人機、か」

 

それは、世界各国で開発が進められている中でも、まだ完成されていない筈の技術だ。そう、完成されていない筈。曖昧な表現には理由がある。

 

IS競技というモノを仮想敵国との闘いとみなしている国は実は少なくはない。新たな技術が完成しても公表する義務はないのだ。

 

「コアは?」

 

「それが……登録されていないコアでした」

 

「……そうか」

 

千冬の予測にあった「某国の陰謀」は消去される。彼女の知る限り、コアを造り出せる者など、この世で1人しか思い付かないのだから。

 

「何か心当たりが…?」

 

「……さて、な」(アホ兎のアホな顔が嫌でも浮かんでくる。アイツが表舞台に出てくるのなら、私もこのままという訳にはいくまい)

 

千冬は真耶から背を向けて出口へと向かう。

 

「織斑先生、どちらへ行かれるんですか?」

 

千冬はニヤリと笑ってみせた。

 

「封印を解きに、な」(最上大業物二振り【月下美人】【幻魔】。そして私の専用機【暮桜】。どちらも現役を退いてからは封じていたんだがな。きっと、そうも言ってられんだろう)

 

「アッハイ」

 

真耶は思った。

厨二っぽいと。

 

しかし、そこは真耶も大人である。自分にもこんな時代があったなぁ…と、しみじみアンニュイな気分に浸るのと同時に、違う話題を提供する事にするのであった。

 

「……あ、そ、そうだ! 主車君の話、聞きましたか?」

 

「ん? ああ、アレか? 侵入者と連絡先を交換した挙句、逃がしたってヤツか?」

 

「は、はい……やっぱり怒ってますか?」

 

真耶は千冬が怒っていると思ったのだろう。少しビクビクしながら問いかける。改めて旋焚玖の行動を言葉で表すと、普通に大逆罪モンである。

 

「ふむ。ちなみに山田先生は、どうして主車があんな事をしたと思う?」

 

「仲良くなりたかったからだと思うんですけど」

 

「どうして仲良くなりたいと主車は思ったんだ?」

 

「主車君のタイプだったからだと思うんですけど」

 

「フッ……いいか、真耶。物事の表面だけを見るな。特に主車が相手ならな」

 

千冬の言葉に真耶は首を傾げる。

千冬が何を言いたいのか、いまいち伝わっていないようだ。

 

「あの侵入者は学園に害をなした。IS学園にとっての敵という事になる。普通なら捕らえるべき存在だが、主車はあえてそれをしなかった。それは何故か?」

 

「主車君のタイプだったからだと思うんですけど」(2度目)

 

しかし千冬の耳には届かなかった!

 

「敵を敵のままにしておくより、味方に引き込む事を選んだのさ。あの侵入者が主車に心を開けば、敵の内情もいずれ教えてもらえるかもしれんからな」

 

「そ、そこまで主車君は狙って…?」

 

「敵だから捕縛する。それは目先までしか考えが及ばない2流のする事だ。大局を見渡せる者にはな、敵味方の固定観念などない」(まぁそれも、敵を惹きつける魅力あっての話だがな。ふふ、流石は旋焚玖だ。敵とも絆を芽生えさせてしまう器量は然る事ながら、先の先まで見通せるその鬼才…! 現代の司馬仲達と呼ばれるだけあるな(織斑家限定))

 

「はぇ~……主車君って凄いのは身体能力だけじゃないんですねぇ」

 

「フッ……まぁな」

 

真耶は神妙に頷き、千冬は際限なく誇らしげであった。

 

 

 

 

すっかり夜の帳が下りた頃、とある隠れ家で何やらポチポチしている銀髪の少女在り。

 

「……インパクトある手紙の書き方をご教授ください、と」

 

曰く、世界各国の猛者が集う掲示板で教えを承ったクロエは、昨日の敵は今日の友と化した旋焚玖に初メールを送るのだった。

 

 

 

 

「ん…メール?」

 

 アリーナで【たけし】に俺の華麗なモンハンプレイを披露してたら、クロニクルからメールが届いたでござる。しかし、ホントに送ってくるとは律儀な奴なんだな。どれどれ……?

 

 

『やったぜ。 投稿者:変態糞土方』

 

 

 もう汚い。

 

 

『昨日の8月15日にいつもの浮浪者のおっさん(60歳)と先日メールくれた汚れ好きの土方のにいちゃん(45歳)とわし(53歳)の3人で県北にある川の土手の下で盛りあったぜ。』

 

 

 汚い。

 

 

『……――やはり大勢で糞まみれになると最高やで。こんな、変態親父と糞あそびしないか。ああ~~早く糞まみれになろうぜ。』

 

 

「…………………」

 

 よし、モンハンの続きしよ。

 

 






クロエ:へ、ん、た、い、く、そ、ど、か、た…と。

束:∑(゚□゚;)


クラス対抗戦編終わり!(閉廷)

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