選択肢に抗えない   作:さいしん

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被害者シャルル君、というお話。



第94話 選択肢の洗礼

 

 

「とりあえず男子は空いてるアリーナ更衣室で着替える事になってるんだ」

 

「実習のたびにこの移動だが、まぁそのうち慣れるさ」

 

「う、うん」(説明してくれるのは凄くありがたいんだけど……なんで僕たち、手を繋いで移動してるんだろう)

 

 そんな苦笑いして頷かないでくれ、心が痛む。

 俺だってな、きっとお前と全く同じ事を思ってるさ。野郎3人が仲良く手ェ繋いで、廊下を横一列で歩くなんざ正気の沙汰じゃない。

 

 女子校でそれは正気の沙汰じゃない。

 危険性はさっきの女共で証明されてしまった。

 

 けど【選択肢】に出されちゃったんだもん。

 お前には分からんだろうが、俺だって気を遣ったんだからな。初対面同士でお手手つなぐなら、フツメンの俺よりイケメンの一夏の方がまだマシだろうって思ったから、俺は一夏を選んだんだ。そこんとこは感謝しろよこのヤロウ。

 

 しかし一息ついてる暇はない。

 廊下を歩くって事はだな、1組という壁が無くなる訳で。

 

「うひょー! 転校生発見伝!」

 

 1組と同じノリした奴らが、他クラスの枷外して来るんだよなぁ。いつもみたいに悲鳴上げて逃げてくれねぇかな。

 

 俺だぞ~? 

 お前らの知ってる俺はとっても怖いんだろ~?

 

「しかも織斑くんと……ゲェーッ! 主車くんも居るわよ!?」

 

「くっ…! エデンは目の前だと言うのに…!」

 

「主車くん…! 私達の前に立ち塞がるのはやはりあなたなのね…!」

 

 ああ、やっと……ヒャられるのが終わったんやなって。俺もようやく1年の女子たちに少しは受け入れられたんやなって。

 状況がアレだから何ともやるせないが、それでも無駄に怯えられなくなったのは普通に嬉しいな。

 

「うほっ、見て見て、お手手つないでるわよ!」

 

「あぁ^~、IS学園に入学して良かったんじゃあ^~」

 

「男前×野獣×美男のトライアングル! ありですねぇ!」

 

「くぅぅ~っ! もっと近くに寄りたいけど! 流石にそれはまだ怖いし…!」

 

 ふむ。

 コイツらの様子を見るに、俺への恐怖感が完全に消えてる訳でもないのか。なら、めんどくせェ事になる前にちょいとハッタるか。

 

「英断だ。それ以上近づくと……」

 

「ち、近づくと?」

 

「ボンッ……だぜ?」(意味深)

 

 ちょっとだけ威圧感も混ぜてみました。

 

「「「 !!? 」」」

 

 瞬間、野次馬ってた連中が一斉に壁際へシュババッとね。うむうむ、これで横一列でも全然歩けるな。フッ……俺の事はモーゼと呼んでくれてもいいのよ? 紅海的な意味で。

 

 しかし、これでようやく落ち着いて会話も出来るってなモンだ。お手手は繋いでいるものの、俺ら3人はまだ満足に自己紹介すらしてないんだし。

 

「何にしてもこれからよろしくな。俺は織斑一夏。一夏って呼んでくれ」

 

「うん。よろしく一夏。僕のこともシャルルでいいよ」

 

「わかった、シャルル」

 

 数少ない同性だしな。

 苗字で呼ぶとかえって距離感が開いてしまうし、俺もここは名前で呼ばせてもらおう。

 

 

【なら俺は、シュトルテハイム・ラインバッハ3世と呼ばせてもらおう】

【なら俺は、シャルロットと呼ばせてもらおう】

 

 

 どっちも違ェぞコラァッ!!

 【上】は無駄に長いし【下】は微妙に違うし! こんなモンどっちでもいいよもう! ただ【上】はなぁ、何かウケ狙ってます感があるしなぁ。下手にスベるのも嫌だし、微妙に近い【下】でいこう。

 

「なら俺は、シャルロットと呼ばせてもらおう」

 

「ふえぇぇぇっ!?」

 

 ん?

 なんだ?

 そこまで驚く事でもないだろうに。

 

「ぼぼぼ僕はシャルルだよ! や、やだなぁ、あはは!」(どどどどしよう!? 本名まで言われちゃったよ!? これもうバレてるよね!? バレちゃってるよね!?)

