苦労人戦記   作:Mk-Ⅳ

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始めましての方は始めまして、Mk-Ⅳと申します。
他の作品で知っている方は、本作も目を通して頂きありがとうございます。

本作は書籍、漫画、アニメの設定や描写が混ざっていますが、寛大な心で深くツッコまないで頂けると幸いです。


プロローグ

合衆国軍統合技術研究本部――合衆国の最新技術の研究を行う機関が納められた建物内に設けられた『特別派遣魔導技術部』――と表記された室内で。マフィアと見られそうな凄みを帯びた鋭い眼光をしており、黒髪のショートヘアの碧眼の軍服を纏った、20代中盤と見られる男性が椅子に腰かけ。側にあるテーブルに置かれたラジオから流れる放送に耳を傾けていた。

名はトウガ・オルフェス。特別派遣魔導技術部ー―通称『特派』所属の航空魔導士で階級は中尉である。また、合衆国人の父と極東にある秋津島皇国人の母を持つハーフでもある。

 

『ライン戦線において帝国軍は依然後退を続けており、専門家からは帝国にこれ以上の戦争継続は困難であろうとの意見が多く出ております――』

 

ラジオからは欧州で繰り広げられている、帝国とフランソワ共和国との戦争に関するニュースが流れており。戦局は共和国優勢であり、帝国の敗北で終結するであろうと分析する声が専門家らの討論が繰り広げられていた。

だが、それを聞いていたトウガの表情は疑念の色を浮かべていた。

そんな中、ドアがノックされたので、トウガは入室を促す。

 

「お~い、そろそろ演習の時間だぞぉ」

 

部屋に入ってきたショートカットの金髪碧眼の男性が、トウガに気さくに話しかける。ロイド・フレッド――トウガと同年代の特派所属の主任技師である。

特派は、従来とは異なる新機構を搭載した、次世代の演算宝珠を開発するために設立され。ロイドはその天才的頭脳を見込まれ、若くして主任に抜擢されたのだ。

また、トウガとは幼馴染であり、互いに気心知れた仲でもある。

彼はトウガの側まで歩み寄ると、テーブルに広げられていた地図を覗き込む。

 

「そんなに信じられないのか?帝国が負けるってのが」

「俺の見立てでは、共和国相手なら後数年戦えるだけの余力がある筈なのだ。それをこうも戦線を下げるとはな…」

 

そういってトウガがロイドに向けていた視線をテーブルに戻すと、ライン地方の地図の上に赤と青の駒が対峙するように置かれていた。

そして、赤い駒――帝国側は西部工業地帯ギリギリまで後退しており。もし、帝国の工業力の要であるこの地を失陥すれば、かの国に戦う力は残されないことになる。

 

「帝国が餌をぶら下げているようにしか見えんのだよ」

 

だからこそ共和国にとっては最高級の料理にしか見えず、それを食べて下さいと言わんばかりに見せつけられれば、喰らいつこうとするのは必然であった。

 

「罠だと?」

「ああ、共和国の連中が喰いついたら、一網打尽にする腹積もりなのだろう」

 

トウガが共和国を示す青い駒の1つを指で弾くと、もう一つの駒とぶつかり共に弾け飛ぶ。

 

「そして、首都パリースィイを占領後、残存戦力を殲滅あるいは降伏させてこの戦争はおしまいだ」

 

赤い駒を共和国首都のある場所に置くトウガ。それを顎に手を添えて興味深そうに見ていたロイドが、ほほぅと感嘆の声を漏らす。

 

「そうなると俺らの派遣もなくなるか」

 

テーブルに腰かけ、笑みを浮かべるロイド。

合衆国では共和国側に立ち欧州の戦争に介入すべきとの声もあるも、民衆の大半は否定的であり、表立っては中立の立場を取っている。

だが、万が一帝国が勝利し、欧州に覇権国家が誕生することを恐れた大統領ら介入推進派は、志願者で構成された義勇兵の派兵を計画しているのだ。

その中には実戦データ収集という名目で、特派も含まれているのである。だが、共和国が敗北し終戦となればその機会を失うこととなるのだ。

 

「大変結構なことだ。軍人は働かないことこそがベストなのだからな」

 

軍隊とは存在することで抑止力となり、その力を行使することなかれ、というのがトウガの自論なのである。

 

「ま、俺としては帝国が開発した新型を見たかったがねぇ」

 

