忙しくて結局1か月開けての更新になってしまいましたが、日付がいいのでこれはこれでよかったかなと。
暗黒の宇宙に、突如として瞬く無数の閃光。
まるで流星群のように尾を引く光が、完全に停船した東京シャードから、次々と飛び立っていく。
その光の正体は、言うまでもなくアクトレス。
世代を越え、所属を越え、東京シャード中のアクトレスが、シャードの命運を握る決戦へと参陣していく。
司令船の舷窓から、加純はその光景を眺めていた。
「そっちの首尾は?」
『想定通りです。ノーブルヒルズ・ホールディングスの取締役が、洗いざらい自供しました』
「じゃあやっぱり、あのヴァイスは彼らの仕業だったということね」
何者かとの通信を終え、加純はふぅっとため息をつく。
「皮肉なものね......東京シャード破壊を図った連中に、遠回しに助けられるなんて」
そう声を向ける先には、加純と同じスーツを纏ったアクトレスの姿。
「私たち、試されてるのかもね。彼らと人間、どちらがヴァイスと戦うのに相応しいのか、決着をつけろって」
「面白いこと言うわね、
京と呼ばれたアクトレスは、「どうだろうね」と肩をすくめた。
「......でも、あながち間違ってないのかもしれないわね」
「加純?」
憂いを帯びた加純の視線が、宇宙を往く光の軌跡をなぞる。
「ヴァイスという共通の敵が居ながら、私たちは人類同士でも争いを続けている。
…...もし神様なんてものが本当に居るのだとしたら、これはそいつが与えた最後のチャンスなのかもしれない。人類が、本当に自分たちの生存のために戦えるのか」
振り返った加純は、京に諦観を孕んだ笑顔を投げかけた。
「あるいは、もう答えが出てるのかもしれないわね。私たちの未来に可能性なんてないって」
「......私は、そうは思わないな」
躊躇いなく、アクトレスは答えた。
「ヴァイスと戦うために、
真っ直ぐな笑顔が、加純を射抜いた。
「だから、こうも思うんだ。戦いこそが人間の可能性なんじゃないかって」
「......なるほど。私もそう信じたいわ」
頷いた加純は、部屋の前方......
幾重にも展開される、管制用ウィンドウ。
その一枚、神奈川シャード側の輸送船を映した中継映像が目に留まる。
そこで出撃を待つ、青き鋼を纏った渡り鳥の姿が。
「......そうね。貴女はずっと戦い続けた。戦って、戦って、私たちに希望を、可能性を見せてくれた――だったら、私たちは」
加純の迷いのない瞳が、無数の
「証明してみせよう――私たちになら、それが出来るはずだから」
『時間になった。では改めて、作製内容を通達する』
東京シャード後方、最終防衛ラインへと集うアクトレスたちに向け、加純からの通達が始まった。
『敵である無人兵器群は、シャード後方の月面遺構から出現したのち、ヴァイスとの戦闘を行っていた。これで潰しあってくれれば僥倖と言えたが、無人兵器に大して損害を与えられないまま、ヴァイスどもは全滅してしまったようだ』
出撃したアクトレスたちは、爆破された外壁近くから、両翼を広げるように展開されていく。
その一角、右翼の付け根に相当する位置に、成子坂製作所も集まっていた。
『すごいっす......こんなにアクトレスが集まってるの、見たことないです!』
辺りを埋めつくさんばかりのアリスギアの軍団に、夜露が目を輝かせる。
「叢雲に居た時に、何度か大規模作戦に参加する機会はありましたが......ここまでのものは、私も初めてです」
夜露の横に並ぶ楓も、経験したことのない偉観に目を丸くする。
『AEGiSからの発表によれば、作戦に参加するアクトレスの数は300を裕に超えてるって。こんな規模、シャード船団の歴史上でもそうそうないんじゃないかしら』
『大企業から零細企業まで、志願した事業所は残らず来てるって話だからね。おまけに真理さんや杏奈ちゃんみたいな、引退した資格持ちも集まってるんだってさ』
文嘉の上げた数字を、興奮した口調で補足するシタラ。ちなみに彼女が挙げた元「メリーバニー」の2人も、成子坂所属として同じエリアに配置されている。
『かの無人兵器は、高次元エネルギーに誘引される性質を持っている。故に作戦は明快だ。
この防衛ラインより前で、侵攻してくる無人兵器を殲滅する。
各種個体別の対処方法は、これまでAEGiSから報告されていた通りだ。特に危険度の高い大型種は、単独で戦わないことを心がけて欲しい』
加純の告げた作戦内容は非常に単純だったが、それが最も有効であることはこの場の全員が理解していた。この数か月間、アクトレスたちは力を合わせ、彼らから東京シャードを守り抜いていたのだから。
