選択肢に抗えない   作:さいしん

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生まれる疑惑、というお話。





第93話 無双乱舞

 

 

 

選択肢の愛奴隷な旋焚玖君。

今日も元気に周りの反応シミュレーション。

 

 

【パンツくれ】

 

 

「「「 お前ホモか!? 」」」(疑惑)

 

 

【おちんちん触らせてくれ】

 

 

「「「 お前ホモか!? 」」」(確信)

 

 

 どっちもホモじゃないか!(憤怒)

 

 そりゃそうだ、だって対象が男だもん! 男のパンツ欲しがるノンケがいるかよ! 男のおちんちん触りたがるノンケがいるかよ! 居ねぇよ!

 

 【上】でも【下】でも結局は逃れられぬカルマ…! 程度の差に過ぎない…! 【疑惑】か【確信】か。

 

 いや【疑惑】選ぶに決まってんだろアホか! 100万回聞かれても【上】選ぶわ! 【下】だけは絶対選ばねぇわ!

 

 だから今回も当然俺は【上】を選ぶ!……で、いいんだよな? え、いいよな? なんか…あからさま過ぎな二択が、今になって逆に不安になってきたんだけど。

 

 俺の記憶が正しければ、男相手にここまで直接的な【選択肢】が出たのも初めてな筈だ。え、マジでどうしよう。え、【下】? 【下】なの? 

 

 確かに【上】と見せかけて【下】が正解とか、いかにもアホの【選択肢】がやってきそうな手だ。……いや、待てよ。コイツは誰よりも俺を知っている。俺のIQがコナン君36人分って言われている(言われていない)事もコイツなら知っている筈だ。

 

 俺の思考を読んで、【上】と見せかけて【下】が正解と見せかけて、やっぱり【上】の方で正しかった、なんて裏の裏をかいてくる事だって十分に考えられる。

 

 いや、待てよ?

 裏の裏の裏をかいて【上】と見せかけて【下】が正解と見せかけて、やっぱり【上】の方が正しいと見せかけて、実は【下】かもしれない…!

 

 いや、待てよ?

 もしかしたら裏の裏の裏の裏の――(沼思考)

 

 

.

...

......

 

 

 裏裏うるせぇ!(ゲシュタルト崩壊)

 分かるか! こんなモンお前疑いだしたらキリないわ!

 

 何が正しいかで決めるよりナニがしたくないかで決めろよ!(至言)

 

 男のおちんちんなんて触りたくねぇわ! 何が悲しくて初対面の美系フランス人(♂)にオチンポお触りおねだりしなきゃなんねぇんだ! 公衆の面前でしなきゃなんねぇんだ!

 

 【上】でいいんだ上等だろ!

 パンツだパンツ!

 パンツじゃないから恥ずかしくないもん!

 

「パンツくれ」

 

「え……えぇぇぇぇっ!?」(な、な、な…! パンツ!? いま僕、パンツくれって言われたの!? なんで!? ぼ、僕、ちゃんと男の子の格好してるのよね!? それなのにどうして!? まさか……バレちゃってるの…?)

 

 驚きモモンガなデュノア君。

 当たり前だよなぁ?

 

 今日初めて会って、初めて声を掛けて。

 返って来た言葉が『パンツくれ』ときたもんだ。しかもそれが異性ではなく同性ときたもんだ。

 仮に俺がデュノアの立場だったら、思わずケツを押さえてるね。貞操ガード的な意味で。

 

 まぁいい。

 周りが騒ぎ出す前にリカバリーを――。

 

 

「「「 お前ホモか!? 」」」(歓喜)

 

 

 疑惑でも確信でもない、コイツら……歓喜してやがる!(恐怖)

 まさか、俺の見通しが甘かった…!?

 

「大胆なおねだりいいゾ~コレ」

 

「女子校で薔薇提供はまずいですよ!」

 

「ああ^~、美少年×野獣とか捗っちゃうんじゃあ^~」

 

「同人誌書かなきゃ(使命感)」

 

 

1組における旋焚玖への好感度が瞬時加速!

 

 

 くそ、俺は見くびっていたのか…!

 花も恥じらう女子連中の飽くなき探求心を…!

 

 このままじゃまずい。

 心なしか女子共の俺を見る目に慈愛を感じるが、そういう受け入れられ方は嫌だ! 絶対嫌だ断固拒否する!

 

 しかしどうすればいい…?

 

 恒例の雑学フランスバージョンを披露して、ハイ終わりって感じでいけると思っていた。だが、コイツらのお目目ギラギラっぷりを見るに、それだけじゃダメだ。なのに、いつもみたいな圧倒的閃きが起こらねぇ…! 

 

 焦ってんのか? 

 焦ってるわ! 

 

 命の瀬戸際みたいな軽いモンじゃねぇんだぞ!? こちとらホモかノンケかの瀬戸際なんだぞ!? 

