「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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お待たせしました。
最近頻繁にファンが燃えているあの方が登場です。


Mission:16「Someone is Always Moving on the Surface:2」

「真理さん……?どうしたんですか、突然」

事務所に上がり込んできた銀髪の女性を見て、目を丸くする文嘉。

突然の来客は、成子坂の面々が知る人物だった。

 

「おひさー。大変そうだね、文嘉ちゃん」

神宮寺真理。

「日刊東京AEGiSニュース」の記者であり、以前から取材と称して、何度か成子坂に現れている。

「……ええ、それはそれはてんてこ舞いですよ。言っておきますけど、取材に付き合ってる時間なんてありませんからね」

「分かってる分かってる。アクトレスちゃんに迷惑はかけないよ」

 

言いながら、平然と事務所を出ていく真理。

「え……?」

メンテナンスエリアへと歩いていく小柄な後ろ姿を、たっぷり10秒見送って。

「………ちょ、ちょっと!?」「いや遅いって!」

飛び上がって駆け出した文嘉を、ジニーは慌てて追いかけた。

 

(ゆみさんはまだ電話中か……!)

ゆみを置いて、メンテナンスエリアに飛び込むアクトレス2人。

2人の目に飛び込んできたのは、真理が1人の整備士に声をかける姿だった。

 

「……なんだ?またてめぇか」

(あれ、磐田さん?)

(ええ……そういえばこの前来た時も、磐田さんと何か話してたような……)

囁き合いながら、こそりこそりと2人の方へ近づくジニー。

 

「そんなに邪険にしないでよ。昔からのお得意様なんだからさーっ」

「んなこと言って、嗅ぎまわろうってハラだろう?」

「まっさかー、わたし、成子坂のファンだもん……7年前まではね」

後ろから見ているジニーには、真理の表情は分からない——しかし、正面に見える磐田の表情はだんだんと、険しいものに変わっていた。

 

「……ありゃあ、事故だ。何度もそう説明しただろ」

「叢雲の新型ギアの件も?」

「そいつはそれ以前の問題だろうが。パーツを納入しただけで共犯者に仕立て上げられたんじゃ、たまったもんじゃねぇ」

それになぁと、磐田は真理を忌々し気に見下ろして、

「あのネタ……マスコミに広めたのはお前さんだろ」

 

その一言で、ジニーは凍り付いた。

「は……?」「えっ……?」

「あはは、ごめんねー。杏奈の番組に情報流したの、わたしー」

平然と、照れ笑いすら浮かべて、磐田の発言を肯定する真理。

「余計なことしやがって……ウチの嬢ちゃんたちが相当怒ってたぞ」

「遅かれ早かれ何処かしらが動いてたわよ。わたしはただ、生まれた流れを利用しただけ。こうやって、真正面から取材できるようにね」

 

その真理の言葉を、ジニーは最早聞いていなかった。

「いい加減にしやがれ、とばっちりも大概に……」

「……いい加減にしてよっ、神宮寺真理!!」

磐田の声を遮り、ジニーは叫んだ。

突然の怒声に、真理も磐田も、隣にいた文嘉さえもが動揺して振り返る。

 

「えっ……ジ、ジニーちゃん?」

「何が生まれた流れを利用しただけだ……!そっちの都合で、これ以上成子坂(ここ)を傷つけないでッ!」

「じ、ジニー!落ち着いてっ……!」

声を荒げるジニーを、慌てて宥める文嘉。

 

「向こうは新聞記者よ、下手なことしたら……!」

やんわりと掴まれた手を、ジニーは容赦なく払いのける。

「どっちにしろ好きにされるだけだよ!だったら……こっちだって戦う。マギーさんが言ってたこと、覚えてるでしょう?」

夜露から聞いた、隻腕のアクトレスの残した言葉。

——アクトレスには、もっと自由でいてほしかった。

 

「ジニー、それは……」

「もうこれ以上、成子坂が誰かの食い物にされるのは嫌なの……!」

文嘉がそれ以上、言葉を返すことは無かった。

磐田も一人、やるせなく作業帽を押さえて俯いていた。

「……マギー?」

そして一人真理だけが、ジニーの言葉にぴくりと眉を震わせた。

 

