「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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自分が二次創作しようとすると
作ってる間に原作への興味をなくしてしまうか
そもそも原作が良すぎて自分の物語を作るのが畏れ多くなってしまうか
だいたいこの2パターンでしんどいです。


Mission:24「Mercenaries」

未確認ヴァイスとの戦いから、一夜明けて。

「敵にこんなこと言うのも癪だけど。昨日は助かったよ。救援、ありがとう」

「アクトレスとして当然のことをしたまでです。お互いの危機に、敵も味方もありません」

成子坂製作所の事務所には、サンティの姿があった。

 

「わたしたちが心配だから様子を見に来たって......本当ですかね?」

談笑するジニーとサンティから少し離れたところで、懐疑の視線を向ける夜露。

「隊長に確認までとって来てくださったんですから、下心は無いと思いますが......」

そう夜露を宥める楓も、急の来訪に少し戸惑っていた。

 

「今は皆さんしかいないんですね。その、出撃された方々は無事ですか?」

「全員元気だよ。先に緊急脱出(ベイルアウト)してたエンパイア中野のアクトレスも、ケガはないって連絡がきた」

「そうですか......良かった」

安堵するサンティを見て、ジニーが興味深そうに腕を組む。

 

「良かった、なんだ。敵の戦力が弱まるチャンスだったかもしれないのに?」

「殺し合いをしているわけではありません。どうせなら、互いに全力でぶつかり合いたいでしょう?」

「Oh…...なかなか物騒な比喩だね。怖い怖い」

2人を観察していた楓は、そこではっと目を見開いた。

相も変わらず飄々とした様子のジニーに、サンティが苛立ちを見せたのだ。

 

「むしろ、本気でかからなければいけないのは貴女たちの方では?

何のつもりか分かりませんが、手を抜いていてはわたしには勝てませんよ」

ぴくりと、ジニーの金の眉が動いた。

「......どういうことかな。昨日は皆、あの状況を切り抜けるために必死だった」

「本当にそうでしょうか。()()()本気があの程度なら、期待外れもいいところですね」

「っ......」

 

サンティの辛辣な物言いに、口を噤むジニー。

(何で、サンティさんはあんなにジニーさんに拘るのでしょう......?)

当惑する楓の前で、サンティは思い出したように事務所の時計を見上げた。

 

「......そろそろ失礼します。では、また()()で」

「え......ちょ、ちょっと!」

入口まで歩いたところで、サンティはああそうだ、と振り返る。

「ところで、青い木蓮(ブルー・マグノリア)はどちらに?」

「マギーさんならAEGiSだよ。何の用事かは分からないけど」

「そうですか、じゃあ、そちらから伝えておいてください。

……限界が来る前に、身を引いた方がいいと」

その言葉に、全員の表情が険しくなる。

「っ!どういうことっすか、サンティさん!!」

憤る夜露を無視し、サンティは成子坂を立ち去った。

 

 

「AEGiS防衛政策局次長、霧島良馬です。初めまして、青い木蓮(ブルー・マグノリア)

スーツの男はそう言うと、回転椅子に座ったマギーへと慇懃に一礼した。

「本日はご足労いただき、ありがとうございます......ブルー・マグノリア?」

「......え、ええ。ごめんなさい。少し驚いただけ」

呆気にとられていたマギーは、霧島の視線に思わず姿勢を正す。

 

AEGiSから連絡がきた時、マギーはてっきりオーバード・ウェポンの無断使用――かの武装も扱いはHDMであり、アクトレスの一存での発動は本来禁止されている――を咎められたとばかり思っていた。

ところがいざ来てみれば、説明もなしに小さな会議室に通された挙句、現れたのは防衛局の役人。一アクトレスのマギーなど、なんの接点も持てないような存在だ。

 

ちらり、と、横目で右手を見やる。

澄ました顔で立っているのは、AEGiSの職員制服に身を包んだ『東京最強』こと鳳加純。AEGiS東京にやってきたマギーを、ここまで連れてきた張本人である。

「東京最強のアクトレスと、AEGiSのお偉いさん。なかなか考えつかない取り合わせね」

「私はただの中間管理職ですよ。加純さんには、以前から色々とお願いしている仲でして」

「......まあそういうこと。本題に入りましょう」

口を開いた加純が、マギーの方へと向き直った。

 

「まず、先日の戦闘のことについて謝罪させて。援軍に駆けつけられなかったこと、本当にごめんなさい」

「輸送船からの報告によれば、エンジントラブルで船が動かせなくなったそうです。滅多に起きないことではありますが、タイミングが悪すぎた」

「......エンジントラブル?」

霧島の言葉に、マギーの表情が険しくなる。

 

