白き英雄   作:蕾琉&昇華

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お久しぶりです、昇華です。
なんの音沙汰もなく更新が遅れてしまい申し訳ありません。

コロナの騒動で忙しいなかこのような作品を読んで楽しんでもらえれば幸いです。


13.十二章

 僕が知っている彼はとても鮮烈で、敵を確実に殺し、機竜の力を存分に振るって多くの存在から畏れられ、尊敬されていた。

 そんな彼だが戦いの時以外はとても優しく、僕たちは彼の好意に甘え、堕落した生活を送っていたせいか、裏切り者たちに反乱を起こされなす統べなく真都を追われた僕たちを最後まで守り続け、そして殺されたはずの彼。

 しかし、その彼とそっくりな、いや彼は裏切り者の一族の味方をしていて、既に妹も裏切り者の一族の仲間に殺された。

 

 

「彼は何を考えているの......教えてよ......シオン」

 

 僕にはわからない、姉様が言う言葉の真意も、妹が起こした想定と違う行動の意味も、そしてこの胸の中で渦巻き続けるシオンへの感情も......

 

「僕たちは君に頼りすぎていたみたいだね......今わかっても遅いか」

 

 ふと口に出すと心が少し軽くはなった。雲の間から射し込む月の光は想う彼の綺麗な銀髪と同じように見えた。

 

「僕はやることをやるだけだ、君が彼だろうと、たとえ僕たちがわかってるとしても......」

 

 後ろを向いて歩き出した僕の動きにあわせて、三つ編みにした銀髪が翻る。月明かりを反射した三つ編みの先には小さなアメジストのあしらわれた髪ゴムがついていた。

 

 

 ヘイズ達の王都襲撃から一ヶ月ばかりの平穏を謳歌していた俺達は、階級昇格試験を受けるために〈遺跡都市(ルインスギア)〉に向かって馬車で移動をしていた。と言っても俺は馬車には乗らずに周囲の警戒をしていた。

 馬車が狭く、入れなかったというのもあるが男の姿に戻って機竜を操作するのは初めてだ、その為少しでも感覚を戻そうと思い警戒を買って出たのだが、

 

「思ったほど姿が変わっても操作性は変わらないか......」

 

 以前よりしっくりと来る機竜の感触に多少戸惑いはあったが、操作性は以前とは比較にならないほどだった。

 索敵などができる〈ドレイク〉を使っていたが索敵できる範囲も、透明化の精度も上がり、更には出せる出力の上限も上がっており、他の凡庸機竜に性能で劣るはずの〈ドレイク〉が出せる出力ではなかった。

 出力を上げる技はいくらかあるもののそれをせずとも〈エクス・ワイバーン〉の出力に迫る勢いで上がる出力には驚いたが、さすがに機竜自体が耐えられそうになかった為途中で出力を下げ、〈ワイバーン〉と同等の出力でセーブすることになった。

 本来であればここまで出力を全体的に上げることは叶わないが、今の身体であれば限定的な〈限界突破(オーバーリミット)〉を使用しても影響が無いため、無意識のうちにリミットを解除していたのだろう。

 途中で小休止をした時に調律(チューニング)をしたが、やはりリミットが数個外されていたのでその位置を覚えておきながらもとに戻しておいた。

 

「おーい、シオっち~。何してるの?」

 

 調律(チューニング)を終えて、機竜を元の格納庫に転移させた少し後、周囲を見回っていたときにティルファーが手を振りながらこちらに走ってきた。

 

「何って、見回りだが。もう行くのか?」

 

「あ、ううん、休んでないみたいだったから大丈夫かなーって思って来たんだけど......皆集まってるし、シオっちも休まない?」

 

「いや、だいじょ......そうだな、心配させるようじゃ意味はないし、休むか」

 

「ホント!? よし、じゃあ行こ! こっちだよ!」

 

 俺が休むと言った途端にパッと顔を輝かせ、右手を掴んで引っ張っていくティルファーに誘導されるがまま、馬車の近くまで来ると、レジャーシートを広げて昼食を囲むルクス達の姿があった。

 

「あ、シオン! 見回りしてたんだって? 言ってくれたら僕も行ったのに」

 

「なーに、主の手を煩わせるほどのことでもないさ」

 

 そう言うとルクスは苦笑を浮かべて頬を掻き、そっと横に動いてレジャーシート上に俺の場所を作る。

 そこに俺は座りいつの間にか横に来ていたクルルシファーに差し出されたサンドイッチを受け取り齧る。

 

「お疲れ様、シオン。でも大丈夫なの? これから昇格試験が控えているのに機竜とずっと接続してるみたいだけど......」

 

「ん、そんなに疲れるわけでもないし、感覚を取り戻すために長々と接続しているってところもあるな」

 

