キャラの喋り方についてはメガネに知識の偏りがあるので感想とかで指摘いただけると嬉しいです。
マギーはそれっぽく頑張ってます。
「こんにちは!レポーターの宇佐元杏奈です!」
スタジオの中央で、女性アナウンサーが一礼する。
平日夕方のニュース番組『東京アクトレスニュース』
そのメインキャスターを務める彼女は、テレビ局の人気アナウンサーだ。
「本日も『エキサイティングバトル』では、成子坂とノーブルヒルズの熱戦をお伝えしますっ!」
杏奈の横にあるモニターに、2つの事業所のマーク、そしてAEGiSによるヴァイス撃破査定ポイントの累計が映し出される。
「初日の出撃では両者ともに、小型ヴァイスの撃退となりましたが……昨日の出撃で、成子坂が大型ヴァイスを撃破!リードを奪いました!」
画面上のポイントが変化し、映し出されるのはノーブルヒルズ8000、成子坂36000。
ワーカー級の複数撃破に成功した成子坂が、ノーブルヒルズを突き放した形だ。
「——そして注目すべきは、成子坂の出撃での一幕です」
モニターが、ギアを纏った薄紅梅の髪の少女を映す。
「ヴァイスとの交戦中、成子坂のルーキー、比良坂夜露ちゃんのギアに異常が発生し、撤退を余儀なくされました。この非常事態に、継戦は困難かと思われましたが……
途中参戦した1人のアクトレスによって、殲滅に成功しましたっ!」
杏奈の声と同時に、モニターに映るアクトレスが変わる。
黒鋼のアリスギアを纏った、金髪のアクトレス……マギーの姿だった。
「彼女の名はマグノリア・カーチス。成子坂製作所と短期契約を結んだ、渡りのアクトレス……ミグラントだそうです」
説明した杏奈自身の瞳も、興味津々と言った表情だ。
「何にも縛られず、自由に空を舞ったというミグラントたち。マグノリアさんも、その信念のもとで戦っているのでしょうか……目が離せませんね!」
自らを映すカメラに、杏奈はニコリと笑顔を投げた。
「あ、ほら!マギーさんが映ってるっすよ!」
画面に映し出されたアクトレスを、嬉しそうに指さす夜露。
「ん?……あら、本当ね」
「むぅ……なんか反応が塩っす」
スツールに座ったマギーのそっけない反応に、夜露はベッドの上でむくれ顔を浮かべた。
音量を絞られたテレビの音が、静かに響く病室。
夕方の街の喧騒はそれほどでもなく、茜色の光がカーテンの隙間から降り注いでいる。
引き続いて流れているヴァイス撃退戦のダイジェスト映像を眺めながら、夜露はぷあっと小さな欠伸をした。
ヴァイスワーカーによって深手を負った後、夜露が目を覚ましたのはこの、新宿エリアの一角にある病院の病室だった。
その時にはすべて終わっていたらしく、隊長たちが駆け込んできたのもすぐのこと。
夜露自身の対応については少量とはいえ喀血していたこともあり、傷が治るまで少しの間入院することになって、今に至る。
丸一日ベッドの上で暇を持て余していたところに、マギーが様子を見に来てくれたのだ。
夜露はコーナーの変わったニュースを消し、改めてマギーの方へ向き直った。
「マギーさん、本当にありがとうございました。楓さんとジニーさんを助けてくれて」
「当たり前の仕事をしたまでよ。こうやって実力を売るのが、私みたいな
自分のようなフリーランスのアクトレスは、力でしか価値を示せないのだと。
どこか自嘲気味に答えたマギーに、夜露は怪訝な顔を向けた。
「じゃあどうして、マギーさんはミグラント……?になったんですか?あんな実力を持ってるなら、どんな企業にも入れるのに……」
「……私は、企業のやり方が嫌いなだけよ」
ため息1つついて、マギーは答える。
「アリスギアの技術が確立されて、ヴァイスは人類の脅威なんかじゃなくなった。
それだけじゃない……アリスギアを開発する企業にとっては、あいつらは『資源』になった」
長い戦いの歴史の中で改良が繰り返された今日のアリスギアは、その殆どがヴァイスの残留機関を流用している。
アリスギア開発を手掛ける企業にとって、ヴァイスはシャードを脅かす人類共通の敵であるとともに、重要な開発資源でもあるのは事実だ。
そして、果たしていつの頃だったのだろうか——「アクトレス」と「アリスギア」の立場が逆転したのは。
人類を守る
「おまけに企業が暴走したときに、不利を被るのはいつもアクトレス側。叢雲の一件はまさにそうだったでしょう?」
夜露ははっとして、気まずく俯いた。
楓たちが成子坂に移籍する原因になった、叢雲工業の不正行為。
新型アリスギアの虚偽報告、企業利益のためのヴァイスの利用……結果的には叢雲の消滅で片が付いたが、楓たちの解雇と移籍などしわ寄せ以外の何物でもない。
