|剣士《The Fencer》だが、それだけじゃない 作:星の空
香織に武を叩き込んでから約2年が経ち、儂と白音は高校2年次に上がった。
ヨミは件の悪魔の対策のために高天原に帰還した。かなり悲しがっていたし、
高校2年次になるまでの間香織とのわんつー・まんでの鍛錬は欠かしてない。そのおかげ?せい?か、低級の英霊……岡田以蔵クラスの輩とは渡り合える程に成長した。
因みに雫にも偶に教えてはいる。
中3のある時にいつもの所(昼食時に行く静かな所)に行くと男女の言い合い?話し合い?の声が聞こえた。
声の主は天之河光輝と白崎香織である。
内容的には、
「香織、最近付き合いが悪いけど…何か問題があったのかい?」
「うぅん、全然。」
「そうか!なら今日は龍太郎達と一緒にラウンド─ンに行こう!」
「ごめんね。私は今日も練習があるんだ。」
「なっ、昨日もそんなこと言ってたじゃないか!ほぼ毎日通って疲れないのかい!?いや、疲れてるはずだ!涼愛先生に香織を休ませる様に進言してくる!!」
「待って、最初は確かに疲れることもあったけど…」
「やっぱり疲れてるんじゃないか!!」
そんな会話をして天之河が憤りながら歩もうとしたが、いつの間にか地面に背を付けていた。それで少しは冷静になった様だ。
因みに何があったかと言うと、あの一瞬で香織が背負投をして落下時の痛みも起こさずに寝かしたのだ。
「最初はって言ったよね?それでね、天之河くん。私、好きな人が出来たの。でも、私って学校では2代女神って言われてるらしいの。認めたくないんだけどね。そんな私がその人にアピールしてたらその人に迷惑をかけちゃう。だから御師様に師事して貰って、周りからの視線から感情を読み取る鍛錬をしてもらってるんだ。周りからの視線で攻め時と引き際を見極めてからアピールをする。そうすれば視線に込められるであろう悪感情を少しでも緩和出来る。それに天之河くんは今、私に背負投をされたことに混乱して、私に好きな人がいることに困惑してる。違うかな?」
「ッ!?!?!?!?」
天之河光輝は驚愕した。
他所を向いている香織に自分が視線を向けていたのだが、今自分が思っていたことを当てられたからである。
因みに香織はこっそりと覗いている儂を見つけて内心では(なんで御師様がここにいるの!?)と、驚いている。
儂は天之河光輝の死角にいるため天之河光輝は気づいてない。
「天之河くん、まさかとは思うけど………私がずっと天之河くんと一緒にいるとでも思ってたの?」
天之河に向きながら天之河に問う香織。
「あ、あぁ。それは当たり前だろう?」
何当たり前なこといってんの?と言いたげな顔をする天之河。儂はそれを聞いて呆れ果てた。
「そんなことは絶対に無いよ。あのね、人には出会いがあれば必ず別れがある。それは離別、死別、喧嘩別れ、すれ違い、運命、などと別れ方が沢山ある。だからずっと一緒なんて絶対に無い。」
香織が天之河に啖呵を切ると同時にチャイムが鳴る。
「あぁ、チャイムが鳴ったから私は行くね。あと、私の恋の邪魔をしないでね。」
香織が去ったあと、1人残った天之河はこう呟いた。
「そこまで俺の事が好きなのか?」
内容的にはこんな感じだった。
最後に天之河が呟いた言葉を聞いた儂が思わず天之河の後頭部を殴って今の戯言を忘却させたのは悪くないであろう。
そして、学期ごとのクラス替えで天之河と坂本を3-Dクラスにして、香織や雫、香織の初恋相手である南雲ハジメを3-Aクラスにするなどして、香織の初恋が成就する様に図った。無論このクラスに儂やヨミ、白音もちゃんとおる。
