「青い木蓮、宇宙を翔ける」   作:超天元突破メガネ

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超私事ですが、先日通っていた高専を卒業しました。
なんか、後半はACに助けられた気もする高専生活でした。


Phase:3「Don't forget a hole in the wall」

「「「行くぞおおおおおおおおっ!!!」」」

煌めきの尾を引く流星群が、進撃を開始する。

東京シャード後部宙域を戦場に、アクトレスと無人兵器は真っ向から激突した。

 

両者の間を百の光線が照らし上げ、千の弾丸が激しく飛び交う。

通常の大規模作戦などとは比べ物にならない数の戦火に覆われた光景は、ヴァイスに立ち向かうための「闘争」とは一線を画していた。

アクトレス――過去より現在を託され、未来を創り出すために戦う者。

無人兵器――過去より現在へと侵攻し、未来を犠牲に敵を滅ぼさんとする者。

この戦いは、並び立つことなき二つの意思がぶつかり合う、「戦争」だった。

 

故に、戦闘の規模はアクトレスたちの想像を遥かに超えていた。

『うわっ!ちょっと危ないよ!』

『ごめんっ!こんなに人が多いのは初めてだから......!』

戦場の一角、シタラの大型ギアをかすめた友軍の弾丸。

謝りながら飛び去って行く見知らぬアクトレスを一瞥し、シタラは小さくため息を漏らした。

 

なにせ敵味方共に未曽有の物量。それが一斉に砲火を交える大乱戦である。

「手当たり次第に近くの敵を墜とせ」という単純極まりない作戦も相まって、こんな誤射(フレンドリーファイア)は一度や二度ではない。

複数の事業所を一度に、それも時間のない中で動かすのであれば、アリスギアの性能に頼っての力押しが最善という考えはシタラにも理解できるところではあったが――懸念事項はそれだけではなかった。

 

再びスコープに視線を戻したシタラは、遠方を危うげに飛ぶアクトレスに気付く。

恐らく新興の事業所から参加しているのだろう。明らかに動きが鈍い。

そして不運にも、そんな格好の獲物を敵が見逃す筈はなかった。

『危な――『危ないっ!』

シタラの声より速く、剣閃が疾走する。

機動力に特化したカスタムギアが踊るように肉薄し、細身の片手剣が美しい軌跡を描き小型種を切り裂いていく。

 

無人兵器の爆炎に照らされて、空を舞う星(エトワール)はそこにいた。

『舞......すっご!』

『わたしだって、トライステラ☆だから......!』

そう答える舞の顔に、普段の弱気な雰囲気は欠片もない。

親友の支援射撃を背に次のターゲットへと飛翔する輝きに、もう一つの光の軌跡が交差した。

 

『怜ちゃん、HDMは?』

『いつでも行けるよ、陽動お願い!』

『よっしゃー!』

叢雲を切り裂く3つの光が、散開して大型種へと突進する。

腕付きの大型種はすぐに新たな敵に狙いを定めようとするも、2方向から迫る楓とリンのスピードについていけず、そこに明確な隙が生じた。

 

『私――だって!』

振るわれる大双剣。

怜の格闘戦特化型HDMが、瞬く間に大型種を解体していく。

『あれって元叢雲の......!』『凄い......!』

小間切れになったスクラップを残し飛び去っていく旧叢雲チームを、周囲のアクトレスが驚嘆の声と共に見送った。

 

部分的な苦戦はありながらも、戦況は間違いなくアクトレス側に傾いていた。

宇宙(そら)に爆炎の花が咲くたびに、無人兵器の側が鋼の藻屑へと変わっていく。

無人兵器の組んだ陣形を次々と崩壊させ、アクトレスたちは進撃を続けていた。

 

それはまさに、この数か月の反攻戦の結実だった。

迎撃戦を重ねるたびに、共有された戦況や記録。積み上げられたデータから生み出された、勝利のための戦術。

企業や組織の垣根を越え、一つになった力が、強大な無人兵器を押し返していく。

 

そして、戦況はAEGiSの狙い通りに動き出す。

『今だ......!AEGiS部隊は前進、敵陣を喰い破れ!』

司令官である加純の指示が飛ぶと同時に、戦場の左右端近くでにわかに砲煙が激しくなる。

無人兵器を次々と撃破しながら前進した集団が戦線を抜け、そのまま一気にシャード後方へと突進を始めた。

 

『AEGiSサポート部隊、突破に成功!配置につきます!』

敵陣を突き抜け無人兵器の後ろを取ったのは、最外縁に配置されていたAEGiS直属のアクトレス部隊。

『なるほど、AEGiSの狙いはこれか!』

戦場の一角で後方支援に徹していた真理は、彼女たちの真意に気づき思わず声を上げた。

 

