書いてる途中で少しストーリーを組み直していて遅くなっちゃいました。
それはそうと今回のタイトルにしたACfaのBGMほんといい曲ですよね。
「いえ、ご尽力感謝します……はい……」
受話器を下ろした文嘉は、そのまま崩れ落ちるように近くの椅子に座り込んだ。
「ちょっ、文嘉、大丈夫?」
「盟華さんは何て?」
「……『ピンクサイクロン』の成子坂へのスポンサードの件、白紙にしてくれって」
様子を見ていたゆみとジニーが、文嘉の返答を聞いて青ざめる。
先ほどの電話は、ピンクサイクロンというアパレルブランドの女社長、萬場盟華からのものだった。
ノーブルヒルズとの係争の後、色々あってピンクサイクロンとのスポンサー契約を結ぶことになり、その準備を進めていたのだが……
「……やはり、ここんとこのニュースが原因?」
「ええ……向こうもイメージ商売だから、役員を説得しきれなかったって」
机に肘をついて眉間に手を当て、ため息をつく文嘉。
そのニュースは、本当に突然だった。
東京アクトレスニュースが報じた、成子坂が叢雲工業の不正に関わっていたという疑惑。
明確な証拠が提示されないまま印象操作まがいの報道は続き、早くもこうやって実害が出るまでに発展していた。
「こうも一方的な報道をされてしまっては、弁解だってできないわ……」
「所長が……ちゃんとした責任者がいないのが間が悪いわね。隊長さんはあくまで代理だし、磐田さんなんてモロ今回の件の関係者だし……」
そう話しながら、ゆみは不安そうな2人を見つめる。
「……ゆみさん、この状況に、何か心当たりはありませんか?」
不意にそんなことを尋ねられ、ゆみは思わず聞き返した。
「心当たり……?」
「さっきの電話で、盟華社長が言ってたんです。成子坂は、どこかから恨みを買ってるんじゃないかって」
(——成子坂がヤバイって話が会社に来たの、
……成子坂って、マジヤバ筋の恨み買ってたりする?)
ノーブルヒルズとの係争の中で起きた、幾つもの不可解な事件。
理不尽なバッシングによる偏向報道と、萬場社長への不自然な情報経路。
——考えたくない結論が、文嘉の中で組み上がっていた。
「成子坂を悪徳企業に仕立て上げ、蹴落とそうとしている勢力が存在する……そうとしか考えられません
今いるメンバーの中でも、ゆみさんは古参のアクトレスです。何か……そんな存在に、心当たりはありませんか?」
「……ごめんなさい。私にはさっぱり」
落ち込む文嘉とジニーから、ゆみはやるせなく目を逸らした。
ゆみ自身、大人として何かしなければいけないとは思っている。しかし古参といえどあくまで「アクトレス」であったゆみには、今の状況に至った原因すら分からない。
否——そもそもこんな言いがかりに等しいバッシングの前では、そんな根拠すら考える意味も無いのだろう。
当事者である整備部には頼れない。
事務員の安藤も、AEGiSからの指示を受け帰任の準備を始めている。
成子坂のアクトレスたちにとって、今頼れる大人は四谷ゆみだけ、だというのに。
何もしてあげられない無力感に黙り込んでしまった、その時。
「……ん?」
事務所に置かれたモニターに映された「東京アクトレスニュース」。その画面に……
「2人とも、あれ!」
「何ですか?……って、ええ!?」
「あそこ映ってるの……マギーさん!?」
「エキサイティングバトル」のコーナーで、聖アマルテアのアクトレスと戦うマギーが紹介されていた。
「すごいな、アマルテアと共同作戦なんて」
「アマルテアがミグラントを雇ったっていうのが、まず意外ね……」
鮮やかにヴァイスを駆逐する姿に、思わず目を奪われる3人。
その中で、ジニーがふと呟いた。
「……マギーさんなら、何か知らないかな」
「ジニー?」
「マギーさん、色々な企業に行ったことがあるんでしょ?だから、成子坂を目の敵にしている企業も知ってるんじゃないかって……」
ゆみは目を丸くした。
「でも、連絡先は?マギーさん、企業から依頼するときはAEGiSの斡旋フォームからにしてって言ってたわ」
「あ、そっか、誰も連絡手段がないのか……」
「私……持ってる」
「「ええっ!!?」」
今度は逆にジニーたちが驚く前で、自分の携帯端末を取り出すゆみ。
「い、いつの間に?」
「このあいだの祝勝会の時、こそっと渡されて……」
——ねえゆみ、今成子坂で一番古参のアクトレスって、貴女でいいのよね?