因みにこのクラスの3分の2はあの時の野次馬の中にいた者達で構成されており、その者達の男子と1部女子はあの時の儂と香織の会話を聞いておったので香織が南雲ハジメに一目惚れしていることを知っているため、知らない者に教えたりして暖かい目で見ている。他のクラスからこのクラスに来たものが居れば皆が連携して香織の恋を邪魔されない様に図ったりしている。
しかし、南雲ハジメが座右の銘「趣味の間に人生」を掲げているためなかなか焦らしい。ただ、香織の恋が成就されるのならばとこのクラス内にいるオタクである清水幸利やヨミ、材木座義輝を中心としたオタク共が香織に南雲ハジメの趣味の内容を教えたり(無論、人による価値観の違いも教えている)、香織が南雲と会話を成立させたりするのに一役買って出たりしていた。
そして、クラス内のオタク(南雲の趣味・興味調べ担当)、腐女子(南雲の動向監視担当)、百合(南雲との接触者(女)の情報収集担当)、脳筋(対邪魔者担当)、頭脳派(南雲の生活を計算して、基本的にどこにいるのかを纏める担当)、スイーツ脳(香織の女子力アップ担当)などとある種の異常者共が束となって南雲の生活やその近隣の様子、南雲の両親の仕事等を徹底的に調べあげていたのにはプライバシーの侵害では無いのか?とヒヤヒヤしたが、特にこれと言って何もなかった。
ただ、唯一まともであったのが委員長の飯田天哉と苦労人の雫だけである。彼らのお陰で一線を保っていた。
因みに儂と白音はあまり役に立ちそうでなかったので脳筋共に混じっていたりする。
南雲家を大方把握して、休日に南雲が留守であり、南雲の両親がいる時に南雲家に突撃。事情を説明して外堀を埋める作戦を画作した。
香織の両親、父は断固拒否していたが娘である香織の般若の一言と母の笑わない笑顔に黙り込み、外堀を埋め始めた。
簡単な事で二人きりの時間を作ったり、デートをさせたりしている。
ただ、天之河
そして、いざ告白しようとする時期に受験シーズン到来でそれどころではなくなった。
幸い、南雲は璃緒須高校に進学する気だったので香織の恋を成就させるためだけに、
儂こと・紫呉涼愛千嗣、マスコット・塔城白音、厨二型オタク・材木座義輝、書籍型オタク・清水幸利、万能型オタク・加納慎一、軍事オタク・平野コータ、ネットオタク・粒咲あんこ、科学型腐女子・鈴木燈、本名不詳の腐女子・Y、布教型腐女子・金森羽片、末期な腐女子・神原駿河、ガチ百合であまり積極的に参加はしなかった・誘宵美九、お姉様一筋の・白井黒子、そのお姉様と呼ばれている・御坂美琴、乱闘好きな脳筋・岩泉翔、怪力女子・山城由依、ドジっ娘な・鳳ちはや、怪力で不良な・七海征十郎、何処ぞの坊ちゃんである・奴良リクオと護衛?な・青田坊と・粉雪氷麗、暴力嫌いな元武術家の・犬塚孝士、我らが真面目くん・飯田天哉、他には七之里呼吹、八重樫雫、天之河光輝、坂本龍太郎と儂が知る中ではこれだけ璃緒須高校に入学するそうだ。無論、香織もここに通うつもりである。
因みに天之河光輝と坂本龍太郎以外は皆3-Aである。3-Aから璃緒須高校に行く者達は家が近い等の理由もあるがやはり香織の恋の成就を見届けたいのであろう。まぁ、儂は知らぬが3-B、Cからも璃緒須高校に入学するつもりの者もおる。
そんなこんなで、ある日の授業で符山の先公監修のもと受験のための自習時間。
「ふと儂は思いついたのじゃが…………」
『?』
誰も喋らずに集中する中で儂が声を出したので、耳を傾けながらでも取り掛かっている。
「皆で泊まりがけの勉強会を開かんかの?無論、計画を立てねばなるまいがな。」
「勉強会は賛成だが、問題があるではないか。計画を立てるとしても衣食住の衣は各自で持ってこればいいし食は各自でお金を出し合えばいい。しかし、住となる会場はどうするのだ?皆と言っても有志で希望者が参加。男女が参加するとしても問題が起きてはならない。近隣には良さそうな施設はないぞ?」
儂の呟きに反応したのは隣に座る飯田天哉である。
