選択肢に抗えない   作:さいしん

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伏兵の存在、というお話。



第96話 シャルル君から見たジャパニーズ

 

 

 

「ええと、いいですかー皆さん。これから訓練機を一班一体取りに来てください。数は【打鉄】が三機、【リヴァイヴ】が二機です。好きな方を班で決めてくださいね。あ、早い者勝ちですよー!」

 

 おぉ、山田先生が山田先生している!

 さっき俺に言った決意表明っぽい言葉に偽りは無いようで、その堂々っぷりだと俺ももう気軽に乳メガネとは呼べないな。

 

 しかし【打鉄】と【リヴァイヴ】から選ぶのか。

 今回、俺はシャルルのサポート役を任されてるし、俺が乗らないならどっちでもいいかな。というか【打鉄】であっても俺は【たけし】以外乗る気ないけどな!(片思い)

 

「ふむ。うちの班はどうする? ここは知識の浅い私達よりもリーダーのデュノアが決めた方が良いのではないか?」

 

 スパッと妥当な意見をすぐに言えるところは流石箒って感じだ。まるでモブの中に煌めく星だな。顔だけじゃねぇ、存在感からしてやっぱ違うぜ。

 

「えっと、それなら【リヴァイヴ】でいいかな? 僕の専用機も【リヴァイヴ】をカスタムした機体だし、教えやすいと思うんだ」

 

 という訳でシャルル班の訓練機は【リヴァイヴ】に決定! しかしちょっとした問題もある。【リヴァイヴ】は【打鉄】よりも少ないのだ。山田先生も『早い者勝ち』だって言ってたし、他の班の女子連中も『イソゲー』と格納庫に向かっている。シャルル班が出遅れた感は否めない。

 

 で、それが何の問題ですか?(強者の余裕)

 

「疾きこと風の如し」

 

 今回の俺はサポート役だからな。持ち運び係的なモンは任せろー。ついでに風になるのも任せろー。

 

「ひょわぁっ!?」

 

「ちょっ、なに!?」

 

 ちんたら移動してんじゃねぇぞ! そんな気構えで【リヴァイヴ】使おうなんざ100年早いぜ!

 

 ほい、格納庫に到着。

 余裕の一番である。

 ごぼう抜きするのは気持ちがいい(恍惚)

 

 んで、コイツが【リヴァイヴ】だな。

 

「よいしょっと」

 

 【リヴァイヴ】ちゃんを背中に……いやお前軽いな!? 【たけし】に比べたら全然じゃねぇか! 

 

「……たけしお前ダイエットした方がいいんじゃないか?」

 

 奥の方に収納されてある【たけし】に一声掛けてみる。

 

 

≪ (。・ˇдˇ・。)凸 ≫

 

 

「!?」

 

 何か変な顔みたいなモンが【たけし】から一瞬見えた気が……俺、疲れてんのかな。まぁいいや、さっさとシャルル達のところへイクゾー。

 

「わっせわっせ」

 

「なにこのIS重すぎィ!!」

 

「わっせわっせ」

 

「ISってこんなに重いの!? 1人じゃ無理だよぉ!」

 

「わっせわっせ」

 

「噂によると114514kgらしいよ」

 

「重すぎィ!!」

 

 重すぎィ!!

 んな訳ねぇだろアホか!

 

「ほい、到着。お待ちかねの【リヴァイヴ】さんですよっと」

 

 スタートは遅くてもゴールは早い。

 それが俺たちシャルル班さ。

 

 皆も嬉しそうに出迎えてくれる。

 悪意のない出迎えが素直に嬉しい(幸福)

 

「ありがとう主車くん!」

 

「こういう時は頼りになるよね!」

 

「そのための主車くんあとそのための主車くん…?」

 

 何言ってだコイツ?(ン抜き言葉)

 というか相川じゃないか。お前もこの班に居たんだな。

 

「す、すごいね旋焚玖。まさか1人で運んじゃうなんて」(いやいやいや! だからおかしいって! 一人で運んで来たんだよ!? 背中に背負って小走りで戻って来たんだよ!? 何で誰も驚いてないの!?)