「ちょっと待って、戦闘中に輸送船と通信したときは、ヴァイスの奇襲を受けたって聞いたわ」

「はい。成子坂製作所からの報告と、輸送船からの報告には、明確な食い違いがありました。無論事実調査を行いましたが、結果は......」

言い淀む霧島の言葉を、加純が引き継ぐ。

「ヴァイスからの奇襲も、エンジントラブルも無かった。輸送船の操縦士が、わざと船を停めたのよ。私たちを戦闘に参加させないためにね」

 

「......は?」

無意識に、困惑と驚愕が口に出ていた。

「気持ちはわかる。でも事実よ。乗ってた操縦士を締め上げて吐かせたから」

「さらりととんでもないことを......でも、なんで操縦士はそんなことを」

 

マギーの問いに、霧島がばつの悪い表情を浮かべる。

「私たちは以前から、AEGiS内部の不穏分子の存在を調査していました。

企業と癒着して、利権を漁る勢力。そして、AEGiSという組織そのものを破壊しようとする反体制派の工作員を」

「AEGiSそのものを......」

マギーは言葉を失った。

ノーブルヒルズとの一回目の係争の時から、AEGiSとノーブルヒルズの癒着の可能性は考えていた。

しかしAEGiSそのものを潰そうとする勢力の存在など、誰が予想できようか。

 

「そもそも今回のような未確認の敵の場合、企業への出撃要請などまず出ません。こちらにも何らかの工作があったと、我々は見ています」

「思った以上にひどい状態ね......じゃあ、あのヘンなのもそいつらが?」

「そちらに関しては、まだ断言は出来ません。奴らについてはこちらもわからないことばかりなのです」

「ただ少なくとも、反体制派がノーブルヒルズに手を出していることは確かよ。今回の特命随契監査にもね」

整備室への侵入者に、不公平な査定。様々な工作があった前回とは違い、今回はまだ表立った介入は見られていない。

しかし今後、何をしてくるかはわからないと、加純は語った。

 

「以上のことを踏まえて、我々は貴女に一つ依頼をしたいのです。青い木蓮(ブルー・マグノリア)

薄い眼鏡を通した霧島の視線が、真っすぐとマギーに向けられる。

「貴女も知っての通り、叢雲を吸収した成子坂製作所は今、アクトレス業界の最前線にある企業の一つとなりました。民間のアクトレス事業所が重要な戦力である今のAEGiSによって、成子坂が失われることは大きな痛手になります......ましてや、それが反体制派の手によって為されるなど、絶対にあってはならないことです。

だからどうか......成子坂が負けないように、全力を尽くしていただきたい」

 

マギーは小さく息を吐き、答えた。

「あなたたちの考えは良く分かった。でも、それを頼む先は私じゃないわ」

「......どういうことです?」

「今戦っているのは、私じゃない。成子坂製作所よ」

 

目を伏せたマギーの声色が、沈痛なものに変わる。

「......そう、あの子たちは本当に頑張ってる。居場所を奪われそうになって、世間から非難されて、それでも、ああやって戦いを続けている」

「ブルー・マグノリア......」

「正直、今のアクトレスに期待なんてしてなかった。企業という鳥籠に閉じ込められた彼女たちに、何ができるんだって。

でも、それは間違いだった。あの子たちは......成子坂のアクトレスたちは、自分にとって大切な物のために戦える強さがあった。覚悟があった。

まだ16やそこらだっていうのに、私たちに負けないほど、逞しかった」

 

顔を上げ、毅然と霧島を見つめ返す。

「だからどうか、私じゃなくて成子坂製作所を応援してほしい」

あなたたち大人が、彼女たちにしてあげられる事に、全力を尽くしてほしい」

そう告げて、マギーは立ち上がった。

「勿論、仕事に手を抜くつもりはない。契約した以上、成子坂を勝たせるのが私の仕事よ」

「......AEGiS内部の事に関しては、我々も手を尽くします。皆さんが、心残りなく戦えるように」

頷いて、2人に背を向ける。

 

その背中に、加純は声をかけた。

「ブルー・マグノリア、最後にこれだけ言わせて。

…...私は、信じてる。貴女の力を」

「......そう。ありがとう」

そう言い残し、マギーは2人の前から去っていった。

 

 

 

 




ちなみにこの操縦士の元ネタは
ACVDでNさん(お前で28人目さん)に買収されてたヘリ操縦士。

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