 ルクスの問いかけにそう答えると、納得はしたようだが、やはり長時間接続し続けているのにはやはり違和感があるらしい。それに無理をしているのではないかといつ倒れるのか心配で堪らないとまで言われる。

 そこまで心配されているとは思わず、ルクス達には謝罪し、今後連続して長時間機竜と接続し続けることをしないと取り決めた。

 そのあとは特に何もない雑談をしながら過ごし、バケット一杯に入っていたサンドイッチが全部なくなってから馬車に乗り込み、〈遺跡都市(ルインスギア)〉に向かって進み始めたのだが、人が多いこともあり、俺とアイリ、三和音(トライアド)の三人とクルルシファーで一つの馬車を使うことになった。

 俺の左右にアイリとクルルシファー、正面にはティルファーがいて、ティルファーの両脇にノクトとシャリスが座っている。

 

「シオン兄さん、いくら〈ジャバウォッグ〉ではないとは言え何時間も使い続けるなんて無茶です。これからはしないでください」

 

「っ、悪い......」

 

 本気で心配そうな表情を浮かべてそれほど大きくもない声でそう言うアイリの瞳は憂いを帯びていて、俺は謝ることしかできない。

 

「そうね、私もアイリちゃんと同意件だわ。ずっと機竜を接続していていつ倒れるのか怖かったのよ?」

 

「っ!」

 

 口調自体はいつものからかうような口調だが、こちらの瞳を覗き込む水色の瞳はとても真剣なもので俺は息を呑む。

 

「貴方が何かを抱えているのはわかるわ、でも、私やルクス君を心配させてまでもやる必要があるの?」

 

「......」

 

「少し意地悪だったわね、それでも皆を心配させていると言うことはわかって、貴方は突然女の子になったりするんだから、心配で堪らないわ」

 

 最後に、クスりと笑って俺の顔を覗き込むクルルシファーの距離の近さに、ドキッとしてしまう。

 少し近づけばキスをしてしまいそうな距離のまま数秒見つめあっていたが、クルルシファーが不意に頬を赤くし目を反らす。

 

「クルルシファー嬢も一人の乙女、か」

 

「yes.同感です」

 

「あはは......あ、あれ見て!」

 

 面白そうに俺とクルルシファーを見てそう言うノクトとシャリスの言葉の意味は、わかる前に見計らったようなタイミングでティルファーが窓の外を指差す。

 

「あれは......」

 

「あれが〈遺跡都市(ルインスギア)〉だな。上の所が移住区で大きな塔が中心にあるだろ? あれの下に〈第二遺跡(ダンジョン)〉がある」

 

「詳しいのね、来たことでもあるのかしら?」

 

「ああ、何度かな。放浪していた時にここの王様と面識があったからな。幻神獣(アビス)が多くなる時期には良く稼がせてもらったからな」

 

 そう言いながら俺は窓から見える〈遺跡都市(ルインスギア)〉を見る。あのときの王様はもう死んでいるらしい、と言ってもそこまでなんとも思わないあたり俺にとってあの人はその程度だったのだろう。

 

「シオン兄さん?」

 

「ん......? あぁ、ごめんボーッとしてた」

 

「いえ、機竜の使いすぎで疲れているのかと思ったので」

 

「大丈夫だ、まだ倒れるほどじゃないさ」

 

「無理は、しないでくださいね」

 

 その言葉に対する返答は、俺にはできなかった。

 

 

 分厚い門を抜け、昇格試験を行うための巨大な軍の施設とそこに併設された宿舎が見えてきた。

 ルクス達と別れ、俺は一人、女生徒達と施設の正門についた馬車から許可を貰い荷物を下ろし、ヴァンハイム公国の武官や士官候補生との顔合わせを兼ねた施設案内を受けていたのだが、

 

「なんだ、あのような小娘達に頼らねば存続できないほど新王国は落ちぶれたのか」

 

 不意に現れた鍛えられた体躯のヴァンハイム公国の武官の今までの武官や士官候補生達とは違い、明らかな侮蔑の混じった言葉を受けた女生徒達は押し黙る。それを見たヴァンハイム公国の武官は口角を厭らしく上げて何かを言おうとするがそれを俺が武官の前に出ることで止める。

 

「なんだ? 可愛らしい嬢ちゃん。悔しいのか?」

 

「いいや、なーに弱いやつが吠えているのならその顔を拝んでやろうと思ってな」

 

 俺が挑発するようにそう言うと、厭らしい笑みは消え、表情が怒りに歪んだ。

 

「言うじゃねぇか、温室育ちのお嬢様がよ」

 

 吐き出す声は低く、後ろの女生徒達が怯えてしまうほどには怖かったのだろうが、俺に注目させる(ヘイトを集める)にはまだ挑発する必要があるだろう。

 

