「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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——カミサマは人間を救いたいと思ってた。
だから、手を差し伸べた…

でも、その度に、人間の中から邪魔者が現れた。
カミサマの作ろうとする秩序を、壊してしまう者。

そいつは、こう呼ばれたらしいわ——



Prologue「Vanishing」

ある日の夜。

比良坂夜露(ひらさかよつゆ)は、とぼとぼと通りを歩いていた。

新進気鋭のアクトレスとして人気を博す、彼女らしからぬ落ち込み具合だ。その気概に満ちた瞳も、しょんぼりと伏し目がちになっている。

 

「はぁ……どうしてこんなことに」

赤信号で立ち止まり、ぼんやりと星空を見上げる。

夜露は成子坂製作所という、小さな事業所に所属するアクトレスだ。

成子坂は現在、新しい隊長……実働指揮官の雇用によって急速に事業を拡大させており、それに伴い所属するアクトレスが少ないという問題を抱えていた。

 

その状況を打開するべく、夜露は今日、自身の通う学校にいた双子のアクトレスを成子坂製作所に連れてきた。

そして、その結果が……

『わたしと天音が成子坂なんかに入るわけないじゃないっ!』

『わたしたちはね、成子坂をぶっ潰しに来たのよ!』

既に双子は別の会社に所属しており、さらにはその会社から成子坂への随意契約指定業者エリアの優先権係争、早い話が管轄を奪い合う挑戦状を叩きつけてきたのだ。

 

お陰で、今日の事務所の空気は最悪。

間接的な原因であった夜露は、肩身の狭すぎる業務時間を過ごすことになった。

「はぁ……」

アクトレス仲間の複雑な視線を思い出し、もう一度ため息。

そのまま沈み切った心で家路に向かっている最中、近所のスーパーの近くを通りかかった時だった。

 

「ん?」

駐車場の方から、ばさばさっという鈍い音がした。

見ればレジ袋が破けたらしく、一人の女性が散乱した中身を拾い集めている。

普段であればすぐに駆け寄る夜露だったが、流石に今回は無視しかけ……

「……!!」

一瞬の思考の後に、慌てて駐車場へと駆けこんだ。

 

「あの、大丈夫ですか!?」

散らばった缶ビールやら惣菜品やらを集めながら、驚いてこちらを振り向いた女性を見上げる。

そこで、思わず駆け寄った理由、一瞬の間で感じた違和感の正体を確信した。

彼女の青いジャケットから伸びている腕は、右側しかなかったのだ。

 

「え、えっと……」

「何か、これ入れられるものってありますか?無ければわたし、レジ袋貰ってきます!」

幸い、女性の買い物はそこまで多くなかった。

夜露はすぐにスーパーからレジ袋を貰ってくると、纏めた品物を全てその中に詰め込んだ。

 

「これでよし……良ければご自宅まで持っていきましょうか?たいして遠くないですよね?」

「え?ど、どうして分かるの?」

「この辺りはバス停とかも遠いですし、見たところ徒歩だったようなので」

女性はぽかんと夜露を見つめると、不意にふっと苦笑して、

「……ありがとう。でも大丈夫、これくらい片手でも余裕よ」

そう言われて、夜露は我に返って頭を下げた。

「あっ……す、すみません!恩着せがましいことを!」

 

あんなことがあった後なので、つい夢中になってしまった。

「いいえ、心配してくれたのよね。困ってたのは本当だし、とても助かった」

頭を上げて、レジ袋を差し出す。

その時に、夜露は改めて女性の顔を見た。

よく見ていなかったが、顔立ちは大人びた声の割に若い。20歳を少し回ったくらいだろうか。短めの金髪と青い瞳も、意外と快活そうな雰囲気を与えている。

しかしどうしてもそれを吹き飛ばしてしまうのが、肩口から欠けた左腕だった。

 

「……じゃあ、これで。本当にありがとう」

ぼうっと眺めている間に、女性は歩き出していた。

「あっ……」

夜露は止め損ねたが、夜露の家とは反対側に数歩歩いたところで、不意にその足が止まった。

 

「ああそうだ、これ貰って行って?」

言うが早いか、女性が夜露の方へ何か放り投げる。

慌てて受け取った夜露の手の中にあったのは、一本の缶ジュースだった。

「え!?も、申し訳ないっすよ!」

「いいのよ。手伝ってくれた報酬」

そう言い残し、女性は本当に立ち去ってしまった。

 

一人残された夜露は、しばらく遠くなっていく背中を見つめていた。

「……なんか、元気貰っちゃったっすね」

右手に握ったジュースを見て、ふっと、笑いが漏れた。

気づけば、時刻は7時半を過ぎようとしている。流石に急いだ方がよさそうだ。

「でも、誰だったんだろう……片腕がないなんて……」

謎の女性に考えを巡らせながら、夜露は家路についた。

 




NEXT CHAPTER

ノーブルヒルズ・ホールディングスとの係争に入る成子坂。
降ってわいた危機に、成子坂の隊長は一人のアクトレスの雇用を決断する。
それは、夜露が出会った隻腕の女性だった。
「マグノリア・カーチスよ。報酬に見合った対価は約束するわ」

「嘘!?『ブルー・マグノリア』!!?」
「貴女は、この間の……!?」

始まる戦い。
快調に見えた滑り出し。しかし事態は、双子の謀略によって急転する。
「楓さん——!!」
「大丈夫!この場は、私が……!!」

謀略と妄執の中で、一つの命が消えようとするとき。
「良く耐えた——アクトレス!」
宇宙に、一輪の花が咲く。

Chapter1「DIRTY WORKER」
——それは、名も無き少女たちの戦場。
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