「それは言い出しっぺの儂の家でよかろう。」
「ッ!!!!」
この言葉に強く反応したのは監修の符山の先公である。それもそうだろう。符山の先公は家庭訪問をしようとしても、儂の家には1度も来なかった。否、来れなかったのだから。
そして、周りもざわめく。符山の先公が来れなかったのに加え、この学校の人間は皆疑問に思っていたのだ。紫呉涼愛の家は何処なのか?と。
「し、静かに!」
符山の先公が静かにするよう呼び掛けてからは皆自習に取りかかった。
その日の昼休みに、儂と飯田、雫、奴良、Y、犬塚は席を合わせて食事をしながら自習時間に儂が言ったものの計画を建てていた。
「必要事項を確認するが、衣食住の衣は各自で準備、食は参加者でお金を出し合って近くのスーパーから材料を買ってくる、住は紫呉涼愛さんの家でいいんだな?」
「無論じゃ。此処から10分かそこらじゃから此処に集合してくれれば案内しよう。」
「それじゃああとは日にちと時間、何日間するのかとお金を幾ら持ってきたらいいかだな。」
「ンなもん参加者全員が終わるまででいいじゃねぇか。バイトとかで出たりすんだからそんときに金の補充とか着替えを変えてきたりすりゃいいだろ。」
「Yさん、それは長期となるが……親は怒らないのかい?」
「奴良は心配性だなぁ受験が終わった奴は別に家に帰っていいんだぜ?本番まで皆から教えて貰えりゃあいいだろ。」
「ふむ、確かにその方がええかのう。受験を終えた者が居座っては逆に邪魔となる場合もある故に、受験を終えた者は帰宅と。開始は今週末からでええじゃろう。」
「食費に関しては………一人当たり約1万持ってきて、足りない場合は1度帰宅して持って来るパターンだな。」
「えぇ。とりあえず紙に纏めて見たから皆目を通して。問題がなかったら符山先生に印刷して貰うから。」
「特に誤字とかも無いし大丈夫じゃない?」
「む、米印で強制ではなく有志であることを書いておいた方ええじゃろ。」
「強制と勘違いされても困るしな。」
「分かったわ。…………よし、それじゃ先生に渡してくるわ。」
一足先に食べ終わっていた雫がルーズリーフに今まで出した案を纏めた物を符山の先公にクラス全員分印刷して貰いに行った。
「話し合いで時間もそんなにないし、僕達も早く食べよ。」
奴良の指摘に話し合っていた皆が食いかけの弁当にがっつく。
今週末から長期勉強会を儂の家……パトリキウスでする事を決めて、金曜の放課後に1度帰宅して必要な物を準備してから参加する者は17時までに学校の校門に集合を掛けておき、クラスのほぼ全員が参加していた。南雲は香織に強く懇願されて渋々参加している。
「来たかの。それじゃあ案内する故、はぐれるでないぞ?」
因みに白音とヨミはパトリキウスで待っている。
皆は最初、儂の家がどのようなものかワクワクしておったのだが、パトリキウスに近づいてくると段々緊張していた。
そして、嘗て儂が造った壁の横を歩いている時には皆黙り込んでおり、パトリキウスへの入口に到着した。
「よし、着いたぞ。」
「着いたって…この辺って何処によ。」
どうやら皆はまだ気がついてないらしい。
「何処ってここじゃよ。」
儂はそう言いつつパトリキウスへの門を開く。
「ここって………………」
香織が壁に目を向けて、皆もつられて見る。符山の先公に限っては顔を青ざめている。
『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?!?!?』
流石に何時も物静かな南雲でさえ大声で驚愕している。
「あ、あのあああのあのあのあのあのこここって、璃緒市の4分の1区画の大きさを有してるんじゃなななかったたっけぇ?!」
『ッ!?!?!?!?!?!?』
符山の先公の怯えた一言を聞いた皆も青ざめる。