 

 む、デュノアの顔が引き攣っている。

 

 ああ、そうか。

 確かに名前ってヤツは、がっつり間違えられた時は何とも思わないもんだが、微妙に間違われたらバカにされてるんじゃないかって気持ちになるよな。

 ただでさえデュノアは転校初日で、嫌な事を言われてもまだ強く言い返せないだろうし。しまったな、これは俺が失念していた。何とかフォローしないと。

 

「……失礼、噛みました」

 

「か、噛んだの? ホントに? わ、わざとじゃない?」

 

「噛みまみた」(迫真)

 

「すっごい噛んでる!? そ、そっかぁ! あはは、そうだよね、噛んじゃう事もあるよね!」(よ、良かったぁ……噛んだだけだったよぅ…)

 

 

【生麦生米生卵(難易度レベル1)】

【東京特許許可局長今日急遽休暇許可拒否(難易度レベル10)】

 

 

 これは……試されてる…!?

 フッ……俺の口は何もアドリブだけが得意って訳じゃないんだぜ?

 

「東京特許許可局長今日急遽休暇許可拒否…!」(どやぁ)

 

「す、凄いぜ旋焚玖! よく噛まずに言えるなぁ!」

 

「……まぁな」

 

 俺の流暢レベルは既に禁呪詠唱です。

 

「……あ、あはは…すごいね」(いやいやいや待って! 待ってってば! どっちなの!? すっごくスラスラ言ったよね今!? やっぱりわざとじゃないの!?)

 

 っとと、俺の自慢をしてても意味がない。今日の主役はデュノアなんだからな。

 

「で、俺もシャルルって呼んでもいいか?」

 

「う、うん。えっと……僕は何て呼べばいいのかな?」(うぅ~……分かんないよぅ! でも下手に動揺する訳にもいかないし、ここは出来るだけ自然体でいなきゃ…!)

 

 

【シュトルテハイム・ラインバッハ4世】

【シャルロット】

 

 

 またかお前!

 【上】言わせたいだけだろ! 

 

「シュトルテハイム・ラインバッハ4世」

 

「長いよ! 誰なの!?」(う~ん……この人はこういう感じの人って事でいいのかなぁ。ジロジロ見られてもないし、さっきのはやっぱり偶然だよね…)

 

 い~ぃツっこみだ。

 間もいい。

 

 フランス人なのに中々やるじゃねぇか。

 コイツとは仲良くなれそうだ。

 

「冗談だ、俺の事も旋焚玖でいい」

 

 そうこう言ってる間に目的地に到着だ。

 第二アリーナの更衣室である。

 

 さぁて、脱ぐぞ脱ぐぞ~。

 

 

 

 

旋焚玖たちが教室から出てから、1組の女子たちもISスーツに着替えている訳だが。そんな中で箒と鈴は眉を顰めて緊急会議っていた。

 

「……まずくないか?」

 

「……まずいかもしれないわね」

 

その様子を目にしたセシリアは、頬をぷくーっと膨らませて2人に詰め寄る。

なにせ乙女同盟を昨日結んだばかりなのだ。2人の様子からして内容が旋焚玖なのは明白である。ならばセシリアがプンスカするのも道理だった。

 

「んもう! わたくしは仲間外れですの? 新参者とはいえ、少し寂しいですわ…」

 

「あーっ! ウチのセシリアを泣かしたなぁ!」

 

セシリアがしょんぼりすると、何処からともなく清香が召喚されるパターンが確立されつつある今日この頃。

 

「誰が泣いてますか! ちょっぴりシュンとしただけですわ!」

 

「む……それはすまなかった、セシリア」

 

「そうね。アンタにも関わる事だし、話しておいた方がいいかもね」

 

箒と鈴は旋焚玖の『パンツくれ』についてセシリアにも話を始めた。

 

「さっきの旋焚玖の言葉、セシリアはどう思った?」

 

「え? そ、そうですわね。いつものおフザけとしか思いませんでしたわ」

 

「そうよね、普通はそう思うわよね」

 

「違うんですの?」

 

「違うと言うかだな、その、実はな――」

 

何故、2人が不安に駆られているのか。

その理由を箒はセシリアに打ち明けた。

 

自分たちも過去、旋焚玖に言われた事があると。

それだけなら別にスルー案件よろしくなのだが、2人にとって、そしてセシリアにとっても見過ごせない出来事が起こっていたのだ。

 

「……お2人とも、旋焚玖さんに求愛された…ですって?」

 

「う、うむ。そんな大げさなモノではないかもしれんが」

 

「まぁ好きだって言われたに近いコトをあたしも箒も受けてるのよ」

 

「ちなみに何と言われたのですか?」

 

結果よりも過程が気になる乙女なセシリア。

 

「そうねぇ、あたしの場合は男子にイジメられててさ。ソイツらに向かって『俺の女に何してやがる』ってね」

 

「な、なんという俺様宣言!? ですが、それはそれで有りですわ!」

 

セシリア的には有りだった!