——正義感の強い楓がずっと負い目を感じているのも、夜露は知っている。
「……それが嫌なのよ、私は。アクトレスには、もっと自由でいてほしかった」
物憂げな青い瞳が、カーテンの隙間から見える青空を仰ぐ。
嘗て存在した他のミグラントたちも、同じ意志の下戦っていたのだろうか。
自らの力だけを頼りに——ひとりぼっちで。
夜露は小さく頷いて、もう一度マギーの方を向いた。
「……でも私、成子坂があってよかったって思ってます」
確かに、今のアクトレスは企業に縛られた存在なのかもしれない。だけど。
「隊長とか、他のアクトレスのみんなに会えて、一緒に戦えてるんですから。
私はそれが、とても楽しいんです。」
自分にとっては、成子坂製作所に入ったことは間違っていなかったと。
そう言って笑った夜露に、マギーも思わず笑みを返した。
「そう……そうよね。成子坂の人たちは、みんないい人だもの」
「はいっ!」
返事を返したところで、夜露はふと気づく。
話している間にいつの間にか日が落ちて、外はすっかり夜景になっていた。
「そういえばマギーさん、今日は事務所の方に行かなくていいんですか?」
「ええ……今日はちょっと、出撃が出来なくなったから……」
「出撃が出来ない……?」
首を傾げた夜露に、困り顔で頷くマギー。
問題になっていたのは、動作を停止した夜露のギアだった。
次元隔壁、非常用防衛システム、最終手段の
アリスギアに搭載された何重もの安全装置は、ギアの制御機構の中でもきわめて根本的な階層に紐づけられ、動作を保証されている
それらがことごとく動かなかったというのは、ただの整備不足で片付く話ではない……事態を重く見たAEGiSが、動き出したのだ。
「今朝から
「な……なんか大事になっちゃってるんですね……」
夜露は思わず息を呑んだ。
アリスギア開発の最前線であるAEGiSの研究機関の名前まで出てきたことに、驚きを隠せない。
「それだけAEGiSも、今回のことに驚いてるみたいね……昔の二の舞はこりごりなのは、こちらも同じだけれど」
ため息を吐きながら、マギーが立ち上がる。
「もうこんな時間……ごめんなさい、そろそろ事務所に戻らないと」
「わかりました。今日はありがとうございます、マギーさん」
「ひとまずこっちの心配はしないで、ゆっくり休んで。それじゃあ」
病室を出ていくマギーを見送って、夜露はぽふっとベッドに寝転んだ。
「……あら?」
病院を出たところで、マギーは思わず立ち止まった。
隣接した薬局の前で、ジニーが待っていたからだ。
「ジニー?どうしたの?」
「マギーさんがお見舞いに行ってる間に、ギアの異常の原因が分かったんだ。
メッセージでも良かったんだけど、なるべく速く伝えたくて」
そう理由を語ったジニーの表情は、いつも通りのように見えて強張っている。
「その顔を見るに、あまりいいニュースじゃないみたいね」
「……Yes.見て、これ」
頷いたジニーが、1つのパラグラフを映した自分の端末を差し出す。
その画面を眺めて、マギーは目を見開いた。
「っ……」
幾つかのパラメータと、結論として短く綴られた真実。
ふと覚えた胸騒ぎは、ジニーも同じだったようだ。
「……マギー、もしかしなくても、この戦い……」
「……ええ、荒れるわ。間違いなく」
示し合わせたかのように、2人は空を見上げる。
シャード内壁に投影された、偽りの空。
「見つけたぜファーストスター、今日も描くビーザスター!」
「えーっ、速いよやよいちゃん~」
同じ空を見上げる人々の、変わらない日々。
「……明日は、雨が降りそうですね」
「そうですか?こんなにきれいに星が見えるのに」
「うん、なんだろう……わたしも、そんな気がするかも」
そんな日常を照らす光は、どうあってもそこに影を落とす。
誰も目を向けないような、小さな小さな影の中で。
全てを焼き尽くす炎の種は、静かにくすぶり始めていた。
Tips「AEGiS(イージス)」
アウトランド(シャード統括機関)に属する、ヴァイスの襲撃に対処するための行政機関。
各ムーンシャードごとに存在する。
アクトレス部隊の管理やヴァイス警戒網の維持、関連機関や企業との調整、研究機関や学校の運営等々、その業務は多岐にわたる。
Tips「叢雲工業」
日系企業をルーツに持つアリスギアの老舗「ヤシマ重工」傘下のヴァイス対策関連企業。
スラスターエンジンの開発を主力とし、
新型の高性能ドレスギアの発表で注目を集めていた。
しかしヴァイスによる市街地侵攻の際に数々の不正が明るみになり、事業所は消滅。
委託されていた業務は成子坂製作所に引き継がれ、所属していたアクトレスも移籍している。