「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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「ねらわれたアクトレス」の章をまるごと駆け抜ける20話です。



Mission:20「4 —For— The Answer:2」

マギーと真理が出会った、その翌日。

真理は、とある知り合いに電話をかけていた。

『真理ちゃん?どうしたの?』

「お疲れ様……ニュース、見たよ。災難だったね」

通話の相手は宇佐元杏奈。「東京アクトレスニュース」のMCであるアナウンサー、そして真理のアクトレス時代の戦友でもある女性だ。

 

……昨晩のことである。

「東京アクトレスニュース」の最後に、宇佐元杏奈がMCを降板することが、ほかならぬ杏奈自身によって伝えられた。

「……やっぱり、ニュースで成子坂に味方したから?」

多分ねと、不満げに答える杏奈。

『別に慣れたことだけどさ……わたしはただ、成子坂所属のアクトレスにまで影響が及ぶのは嫌ですねー、って言っただけなのに』

真理は思わず笑ってしまった。なるほど、杏奈らしい理由だ。

 

子役として芸能界に入り、テレビの企画でアクトレスを始め、そして引退後はニュースキャスターとして日々アクトレスのことを報じ続ける……画面の中の彼女は常に、アクトレスのそばにいた。

昨日のマギーではないが、彼女もまたアクトレスたちの自由を願う存在の一人なのだ。

「それで、これからどうするの?」

『この空気が収まるまでは、表立って動けないからね……せっかくの長期オフだし、普段できない事でもしようかなって』

 

ふふふっと、電話口から漏れる不敵な笑い声。

「じゃあ……マスコミの方と成子坂のみんなの応援、任せていいかな。わたしが行くと警戒されちゃうからさぁ」

『わかった。あんまり危険なことしないでね?』

「はいはい。それじゃあ、また」

 

通話を切り、歩き出す。

「さて、と」

歩みを進める真理の前に見えてきたのは、アクトレスの元締め……AEGiS東京。

「用があるか分からないけど……念のため、ね」

青空を衝くビルを見上げ、真理も不敵な笑みを浮かべた。

 

 

『不正疑惑問題が取り沙汰されております、成子坂製作所ですが——』

モニターの中で、男性アナウンサーが事務所の映像を指し示す。

『アクトレス活動の際に無気力戦闘や怠慢な行動を繰り返し、ヴァイスによる被害が増大していると、AEGiS内部からの告発が——』

「……全く、下らない捏造報道もあったものですね」

 

会長席に置かれたモニターを消し、地衛理は来客用のソファの方へ声を掛けた。

「あら、どうしてそう言い切れるの?」

わざとらしく首をかしげたのは、ソファに座った金髪のアクトレス……マグノリア・カーチス。

何故フリーランスの彼女がここに居るのかと言えば、地衛理自身が依頼のついでに招待したからなのだが……

「彼女たちとは一度、戦ったことがありますので。成子坂は決して、あのような報道をされる企業ではありません」

マギーの対面に座り、地衛理は小さくため息をついた。

 

「……正直に申し上げて、悔しいです。こうして、アクトレスが利用される様を現在進行形で眺めているのは」

「そうね……私も見ていられない」

覇気なく心中を吐露した地衛理に、マギーは同情の言葉を返した。

彼女とて、まだ高校生の少女なのだ。こうして同業者が苦しむ様を見せつけられるのは、そう簡単に耐えられるものではないだろう。

 

そして彼女のやるせなさと怒りは、マギーもまた感じているものだった。

真理と再会してから数日。「東京アクトレスニュース」から杏奈の姿が消え、成子坂に関する報道もさらにエスカレートしている。

あの後真理を通じて聞いたところでは、杏奈は成子坂に直接応援に出向いたそうだが……この状況では、成子坂のアクトレスのストレスも相当なものだろう。

 

「……すみません、私ともあろう者が、弱気なことを言ってしまって」

自嘲するように呟くと、地衛理はマギーを見て微笑んだ。

「不思議です。赤の他人なのに、貴女には何でも話してしまえそうで」

「……なるほど、誰かに相談したかったんだ」

気恥ずかしそうに目をそらした地衛理を見て、マギーも思わず笑ってしまう。

「いいのいいの。私も何だか、貴女のことは放っておけないわ。似たもの同士、ってことなのかしら」

 

そしてマギーは、地衛理に成子坂の協力者について語った。

「……あまり詳しいことは言えないけど、昔の友人が手を貸してくれることになったわ。成子坂を助けられないか、色々調べてくれてる」

「マグノリアさんの、ご友人が……?」

「それに。今こそまだメディアによるバッシングだけど、成子坂がこれでも折れないなら次に来る手は予想がつくわ。そうなれば、私の出番も出てくる」

マギーは立ち上がり、だから、と言葉を継いだ。

 

「安心……はさせてあげられないけど、今は任せて。あの子たちを助けたいって大人は確かに存在する。それだけは覚えておいて欲しい。私に言えるのは……それだけ」

踵を返し、マギーは歩き出す。

 

「……マグノリアさん!」

立ち去るマギーの背に、地衛理は叫んでいた。

「以前貴女に言われたことを、ずっと考えていました。私は何がしたいのか、そのために何ができるのかを」

「……」

「私は……私も、この流れと戦います。私にできる方法で」

振り返ったマギーと、視線が交差する。

2人の戦士は、静かに頷きを交わし合った。

 

 

数分後。

「ったく、ここの雰囲気は慣れないわ……」

マギーは逃げるように、聖アマルテアの校舎から飛び出した。

(というか元叢雲の子、この学校だったなんて……!向こうは気づいてないみたいでよかったけど……!)