 

「私の場合は直接言われた訳ではないのだが。親族にな、『妹さんをください』とな」

 

「周りを巻き込む婚前交渉!? ですが、それも有りですわね!」

 

セシリア的にはそれも有りだった!

 

「……あら? ちょっとお待ちくださいな。そこまで言われてアナタたちはどうして旋焚玖さんとお付き合いしていませんの?」

 

「「 うぐっ 」」

 

当然の疑問である。

 

「し、仕方ないだろう! アイツの魅力は子供には気付きにくいんだ!」

 

「そ、そうよ! 難解なのよ! 迷宮入りレベルなのよ! むしろあたし達3人が気付けてるのが奇跡なの!」

 

旋焚玖は迷宮入りレベルだった!

 

そして2人とも、自分からフッた事までは流石に言えなかった。しかし、それは終わった事であり過去である。過去を悔やむより今、2人が見るべきモノは今。

 

何を隠そうこれまで旋焚玖が箒と鈴にしか言わなかった『パンツくれ』という言葉。それをシャルルにも言ったという事実のみである。

 

「だーかーらー! 法則的にいくと次に旋焚玖が惚れるのはデュノアかもしれないって言ってんの!」

 

「デュノアは男だし、私もそんな筈はないと言いたいんだが……なにせ旋焚玖だからな。アイツなら『好きになった相手がたまたま男でした』とか平気で言いそうだろ」

 

「さ、流石に旋焚玖さんでもそれは……いえ、強く否定できませんわね。あの方は理外のお人ですし」

 

ここにきてセシリアも、ようやく事の重大さを理解し始める。

 

「別に同性愛を否定なんてしないわよ。恋愛は自由だしね。ただね…! あたしの惚れた男が男に! しかもポッと出の男に取られるなんて女のプライドが許さないのよ!」

 

「私も鈴と同意見だ。一夏に負けるならまだしも、今日来たばかりの男に旋焚玖を取られるなど我慢ならん!」

 

「……確かにそうですわね。恋愛に性別も国境もないとは言え、好きになった殿方が男性に奪われるのは、淑女なわたくしでも耐えられそうにありませんわ……あら?」

 

その時セシリアに電流走る――!!

 

「ちょっとお待ちください。箒さん達の言う法則からいきますと、旋焚玖さんにパ……おパンツをくださらない?と言われていないわたくしは、そもそも旋焚玖さんから求愛されないのではないですか?」

 

「……あ」(言われてみればそうだな)

 

あくまで2人が経験した法則に則ればの話ではあるが、セシリアの疑問も不自然ではない。

 

「そこに気付くとは……アンタ中々やるじゃない」

 

「ふふん♪」

 

鈴に褒められてついドヤ顔るセシリア(条件反射)

 

「――って、得意げになっている場合ではありませんわ! アナタたち3人と違ってわたくしだけノーチャンスではありませんか! そんなわたくしがデュノアさんにプンプンしていても滑稽なだけではありませんか!」

 

箒と鈴に出遅れているのは重々承知していたセシリアだったが、まさかまさか今日来たばかりの転校生にまで抜かれていたと知っては、常日頃から淑女らしい振舞いを心掛けている彼女でも平静を保つのは困難だった。

 

(ちょ、ちょっとどうすんのよ箒! 思わず仲間外れにしちゃったわよ!?)

(う、うむ、そうだな。セシリアがこうなったのは私達にも責任があるし…)

 

2人は、どうにかセシリアを宥める方向で動く事に。

 

「ほ、ほら、セシリア。ポッキーだぞ、しかもイチゴ味だ。甘くて美味しいぞ」

 

箒は3時のおやつに取っておいたポッキー(イチゴ味)を一本、プンスカなうっているセシリアの口に突っ込む。

 

「ふみゅっ……もぐもぐ。美味しいですわ」

 

ポッキーは美味しかった!

セシリアの機嫌が少し直った!

