ヤツのせいでいろいろとつらい日々を過ごしておりますが、
なんとか続きを書きました。
迫り来る破壊より一瞬速く、光の軌跡が
マギーがそれに気づくと同時に、何かががしりとギアを纏った腕を掴む。
「うわっ!?」
思わず素っ頓狂な声を上げたマギーの体は、そのままぐいっと引っ張られ、大型種の突進はその横を掠めて飛んで行った。
(助けられ、た……?)
呆然と、掴まれた左腕の先を見つめる。
アリスギアを纏った義手に重なる、少女の右手。
『よかった、間に合いました』
「……サンティ・ラナ!?」
通信越しに聞こえた安堵の声は、マギーにさらなる驚愕を与えるのに充分だった。
「間に合ったって、貴女どうやって……」
『輸送機から直接飛んで来ました。鳳さんの采配で』
さらりと告げるサンティが纏っているのは、水牛を思わせる砂色のアリスギア。
大型のブースターを備え四肢を堅固に覆う出で立ちは、単独行動に優れた強襲型のそれである。
その突破力を生かし、彼女は一人戦場へと駆けつけたのだ。
『……と、話している場合ではなさそうですね』
遠方。大型種が動きを止め、ゆっくりと振り返る。
その紅い瞳は、二人のアクトレスに変わらず敵意を向けていた。
『動けますか、
「……完全にとはいかないけど、何とか」
『わたしがあいつの注意を引きます。成子坂と合流してください』
マギーを残し、サンティは大型種の方へと飛び出した。
周囲から飛び交う小型種の攻撃を掻い潜り、
『———!!』
斬撃そのものは位相障壁に阻まれるものの、その一撃で大型種のターゲットはサンティへと移行した。
『マギーさん!!』
呆然とサンティを見ていたマギーの後ろから、幾つもの光条と共にアクトレスたちが駆けつける。
『大丈夫ですか!?さっき突進に巻き込まれたかと……』
「……ええ、彼女のおかげで」
混乱する夜露に短く返したマギーの、鋭い視線がサンティに向けられる。
アクトレスとしては相当ベテランであるマギーから見ても、サンティの動きは格が違った。
型などない、大胆かつ堅実な体捌き。そして、攻撃に確実に乗せられている敵意。
シタラのようなアクトレスとしての才とも、楓のような武術としてのセンスとも違うそれは。
「ああ……貴女も、こちら側の人間なのね」
マギーに、そう確信させるものだった。
『マギーさん……?』
「っ、ごめんなさい……自信がある人、前衛でサンティを援護!残りは後衛から小型種を殲滅!遅れを取るわけにはいかないわ!」
ついでのように放たれた発破で、アクトレスたちが弾かれたように動き出す。
すみやかに再構築される戦線。大型種を引き付けるサンティを中心に、大規模戦闘が再開される。
『余力のある方は大型種を叩いてください!決定打にはならないでしょうが、大威力が集中すればあの防御を貫けるかもしれません!』
『了解です、サンティさん!』
サンティの要請に応じ、白狐の如く駆ける楓。
『この辺のちっこいのは片付いたよ!』
『OK!わたしたちもサンティを支援する!』
付近一帯の掃討を終えた「トライステラ☆」も、援護射撃にかかる。
はじめから、小型種相手でなら成子坂のアクトレスは決して遅れを取っていない。サンティという強力な救援が入ったことで、戦況は完全にアクトレス側に傾いていた。
(……でも、決め手がない!)
懸念材料はただ一つ。かの大型種だけは、現状倒す手段が存在しないことである。
防御に位相障壁を使用している以上、アリスギアの攻撃で貫通できる可能性はあるが……消耗した状態であの突進を掻い潜りながら攻撃するのはかなりきつい。
無視して逃げるのは論外だ。明確にアクトレスを認識している以上、奴は文字通り何処まででも追ってくるだろう。
(どうすれば……)
勝機を見いだせない、マギーの思考を遮ったのは。
『あー、あー!えっと、聞こえてるかな!』
通信に割り込んだ、あまりにも呑気な声だった。
「……は?」
『え?』
『ど、どこからの通信!?』
一瞬で、一様に困惑に染まる戦場。
その場の全員へ届けられている謎の声は、『あ聞こえてるんだ。よかった』と笑う。
『えーっと警告!そこにいる敵、今からまとめて片付けるから。退避してください!』
続け様の一方的な通告に、混乱が一層強まる。
「何を言ってるの、貴女……!」
直後見えた「それ」に、マギーの声は遮られた。
戦場から、遥か彼方。
何もない宙域が、燃え上がるような光に染まっていた。
『HDM本体、正常に転送完了』
『クリアランス問題ありません。接続を開始します』
「……ははっ。いいねぇ、これ」
飛び交う通信を聞きながら、一人笑みを浮かべる。
己を覆う大型のアリスギアの背後に浮かぶ、巨大な鋼鉄の塊。
それがバックパックに接続されると同時に、暴力的なまでのエネルギーが解き放たれる。
『不明なユニットが接続されました。システムに深刻な障害が発生しています——』
『HDM起動、エミッション・コアの暴走を確認!』
『制御権を委譲しました——京さん、お願いします!!』
頷いて、長大な銃口を構える。
エミッションの輝きを喰らい尽くし、全てを焼き尽くすという兵器。それが向けられた先がどうなるのかは、分かっているつもりだ。
だからこそ、この方法を選んだ。
ALICEも知らない、恐るべき未知との戦いの幕開けは。
ALICEの導きを超克した、ヒトの可能性の結晶を持って飾られるべきだと。
「さて、一先ずこの場は、なんとかしてあげようかな」
吹き荒れるエミッションの奔流の中で、もう一度笑顔を作る。
「だから見せてよ、君たちの力をさ!」
撃鉄は、ここに引かれた。
それは、戦っていた全てのアクトレスたちへと届いていた。
「な、何の光!?」
遥か彼方に瞬いた輝きに、シタラが瞠目し。
「超遠距離から、膨大なエミッション反応!これは……!?」
警告を鳴らすアリスギアに、サンティが声を震わせ。
「……まさか!!」
ただ一人、マギーだけが全てを悟った。
瞬間、全てが光に覆われた。
Q 貴様何をする気だ!?
A いやいや、ちょっとお手伝いをね!!