危うくすれ違いかけた青髪の少女の姿を思い出し、外壁にもたれかかって息をつく。

 

電話がかかってきたのは、その時だった。

端末に映し出された相手の名は——「神宮寺 真理」。

「もしもし、何か分かった?」

『もしもしマギー?よーやく割れたよ、この流れの手を引いてる『黒幕』』

真理が見つけたという情報は、まさに事件の核心に迫る真実だった。

『……とは言っても、薄々予想はついてるか』

「まあ、とりあえず一番怪しいのは誰って言われれば……ね?」

苦笑するマギー。端末の向こうで、真理も同じ顔をしている事だろう。

「『黒幕は——』』

 

 

「「ノーブルヒルズ・ホールディングス!!?」」

「そう。琴村姉妹が所属してるあの会社が、この騒動の黒幕みたいなのっ」

事務所を訪れた杏奈によって告げられた名に、成子坂の面々はそろって目を丸くした。

 

「……それって、どこまでがあいつらの仕業なの?」

「どこまでも何も、全部よ全部。成子坂への嫌がらせから、わたしの降板までっ」

ジニーの問いに、両腕を広げて答える杏奈。

「成子坂に負けたのを根に持って、こんな嫌がらせをしてたってことですか!?」

「夜露ちゃん、それだけで大企業が動くとは思えません。それにあの会社に、そこまでの力が……?」

首をかしげる楓の横で、文嘉が1人相槌を打った。

 

「そうか……!ノーブルヒルズが手掛けてるのはシャード開発事業。まだ新興の会社だけど、既に東京シャードの都市開発にも成功してるわ。民間企業への影響力も小さくない筈よ」

「その通り!広告出荷量も多いから、マスコミへの発言力も強いみたいで……あそこの圧力で降板が決まったって、スタッフさんがこっそり教えてくれたわ」

「じゃあ、テレビや新聞なんかの嫌がらせも……」

「うん、そっちは真理ちゃんが調べてくれた。テレビ以外のメディアのバッシングも、ノーブルヒルズが手を引いてるみたい」

 

ノーブルヒルズ・ホールディングス。

かつて成子坂と戦った敵を中心に、「流れ」は一気に集束していく。

「そして、その目的は……」

「……私が連れて来た時に、双子は言ってました。成子坂を潰しに来たって」

ノーブルヒルズの目的を、夜露は……成子坂のアクトレスは知っている。

 

(あんたたちが独占してる指定業者エリア、そのすべてを頂いてあげるわ!)

「先の係争は、赤坂エリアだけを賭けた勝負でしたが……」

「今度は成子坂を直接狙ってきたみたいだね。成子坂の信用を落とすだけ落として、指定エリアを丸ごと奪い取るつもりだよ、あいつら」

そう言ったジニーの拳は、固く握りしめられていた。

否、彼女だけではない。

世間からのいわれなきバッシング、孤立し追い詰められていく状況……アクトレスたちの怒りと苦しみは募るばかりだった。

 

「……アクトレスを辞めたわたしに言えるのは、こんなことくらいだけど」

そんな彼女たちに、杏奈は優しく声を掛けた。

「アクトレスでいられる期間は、限られてるから……みんなには、悔いのないアクトレス活動をして欲しい」

「杏奈さん……」

「アクトレスでもない大人の都合なんかに、振り回されないで。わたしは……わたしたちは何時でも、みんなの味方だから!」

 

笑って言い切った杏奈に、夜露たちの顔もふっと綻ぶ。

「……今いないっすけど、シタラさんがいたら大変なことになってましたね」

「シタラ、杏奈の大ファンだもんね……100%暴走してたよね……」

脳裏に浮かんだ「放送事故」という言葉に、夜露とジニーはそろって苦笑した。

 

「——と、盛り上がってるところ、いいかな」

入り口から声が聞こえたのは、その時だった。

 

全員の視線が集まった先にいたのは——、ドアに手を当て事務所を覗き込む、銀髪の女性。

「真理さん!?」「真理ちゃん!?」

「こんちわー。耳より情報、もう一つ持ってきたよ」

事務所に上がり込み、手に持っていた端末を机に置く真理。

「ほらこれ。ノーブルヒルズが近々、成子坂に『特命随契監査請求』を出すみたい」

 

「特命随契監査請求」

真理の口から告げられた単語に、アクトレスたちの表情が硬くなる。

「ここが、勝負どころ……成子坂全てのエリアをかけた、大勝負になるよ」

——事態は、大きく動こうとしていた。

 




次回、Chapter2最終話。
Chapter1と同じく、短めのパートを明日月曜、22時に投稿します。
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