「ええから早う入らんかい。」
『お、お邪魔します………』
皆が順に中に入る途中、1台のフェラーリがこちらに走ってきて門の前を通り過ぎたら門の真横がスライドして開き、フェラーリはブレーキやウインカーを使わずに綺麗に入る。
そんな様子に皆は絶句して固まる。数秒後に中に入ったフェラーリがバックして運転席が丁度歩道に来るようにして止め、窓を開く。その一つ一つに皆はビクビクする。フェラーリの窓から現れたのは言わずもがな英雄王である。
「おお、そういえば今日から勉強会を開くと言っていたな。」
『なっ、AUO社長兼代表取締役!?!?!?!?』
「そう驚くことでもあるまい?いいから早う入らんと勉強すら出来んぞ。」
「おお、紫呉涼愛よ。ベルギー担当から直送便でカカオを幾つか送ってもらったのでな菓子を作っておけ。我は楽しみにしておく。」
「え、御師様って料理出来るんですか?」
香織は自分の師万能説を思い浮かべてから儂に問う。それを皆が壁の内側を上京したお上りさんのように周りをキョロキョロと見ながら着いてきて皆が耳を傾ける。
「なに、まともに料理出来るのが儂くらいじゃからな。先の社長殿は食レポの練習のために調理室には此方1度も入ってはおらん。他は色気より食い気な腹ぺこ王と焼くことしか出来ん漢。変人集団は世界各国を回ってる故におらんし、白音はクトゥルフ神を生み出すわ、そこで精神統一しておる者は米を研げと言ったらクレンザーを取り出す始末。ヨミは朝夕忙しい故に料理をする余裕がなく、義妹に関してはまだ台所を任せる歳ではない。故に儂が料理するしかないんじゃよ。」
上から順番に
英雄王ギルガメッシュ、騎士王アルトリア、征服王イスカンダル、劇団ザイード、李書文、ヨミ、桜である。
とりあえず、中央の広間にまで来たら真ん中の円の中に皆を立たせる。それをエレベーターとして昇降させており、今は降ろしている。二つ下に着くと周りが壁で覆われ、1つだけ戸があるだけである。
皆はこのギミックに驚いている。儂は気にせずに中に入り、皆は慌ててついてくる。
中はパーティ会場の様になっており、部屋の中央に長机があり、クラス人数分の椅子がある。さらに左右にこれまた大きな戸があるだけである。
「よし、説明をするが、向かって右側が女子が寝泊まりする部屋で左側が男子が寝泊まりする部屋じゃ。無論それぞれに大風呂も用意しておるから安心せい。ただ、12時になると部屋におーとろっくがかかり、出入り出来ん。これは侵入対策でもあるから我慢して欲しい。まぁ、12時までに部屋に戻れば良いからな。」
とりあえず皆を席に座らせてから話を続ける。
「とりあえず時間が時間じゃから夕飯の支度をまずするかの。料理を出来るものは来てくれ。それ以外は風呂にでも入っておれ。風呂はそこの戸を開いたら目の前にある筈じゃからな。」
因みにパトリキウス内の構造は
最下層が英雄王の部屋で準最下層に残りの部屋とリビング+α、その上が今いる客間、1つ上に牧場と菜園があり内蔵されていた機械が育てている。最上層は英雄王のコレクションルームやパトリキウスに備えられている対地兵器や対空兵器、対海兵器が完備されており、地上層は広間とちょっとしたコテージがあるくらいだ。
夕飯を食べ終わって、皆が風呂に入り終わったらまた席に座らせてから話す。
「それじゃあ受験に向けて頑張ろうではないか。」
『おぉ~!!!!!!』
それから受験までみっちりと予習復習をし、互いに教えあったりして勉強会をした。
そして、皆は無事に受験を受けてAクラス総勢40人中全員が志望先の高校に受かった。
それが中3であった出来事である。祝杯として、パトリキウスの客間で特上霜降り肉のステーキを振舞ったり、屋内バーベキューをした。
高一ではこれと言った大事はなかったので割愛しよう。