情報部が得た情報では、帝国が特派で開発中の新型と同等の性能を誇る宝珠の開発に成功し、実戦に投入しているとのことで。ロイドとしては非常に興味を惹かれる内容であった。

 

「見たければ1人で行ってこい。その間俺は羽を伸ばさせてもらう」

「別にそこまでして見たくはねぇよ。俺がここにいるのはお前の夢(・・・・)を叶えるためだからな」

 

それに、俺も戦争は嫌いだからな、と付け加える友の言葉に。トウガは表情は変えないも、口元に僅かに笑みを浮かべる。

 

「では、夢のために働くとしようか」

「あいよ」

 

トウガが椅子から立ち上がると、部屋から出て更衣室に向かい、軍服から黒色の身体に密着するタイプのアンダーウェアへ着える。

そして、格納庫へ通じるドアを開けると。作業中の多数の整備兵が動き回っており、邪魔にならないよう配慮しながら進んでいくと。ハンガーに固定された白色に塗装された鎧のような物体が見えてくる。

これこそ特派で開発中の新型宝珠であり。関係者からは『ネクスト』と呼ばれ、『魔力を持たない者でも術式の行使を可能とすること』をコンセプトとしている。

電力を魔力に変換可能な新型のジェネレーターを搭載することで、魔導士の最大の欠点である、先天性に依存した絶対数の少なさを解消することができ、安定した戦力の供給が将来的に可能となる。

現状では魔力への変換効率が十分ではないため、攻撃と機動力に魔力の多くを割かねばならず。防御面の補助として、全身を装甲で覆うため、従来のものと比較して装置全体が大型化しまっているのが難点である。

 

「装甲を前より軽くしたのに合わせて、色々いじったから気をつけろよ」

「了解だ」

 

一足先に到着していたロイドの忠告に答えながら、トウガは主を迎え入れる様に装甲を開放していた相棒に、背中を預けるようにして乗り込む。すると装甲が閉じ全身が装甲に包まれ、空気を抜く音と共に最初から身体の一部だったかの様な一体感を感じる。

同時にシステムが立ち上がり、異常がないことと、ロイドら整備班が離れるのをを確認し。傍らに懸架されていた専用のライフルを右手で保持すると装甲を固定していたアームが外される。

ライフルに異常がないことを確認し、格納庫の出口へと歩みを進めていく。

 

『管制へ、こちらパイオニア1。出撃準備完了』

『こちら管制。パイオニア1へ離陸を許可する』

 

通信機で管制とのやり取りを終えると。飛行術式を起動させて体を浮かび上がらせ、宝珠の出力を少しずつ上げてゆっくりと上昇させていき。出力が安定したのを確認し、大空へと飛翔するのであった。

 

 

 

 

合衆国内にある演習場――その上空を、中隊規模の航空魔導部隊が逆V字陣形で飛翔していた。

彼らは合衆国軍戦技教導隊所属であり、合衆国軍の精鋭の中の精鋭と言える実力者達である。

 

『アグレッサー1より各員。そろそろ指定空域だ、気を引き締めろよ!』

 

中隊長の言葉にそれぞれ答える部下達。その誰もが緊張を孕んだ表情をしており、熟練者揃いの彼らでも緊張状態に置かれる事態が起きることを示唆していた。

そんな中でも最後尾にいる若い魔導士は、どこか余裕が感じられる――というより周りの者達の反応を不思議そうに見ていた。彼は着任したばかりの新任であり、今回の演習の内容を説明されても先任者らが実戦さながらにまで緊張している理由が思いつかなかった。

 

『アグレッサー11、何で皆さんこんなに緊張しているんですかね?相手はたったの1人ですよ?』

 

彼は斜め前を跳ぶ先任に通信を繋ぐ。作戦行動中に私語は厳禁だが、どうしても聞いておきたかったのである。

そう今回の演習相手は魔導士とはいえ1人、大してこちらは中隊最大数である12人。勝負にすらならない戦力差であったのだ。

 

『その1人を俺達は何度も相手にして、1度も白星を挙げたことがないんだよアグレッサー12。だから皆今回こそはって意気こんでんのさ、無論俺もな』

『…そんなに凄いんですか新型の宝珠は?』

 

世界最高と言われる合衆国、その精鋭たる彼らがそれほどまでに苦汁を味あわされていることに、彼は驚愕する。演習の恒常化を防ぐためとのことで、彼にだけは演習相手の詳細が伏せられているのである。