 

「フッ……旋焚玖は武道やってるからな」

 

 お、そうだな。

 

「そ、そうなんだ」(どうして篠ノ之さんはドヤ顔なんだろう。でもツっこまないでおこう。なんかちょっと怖いし)

 

 他の班も訓練機を運び終えたところで山田先生から声が掛けられる。

 

「各班長は訓練機の装着を手伝ってあげてください。今回の目標は班全員の動作確認ですよー」

 

 なるほど、ついに専用機持ち以外の実力が明かされる訳ですね! 基礎の基礎からのスタートだし、意外とみんな動けなかったりしてな(淡い期待)

 

「それじゃあ1組2組を交互で、出席番号順にISの装着と起動、そのあと歩行までやろっか。一番目は……」

 

「はいはいはーいっ!」

 

 トップバッターは相川である。

 セシリアの班じゃなくてテンション下がってるかなぁ、とか思ったが元気にぴょんぴょん飛び跳ねているところを見ると、杞憂だったようで何よりだ。

 

「出席番号一番! 相川清香! ハンドボール部! 趣味はスポーツ観戦とセシリアのお世話! 将来の夢はセシリアのマネージャーになって一緒に世界を旅行しまくる事だよ~!」

 

 やっぱり杞憂じゃなかったじゃないか! しかも明らかにシャルルじゃなくて隣りで班長ってるセシリアに向かって言ったなコイツ! 手まで振ってるし。あ、セシリアがこっちに来た。頬をプクーッとさせて来た。

 

「んもう! 何を言ってますの清香さん!」

 

「えー、ダメなのー?」(お目目ウルウル)

 

「うっ……べ、別にダメとは言ってませんわ!」(プイッ)

 

「えへへ、やったぜ!」

 

 成し遂げたな。

 そしてプイッと顔を背けるセシリアが可愛いと思いました。

 しかしコイツら仲良いな。知り合ってまだ1か月ちょいだが、もうズッ友宣言してるとは、よほど波長が合うんだろう。

 

「という訳でよろしくお願いしますっ!」

 

 改めてシャルルの方へ向いた相川は腰を折って深く礼を。そのまま右手を差し出している。え、なにしてんの?

 

「ああっ、ずるい!」

 

「私も!」

 

「第一印象から決めてました!」

 

 相川に続けと、箒以外の女子たちも一列に並び、同じようにお辞儀をしてからの右手をシャルルに向かって突き出す。ああ、そういう……(悲しい察し)

 

「え、えっと……?」

 

 ふむ。

 フランス人にゃ通じないのかな。何やら状況が飲み込めてないって感じだし。

 

「「「 お願いしますっ! 」」」

 

 んぁ?

 今度は後ろから同じような声が聞こえてきた。

 

「(´・ω・`)」

 

 どうやら一夏も同じ状況に陥っているらしい。しかしアイツもIS学園に来てから(´・ω・`)する事が増えたな。それだけ気苦労も増えたって事か。

 

 んで、俺のところには当然、誰も来ないと。はは、すっげぇ視界がクリアだぜ。誰も前に立ってないから周りを見放題だぜ。……ちくせぅ。

 

「……!」(むっ……心無しか旋焚玖の表情に翳りが見える…! いや、客観的に考えて当然か。男子3人のウチ2人は女共に言い寄られて、一人だけポツンとなっていたら、やましい気持ちがなくても微妙な気分になってしまうだろう)

 

 あ、何か箒が百面相ってる。

 久しぶりに見た気がするな。

 

(いや、むしろこれはチャンスではないのか…!? コイツらと同じノリというテイで私も旋焚玖にアピールする絶好の機会では…! よ、ようし、言うぞ、言ってやるぞ。しかし、重い感じで受け取られたくないからな。あくまで軽く、冗談のように気軽な感じで『何なら私が求愛してやろうか?』みたいな風に言うんだ私…! ここが告白のメインではない、あくまで旋焚玖の意識を私に傾ける作戦だ。気軽に。そう、気軽にだ)

 

「……せ、旋焚玖」

 

「ん?」

 

「な……っ」(だ、だめだ、急に足が竦んでしまった。指先がチリチリする。口の中がカラカラだ。目の奥が熱いんだ!……くそっ、これが緊張なのか…!)

 

 な?

 

「何ならァッ!!」

 

「うわビックリした!?」(なになに!? うわっ、ま、また篠ノ之さんだ!)

 

 うわビックリした!? 

 何だコイツ!?

 何でいきなりバッドボーイズ!?