 

「ほ、ほ~ら、セシリア。輪ゴムよ~、これすっごい伸びるんだから、ほらほら~」

 

「わぁ、すっごく伸びてますわぁ……ってバカにしてますの!? 何歳児ですかわたくしは!」

 

輪ゴムはすっごく伸びた!

しかしセシリアの機嫌は直らなかった!

 

(いや当たり前だろ、何でそれで宥められると思ったんだ)

(しょ、しょーがないじゃない、近くに輪ゴムしかなかったんだから!)

 

2人は同時に思ったそうな。

仮に旋焚玖だったら、ただの輪ゴムからでもあやとり工房を披露して、セシリアの機嫌を何だかんだ直していたんだろうな、と。

 

(ないものねだりしても仕方ないわ)

(ああ、そうだな。私達にしか出来ない事をしよう)

 

「……今こそ、立ち上がるべき時なんじゃないのか?」

 

「む…? 何がですの?」

 

「アンタもあたし達の立ってる場所まで来いって言ってんの」

 

鈴に言われてスススっと二人に近づくセシリア。

 

「そういう事じゃないわよ! 天然かあんたァッ!!」

 

「ぴっ…!? んもう! 何ですの!? 回りくどい言い方しないでくださいまし!」

 

謙虚は美徳、されど恋は大胆に。

恋愛事には変化球よりも直球が信条なセシリアらしい反論だった。

 

「今すぐ旋焚玖に『パンツくれ』を言わせて来い!」(直球)

 

「パンツねだりねだりしてきなさい! 今すぐよ!」(直球)

 

「……そうですわね。わたくしもそれしか方法はないと思っていました。ただ、お2人に背中を押してほしかったのですわ」

 

覚悟を決めた女性はいつも美しい。

蒼く光る瞳に闘志を燃やすセシリアは2人から背を向ける。

 

「行って参りますわ」

 

「ああ、行ってこい!」

 

「待ってるわよ、高みでね!」

 

箒と鈴は、強い意志を乗せたライバルの背中を見送るのだった。

 

「……行ったわね」

 

「ああ」

 

「セシリア、上手くやれるかな?」

 

「アイツは私達のライバルだ。必ずやれるさ」

 

「そうよね。でもさ、アイツ……パンツくれって旋焚玖に言わせに行ったのよね」

 

「……そうだな」

 

「普通に下ネタよね」

 

「……そうだな」

 

「……そう」

 

「……うむ」

 

2人は着替えを再開するのだった。

 

 

 

 

「着替えるのはいいけど、ISスーツにってのがダルいよなー」

 

 制服のボタンを外しながら、俺の横で着替える一夏がため息をついた。

 

 俺は着た事ないから分からんが、一夏が言うにはとにかく着づらいんだとか。まぁ見た目からしてピチピチだもんな。地肌にくっついて面倒くさそうではある。その点、体操服は楽チンチンよ。

 

 まぁISスーツと比べて時間は掛からないと言っても、そろそろ俺も着替えなきゃな。

 

「わあっ!?」

 

 んぁ?

 

「どうした、シャルル? いきなり大声出して」

 

 脱いだTシャツをロッカーに入れながら一夏がシャルルを心配する。というかシャルル、まだ制服姿じゃないか。着替えなくていいのか? もしかして俺と同じように体操服なのかな?

 

「な、何でもないよっ! ぼ、僕も着替えるから、その、二人ともあっち向いてて……ね?」

 

 むしろ男の着替えシーンを見てどうしろと言うのか。

 

 

【がっつり見る】

【チラチラ見る】

 

 

 何で見る必要なんかあるんですか(迫真)

 

 チラチラ見てるのがバレて変に勘違いされるのも嫌だし、がっつり見てやるぞオイ! 華奢なナリしやがって! フランス男子はそういう感じなのかアァン!? オラ見せろコラァッ!!(自棄)

 

「……せ、旋焚玖?」

 

「なんだ?」

 

「どうして僕の方を見てるのかな?」

 

「気にするな」

 

「き、気にするよぅ!」

 

「何で気にする必要なんかあるんですか?」

 

「そうだぞシャルルー、男同士じゃないかー」

 

 いやお前は時間掛かるんだから急げよ、なにパンツ一丁でサムズアップしてんだよ。

 

「うわわっ……あ、あのね! フランスではね、その……着替えているところは見ないのが礼儀なんだよ!」

 

「あー、そうなのかー。お国柄ってヤツなんだなー」

 

 一夏も着替えを再開する。

 

「……ふむ」

 

 それは知らんかった。

 確かにマナーや礼儀は国それぞれって言うしな。

 

 

【此処は日本だから見せろオラァァン!】

【チラチラ見る】

 

 

 見る方向で話進めんなってお前! 

