「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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閉じられた空

どこに幸福があるのだろう

汚れ切って、何も見えない世界で

私たちは、何を信じればいいのだろう

ねぇ、答えて。答えてよ――


Mission:30「Vanishing」

そのメッセージは、東京シャードに存在する全てのアクトレスに同時に送られた。

『こちらは企業コード××××-×、成子坂製作所です。東京シャード全てのアクトレス事業所へ救援を要請します。シャード外縁に展開している、無人兵器の撃退に協力してください』

 

救援要請のかたちで届けられた彼女たちの言葉は、様々な感情に迎えられた。

『かの敵性存在がシャードを脅かす存在であることは、皆さんもご存じのことだと思います。このままシャードへの接近を看過すれば、甚大な被害を齎すでしょう』

不正疑惑のかかった企業の要請など、応じる必要は無いという者。

 

『そして、これはAEGiSの任務に基づく要請ではありません。我々が我々の使命を果たすべく、我々の判断でお願いするものです』

AEGiSからの命令もなしに、出撃していいのかと戸惑う者。

 

『これ以上、言葉を飾ることはしません。皆さんの判断に委ねます』

選ぶのは自分だという事実に恐怖し、尚のこと動けなくなる者。

 

しかし、誰もが立ち止まっていたわけではなかった。

「......こうして願われないと動けないなんて。私もまだまだ弱いですね」

「そう思うなら、行こうよ。もっと強くなるために」

「後悔してる時間はないよ。とにかく今は、今すべきことを―!」

呼びかけに応じ、少女たち(コンドッティエーレ)は走り出す。

大切な友と、大切な場所、そして何よりも、自らの誓いを守り抜くために。

 

「社長。良いよね?」

「ええ、行ってきなさい。この間の借りはしっっっかり返してきて!」

「ビガップ社長!ようっし、バイブス上げてくヨー!」

彼女たちも、迷うことは無かった。

ぶつかり合いいがみ合いながらも、頼り合い高め合ってきたライバルたちを、誰も失いたく無かったから。

 

そして――

「......っ、まだだ、まだワタシは!」

戦場。

迫りくる無人兵器の大群を撃ち落としながら、サンティは吼えた。

望まれるままに戦い、望まれるままに切り捨てられ。自分は何のために戦うのかを見失いかけていた。

 

だけど、今は。

「やらせない!あの翼を、失いたくない!」

認めよう。

機械の翼を広げる怪物に立ち向かう渡り鳥を。自由を謳い上げるあの翼を。

青い木蓮(ブルー・マグノリア)のようなアクトレスを、ずっと夢見ていた。

 

「だから――!」

その折れない意思に、応えるかのように。

あたかもサンティの引き金に合わせたかのように、いくつもの光条が無人兵器に向けて煌めいた。

 

 

相殺した紅白の炎が、暗い宇宙に消えていく。

炸裂した衝撃に煽られ、アクトレスも無人兵器も区別なく吹き飛ばされる。

「今の、は......」

目の前の敵も忘れ、マギーは呆然と砲撃が飛んできた先を見つめていた。

『おーい!聞こえるー!?大丈夫ー!!?』

端末越しに響き渡ったやかましい声が、意識を戦場に引き戻す。

 

「......こ、こっちは大丈夫よ。というか、向こうはまだピンピンしてるんだけど」

あの爆風でも、新型を倒すには至らなかったらしい。さらには仕留めきれなかったことに気づいたのか、紅い巨躯はゆっくりと戦闘態勢に戻っていく。

『あー、誤射が怖くて大分威力絞ったからね』

「ご配慮どうも。それはそうと......見間違いじゃなければ。貴女さっきあいつに墜とされたと思うんだけど」

『それはそのー、作戦の内だったというか?交戦区域さえ割り出したら、1回帰らないと行けなかったからさ』

 

返答を聞きながら、マギーは一度戦場を見渡す。

砲撃の余波で吹き飛ばされたおかげで距離は取れたが、未だに無人兵器の数が減る兆しはない。AEGiSのアクトレス以外離脱者が出ていないのがまだ幸いといったところか。

「それで、その『作戦』とやらは、ピンチの私たちを助けてくれるのかしら?」

『もちろん。これから、この状況をひっくり返す。()()()()()の力でね』

自信満々な声がそう告げるのと同時に、レーダーが新たな反応を捉えた。

 

後方から迫る、多数の友軍反応――アクトレスの反応を。

「これって......!」

『じゃー頑張ってね!アクトレス諸君!』

『......マギーさん、聞こえる!?こちら成子坂製作所、バージニア・グリーンベレー!

