苦労人戦記   作:Mk-Ⅳ
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第三話

統一歴1926年3月17日

トウガとロイドは兵舎の一室にて、テーブルに広げられた地図をそれぞれ困惑の色が混じった表情で眺めていた。

 

「連邦が帝国に宣戦布告したのは間違いないのだな?」

「ああ、確定情報が来た。2日前に戦端が開かれたそうだ」

 

統一歴1926年3月15日――帝国北東部に位置する列強『ルーシー連邦』が帝国に侵攻を開始したのである。新たなる対帝国戦への参加者に連合王国を中心とした連合諸国は――困惑した。

元々帝国と連邦は不可侵条約を結んでおり、これまでの戦役を完全に傍観する構えを見せていたにも関わらず、突如帝国に襲い掛かったのである。その理由が不明過ぎて各国は反応に困ってしまっているのである。

 

「にしても連中どうゆうつもりだ?共和国を見殺しにしておいて、今更帝国と戦り合い始めるなんざ?」

 

ロイドも理由を探ろうと思考するも、一向に思い当たるものがなかった。

帝国と先端を開くのなら、ライン戦線で共和国と死闘を繰り広げている時に襲い掛かれば良いものを、今更になってからの合理性が皆無なのだ。

 

見殺しにしたから(・・・・・・・・)、だろうな」

「見殺しにしたからだと?」

「うむ。まず、連邦は権力闘争の果てに『恐怖』の上に成り立っている国家だ」

「ああ、暇があれば粛正やってるなあいつら」

 

共産主義と言うイデオロギーに染まった連邦は、その理想をい実現しようとした結果。政府の一部の人間が富を独占し、その富を巡って政府内で血を血で洗う闘争が繰り広げられていた。

 

「その結果、連邦政府内には常に『自分の寝首が掻かれるかもしれない』という疑心暗鬼が渦巻いているのだろう。そして、それは対外政策に対しても当てはまる」

「ふむ。つまり『周辺の国家が、自分達を危険視して襲い掛かってくるのでは?』とビビってる訳か」

「特に近年は軍部の者を大量に粛正したために、防衛機構が機能不全を起こしているから尚更だろうな。そして連邦にとって最も脅威となる国家はどこだと思う?」

「お隣の帝国だな。だから不可侵結んでたんだろ」

 

連邦の近隣諸国の中で、最も優れた軍事力を持つのが帝国であった。

 

「そうだ。連邦にとって、帝国は恐怖の象徴と言っても過言ではなかろうな。その帝国が自分達と同じ列強の共和国を蹴り飛ばした。そして次に連合王国とも交戦状態に入った訳だが、もしも帝国が連合王国までも打ち倒したら、欧州で帝国に立ち向かえるのは連邦のみとなる」

 

地図上の帝国を示す駒を手にすると、連合王国本土にある駒を弾きながら置くトウガ。

 

「そこまで考えて、帝国が不可侵を守るのか?自分達に牙を剥かない保証はあるのか?強大となった帝国に立ち向かえるのか?と、いった疑問が積み重なった結果が今回の宣戦布告に繋がったのだろうよ」

「うん?つまり、なんだ。連邦の奴ら帝国と戦うのが怖くて共和国を見捨てて、その結果帝国と単独で戦う可能性が出てきたから怖くなって『やられる前にやれ』理論で今更喧嘩売ったってのか!?」

 

そんな馬鹿な、と言いたそうな顔でトウガに視線を向けるロイド。余りにも馬鹿馬鹿しい、それこそ子供のような理屈で連邦が戦争を起こしたことが信じられなかった。

 

「俺にはそれしか理由が思い当たらんな。最早連邦は我々とは世界を見る『目』が違うのだろうな」

「…お前の説が正しいとすると、連邦は帝国を根絶やしにするまで止まらんってことになるが?」

「ああ、人類が文明を得てから行われてきた利益を求めての戦争ではなく、互いの生存をかけた『殲滅戦争』とでも呼ぶべき原始的なものとなるだろうな」

「怖いねぇ。こんなのと最悪やりあうことになるのかね?」

 