 

 俺は別に見たくないって言ってんの! なんで見る必要なんかあるんですか!(2回目) いいよもう! チラチラ見ればいいんだろ!

 

「……んしょ…んしょ……」

 

 制服のボタンをぷちぷち外していくシャルルの隣りで俺も着替えつつ。さて、そろそろチラ見を……む?

 

「……ふぅ」(ね、念のために対策してきて良かったぁ)

 

 恐ろしく早い着替え。

 俺でなきゃ見逃しちゃうね。

 

「……制服の下にISスーツ着てたのか」

 

 じゃあ別に見られても問題ないじゃないか。

 いや、もしかしたらフランス人は見られるって行為自体が嫌なのかもしれないな。

 

「え? う、うん……って、旋焚玖見てたの!? 見ちゃダメって言ったのに!」

 

「そんなに見てないからセーフ」

 

「そんなに!? で、でも少しでも見ちゃったらその時点でアウトなの!」

 

「チラ見だからセーフ」

 

「チラ見でもダメなの!」(万が一って事があるもん!)

 

 

【うるせェ! このスットコドッコイ!】

【お詫びに俺の着替えを見せてやる】

 

 

 江戸っ子か!

 というか、ただの逆ギレじゃねぇか! 【下】も【下】で全然お詫びになってねぇぞコラァッ!!……いや、微妙になってるぞコラァッ!! 目には目を歯には歯をの原理だなオイ!

 

「すまない、シャルル。お詫びに俺の着替えを見てくれ」

 

「えぇっ!? そ、そんな事しなくていいよぉ!」

 

 別に俺は見られて困るモン背負ってる訳でも無し。

 オラ、見とけよ見とけよ~。

 

「おぉ~、久々に旋焚玖のアレが見られるのか。ほら、シャルルも見て損はないぜ?」

 

「意味わかんないよぅ! どうして一夏も嬉しそうなの!?」

 

「ロマンだからな!」

 

「ますます意味分かんないよ!」

 

 確かにロマンだな。

 俺の脱ぎっぷりはよォ…!

 

 制服の肩口を掴んでからの――!!

 

「で、出たー! 旋焚玖のダイナミック早脱ぎだぜぇー!」

 

「えぇぇぇぇっ!? ど、どうやって脱いだの今!?」(目を逸らそうとしたら、いつの間にか旋焚玖の上半身が裸になってたよ!? なんで!? どうして!?)

 

「フッ……さて、な」

 

 4代目から教えてもらいました。

 原理は俺にもよぐわがんね。

 

「……うわぁ…旋焚玖って凄い身体してるんだね」

 

「まぁな」

 

 無理やり鍛えられてるからな。

 しかし、なんていうか……。

 

「うわぁ……うわぁ……」

 

 すっげぇ見てきてんなお前な。

 コイツも華奢だし、フランスじゃ珍しいのか?

 

 いやまぁ、別にそういう風に見られるのは、俺も悪い気はしないけどさ。なにせこの身体は虚像じゃない、紛れもなく俺の努力の結晶だからな。遠慮なく褒めていいのよ?(褒められたがり)

 

「ホントすげぇよなぁ。なんかもう超えちまってるよなぁ」

 

 うへへ、本物が褒められるのはいつだって気持ちがいい(恍惚)

 だからこれはサービスだ。

 

「……さらにもう一段階の変身が可能だ」(悟空)

 

「「 へ? 」」

 

「はああああ…!!」

 

 全身に力を込める。

 すると筋肉が一回り膨れ上がった。

 

「うわぁ!?」(いやいやいや!? 旋焚玖って何者なの!?)

 

「す、すげぇ! 日本…いやもう世界一位だぜ旋焚玖!」

 

「フッ……今年は危うく三位になりかけたが」

 

「(´・ω・`)」

 

「!?」(え、なにその顔!? 一夏が急に捨てられた子犬みたいな顔になったよ!?)

 

「今年も俺は世界一位さ」

 

「イエーッ! 旋焚玖イエーッ!」

 

「!?」(なにそのテンション!? さっきまでのしょんぼり顔はどこいったの!?)