「今貴女、マギーって言った……?」

「……マグノリア・カーチス。私たちを助けてくれたミグラントだよ」

マギーの名前に反応した真理を、じっと見つめ返すジニー。

——その目に、何を思ったのか。

「……そっか。ジニーにも、そんな場所が出来たんだね」

真理はそう呟くと、参ったとでも言いたげに手を振った。

 

「分かった分かった、もう嫌がらせなんてしないよ。『青い木蓮(ブルー・マグノリア)』に目を掛けられてるとなれば、どんな報復が飛んで来る事やらわかんないからね」

「……今、何て?マギーさんは自分は彼女とは別人だって……」

問いかけた文嘉に真理はきょとんとした目を向け、すぐにやれやれと目を伏せた。

 

「あいつ、わざわざ誤魔化してたんだ……まあ片腕無くしちゃったし、無理もないか」

「真理さん、もしかして『青い木蓮(ブルー・マグノリア)』と面識が……?」

真理は文嘉の問いに頷き、真剣な眼差しを2人に向ける。

「……わたしね、昔アクトレスだった時、彼女とちょっと付き合いがあったの。ニュースで見た時もギアこそ別物だったけど、一瞬でわかった」

「じゃあ、本当に……!?」

 

アクトレスたちが瞠目する前で、真理は告げた。

「彼女を知る1人のアクトレスとして、真実を伝える。

ブルー・マグノリア……本名、『マグノリア・カーチス』。あの片腕のアクトレスが、伝説のミグラントその人だよ」

 

 

 

ゆみとの通話から、いくばくか時間が経って。

日が傾き始めた新宿エリアの一角、小さなビルに入ったオフィスに、マギーの姿はあった。

「……まさかとは思ったけど、あいつが動いてたとは」

きっかけは、ゆみとの電話中に聞こえた声。

(——おお、貴女が噂の留学生ちゃん!?)

聞こえたのはほんの一瞬で、すぐに掻き消えてしまったが——それは間違いなく、マギーの知る人物の声だった。

 

(あいつが成子坂に行っていたのなら……理由は一つしかない)

応接用のソファに体を預け、端末に映った地図を見つめる。

(「日刊東京AEGiSニュース」……)

「彼女」がジャーナリストという道を選んでいたことを知ったときは、一瞬困惑も覚えた。

しかし……少し考えてみれば、狙いは明白。

 

「……私と同じ。諦められなかったのね」

やるせないため息が、静寂の中に消える。

自らの目的のために、成子坂が責められる「流れ」を創り出した人物。

誰も知らないところから、この「流れ」を利用している人物。

それが、自分の思う通りの人物なら——

 

「——なんか、こそこそ探りまわってたみたいだけど」

背後から女の声が響いたのは、その時だった。

「——っ」

マギーは一瞬、息を止め——無言のまま振り返る。

 

オフィスの入口、大通りの光と音を逆光に浴びて、彼女は立っていた。

長い銀髪の上から黒いハンチングを被った、「日刊東京AEGiSニュース」所属のジャーナリスト……神宮時真理。

向かい合う二人の距離は数メートル。

黙したまま視線だけを動かさないマギーに、真理はからかうような笑みを投げ——

 

「真正面から呼びだしてくるなんてね。らしいことしてくれるじゃん、『青い木蓮(ブルー・マグノリア)』」

「……そっちは随分と陰湿なことしてくれたみたいね。昔の名前が泣くわよ?『メリーバニー』」

苛立ちを隠さないまま答え、マギーは立ち上がった。

 

再び訪れる静寂。

片や7年前、東京シャードを熱狂させたアクトレスチームの元メンバー。

片やその後継と謳われ、人々に力による自由を見せつけたミグラント。

疑いようのない2人の「伝説」が今、夕景の中で相対していた。

 