助けに来たよ――みんなで!!』

 

暗い宇宙(そら)を翔ける、光の翼。

はじめは成子坂のアクトレスたちかと思ったその輝きは、10や20では収まらない。

『は、ちょっと待って、ウソでしょう!?』

『これ、まさか――!』

疲弊しきった味方からも、困惑と歓喜の混ざった声が上がる。

 

そう、すなわち――

『こちらトーキョー警備、指定エリアに到着!交戦を開始します!』

『ラスコルプロモーションは、救援要請に応じます!こちらも戦闘を開始します!』

『エンパイア中野、同じく現着!死なせないっての、青い木蓮(ブルー・マグノリア)!』

成子坂の「救援要請」を受け取った各事業所のアクトレスたちが、次々と戦場に飛来していた。

 

『大丈夫だよ、マギーさん。みんな分かってるんだよ。自分たちが何のために戦うのか』

優しく響いたジニーの声に、マギーは何も返せなかった。

無数の友軍反応、そしてバラバラの所属コード。

何の誇張もなく、東京シャード全ての組織・企業が集結する。

AEGiSの命令ではなく、ただ自分たちの使命を果たすために。

東京シャードを、守り抜くために。

 

『よーっし、わたしたちも行こうか!』

『旧叢雲の3人で、あの新型を撹乱します。トライステラは援護を!』

『後はとにかく数を減らすのが先決ね。夜露、文嘉、私についてきて!』

『了解です、ゆみさん!』

『バーベナも前に出るわよ!突撃ー!』

成子坂のアクトレスたちも、次々と目の前を飛び出していく。

 

「......まだ、戦えるわよね」

ライフルを握った右腕に、力をこめる。

彼女たちの決意に報いるために。

この景色を、ただ一度の奇跡にしないために。

「強行偵察部隊各員、このまま無人兵器の迎撃を!ブルー・マグノリアも前に出る!」

無数の自由なる鳥(ミグラント)が躍る戦場へ、青い木蓮(ブルー・マグノリア)も飛び込んでいった。

 

 

熱狂は、壁を隔てたシャードの中でも起こっていた。

「おやっさん!ハンガー足りないッスよ!」

「奥の予備ハンガーを動かせ!大丈夫、整備だけはしてたからな!」

「してたというかさせられてたというか......あ、こっちにお願いしまーす!」

成子坂製作所の前にいくつも停められたギア運搬車両。

そこから次々とギアが整備部に運び出され、出撃ハンガーから飛び出していく。

 

地上に残された整備部もまた、自分たちに出来ることに全力を注いでいた。

成子坂製作所のある新宿エリア一帯の、ギアハンガーを持たない小規模事業所の出撃を、纏めて引き受けることを決断したのだ。

「だが、こうもわんさか来るとは思わなかったな......!」

しかし設備だけはあるとはいえ、今の成子坂も人員規模は小規模と言っていい。

流石にキャパを超え始めた盛況っぷりに、磐田がため息をついたその時。

「ぶ、部長!ADAの整備士が、AEGiSからの要請で手伝いに来たと......!」

「はァ!?なんでAEGiSから増援が来るんだ!?」

 

思わず怒声を上げてしまい、整備士から「んなこと僕に聞かれましても!」と悲鳴が上がる。

増援が来るのはありがたいのだが、この出撃はAEGiSに無断で行ったもののはず。

状況が飲み込めずにいた磐田は、ふと聞こえてきた知り合いの声で我に返った。

 

「ついさっき、AEGiSが動いた。今出撃してる全ての事業所に、正式に出撃要請を出したみたいだよ」

「タイミングが前後しましたけど......これで今出撃してる人たちも大義名分が出来たことになりますねっ!」

いつの間にか立っていたのは、アクトレススーツに身を包んだ真理と杏奈。どうやら、スーツを着たまま社用車で駆けつけたらしい。

「そ、そういうことだったのか。しかし、何でこんなに初動が遅れちまったんだ」

「そんなの後で考えましょうよ!ADAの人、予備ハンガーのギア組み付けをお願いします!」

「......あれ、早く行ってあげた方がいいんじゃない?」

更に慌ただしくなり始めた整備室の様相を一瞥し、肩をすくめる真理。

 