 

 そりゃ、シャルルも驚くわ。

 まぁシャルルが驚いてくれたおかげで俺は素面を保てている訳だが。サンキューシャッル。お前のリアクションは無駄にはしないぜ。

 

「……広島の方言か? 転校先の一つだったのか?」

 

「あ、ああ、そうなんだ! 急にしゃべりたくなってな、はは、あはは…!」(あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!! 無理だ無理だ言えないぃぃぃ! そんな気軽に言えたら苦労しないわ! 何が求愛してやろうかだ! 一度フッておいて、そんな上から言える立場じゃないだろうが私は!……ちくせぅ)

 

 まぁ箒は色んな場所に転校させられたって言ってたしな。しかし、それを自分から触れたって事は、もう吹っ切れたのかもしれない。それなら喜ばしい事だろう。

 

 しかも割とダイナミックな声だったせいか、シャルルと一夏に群がってた女共も元の場所に戻っている。

 さては箒の迫力にビビッたなコイツら。しかし、こうなると俺にはかなりありがたい。経験上、そろそろアホの【選択肢】がアホさせる頃合いだったし。それが無くなったってんだから、箒には多大なる感謝をしなきゃな。

 

「ありがとよ、箒」

 

「う、うむ?」(……何故お礼を言われたのかは分からんが、旋焚玖が笑顔を向けてくれた! 私の『何なら』は全くの無駄という訳ではなかったんだな!)

 

 箒もご機嫌さんになったところで、今は相川がISの外部コンソールを開いて、シャルルと一緒にステータスの確認をしている。

 

「相川さんはISには何回か乗ったかな?」

 

「うん」

 

「それじゃあ、まずは装着して起動までやろっか」

 

「あいよっと!」

 

 テキパキと、滞る事なく装着しては【リヴァイヴ】を起動してみせる。そんでもってスムーズな歩行を披露してみせる。

 

 シャルルの補助も特に必要なさそうで、相川はガチョガチョIS特有の音を奏でながら見事に歩いている。とても見事である……ちくせぅ。

 

「ふぃ~、緊張したぁ」

 

 装着を解除した相川が【リヴァイヴ】から軽快に飛び降りる。

 しかし、緊張したら歩けるのか。俺も今度【たけし】を纏ったら緊張してみよう。

 

「じゃあ次の人いこう!」

 

 と、ここで問題が発生した。

 2人目の女子が【リヴァイヴ】の前で困った表情を浮かべている。

 

「いや、あのさ、コックピットに届かないんだけど…」

 

「あー、それはコックピットが高い位置で固定されてしまった状態ですね」

 

 お助けマンな山田先生が説明してくれた。

 原因は言わずもがな、快活少女な相川である。訓練機は装着解除時はしゃがまないといけない。立ったまま解除すると、ISも立ったままの状態、つまり今の感じになる訳だ。

 

「たはは、いやぁ清香さん失敗失敗」

 

 HAHAHA!

 やーいやーい! 

 俺ならそんな失敗しないもんね~!……虚しいだけだからやめよ。 

 

「初心者のうちはよくあるミスですよ。では、シャルル君が次の方を乗せてあげてください」

 

「ぼ、僕がですか?」

 

「はい。専用機を出して、次の生徒さんをだっこして運んであげてください」

 

 なにその合法的なセクハラ。

 イケメンだったら何してもいいってのか!?(疑問)

 

「ッしゃぁオラァァン!!」

 

「来たオラァッ!! 女の時代がァン!!」

 

「清香…! アンタの功績は末代まで語られるわ!」

 

 イケメンだったら何してもいいんだよ!(解決)

 

「え、えっと……僕が運んでも大丈夫かな?」

 

「よろしくオナシャス!」

 

「う、うん。優しく運ぶからね」(おなしゃすって何だろう…)

 

 シャルルがエスコートするように2組の女子を抱きかかえる。……うーんこのイケメン貴公子。お姫様だっこがめちゃくちゃ絵になってるじゃねぇか!

 

「落ちないように、君からも僕に掴まっていてね?」

 

「は、はい!……うほっ、シャルルくん超いいにほひ(匂い)…♥」

 

 シャルルすげぇ。

 運ぶツっても、たかだか1メートルちょいなのに、それだけの距離で、もう女子の顔をメス貌にさせてやがる…! これがブロンド貴公子の実力って訳かい…!

 

 

 

 

 その後も順調に、シャルルによるジェントルマン指導は進んでいく。ただ、これまで全員が漏れなく【リヴァイヴ】を立たせた状態で解除しているっていうね。

 

 これにはシャルルも苦笑いである。

 コイツいつも苦笑いさせられてんな(合掌)

 

 いや合掌はおかしいわ、ただの連続ご褒美やんけ! このセクハラ貴公子! 普通に羨ましいぞコンチクショウ!

 

「……次は私か」

 

 神妙な顔をした箒が立った状態の【リヴァイヴ】の前まで歩み寄っていく。箒もシャルルにお姫様だっこされるのか。

 

 なんかヤだなぁ。

 何だろ、このモヤモヤ感は。

 

 ああ、この感情はアレだ。

 信じて送り出した幼馴染が都会のイケメンにNTRれるアレだ。

 

 えぇ……まだ恋人も出来た事ないのに先にNTRを体験すんの? いやいや、その仕打ちは流石にひどくないですか? もしさぁ、これを機に俺の性癖が歪んだらどうすんの? 責任取れんのかシャルル、おう? おうコラ?……とまぁ、俺自身だと心の中でしか唱えられない訳で。

 

 なぁ、俺が言わんとしてる事、分かるだろ? なぁ?