資本主義を掲げる合衆国は、共産主義という相反する主義を掲げる連邦を最大の仮想敵国としており、将来的に軍事的衝突が起きる可能性を危惧していた。

 

「たら、ればの話をしても詮無きことだ。今は目の前の(帝国)に集中しよう。それで連邦の首都が襲撃された件だが」

「それも間違いないようだ。開戦早々に、例のラインの悪魔率いる部隊がモスコーを空襲したらしい。政府機関は軒並み破壊され、あちこちに帝国の旗が突き立てられたって話もある」

 

顎に手を添えて思案するトウガ。状況から考えて魔導士部隊が行うべきは前線部隊の支援だが、首都へ突撃するとは上層部が指示を出したのか、現場指揮官の提案なのかは不明だが。いずれにせよ恐るべき豪胆さと言わざるを得なかった。

 

「動きが早いな、連中予め潜っていたな」

「開戦前から越境していたってのか?」

「連邦が動員の兆しを見せて仕込んでいたのだろうな」

 

国境から首都までの距離と襲撃までの時間を考慮すると、その可能性が濃厚であった。

 

「そのことから考えるに、隠密性重視の軽装備であっただろうにこの戦果だ。やはり恐ろしいまでに高度に練成されているな」

「仮にだが、連合王国首都に同じことを仕掛けられた場合は?」

「対処は難しいだろうな。現状本土の対空網は足の遅い爆撃機を想定したものだからな。魔導士なら帝国との前線になる南部にある陣地を容易に迂回可能だ。まあ、できる対策なんて警戒網の増強と直掩の魔導士を配備するくらいだろうな」

「そうすると、他が手薄にならねぇか?」

「そこを突かれる可能性は否定できんな。奴らの存在事態がある種の(デコイ)となる訳だ」

 

拠点攻防において、基本的に襲撃する側は仕掛けるタイミングを自由に選べるの有利とされている。更に拠点が複数ある場合は、防衛側は戦力を分散させなければならないのである。

そこに帝国は、驚異的な戦果を誇るラインの悪魔とその部隊をチラつかせることで、こちらは嫌がおうにも注意向けなければならず、そこから生まれる隙を突くことも可能となっていた。

 

「これ以上ない程有効な嫌がらせだな。これまでの行動を見ても常識外のことを仕掛けてくるから厄介極まりないな」

「逆に言えば始末できれば帝国の手札を大幅に減らせる。リスクが大きい程リターンも大きいものさ」

 

辟易した様子のロイドに対して、トウガは口元に笑みを浮かべる。

 

「相変わらず恐れ知らずで頼もしいよ。期待してるぜ兄弟」

「任せろ、俺達が作り上げたネクストが負けることはない」

 

互いの絆を確かめ合うように、拳を合わせそれぞれ笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 

「…嫌な天気だな」

 

連邦の宣戦布告から1月程過ぎたある日、トウガは特派にあてがわれた格納庫の入り口に立ち、雲行きの怪しい空を見上げていた。

連合王国と帝国は、ドードーバード海峡を挟んだ航空戦が繰り広げていた。

連合王国が陸戦戦力を増強し、欧州大陸へ乗り込んでくる前に帝国は決着を着けるべく本土への侵攻したいも、海軍力では逆立ちしても連合王国には敵わない。

そのため航空戦力による制空権を確保し、戦局を有利に運びたい帝国と、それを阻止したい連合王国の空戦戦力が激しくぶつかり合っていた。

 

「(これでは索敵に支障が出てしまう…)」

 

雲量が多く雨も降り始めている影響で航空監視網に穴ができやすく、攻勢をかけている帝国からすればまたとない機会であった。最も友軍同士の通信にも障害が出るのため襲撃する側のリスクも大きく、大人しくしている可能性も高いが。どうにも嫌な予感が拭えなかった。

 

「にしても、せっかく獲物が来たってのにお留守番とは、何をしに来たのかねぇ俺ら」

 

