「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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先日久々にACVDしたんですけど
やっぱり黒栗さん強いですね。


Mission:18「Remember:2」

宙域を漂う無数の残骸(デブリ)が、また一つ粉々に砕かれた。

飛び散った焼鉄色の破片が、進撃する巨躯と衝突し塵に変わる。

触手のようなアームを携えた、機械の眼球。その群れを率い、剛腕を振り回す一つ目の巨兵。

不気味な駆動音を奏でながら、異形の軍団は目の前の全てを破壊していく。

 

彼らが狙うのは、ただ一つ——

「チッ、何て数なの……!?」

瓦礫の間を縫うように飛ぶ、生き残りの渡り鳥(アクトレス)だった。

 

「これでも——!」

黒いアリスギアからばら撒かれたミサイルが、敵の群れを巻き込み一斉に炸裂する。

爆風の向こうから現れた一団を見て、マギーはバイザーの奥で舌打ちをこぼした。

「実弾は通らないか……!」

続けざまにチャージを終えたライフルを構え、マルチロックレーザーを発射する。

瞳状のレンズにレーザーが突き刺さると、敵は緑色の光と共に爆散した。

 

爆風を避け、マギーはライフルを構え直す。

交戦開始からおよそ一分——いくつか分かったことがあった。

防御傾向は高実弾攻撃耐久、エネルギー攻撃には弱い。

向こうの攻撃手段は、触手先の砲塔からの射撃。後方の大型と腕付きは動く様子を見せていない。

1つ気になったのは、ミサイルを撃った際そちらに引き寄せられるような動きをしたことだ。

「エミッションを索敵してるの……?」

明らかに、ヴァイスとは違う攻撃傾向。

得体の知れない敵に動揺しながらも、ひたすら迎撃を続けていた最中——異変は起こった。

 

『ブル……ノリア、応答を……』

「オペレーター!?……クソっ、通信が……!」

通信に混ざり始めるノイズ。戦闘データを送り続けていた端末も、エラーを表示し動作を停止する。

「通信システムがダウン!?そんな、どうして突然!」

困惑する間にも異常は拡大し、レーダーすらも動作を停止する。

気づけばマギーは、単身で敵に包囲されていた。

 

「……上等!絶対に、生き延びて見せる!」

この状況で、マギーは強行突破を選択した。

戦闘システム以外が悉く阻害されている状況では、強制脱出(ベイルアウト)すら正常に動作するか分からない。ただ黙って安全装置に頼るよりは、この敵を振り切る方が確実だ。

襲い来る敵に向けて、マギーはエミッションの蒼炎を迸らせた。

「来いっ!!」

弾幕を装甲で強引に凌ぎ、レーザーとミサイルの一斉射で陣形に風穴を空け、その間を突進する。

こちらを遮るように動き出した大型種に向けて、マギーはギアにマウントしていたクロスギアを抜刀した。

 

振りかぶられた弧状の刃から、溢れ出る青黒の光。

「零型試作光波刀『月光』」——成子坂と契約した際に専用ギアと共に受け取った、「レーザー発振型クロスギア」の試作機。

「はああああっ!!」

間近に迫る巨大な単眼へと、マギーは光の大剣を振り下ろし——

 

——突如、世界が轟音と爆炎に包まれた。

「があッ……!!?」

シールドの上から強烈な衝撃を喰らい、マギーの身体はアリスギア諸共吹き飛ばされる。

斬撃の瞬間——敵の巨躯がそのまま「爆ぜた」。

自爆という予想だにしない攻撃をモロに受け、マギーは一撃で戦闘不能状態まで追い込まれていた。

 

「げほっ……!このクソ野郎が……!!」

体勢を立て直そうとするが、ギアが言うことを聞かない。

戦闘続行不能——シールド出力の低下を告げるアラートが、砲火の中でけたたましく鳴り響く。

「仕方ない、脱出する——!?」

強制脱出(ベイルアウト)が起動しようとした、その時。

 

マギーは、見てしまった。

不動を保っていた腕付きの個体がその剛腕を振り回し、こちらに突進してきたのを。

「なっ——!?」

背筋が凍る。

ここまでシールドが削られた状態であんな質量攻撃を受けたら——どうなる!?

 

「速く……!!」

迫る光刃。脱出のために放出されるエミッション。

運命が交錯した——その輝きが交わったのは、時間にして1秒足らず。

マギーの身体が転移しようとするまさにその瞬間——剛腕は黒鋼のアリスギアに直撃した。

 

 

戦闘宙域外縁、AEGiS直属の宙域調査艇。

ヴァイスコロニー殲滅作戦に参加するアクトレスたちの母艦になっていた船に、何度目かのアラートが鳴り響いた。

「識別コード5-Dの反応拾えました!強制脱出(ベイルアウト)作動を確認!」

青い木蓮(ブルー・マグノリア)か!? 無事なのか彼女は!!?」

告げられたナンバーに、司令部と船内のアクトレスたちが色めき立つ。

 

青い木蓮(ブルー・マグノリア)が単身未確認ヴァイスと交戦する最中、肝心のヴァイスコロニー殲滅は侵攻ルートを変えて続行。つい先ほどコロニー中心の培地(ミーディアム)が制圧された。

アクトレスたちが帰還、あるいは退避する中、通信の途絶えた彼女の行方だけが分からないままだったのだ。

 