 

 おい【選択肢】。

 おーい、聞いてんだろ? 

 今こそお前の出番じゃないのか?

 ヘタレな俺の代わりに、こういう時こそアホな【選択肢】出して、なんやかんやで邪魔させなきゃダメなんじゃないのか?

 

「………むぅ」(乙女が一度は夢見る伝説の『お姫様だっこ』。私もまだ経験した事はない。それを何故…! 何故に! どこの馬の骨とも分からん男に捧げねばならんのだ! 絶対に嫌だ! 断固拒否する!)

 

 オラ、早く出せよ。

 あくしろよマジで。

 

「………むむぅ」(とは言え、ここで私が変に断ったら、空気の読めない女だと思われてしまう恐れがある。高校ではクラスメイト達とも隔たり無く上手くやっていけているのに、それが拗れてしまうのは正直怖い)

 

 オイ……オイってば…!

 このままじゃ、箒がシャルルにお姫様だっこされるツってんの! お前箒がシャルルにNTRれてもいいのかよ!?

 

「………むむむぅ」(しかし…! しかしそれでも私は! お姫様だっこされるのなら、相手は旋焚玖以外考えられんのだ! だが、私はどうすれば……こ、こうなったら!)

 

「さ、作戦タイムを要求する!」

 

 ピーンと腕を伸ばしてシャルルにアピールする箒さん。ど、どうしたんだろう。

 

「へ? え、えっと……うん、いいよ?」(うわわ、また篠ノ之さんだよぅ)

 

 シャルルに了承を得た箒は……うわわ、こっちに来た!? もしかして俺が変な事考えてたのがバレたのか!?

 

「ちょ、ちょっといいか旋焚玖」

 

「……ああ」

 

 うわわ、俺の腕を引っ張って、そのまま此処から一緒に離れて行く。……いや結構離れるな!? え、どこまで行くの!? もうアリーナの端まで来ちゃったよ!?

 

「……旋焚玖」

 

「なんだ?」

 

 なんでせぅ?

 

「(……勇気を出せ! ここで勇気を出さねば女ではない!)わ、私がデュノアにお姫様だっこされたら、お前はどう思う?」

 

 な、なにその問い掛け!?

 なんでそんな事聞くの!?

 

 いや、だがこれは……ヘタレな俺への最後の挽回チャンスじゃないのか…! むしろ此処しかないだろが! 勇気を振り絞る時は今! ちゃんと箒に『嫌だ』と言うぞ! もしかしたらこれで箒との距離が縮まるかもしれないし! ピンチをチャンスに変えるのだ旋焚玖!

 

「嫌……―――ぁ?」

 

 

【むしろ興奮する】

【そんなの見たら俺は死ぬ】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 キモいし重いよ!

 何で邪魔するの!? お前さっきまで完全に気配消してたじゃん! 無味無臭だったじゃん! なのにどうして絶妙の間で入ってくんの!?

 

「……そんなの見たら俺は…」

 

「……旋焚玖?」

 

 えぇい、ままよ!

 

「俺は死ぬッ!!」(割とヤケ)

 

 キモいより重い男でいいんだ上等だろがい!

 ほ、箒さんの反応は如何に…?

 

「……ッ…! そ、そうかぁ! そんなにかぁ!」

 

「……ああ」

 

 よ、予想外に嬉しそうな反応が返って来たでござる。

 正直ドン引きモンだと思うんだが、俺がおかしいのか?

 

「そうかそうかぁ……それだと流石に私はデュノアにお断りしないとダメだよなぁ、ふふふ、旋焚玖が死んだらいけないもんなぁ」(ふぉぉぉぉ! これは誰がなんと言おうと嫉妬! 旋焚玖がデュノアに嫉妬している揺るぎない証左! うふ、うふふ、頬が緩んで仕方ないなぁもう!)

 

「……ああ、そうだな」

 

 こんなに饒舌な箒さんは初めてだぁ。

 もしかして、マジでとうとう俺の事を…!?

 

 

【お前もしかして俺の事が好きなのか?】

【『私はッ……お、お前の気持ちには応えられない…』(箒に引っ越す前、言われた言葉)置いときますねー】

【ないない。貞操観念の高い箒が今日知り合ったばかりの男にお姫様だっこされたくないだけだろ】

 

 

 あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!!