 

『接敵すれば嫌でも分かるアグレッサー12。来るぞ!』

 

バレないように通信していたつもりだったが、ベテランの中隊長にはお見通しだったらしい。

お叱りを受けると同時に、上空から大規模の魔力反応を感知した。

 

『ブレイク!ブレイク!避けろ!』

 

中隊長の指示に従い僚機らが散開するのに、無意識に合わせて回避軌道を取ると。先程まで自分達がいた空間を、上空か飛来した眩いばかりの閃光が箒線上に横切っていった。

 

『光学術式!?』

 

光学術式――魔力を電磁波に変換して用いる術式で、収束させて熱線として放出することで相手にダメージを与えることができるが、これ程高出力なものを見るのは初めてのことであった。

 

『敵機捕捉!高度一万二千!』

『一万二千!?』

 

僚機からの報告に絶句する。魔導士の実用限界高度は六千とされており、仮にそこまで上昇したとしても低温からの保護や酸素の生成に多大な魔力を消費し、戦闘能力が大きく低下してしまう。その限界高度を超過しているにもかかわらずこれだけの火力を発揮するなど夢を見ていると言われても不思議ではなかった。

 

『うわ!?』

 

だが、至近距離に迫った光学術式によって気流が乱れて態勢が崩され、防殻で防ぎしれない熱量が肌を焼く痛みでこれが現実だと否応なしに叩きつけられる。

 

『アグレッサー5と8がやられた!?クソッたれ、前より威力が上がってやがる!』

 

態勢を慌てて立て直している間に、僚機から怒号と共に状況が伝えられる。眼下には被弾して戦闘不能と判断された5と8が高度を下げているのが見えた。

 

『総員上昇だ!高度八千で応戦せよ!』

 

今度は中隊長のから出された指示に度肝を抜かされる。そんな高度まで上昇して戦闘行動を行えば、自力での帰還は不可能になってしまう。

 

『下にいる他の隊が拾ってくれる!行くぞ!』

 

躊躇う12に11が叫ぶと上昇していく。そういえば、演習の補助役として他の中隊が参加していたがこういうことだったのかと納得すると、11の後を追って上昇を開始する。

高度が上がるにつれ順応する度にみるみる魔力を消費していき、更に次々と降り注ぐ光学術式を幻影(デコイ)を混ぜて回避せねばならず体力、集中力までもが削られていく。その間にも新たに2人が被弾し撃墜判定を受ける。

 

『あれが、ターゲット…!?』

 

遂に視界に捉えた演習相手――ネクストを纏ったトウガの、従来とは一線を画す姿に思わず目を見開く。その背部から伸びたチューブが接続された2本の大型のライフルの、横に伸びたグリップを持ち、左右の脇でそれぞれ挟むようにして保持しており。その銃口から、先程から自分達に襲い掛かってくる光学術式が放たれている。

 

『今度こそ勝たせてももらうぞ中尉!』

 

中隊長が発砲するのに合わせて統制射撃を開始した。

 

 

 

 

迫りくる狙撃術式をトウガは左右に体を振りながら回避していく。

想定ではこの段階で最低でも半数は落としておきたかったが、流石に最高練度を持つ彼ら相手では難しかったようだ。

反撃として、両手にそれぞれ保持している最新型ライフル『V.S.B.R.(ヴェスバー)』を放とうとするも。こちらの退路を確実に潰してくる相手の統制射撃に狙いを絞る余裕がなくなり、僅かの隙を見つけて発砲するも、難なく回避されてしまう。

 

『流石に手馴れているな』

 

宝珠の性能ではネクストが圧倒的だが、何度も演習を繰り返しているため対策が練られてしまっていた。

 

『ッ!』

 

遂に回避が間に合わず右肩部に被弾する。幸い掠れただけだが、このままでは直撃弾を貰うのも時間の問題だろう。

とはいえここまでの展開は既に『当たり前』となっている。高高度からの射撃で片が付いたのは初回のみで、その後は近接戦闘を挑まねばならない――つまり相手の土俵まで引き摺り下ろされるのが常となっていた。

 

『往くぞ、ネクスト!』

 