「お、おう。お前らも向こうのハンガーに入ってくれ。ギアはお前たちのを出してある」

「了解。じゃあ行こうか、杏奈!」「うん!」

ハンガーへと急ぐ3人の頭上を、またアクトレスたちが飛び去っていく。

(俺たちは俺たちの仕事をする。そっちは任せたぞ、マギー)

その輝きに渡り鳥の姿を重ね、磐田は心の中で呟いた。

 

 

『マギーさん、後ろッ!』

「いつの間に......えっ!?」

マギーの後ろに回り込んでいた小型種が、自爆の寸前に横合いからの射撃を喰らい吹き飛ばされる。

 

「助かった......けど、今のは」

『反応が鈍くなっていますよ。無理せず、少し下がった方がいいのでは?』

通信と同時に目の前に滑り込んできたのは、白馬を思わせる専用ギアを纏ったアクトレスだった。

「貴女......!」『アマ女の生徒会長!来てくれたんだね!』

嬉しそうに呼びかけるジニーに、紺堂地衛理は『ごきげんよう』とお決まりの挨拶を返す。

 

『わたしたちも居ますよー!』『援護しますよ、ブルー・マグノリアさん!』

次いで現れたのは、高機動型と格闘戦特化型、それぞれに先鋭化されたギアを操る2人。

即ち、聖アマルテア女学院生徒会、仁紀藤奏と州天頃椎奈。

『アマルテアの3人だ!』

『キャー!会長ー!!』

集結した「アマ女」のエース3人に、最前線はどっと沸き立った。

 

『......ブルー・マグノリア。私がこうしてここに居られるのは、貴女のおかげです』

「えっ......?」

突拍子もなく告げられた言葉に、思わず困惑の声が漏れる。

『貴女が、戦い続けてくれたから。貴女が、貴女の生き様を見せつけ続けたから。私は......いいえ、ここに集ったアクトレスたちは、こうして立ち上がることができた。私はそう思います』

「そんな、買い被りすぎよ。私はただの、戦うことしか出来なかった渡り鳥だもの」

 

口ではそう答えながらも、マギーは想う。

(......ああ、そうか。そうだったのね)

嘗て一度翼を奪われた自分が、こうして戦い続けられたのは。

(もう一度だけ、一緒に戦ってほしい。成子坂を……私たちの自由の在りかを、守るために)

(だからお願い……マギーさんも、諦めないでほしい)

(好きなように生きて、好きなように死ぬ――それが、お前さんのやり方だろうが)

その在り方を肯定してくれた、いくつもの出会いがあったからなのだと。

 

「でも、そう言ってくれるなら」

ライフルを投げ捨て、戦場を見据える。

物量差を巻き返し、趨勢は完全にこちらに傾いた。

残るのは、今もなおその耐久性と機動力でアクトレスを翻弄する、有翼の大型種。

「私も、それに応える義務がある......!」

左腕の義手を――失い、そして得たものの象徴を振り上げ、マギーは叫んだ。

 

「エネルギーリミッター、強制解除!指揮官不在に伴い、独断でHDMを起動する!」

凄まじいエネルギーを迸らせ、破壊の鋼鉄が駆動する。

破損した「GIGA BLADE」に代わり、AEGiSから託されたそれは――

「――来なさい、『GRIND BLADE』!!」

古の規格外兵装を模した超大型兵器――六つの鎖鋸(チェーンソー)が接続された、暴力をそのまま形にしたような武器が呼び出された。

 

「あいつの足止めをお願い、一気に突っ込む!」

『『了解!!!』』

散開するアクトレスたちの中央を、青い光の翼を広げ、渡り鳥が疾走する。

巨大な刃は右腕に。エミッション・コアからその力を喰らわんと、左腕の義手をエネルギー供給アームが覆っていく。

『不明なユニットが接続されました。システムに深刻な障害が――』

エラーコードも聞こえなくなるようなエネルギーの奔流を纏い、剣を前方へ向けたその姿は、あたかも光の槍――否、青い炎を煌めかせる火の鳥のように。

 

『これで......!』

『マギーさん......!!』

『行っけえええええええええっ!!』

「はああああああああっ!!!」

蒼の劫火が、嘶く。

全てを焼き尽くすその嘴が、機械の翼を一撃で抉り抜いた。

 




絶対に書きたかったシーン1。いやー書いてて楽しかったです。
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