「……なんだか見違えたね、マギー。昔の、不発弾みたいな怖い目が嘘みたい」

「……貴女はちっとも変わらないみたいね、真理」

言って、マギーは真理を睨みつける。

——以前出会った紺堂地衛理と同じ、敵意と戦意の視線。

成子坂の面々には絶対に見せなかった、本当のミグラントの目を、マギーは真理に向けていた。

 

「答えなさい。成子坂の醜聞を流したのは、貴女ね」

一瞬の沈黙。

「……ええ、そうだけど?」

その敵意に応えんとするかのように腕を組み、真理は答えた。

 

「真理……一体何のために」

「成子坂に接触する、チャンスが欲しかったの。どうせ何処かが成子坂潰しに動き出すんだし、先に手を打っちゃおうかなって思ってさ」

ノーブルヒルズとの係争から始まった、成子坂を潰そうとする「流れ」。

それが本格化するまえに、自分が起爆してしまおうと考えたのだろう——この流れを、最大限利用するために。

「わからないわ。古巣を潰して何が楽しいんだか」

「別に潰そうってわけじゃないよ。わたしはただ……真実を知りたいだけ」

 

マギーはため息をついて、すぐ後ろのソファの背もたれに腰掛けた。

「……敢えて言う。止めなさい、そんなことは。何時まで過去に執着するつもりなの?」

帽子の下から覗く真理の顔が、苛立ちに歪む。

「……言うじゃない。自分だって、過去にしがみついて戻ってきたクセに」

そう言って真理が見せたのは、端末に映ったニュース記事。

 

「『再び現れたミグラント、成子坂を救う』……あの頃と同じように持て囃されて、さぞ気分が良かったんじゃないの?」

画面に映し出された、ソラを翔ける黒鋼のアクトレス。

マギーは画面の中の自らを一瞥すると、静かにかぶりを振った。

 

「……そんなつもりはないわ。私は、そんなもののために戻って来たんじゃない」

僅かに低くなったマギーの視線が、一直線に真理の紅い瞳を見据える。

「貴女と私は、根本的に違うのよ。見ているものが」

「じゃあ、貴女が戦う理由はなに?」

端末をしまい込んで、真理は問いかける。

 

「もう殆ど貴女を知る人のいない世界で、『青い木蓮』の名前を隠してまで。ただのミグラントがどうして、成子坂を助けたの?」

意を決したように目を閉じ、マギーは答えた。

「……恩返しよ」

「恩返し?ミグラントである、貴女が?」

「ええ。そしてそれが……私が戦い続ける理由にも関係してる」

 

困惑する真理の前で、ゆっくりと立ち上がる。

そしてそのままマギーは、オフィスの出口へと歩き始めた。

「……ちょ!?どこ行く気!?」

「ついて来て。言葉だけじゃなく、形として見せたいの。

私が戦う理由を……『青い木蓮』が消えた時のことを」

 

振り返らずに答えて、歩き去るマギー。

真理はその背を追い、夕日に染まるオフィスを後にした。

 




「Actress Personal Identification Card」

—宇宙を駆け巡るフォトジャーナリスト—
「神宮寺 真理」

誕生日 8月12日
年齢  29歳
身長  158cm
血液型 A型
職業  ジャーナリスト

Tips「メリーバニー」
かつて東京シャードに存在したアクトレスチーム
子役として人気を博していた宇佐元杏奈がテレビ番組の企画としてアクトレスを目指すことになり、
当時成子坂に所属していたアクトレス、神宮寺真理と、
一般公募で選ばれた少女、九品田凪の3人で結成したチーム。

優秀なギアメーカーで知られていた成子坂製作所のバックアップを受け、「メリーバニー」は活躍。
当時の小中学生を中心にファンを獲得し、メンバー全員がアクトレスを引退した今でもシタラのように憧れを抱く後輩アクトレスも多い。

行き詰りつつあったアクトレス業界に新たな風をもたらした「メリーバニー」だったが、7年前に発生したギアの運用事故によってチームは解散。
神宮寺真理はジャーナリストとして、宇佐元杏奈はアナウンサーとして、
そして九品田凪は結婚し海外シャードに移住して、それぞれが第二の人生を送っている。
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