 

 早く、早く考えろ。

 いつまでも黙ってたらマジでマジだと思われかねん…! どうする、どうする、どうすればいい…!

 

「お~、久々に聞いたな旋焚玖のソレ! 鈴が初めて転校してきた時も、そうやってリラックスさせてたっけな!」

 

 そうなんだよ一夏!

 俺もそれが言いたかったんだ! 

 

 しかしこの空気の中、パンツをねだった俺が言っても『ほんとぉ?』ってなるに決まっている。そんな俺の立場を汲んで代弁してくれた一夏よ…! 俺が世界征服したら総理大臣に決まりだお前!

 

 この日この時この場所に一夏が居てくれた事を俺は神に感謝しよう。無宗教な俺でも、今日ばかりは神様の存在を信じたくなったぜ。

 

 

【箒にもコメントを求める】

【鈴にもコメントを求める】

 

 

 (選択肢の)家畜に神はいないッ!!

 

 ふざけんなバカ! やめろバカ! どうして僕をそんなに困らせるんですか! 被害者にコメント求めんなよ! 犯人に求めさせんなよ!

 

「ほ、箒さんや」

 

「あ゛?」(私と鈴にしか言ってなかったのに…! どういうつもりだ旋焚玖…!) 

 

 ヒェッ……ダメみたいですね。

 残念でもないし当然なんだよなぁ。大和撫子な箒にとっちゃ、いかに小学校の時の話とはいえ黒歴史もいいところだし。

 

 

【箒へのインタビューを諦めない】

【鈴にもコメントを求める】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 

「り、鈴さんや」

 

「あ゛ぁん!?」(あたしと箒にしか言ってなかったのに! それをまさかまさかの男に言ったですってぇ…! どういうつもりなのよ旋焚玖ぅ…!)

 

 ヒェッ……鈴さんもプリプリですね。

 乱ママにチクられたらどうしよう。

 

「ちょいす~はでゅっち~のパンツがほしい訳じゃなかったの~?」

 

「でゅ、でゅっち~?」(僕のこと、なのかなぁ?)

 

 ナイスなアシストだ布仏!

 これで流れも変わるッ…!

 

「当然だ。デュノアも驚かせて悪かったな」

 

「う、ううん! 大丈夫だよ! 気を遣ってくれたんだよね、ありがとう!」(よ、良かったぁ……僕の事がバレてるかと思ったよぅ…)

 

 これで一件落着だな!

 

「は? ちょっと待って!」

 

「濃厚な薔薇描写が入ってないやん!」

 

「美少年×野獣が見れると思ったからテンション上がったの!」

 

「どうしてくれんの? 乙女の純情な感情を弄んでさぁ」

 

「分かる?この罪の重さ」

 

「つっかえ……ほんまつっかえ!」

 

 

1組における旋焚玖への好感度が瞬時減速!

なお原状復帰に留まった模様(朗報)

 

「今から女子が着替え始めるからな。挨拶は移動中にしよう」

 

「う、うん」

 

 

【シャルルの手を取って教室から出る】

【一夏の手を取って教室から出る】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 

「一夏ァッ!!」

 

「お、おう!?」

 

「お手手つないで行こうぜ! お前はデュノアのお手手な!」

 

 アドリブ力復活だオラァッ!!

 手繋ぎが確定してんならこれが最善の筈…!

 

「何で?……あ、そっか! デュノアが迷子にならないためだな! よし分かったぜ!」

 

「え? え?」

 

 野郎三人で仲良く更衣室までイクゾー。

 相変わらずゴツゴツした手してんなお前な! 握ってても全然嬉しくねぇよ!

 

 デュノアの手はどうだ? 

 感想言えコラ一夏コラァッ!!(八つ当たり)

 

「……手ぇほせーな、お前なぁ。女の子みたいな手ぇしてんなぁ」

 

「えぇっ!? そそそんな事ないよ! ほら、早く行こうよ!」

 

 そこまでキョドる事かぁ?

 まぁいいか。此処でグダってる時間もないし。

 

 真ん中を一夏、左右を俺とデュノアで堅めた鶴翼之陣でいざ出陣! 向かうはアリーナ更衣室である! 一直線にイクゾー。

 

「主車くんが織斑くんの手を繋ぐ必要性は全くないと思います」(名推理)

 

「という事はつまり、どういう事なのでしょうか」

 

「そういう事だと思っていいのでしょうか」

 

「主車くんは堂々と二股宣言したんだよ!」(結論)

 

「「「 やっぱりホモじゃないか! 」」」(歓喜)

 

旋焚玖の知らないところで、またもや1組における彼への好感度が瞬時加速するのだった。

 

 






シャル:バレてないバレてない

選択肢:バレてるゾ

シャル:Σ(゚д゚lll)


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