 

「南米の主夫層のあたりじゃ、俺を八位だと言っている男もいるらしいが」

 

「(´・ω・`)」

 

「!?」(ま、また一夏の顔が!? 旋焚玖もよく分かんない事言いだすし! ツっこみが追い付かないよぅ! どうして僕はこの空間にいるの!? 絶対場違いだよ! 助けてお母さぁん!)

 

「とんでもない。俺は世界一位なのさ」

 

「ヒューッ! 旋焚玖ヒューッ!!」

 

「……あ、あはは。す、すごいねー」(んもぉぉぉ! ジャパニーズボーイのノリが全然分かんないよぉぉぉぉ! レベル高すぎるよぉぉぉぉ!) 

 

 苦笑いのシャルル君。

 すまんな、俺たちだけ盛り上がって。

 

 いつまでもシャルルを置いてけぼりにしておく訳にもいくまい。俺も満足したし、そろそろまとめに入ろう。

 

「だが、無理に筋肉を膨らませても、スピードが殺されちまったら意味がない」

 

 まさに、当たらなければどうと言う事はないってやつだな。

 

「あー、確かになぁ」

 

「そうだね。旋焚玖の言いたい事、僕にも分かるよ」(や、やっと話に入れた…)

 

「攻・防・速、どれを取っても結局はバランスが大事ってな。ISも同じなんじゃないのか?」

 

「うん、そうだね」

 

「ああ、そうだな」

 

 やったぜ。

 さり気なくISに話を寄せていく好プレー(自画自賛)

 これで、ただの肉体自慢な話じゃなくなったな!

 

 よし、何となくいい話っぽい感じで締められたし、第二グラウンドにイクゾー。

 

「旋焚玖さぁぁん!」

 

 あ、セシリアだ。

 わざわざ更衣室まで来てどうしたんだろう。

 

「わたくしにもパッ…!」(意気込んで来たものの、やはり殿方の前でパンツと言うのは気が引けますわ。ここは『下着』に言い換えても…)

 

 パ?

 

「(いえ、お待ちなさい。言葉を変えたら法則が乱れてしまう可能性が…! 言うのですセシリア! わたくしも負けられないのです!)パンツくれ!」

 

 何言ってだコイツ(ン抜き言葉)

 

「を!」

 

 を?

 

「わたくしにもお言いなさい!」(アナタには負けませんわよ、デュノアさん!)

 

 なんでぇ?

 急に来てホント何言ってだ(困惑)

 

 しかもシャルルにガンくれなかったか?

 ちょいとシャルルの顔を窺ってみる。

 

「……あ、あはは」(えぇ……なんでぇ…?)

 

 これは見事な苦笑いですね。

 俺もソーナノ。

 

 いや、別に言うのは容易いんだけどね。

 俺が今まで何回言ってきたと思ってんだ。女相手なら100から先は覚えてねぇ(セクハラ履歴)

 

 何か怒ってるっぽいし、下手に刺激するのもアレか。

 

「……パンツくれ」

 

「せ、旋焚玖さんのエッチ!」(条件反射)

 

 なんだコイツ!?

 

「あ、あはは……走って行っちゃったね」(えぇ……いったい何だったの…?)

 

 おいおい、なんかもうずっとシャルルに苦笑いさせちまってるじゃないか! その原因に俺もがっつり含まれてるってのがもうね。

 

 

【ここまでの感想を聞く】

【聞かない】

 

 

「……どうだ、シャルル。此処でやっていけそうか?」

 

「そ、そうだね……正直ちょっとだけ、戸惑ってるかな。思ってたよりユーモアな子が多くて」(今のところ全員キャラが濃くて……うぅ、僕、やっていけるのかなぁ)

 

 本当に申し訳ない(博士)

 

「まぁ、なんだ……いい奴らだぜ。みんなお前の仲間だ」

 

「旋焚玖の言う通りさ! 慣れるまでは大変だけど、俺と旋焚玖がフォローしてやるから安心してくれよな!」

 

「う、うん、ありがとう」(うわわ……2人の屈託ない笑顔がぁ……罪悪感がぁ…)

 

 む……苦笑いではなく、なにか複雑な表情を浮かべてるな。

 

「っとと、そろそろ行こうぜ。遅れたら千冬姉にポカポカされちまう」

 

 そんな可愛い擬音じゃないけどな。

 よし、気を取り直して今度こそイクゾー。

 

 






シャル:いやもう…十分堪能したよ…

選択肢:いえいえまだですよ。これからですよ。

シャル:くそぉ…

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