 

 2番目と3番目が俺に現実を突きつけるぅ! 古傷を抉ってからの、それっぽい仮説とかダブルコンボすぎるぞコラァッ!! 一人ツ―プラトンやめてよぉ!

 

 へへ、短い春だったぜ(約3秒)

 しかし、冷静になって気付けた事もある。

 

「断ってくれるのは嬉しいが、それで周りの女子から何か思われたりしないか?」

 

 シャルル班の女子は、シャルルにだっこされて運ぶ流れが出来上がってしまってるからな。それを下手に壊したら、箒とクラスの女子の間で変な亀裂が走ってしまう可能性がある。

 

「フッ……心配するな、旋焚玖。私に妙案が浮かんだ」

 

 む……何やら自信満々だな。

 策を講じるタイプではないと思っていたが、これは逆に気になるな。箒がどんな策を練ったのか。

 

「なら、お手並み拝見といこうか」

 

「ああ!」

 

 そして戻ってきました。

 

「えっと、お、おかえり…?」

 

「ああ、待たせてすまないデュノア。時間も惜しいし、始めよう」

 

「うん。それじゃあ僕がまた運べばいいかな?」

 

 さて、どう出る箒?

 

「フッ……その必要は無し!」

 

 

箒にその必要は無かった!

 

 

「む……?」

 

 箒の奴、後ろに少し下がって何を……む、【リヴァイヴ】に向かって走り出した!?

 

「ぬおおおお――ッ!!」

 

入学以来、最高潮な気分を迎えた絶好調乙女に敵は無し。

十分な助走で生まれた勢いをそのままに。

 

「「「「 よじ登ったーー!? 」」」」

 

 力業だこれーー!?

 

「えぇぇぇぇッ!?」(な、何してるのこの子!? どうしてこんなにパワフルなの!? ダメだぁ! 篠ノ之さんのキャラが全く分かんないよぅ! 男子も女子もみんな濃いよぅ!)

 

「……さて、装着完了だ。これで歩けばいいんだな?」

 

「う、うん、お願い」(……ジャパニーズは男女問わず、未来に生きてるんだね…)

 

 指導役のシャルルが圧倒されてるじゃないか。いや、シャルルだけじゃねぇ、他の女子たちも箒のパワフルロッククライマーっぷりに圧倒されている。これは……。

 

 なるほどな、ようやく分かったぜ。

 一見、ただの力業に見えて、実際のところ箒のアレは、これまで女子とシャルルの間にあった流れどころか、根底そのものをブッ壊したって訳だ。おかげで先に予想していた微妙な空気も生まれていない。

 

 やるじゃねぇか、箒。

 お前の策、確かに魅せてもらったぜ。

 

箒のアレに圧倒される者、 納得する者。

そして――。

 

(超えてみせたわね、障害を…! それでこそあたしのライバルよ!)

(箒さん……あなたの覚悟ある行動ッ! わたくしは敬意を表しますわ!)

 

完全に意図を汲んでみせた鈴とセシリアは、心の中で大いなる拍手を。

 

 

 

 

「これで僕たちの班は一通り終わったね」

 

 そうだな。

 何だかんだ【リヴァイヴ】を装着した全員がスイスイ歩けてたな、ははは。

 

「どうしよっか、まだ時間残ってるし……あ、そうだ! 旋焚玖も乗ってみようよ!」(生身の旋焚玖が凄いってのは分かった。ISの操縦力はどうなんだろう?)

 

「む……」

 

 いや俺【たけし】以外興味ないから。

 というか、【リヴァイヴ】立ったままじゃないか。仮にシャルルの提案を受けたら、あの流れがまた蘇るんじゃないか? お姫様だっこな流れが。

 

 いやいや無理無理。

 俺にソッチの趣味は無いから。相手がイケメンでも無いから。ここは丁重にお断りさせてもらおう。

 

 

【シャルルにお姫様だっこしてもらう】

【と見せかけてシャルルをお姫様だっこする】

【と見せかけて箒をお姫様だっこする】

【と見せかけて鈴をお姫様だっこする】

【と見せかけてセシリアをお姫様だっこする】

【と見せかけて千冬さんをお姫様だっこする】

【と見せかけて山田先生をお姫様だっこする】

【と見せかけて一夏をお姫様だっこする】

【と見せかけて一夏にお姫様だっこしてもらう】

 

 

 見せかけすぎィ!!

 

 






シャル:二人目の男子が生身でIS纏った僕をお姫様だっこしたんですけど

アルベール:うっそだろお前ww

ロゼンタ:テラワロスww

シャル:(´・ω・`)


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