命を預ける相棒(宝珠)に語りかけ、V.S.B.R.を背部に格納すると。腰部に懸架されていた従来の魔導士用ライフルより小型のライフル――新型ライフルを右手に持ち、左前腕部に装備された小型のシールドに防殻術式を展開させ正面に構えながら宝珠の出力を上げ相手目がけて降下を開始した。

 

 

 

 

『突っ込んでくるぞ!弾幕を張れェ!』

 

中隊長の指示に合わせ、突撃してくるターゲットを火力を集中させて阻止しようとするも。防殻に全て阻まれてしまう。

 

『クッ早い!?』

 

重力に従っているとはいえ戦闘機と遜色ない速度を出すとは、つくづく航空魔導士の常識を破ってくれる新型だ、と心の中で悪態つきながらも、アグレッサー12は手を止めることなく引き金を引くが、やはり防殻に弾かれてしまう。

こちらが既に疲弊しているとはいえ、あれだけの速度が出ていれば、1発でも直撃すれば撃墜判定の筈だが、防御面でも規格外らしい。

お返しと言わんばかりに、新たに手にしたライフルから光学術式が放たれたので、回避行動に入るも――術式は彼らの眼前で爆発した。

 

『爆裂術式!?』

 

光学術式だったのに、本来は魔導士専用の実弾に魔力を込めて使用される爆裂術式を使用するとは、最早なんでもありではないか。

爆炎によって視界が遮られ攻撃の手が緩むと、数人のターゲットが爆炎を突き抜けて姿を現したっため、すぐに迎撃のすると、直撃したが全て幻のように掻き消え――その内の1体の背後に隠れていたターゲットは幻影が被弾するのと同時にバレルロールで回避すると突撃してきた。

 

『なッ!』

 

精巧に作られた幻影の反応に紛れられたため、反応が遅れた隙に肉薄してきたターゲットはライフルを発砲。瞬く間に3人が撃墜されてしまった。

 

『このッ!』

 

2人の僚機が銃剣に魔力を付加し左右から近接戦闘を挑んだ。

対するターゲットは右手のライフルを腰部に戻し、代わりに腰部左のアーマーに懸架されている2つあるの懐中電灯に似た形状の物を1つを手にすると、魔力で生成された刃と左腕の防殻で、振るわれた魔力刃をそれぞれ受け止める。

 

『もらったァッ!』

 

完全に動きが止まったターゲットの無防備な背中目がけて、銃剣突撃を敢行する。

すると、ターゲットの背部にあるライフルが独立して稼働し、銃口がこちらに向けられたではないか!

 

『――ッ!』

 

それをみた瞬間無理やり失速させ倒れ込むような態勢で高度を下げる。強烈なGがかかるも歯を食いしばって態勢を立て直すと、背部のライフルから放たれた機関銃の如き光学術式が先程いた空間に殺到していた。

調整することなく射撃モードを変更し、尚且つトリガーを引かずに発射可能とは驚くのも馬鹿馬鹿しくなる程新技術が盛り込まれている。

そして、左右から抑え込んでいた僚機を力づくで弾くと、その場で一回転しそれぞれの胴体を一閃し撃墜判定が出る。これで残るは3人となった。

 

『怯むな攻めろ!』

 

中隊長が発破をかけながら射撃し、それに続いてトリガーを引くも、ターゲットは幻影も用いて悠々と回避していく。

予測進路上に誘導系の空間爆破術式を仕込むも、初期照準を察知しているのかこれすら難なく回避されてしまう。

宝珠の馬鹿げた性能もさることながら、それを使用している魔導士の技量も、少なくとも教導隊と同等のものであった。

 

『そこだ!!』

 

軌道を見切って放たれた狙撃術式が、ターゲット背部の左側ライフルに直撃し火花を散らした。

 

 

 

 

「(直撃されたか!)」

 

被弾したのを認識すると、即座に左側V.S.B.Rをパージすると同時に爆発を起こし、その衝撃で態勢が崩れる。

 

『よくやったアグレッサー12!畳みかけるぞ!!』

 

急き態勢を直すも、この期を逃すまいと猛攻をかけられ、撃墜判定にはならないもいくつか被弾してしまう。

出力の関係で、防殻はサブジェネレーターを搭載した左腕にしか展開できないのは、やはり耐久面で不安が残るものだ。

それにしても被弾させたのは新しく着任した者か、若くして教導隊に選ばれただけあって、見事な技量であると心の中で称賛の声を送るトウガ。

 