アクトレスたちは東京シャードを中心に大きく鶴翼に開いた布陣を取っていたが、無人兵器はエミッションを狙う思考ルーチンに従い、同じように陣形を広げていた。ちょうど、2つの幅広な壁が重なるように。

そして無人兵器の数が減り、全体的に敵の密度が薄くなったタイミングをつき、一点突破を試みたのである。

 

その目的は背後を取っての挟撃――だけではなく。

『突入部隊が出撃した!気をつけろよ、思いっきり飛んでくるぞ!』

重なった声と、どちらが速かっただろうか。

戦場のはるか前方で、小さな光が強く瞬いた。

『あれって......!』

声を上げる夜露の横で、バズーカを下げた文嘉が笑みを浮かべる。

『ええ、マギーさんたちよ!突っ込んでくる!』

 

超大型ブースターから爆炎を噴き上げ、3人のアクトレスが驀進する。

超高速で迫るアリスギアに対し、戦力が拡散していた無人兵器では集団での対処など出来るはずもなく、単独で追いつこうとする個体も先ほど展開されたサポート部隊によって排除されていく。

何にも遮られることなく突き進む3人の姿は、作戦が見事に成功したことを証明していた。

 

『V.O.B、パージ!中枢へと突入します!』

加速を止めたブースターを脱ぎ去り、アリスギアのみとなった突入部隊が、無人兵器の群れを突き抜け月面遺構の中へと飛び込んでいく。

『みんな......』

『......夜露ちゃん、私たちは私たちの役目を果たしましょう』

思わず見入っていた夜露は、楓からの通信で我に返った。

 

『は、はいっ!』

接近してきた小型種にショットギアで応戦しながら、夜露はもう一度だけ振り返る。

『そっちはお願いします、ジニーさん、サンティさん......青い木蓮(ブルー・マグノリア)!』

届くはずのない声に応じたかのように、3つの輝きが一瞬強まり、そして消えていった。

 

 

『VOB、稼働限界です!パージします!』

廃棄された後部ブースターの残骸を背に、3機のアリスギアが月面遺構への侵入を果たす。

「突入するわよ!次元障壁の出力最大、逆推進開始!」

『『了解!!』』

マギーはギアの防御システムを最大稼働させつつ、専用スーツの上から装着していた逆推進ブースターを点火した。後ろのジニーとサンティもそれに倣い、減速を開始する。

 

ついに侵入を果たすことができた月面遺構は、端的に言えばシャード外壁に開いた巨大な「穴」だった。

何かのシャフトや、エレベーターだった場所だろうか。減速していくと横穴のような通路も目についたが、どれも瓦礫でふさがってしまっている。

そして、不気味なほど静かだった。

『敵影、ないですね......』

『もう全部吐き出した?そんなバカな......』

反応を示さないレーダーを訝しむ2人。

真っすぐに進み続けていると、AEGiSのオペレーターから通信が入る。

 

『アリスギア3機、制動可能速度への減速を検知しました。バックブースター、外せます』

「了解。こちらではまだ敵性反応を確認できていない。そっちも索敵を厳にお願い」

『こちらも随時索敵を行っていますが、全く反応はありません。ジャミングの類はされていないはずなんですが......』 

オペレーターの声が、そこで途切れる。

 

「......オペレーター?聞こえないわよ?」

ノイズしか聞こえなくなった通信機に、マギーが呼びかけたその時、

【......無駄なことだよ】

低くねじ曲がったノイズが、確かにそう言葉を発した。

 

【人は、人によって滅びる......それが必然だ】

ノイズが止み、全ての音が消える。

「......それでも、私は戦ってやる」

静寂の中でそう呟いて、マギーはダウンした通信システムを再起動した。

 

『......さん、マギーさん!?応答してください!』

『マギーさん、大丈夫ですか!?』

復旧するなり聞こえてきたのは、オペレーターとサンティの凄まじい剣幕。

先ほどの声が自分にしか聞こえていなかったことを察した間もなく、レーダーのアラートが重なった。

『最深部で観測していた大型反応がこちらに迫っています!凄いスピードです!』

「......こちらでも、目視したわ」

 

声を震わせたマギーの目の前に、それは音もなく現れた。

他の無人兵器と同じ緑色の燐光を放ちながら、周囲を舞う5つのプレート状のモジュール。

そしてそれらに守られるようにして中央に佇む、ヒト型をした鋼の躯体。

ヘルメットのような小さな頭部に、細い腕、そして狭い肩幅。装飾の少ない上半身に対して、装甲で覆われた脚部――武装した少女のようにも見える、その姿は、

『アクトレス――』

ジニーの呟きに応じるかのように、中央躯体の頭部が橙色の閃光を放った。

 




ラスボス、黒栗と迷ったんですよ?
でも、アクトレスと戦わせるなら「彼女」の方がいいかなと考えました。
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