そんなトウガの気を紛らわせようとしてか、ネクストの整備をしていたロイドが愚痴りだした。

実は連邦首都襲撃から少しして、ドードーバード海峡での戦域にラインの悪魔率いる部隊の出現が確認されていたのである。当然対応部隊指揮官であるドレイクが出撃を上層部に要請するも、却下されてしまう。

 

「連合王国側の懸念も理解できる。仕方のないことだ」

 

首都の防空網の整備が完了していないため、連邦と同じ醜態を晒したくない上層部の意向で、対応部隊は首都の防衛に貼り付けられ、必然的に特派も待機を余儀なくされているのである。

トウガとしては同じカードを安易に切ってくるとは思っていないも、連合王国の戦略に口を出せる権限はなく、ラインの悪魔が襲撃してくる可能性がゼロでない以上無駄とは言えないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――ゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥウウウウウウウウウ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を遮らんばかりにサイレンがけたたましく鳴り響いた。

 

「ッ!敵襲か!」

 

サイレンを耳にすると同時に、衣服を脱ぎ棄て着こんでいたウェアのみとなると、ネクストへと駆け寄る。

 

「ぁあ!?本当か!間違いないんだな!」

 

司令部と通信しているロイドが焦りを見せながら叫んでいた。どうやら余程事態は深刻らしい。

 

「状況は?」

「南端防空ラインに帝国航空魔導士部隊と、大規模な航空編隊の接近を感知した!」

 

即座に防空図を記憶から引っ張り出し思わず舌打ちするトウガ、その距離ではもう本土の防空部隊の迎撃は間に合わない、となると…。

 

「迎撃はどうなっている?」

「即応可能なのは義勇軍航空魔導部隊だけで、そいつらにやらせるってよ!」

 

最近になってようやく飛べるようになった者が大半の、本来は戦力として数えるべきではない部隊。それを投入せねばならないとは最悪極まる。

だが、ロイドの口から更なる悲報がもたらされる。

 

「更に悪い知らせだ。敵の航空魔導士部隊は、ラインの悪魔率いる部隊だ」

「何ッ!?」

 

目を見開くトウガ。まともな迎撃態勢がとれない状況で、よりにもよって相手が帝国最精鋭とは悪い冗談としか言いようがなかった。

 

「確かドレイク中佐が顔を見せに行っていたな、共に迎撃に出るだろうが、練成不十分の部隊では蹴散らされるだけだ。俺も出る、ネクストなら間に合う距離だ、許可を取っておいてくれ」

「あいよ、行ってこい!」

 

言うや否や、ネクストを身に纏い出撃態勢に入るトウガと手回しに走るロイドだった。

 

 

 

 

給料に見合わない仕事を押し付けられる事態は避けたい。それが帝国軍第二〇三航空魔導大隊指揮官ターニャ・フォン・デグレチャフの信条であった。

だが、軍隊と言う完全縦社会に属している以上。上からやれと命じられれば断れないのが現実だった。当初は連合王国本土への地上襲撃任務評価試験を行うべく出撃したのだが、悪天候のため作戦は中止されるも、代わりに墜落した爆撃機の搭乗員を救助するよう命じられたのだ。

 

「大隊長、敵が距離を取るようです!」

「…弱兵とみて少し嬲ってみるつもりだったが。切り替えが早い。予想以上に、対応が機敏だ。私としたことが、見誤った」

 

現在は救助が完了するまで敵部隊の足止めを行っており、出てきたのは碌に動けない低練度の部隊であったが。指揮系統は驚く程判断が早かった。

 

「少佐殿、いかがされますか?」

「今更引けるか!混戦に持ち込み続けるしかあるまい。喰らいつき続けろ!距離を取られては、何のために切り込んだか分からなくなるぞ!」

 

ターニャは先陣を切り突撃すると、敵の混乱を拡大させるべく、ルーキーと見られる拙い飛行で逃げる敵兵に射撃を集中させると、部下もそれに続く。

まともな回避もできていない数名の敵兵が風穴を空けて落下していき、カバーに入ってきたマトモな動きをするものを狙い撃っていく。

 