『だが、負けてやるつもりはない』

 

幻影を最大出力で展開し撹乱すると、近場の雲の中へ身を隠す。

相手は深追いすることなく警戒しながら様子を見ており、緊張感が限界まで達するのを見計らうと、ライフルを右側へと投げる。

雲から出たライフルに反応した相手の内の1人が、反射的に発砲し破壊すると、意識が逸れた隙を突き腰部左側に懸架している魔力剣を右手に持ち突貫する。

雲を突き破ると、ライフルを破壊した者に生成した刃を突き立て撃墜判定とすると、近場にいた中隊長に斬りかかった。

 

 

 

 

陽動に引っかかった隙にまた1人撃墜され、遂に中隊長と自分だけが残った。単騎相手に中隊が壊滅状態とは悪夢としか言いようがなかった。

 

『まだだァ!!』

 

中隊長が銃剣で魔力刃と打ち合うも出力の違いから押されていく。援護しようにも。射線上に中隊長が入るように位置取りされてしまっていて発砲することができない。ならばと自分も銃剣を構え斬り込む。

 

『オオオオ!』

 

裂帛の気合と共に斬撃を放つも、左手でもう一つの懐中電灯状の物を手にすると、魔力刃を発生させ受け止められる。

何度か斬り結ぶが、2人がかりでも出力差で押され、銃剣を弾かれて無防備となった胴体に蹴りを入れられて弾き飛ばされる。

 

『クッ!?』

 

態勢を立て直していると、その間に両手の魔力刃を合わせ長大な1本の刃に変化させ、中隊長に向け横薙ぎに振るう。

中隊長は銃剣に流す魔力を上げて受け止めるが。拮抗したのは一瞬だけで、ターゲットの魔力刃は銃剣を紙のように両断し、そのまま中隊長を斬りつけ撃墜判定が出る。

 

『コノォォォォオオオオ!!』

 

せめてもの抵抗としてライフルを構え狙撃術式を連射するも、ターゲットは再び分割させた魔力刃で斬り払いながら接近してくる。

そして、何発も撃つとトリガーを引いても弾が出なくなった。

 

『弾切れッ!』

 

それを見計らったように、ターゲットが地面を蹴るように軽く上昇しながら横回転して突撃してくると、引いていた右脚が振り抜かれ、防殻を突き抜け咄嗟に受け止めたライフルをへし折りその衝撃で吹き飛ばされる。

激しく揺さぶられる視界の中、投擲された魔力刃が迫って来るのが見え、胴体に直撃すると撃墜判定が出されるのであった。

 

 

 

 

演習を終えた帰投するトウガ。ネクストをハンガーに固定し解除すると、ロイドが出迎えてくれる。

 

「よう、お疲れさん。今回の感想は?」

「耐久面で不安は残るが、ようやく実戦に出せるレベルになったな。最もその機会がいつになるか分からんがな」

 

開発許可こそ出ているものの、その内容に懐疑的な意見が多く、資金が十分に出ておらず開発は難航していたのだった。

 

「ま、ないなら無いが一番だけどな」

「そうだな」

 

そんな話をしていると、整備士の1人が慌てた様子で格納庫に入って来た。

 

「大変だ!帝国がライン戦線を突破して、共和国の首都に進軍を開始したってよ!」

 

その言葉に格納庫内が騒然となる。

 

「それは本当か?」

「あ、中尉。ラジオではそのように…」

 

トウガの問いに歯切れ悪く答える。どうやら確定した情報ではないらしい。

一先ずロイドと共にラジオのある休憩室に向かうと、ラジオの周りには人だかりができていた。

 

『急報です!ライン戦線で後退を続けていた筈の帝国軍が、共和国軍を破り首都のパリースィイへ進軍を開始したとの情報が入りました!まだ詳細は不明ですが、現地では前線から巨大な爆炎が上がり、離れていたにも関わらず立っていられない程の激しい地面の揺れが起こったとの情報も…』

 

ニュースキャスターが情報を伝えているも、余程現地が混乱しているのか情報が不十分で困惑した様子が伝わってくる。

 

「これでこの戦争も終わりか…。お前さんの予想通りになったな」

 

ロイドが感心したように肩を軽く叩いてくる。

 

「そうあってほしいがな…」

 

だが、何故かトウガの心には、言い知れぬ不安を感じてしまっていたのだった。

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