『でもさ、やっぱり凄い話だよね。普段は企業同士でいがみ合ってることも多いのに、こうやって同じ敵相手に力を合わせられるなんて』
『まさに呉越同舟ってやつね。楽できそうでいいわー』
『......あの物量相手に楽できるとは思えないけど』
玲の言葉に同意したゆみは、ぐるりと辺りを見回し......ふと呟いた。
『そういえば......神奈川シャードに連れていかれた2人、どうしてるのかしら』
今ここに居ない仲間のことを口に出し、心配そうな表情を浮かべるゆみ。
しかしその疑問の答えは、直後加純の言葉によって齎されることとなった。
『そして、本作戦では殲滅戦と並行して、月面遺構中枢への突入作戦を行う』
「突入作戦......!?」
アクトレスたちの間に、ざわつきが広がる。
事前に伝えられていなかった二面作戦の存在に、夜露は目を丸くした。
『月面遺構の奥深くに、大型種のものを凌ぐ強いエミッション反応が確認された。シャードの推進システムにも近い位置だ。ここで破壊活動を行われる前に、速やかに叩く必要がある。
しかし周囲に防衛用と思しき敵性反応が密集していることから、順当に突入することはできない......そこで』
加純の声が途切れると同時に、アクトレス全員にAEGiSから追加のブリーフィングデータが送られる。
「なっ......なんですかこれ!?」
『うわぁ......AEGiSはまたとんでもないものを......』
『うっひょー!ロマンあるーぅ!』
夜露が驚愕し、真理が呆れ、シタラは大喜びで目を輝かせた。
『神奈川シャードで運用試験を予定していた、長距離侵攻作戦用特殊兵装......
神奈川シャード側、突入部隊輸送船。
この決戦の要となる中枢突入を担う3人のアクトレスが、ここで出撃の時を待っている。
バージニア・グリンベレー。
サンティ・ラナ。
そして、マグノリア・カーチス。
3人の纏うアリスギアには、今までにない特殊兵装が取り付けられていた。
アリスギアの背面モジュールを格納し、背中から直接後ろに伸びるように装着された、アクトレスの身の丈を優に超える長大なロケットブースター。
「
出撃を前に、3人に交わす言葉はない。
否、喋ってるヒマなどない、というのが正しいかもしれない。
いかんせん、使うのは実戦投入などされたことのない新兵器。故に、ギリギリまで調整が続けられているのだ。
『突入開始まで残り10分!』
『最終チェック完了、異常個所はありません』
『システム調整は出撃直前まで行います!何かあったら直ぐに言ってください!』
作戦の成功率を少しでも上げるため、力を尽くすAEGiSの整備士たち。
それは恐らく、東京シャード側も同じだろう。
ならば後は、彼らを信じ、戦うのみ。
そして、ついにその時は訪れる。
『作戦は以上だ。最後に一つだけ、一アクトレスとして言わせて欲しい』
全ての準備を終えたアクトレスたちへ、加純が呼びかける。
『ご存じの通り、あの無人兵器たちは、かつての人類が生み出したものだ。
アリスギアに頼らずとも、自分たちは世界を救えると......彼らを作った者は訴えたかったのかもしれない』
マギーはふと、失ったHDM......オーバード・ウェポンのことを思い出した。
オーバード・ウェポンも、無人兵器も、どちらもALICEを介さずに人類が生み出した力。
しかし、両者には大きな違いがあった。
ヴァイスもアクトレスも等しく敵とし襲い掛かる無人兵器......それはただの設計的欠陥ではなく、それこそが彼らが生まれた意味なのではないだろうか。
人類では、ヴァイスと戦う事は出来ないと......無人兵器を造り上げた人々は、そう考えたのではないだろうか。
『ならば、私たちは証明しなければいけない。今を生きる人類は、ヴァイスに打ち勝ち、未来を作ることが出来ると......今日がその、評決の日になるだろう。私から言うべきことは、これで全てだ』
宇宙が煌めく。
一斉に抜き放たれたウェポンギアが、出力を上げるブースターが吹き上げるエミッションが、暗い宇宙に希望の光を刻む。
『では、行こう――現時刻を以って、無人兵器殲滅作戦[オペレーション・ヴァーディクトデイ]を発動する!総員、攻撃を開始しろ!』
『始まった......夜露ちゃん!』
「はいっ!成子坂製作所、突撃ーーーっ!!」
未来を託された戦士たちが、流星群のように飛翔する。
最後の戦いが、始まった。
アクトレスの参戦数ですが、本編で行われたアキ作戦の規模が
大企業所属のエリート+AEGiSの即応部隊で160人ほどとのことだったので
もっと節操なく集まればまあその倍以上にはなるかなという計算でこの数字にしてみました