「あァアアアア!!!」

 

ルーキーらしき1人が、憤怒の顔を向けながら銃剣に魔導刃を展開して突っ込んできた。

面倒だが僚機らは分散しており、自力で対処するしかなく。手にしている短機関銃は弾切れを起こしているので、空のマガジンを投げつけ気を取られた隙に、突撃した勢いを乗せた木製のストックを腹部に叩きつけた。

顔が良く見える距離となり、苦悶に呻く声が甲高かったので見てみると、成人していないようなうら若き女性だったが。武器を持って戦場にいる以上遠慮する必要はないので、新たなマガジンを装填し銃口を向け――

 

「――ッ!?」

 

本能的に後ろへ跳び退くと、自分がいた空間を光学術式が通過していった。

 

「新手か!」

 

飛来した方向へ索敵すると目を見開く。

 

「なんだ、早い!?」

 

従来の魔導士を優に超える速度で、未知の反応の魔導士が接近してきていた。

想定外の事態に動揺が走るも、歴戦の猛者だけあってすぐに術式を展開し発砲する。

迫る無数の弾丸を新手の魔導士は軽々と回避していくと、お返しと言わんばかりにライフルを発砲してきた。

回避しようとしたターニャの目の前で、放たれた光学術式が爆発を起こし視界を塞がれてしまった。

 

「ッ爆裂術式だと!?」

 

常識外の現象に、流石のターニャも思わず動きを止めてしまう。

 

「!そこか!」

 

右側から気配を感じて短機関銃を向けると、敵魔導士が爆炎を突き破って突撃してくる。短機関銃を浴びせるようとするも、違和感に気づく。

 

「デコイかッ!」

 

背後から殺気を感じ振り向くと、敵魔導士に懐まで潜り込まれていた。

 

「がァッ!!」

 

加速の乗った蹴りが腹部にめり込み、骨が折れる感触と共に吐血しながら吹き飛ばされるのであった。

 

 

 

 

『あの程度では仕留られんか…』

 

蹴り飛ばしたラインの悪魔に対してトウガは、敵の手腕に感嘆する。

不意を突いて先手を打てたものの、防殻を強化しながら衝撃と同じ方向に跳ぶことで思っていた以上にダメージを与えられなかった。簡単に堕とせるとは考えていなかったが、初見でこうも対応できるとは、流石の反応速度と言えよう。

 

 

『畳みかける!』

 

ライフルを向けて追撃しようとするも、別方向からの射撃に阻まれてしまう。

 

『これ以上はやらせん、やらせんぞ!』

 

敵魔導士らがオープンチャンネルで叫びながら、ライフルを連射して接近してくるので、回避しながら応射する。

 

『オルフェス中尉!来てくれたか!』

 

義勇軍部隊と共に出撃していたドレイクより通信が入る。状況を見るに、本来指揮を取るべき者は既に撃墜されてしまっており、部隊も半壊状態であった。

 

『敵はこちらで引き受けます。その間に態勢の立て直しを』

『1人で戦う気か!?』

『もうじき本土防衛隊も上がってきます。それまでの時間稼ぎは可能です』

 

防衛戦である以上、敵を倒す必要はない。撃退できればそれでいいのだ。

 

『…わかった。無理はするなよ!』

『了解です』

 

ドレイクらが一度後退を始めたのを確認すると。敵魔導士に向けて突撃し、互いに旋回しながら、デコイによる撹乱を織り交ぜて撃ち合う。

 

「(できるな…!)」

 

従来の宝珠では多数の術式を同時に使用できないため、飛行と攻撃が優先され、デコイのような攻撃に直接結びつかない術式は軽視されているのだが。ラインの悪魔とその部隊は積極的に用い被弾率を下げている。

当人らの技量もさることながら、複数の術式を問題なく使用できる宝珠もかなり高性能であった。

 

「(なる程、見事としか言いようがないな!)」

 