「撤退するアクトレスにギアの回収指示を出せ!未発見ヴァイスの情報が残っている可能性がある!」

『こちらギアハンガー、緊急ワープドライブが終了……うわああああっ!!?』

矢継ぎ早に指示が飛ぶ中、ギア格納区域から絶叫が響き渡る。

『どうした!? 何があった!!?』

「……酷い」

待機していた整備士の一人は、絞り出すように呟いた。

 

流れ広がる鮮血。

崩れ落ちた青い木蓮(ブルー・マグノリア)の左腕は、ドレスギア諸共吹き飛んでいた。

 

 

 

気づけば、倉庫に差しこむ夕日は消えていた。

「……これが、あの作戦で起こったことよ」

ハンガーに座り、俯いて話を聞いていた真理は、ゆっくりと顔を上げる。

「……ひとつだけ。その未確認の敵の情報、なんで伝わってないのかしら」

「奴らと戦い始めたあたりから、ギアがハッキングを受けてたみたいなの。通信が死んだのもそのせい。結局、あいつらに関しての情報は何一つ残せなかった」

当時の報道では、「青い木蓮(ブルー・マグノリア)」の負傷は索敵外のヴァイスに襲われたため、となっていた。

何しろ一斉を風靡したミグラントが脱落するほどの事件である。疑う者も少なくなかったが……実際はAEGiSも、何もわかっていなかったのだ。

 

そして市井の人々には、ただ一羽の渡り鳥が飛び去ったことだけが伝えられた。

それは——彼女たちの自由なる闘争が、今度こそ本当に終わったことを意味していた。

「成る程、貴女の身に起きたことは分かったよ。問題は、そこからどう成子坂を助けることにつながるのかって事なんだけど」

「えぇ勿論。きっっっちり話させてもらうわ」

「そんな強調せんでも……」

おもむろに左肩をおさえ、ふうっとため息をつくマギー。

 

「命だけは助かったけど、身も心もボロボロだったわ。あの時のトラウマで、ロクに寝れやしなかった。

医者にはもうアクトレスとして復帰するのは難しいと言われたし、自分でも諦めてたわ。片腕で何が出来る……って」

「……でも貴女は、こうしてここに居る」

「……えぇ。しばらく経って、面会できるようになった頃だったかしら。一人の整備士が見舞いに来たの」

 

真理は首を傾げた。

「整備士?」

「成子坂に居た時に、私のギアを担当してくれた人。私自身は企業と関わりを持ちたくない性分だったから、名前なんて全然知らなかったんだけど……でも、不思議と記憶には残ってる人だった」

変わった人だったと、マギーは懐かしむように視線を上げる。

 

「ミグラントの私に、やたらと気を使ってくれてね。特に専用ギアに関しては凄い入れ込みようだったわ。使い勝手はどうだとか、何かチューンの要望はあるかとか」

心当たりを考えていた真理は、そこではっと顔を上げた。

(ギアに関して五月蠅い、成子坂の古株の整備士……!?)

「気が弱くなってたのもあって、その時思わず訊いちゃったのよ。なんでそんなに私のことを気にかけてたのかって」

「……それで、その人は何て?」

「……あのギアの秘密を教えてくれたわ。あれは『贖罪』のギアなんだって」

その一言で、真理の中で全てが繋がった。

 

「Fragrant」を見せられた時、真理は一つの違和感を覚えていた。

成子坂製作所は元々、大手メーカーのギアのチューンアップを専門としていた。アクトレスたちの間で有名になったのも、1人1人に合わせた丁寧な改造と調整が評判になったからだ。

故に「成子坂オリジナル」というギアは存在しない筈——仮に真理の知らないところで製造されていたとしても、成子坂の規模ではそこまで特別な品はないだろうと思っていた。

 

では、マギーの専用ギアはどうだろうか。

既存のギアとはかけ離れた「全身装甲型」。重装甲と出力を重視し、安定性と単独交戦能力——言い換えれば生存性に特化したスペック。

それは、まるで。

「貴女のギアを見た時、思った……凪のギアとは、真逆だって」

「相当苦労したって言ってたわ。タフな全身装甲型のスタイルを維持しながら、アクトレス本人への負荷を減らすのは難しかったって」

 

勿論、それはその整備士たちの押し付けではない。

単身で企業を渡り歩くミグラント……ロクな整備を受けられないこともあっただろうし、ゆっくり休めることも少なかっただろう。

成子坂の掲げた「アクトレスたちに最適なギアを」という意志——その答えとして、成子坂製作所は「Fragrant」を青い木蓮(ブルー・マグノリア)に託したのだ。

 

そして、そんなことをしたのは——

「ねぇマギー、その整備士さんの名前、当ててもいいかな」

「あら……心当たりがあるのかしら?」

真理は笑って、その名前を答えた。

「成子坂製作所整備部長、磐田宗一郎……あの頑固親父でしょ」

 

 

 

「ひっくしょい!」

「磐田さん、風邪っすか?」

「バカ言え、こうも忙しいのに風邪引いてられるか。大方どこぞのジャーナリストが俺の噂でもしてるんだろうよ」




ここからが正念場。今までの出来事が少しづつ繋がっていきます。
投稿も安定してできるよう頑張ります。
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