——え?そうですけど……
——じゃあ、これ渡しておくわ。私の番号
「理由とかは全然聞いてないの。一方的に渡されちゃったから……」
「でも……もしかしたら、突破口になるかもしれない」
3人で顔を見合わせ、頷き合う。
「私たちは出ていよっか、文嘉」
「そうですね、ゆみさん、お願いします……」
事務所に1人残された状態で、貰っていたナンバーを打ち込む。
(今はとにかく、出来ることを……)
端末を耳に当てながら、ゆみは考えた。
今、起こっている事を——この東京シャードに生まれた、揺るがす事の出来ない大きな「流れ」を。
「あ、夜露たちが帰ってきたみたいだよ」
「……こんな時でも、私たちにはこうやってヴァイス退治しかできないなんてね……」
そして、今はまだ見えない、この「流れ」の中で動く存在を。
それを見つけなければ——おそらく、成子坂は終わる。
「……あれ、お客さん?」
「私が出る。ったく、こんな時に誰……?」
『もしもし、ゆみ?どうしたの?』
「っ!マグノリアさん!」
——しかし、この時までは誰も気づいていなかった。
「——こんにちは。おお、貴女が噂の留学生ちゃん!」
その「流れ」の中で動く人物は、すぐ近くにいたということを。
「……それで、私に相談の電話を掛けたってワケ」
『ごめんなさい。私には、これくらいしかできないから』
電話口のゆみに聞こえないよう、マギーは小さくため息をついた。
成子坂を敵視する勢力について、心当たりがあれば教えて欲しい——突如ゆみからかかってきた電話は、思いもよらない要件だった。
「なんだか、貴女を利用するみたいで心苦しいけど……」
「いいえ、使えるものは何でも使う、その姿勢は間違ってないと思う」
弱弱しいゆみの声を、やんわりと慰める。
連日の報道で成子坂へのバッシングは嫌でも把握していたし、情報の広まり具合からして、成子坂製作所が適切な対応を取れていないことも明白だった。
[不正疑惑に揺れる成子坂、過去のギア暴走事件にも関与か]
目の前にある自室の机に置かれたモニターに映るニュースも、日に日にエスカレートしているのが見てわかる。
(問題を放置してるわけじゃない……きっと、今いる人員じゃ対応が取れないのね)
成子坂はアクトレス関連企業としてはかなり小規模。しかも、今は所長が不在の状態だ。
(でも、確かにおかしい。たかだか一中小企業に、なんでここまで……)
気になることは多かったが、今はゆみの依頼に応えなければならない。
「……結論から言うわ。私が今まで依頼を引き受けた企業に、今のところそんな筋は思いつかない」
『じゃあ、考えられるのは……』
「AEGiS、でしょうね。例え大きな企業でも、ここまでハイスピードで世論を動かすのは難しい。ノーブルヒルズの時の不当な査定といい、AEGiSの中の反成子坂勢力が、本格的に動き出したってところじゃないかしら」
今の事態で頭がいっぱいなのだろう——ゆみからのリアクションすら聞こえてこない。
「……逆に、AEGiSの中にそっちから頼れそうな人はいないの?」
「いないことはないけど……協力してくれるかどうか」
落ち込み切った声。
この端末の向こうにいるのが、あの学生アクトレスたちを引っ張っていた姿だとは到底思えなかった。
「勿論、私も仕事先で色々調べてみるわ。大きなところなら、何か情報が手に入るかもしれない」
とにかく元気づけようと、ひとまずゆみの依頼を引き受ける。
『お願い……出来る?』
「任せて。昔から情報収集は得意なの。……なーに、情報料なんて取らないわよ。あまり当てにしてもらっても困るし」
ありがとう、という声は、少しだけ元気を取り戻したように聞こえた。
「だから……負けないで。貴女たちのようなアクトレスがいなくなるのは、私も嫌だから」
今東京シャードに生まれつつある——成子坂製作所を潰そうとする「流れ」。
ミグラントのような異分子なら、その流れに逆らうことは出来る。でもそれを完全に止められるのは、最終的には当事者である彼女たちだけなのだ。
彼女たちが屈してしまうとき——その時が、終わりだ。
『……本当にごめんなさい。それじゃあ、お願いするわね』
「ええ。何かあったら、また電話してもらっていいから……」
通話を切り、そのままの姿勢で目を閉じる。
(……ああは言った、けど)
敢えてゆみには語らなかったが、マギーの中で一つの疑念が燻っていた。
最初に成子坂の不正を報じたのが、「東京アクトレスニュース」だったこと。
不正に関する情報が広まるのが、異常なほどに速かったこと。
そして、この「流れ」を利用できる人物がいるとしたら。
——マギーの脳裏には、ある人物の姿が浮かび上がっていた。
(もしも、この予想が当たってたら……)
この「流れ」の中で動くもの……それは、すぐ近くにいる気がした。
この辺りのストーリー見てると
多分ゆみさんも7年前関連から遠ざけられてたのかなって。