部隊全体がこれだけの能力を持っているのならば、諸列強の精鋭が歯が立たないのも納得ができた。故に出し惜しみなく攻めるべきと判断した。

V.S.B.R.を肩で背負うように展開し高出力で照射させると、敵魔導士に回避されるも余波に煽られて態勢を大きく崩した。

トウガはその隙を逃さず1人に向けてライフルを発砲、放たれた光学術式は防殻を貫き敵魔導士の左腕の肘から先を消し飛ばす。

 

「逸らされたか!」

 

直撃コースだったが、防殻を強化して軌道そ逸らしたようだ。やはり練度が恐ろしく高い。

 

『少尉ィィィイイイ!!!』

『よせ!来るな!!』

 

他の敵魔導士らがカバーしようと集まって来るが、被弾した敵魔導士はこちらの狙いを見抜いたようで止めようとする。

だが遅い、敵部隊を薙ぎ払うべく再びV.S.B.R.を照射しようとするトウガ。

 

『ムッ!』

 

別方向から飛来した狙撃術式を、左腕に展開した防殻で防ぐ。

V.S.B.R.を格納して飛来した方角を向くと、口に吐血の後を残したラインの悪魔が憤怒の表情でこちらを睨みつけながらライフルを構えていた。

 

 

 

 

想定外――ターニャの今の状況はそう表現するしかなかった。

有利に運んでいた戦局を、たった1人の魔導士の登場でこうも押し返されるなど冗談ではなかった。

しかもその新手の魔導士は見たこともない形状をしており、自分や203魔導大隊に匹敵する能力を持っているとは悪い夢を見ている気分になる。

 

「(クソッ、なんで私がこんな奴を相手にせねばならんのだ!)」

 

自分はただ後方で文化的な生活を送りたいだけなのにこの仕打ち、これが神を名乗る存在Xの仕業ならやはり奴は悪魔以外の何物でもない。

 

「(ともかく、この状況をなんとかせねば!)」

 

たった1人によって自分のキャリアに傷がつけられる等、許せるはずがない。やむを得ないが奥の手を使うしかないらしい。

 

「…主よ、我に敵を撃ち滅ぼす力を――」

 

呪い(・・)の言葉を紡ごうとした瞬間、救助を指揮させていた副長のヴァイスから、救助が完了したとの通信が入る。

 

『01!新たな魔導士部隊が接近してきています!』

 

別の部下からの通信に、感知術式で探ると。先程後退した部隊の他に、師団規模の魔導反応が接近してきていた。本土の防衛部隊が上がってきたのだろう。

目的を達した以上、これ以上の戦闘は無意味。ならば撤退するのが得策とターニャは判断したのだった。

 

 

 

 

ラインの悪魔の魔力量が増大し始めたため警戒していると、どこかと通信する素振りを見せ、こちらを牽制しながら部隊を纏めて撤退していく。

 

『引いてくれたか…』

 

追撃するだけ無駄なので、警戒を解かずに待機しようとすると――

 

「アアアアァアアアア!!!」

『!?』

 

背後からドレイクらと共に後退していたメアリーが、雄たけびを上げながら単独で追撃しようとしているではないか!

 

『スー少尉!待て追うな!!』

 

トウガは慌てて彼女を追いかけ羽交い絞めにして止める。

 

「返せ!!それはお父さんの、お父さんの銃だッ!!!」

『落ち着け少尉!クッなんだこの力は!?』

 

トウガを振り払おうともがくメアリー、その力にネクストが悲鳴を上げる。彼女にネクストを上回る魔力量はない筈なのにである。

 

『ええぃ!止むを得んか!』

 

このままでは彼女を止められないと判断し、術式で電流を流すトウガ。

 

「キャッ!?」

 

ビクンッと体を震わせて意識を刈り取られたメアリーの動きが止まる。そんな彼女をトウガは『お姫様だっこ』と呼ばれている形で抱え直す。

 

『少尉君は…』

 

先程発言や驚異的な魔力量といい、彼女の身に何が起きたのか、疑問がトウガの心の中で渦巻くのであった。


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