「へぇ、そんな温室育ちのお嬢様を虐げることしかできない男が大きく出るじゃないか」

 

「てめぇ......っ!」

 

「そこ、何を騒いでいるんだ!」

 

 煽り続ける俺についに手を出そうとした男は、後ろからかけられた中性的な声が響き、それに反応した男の振り上げた拳がピタリと止まる。

 

「チッ、試験の時に覚えていろよ......」

 

 恨みがましい捨て台詞を吐いてどこかに立ち去る男の背中から視線を外し、先ほど響いた中性的な声の持ち主の方を向く。

 

「ごめんコーラル、助かった」

 

「シオン、大丈夫だった? こちらこそごめんね、その、昔のこと気にしてる人はまだいるからさ」

 

 中性的な顔立ちにややソプラノ気味の声、緑の髪を三つ編みにした彼は全竜戦の際に知り合っており、ヴァンハイム公国の選手として新王国に来て以来、文通などをしている仲だ。

 

「彼らから引き継いで僕が案内をするよ、君たちもついてきてくれるかな」

 

 その言葉に女生徒達は全員頷き、そのままコーラルに連れられて施設内を周り、一段落したところで解散した直後だった。

 

「あ、シオン、丁度いいところに。これから〈宮殿(パレス)〉に行くんだけど、シオンも呼ばれてたから一緒に行こう」

 

「俺も......? まあいいが」

 

 なぜ俺が呼ばれているのかはわからないが、まあろくな事じゃないだろう。特に外国でそんな話があるんだ。胡散臭い話に決まってる。警戒しておくか......

 

 

 ルクスに連れられ〈宮殿(パレス)〉を登った俺は〈宮殿(パレス)〉の一室にいた。

 この場にいるのは俺、ルクス、グライファー、メル、そしてシングレンと言うブラックンド王国直属の軍隊。白嶺騎士団の団長、〈青の暴君〉、そして各国から一人の代表者を出して作られた組織の七人の機竜使い(ドラグナイト)を指す〈七竜騎聖〉の副団長をしている不気味な男だ。

 ルクスと同じほどの身長だが、常に湛えた笑みと全く笑っていない真っ黒な瞳の不釣り合い差の違和感はいまだに拭いきれない。

 

「あ、お兄ちゃん。お兄ちゃんも呼ばれたんだね」

 

 俺がシングレンを警戒していた時に横から声をかけてきたのはメル・ギザルト。全竜戦で戦い、そのあとからなぜか俺のことをお兄ちゃんと呼びくっついて来る幼さの残る少女だが、機竜の操縦技術は群を抜いていて、ユミル教国の〈七竜騎聖〉に任命されるのも頷ける。

 

「まず、ここに〈七竜騎聖〉が集まったことを喜ばしく思おう。長旅疲れたであろう? 座るがいい、俺が特別に許可してやろう」

 

 傲岸不遜、その言葉がしっくり当てはまるだろう態度だが、俺は何を行動せずルクスの行動を待つ。しかしルクスは椅子に座ることはなくシングレンを睨み続ける。

 

「どうした早く座るがいい雑用係に亡国王子、この国の姫様が用意した部屋が気に入らなかったのか? 残念だが他の部屋は開いていないぞ」

 

「いえ、僕が座らないのはすぐに帰らせてもらうからです。〈七竜騎聖〉の話は断らせていただきましたので僕がここにいる必要はないはずです」

 

 ルクスはシングレンに対してそう言い放ち部屋を出ていこうとするが、

 

「貴国がさっさと〈七竜騎聖〉を選出せんのがいかんのだぞ? ここでこいつらに手間をかけさせるつもりか? 貴様が代理として出るのをオススメするがな」

 

 その言葉に制止され、嫌がりながらも椅子に座る。俺はと言えば壁に寄りかかりシングレンを見るが、全くと言っていいほど何もわからない。感情や、今何を考えているのか、それらが全く見えないのだ。

 

「亡国王子は座らんのか?」

 

「従者の俺に椅子なんていらねぇよ」

 シングレンの言葉にそう返せば目は一切笑っていない口だけの笑みを浮かべて俺から視線を離しここに集めた理由を語り始めたのだが、耳を引いたのは〈竜匪賊〉と言う単語と、七竜騎聖が世界を支配しようなどという妄想話の二つだけだった。

 〈竜匪賊〉はヘイズも使っていたらしい遺跡(ルイン)に不法に入り込み発掘を繰り返している違法集団の事だが、それらを潰すことが〈七竜騎聖〉の役目でもあるらしい。

 もうひとつの七竜騎聖が世界を支配すると言う話はにわかに信じることの出来ない妄想の産物だった。現在の機竜の段位制度をそのまま身分制度に流用し、七竜騎聖が最上位に君臨すると言ったものだ。

 とても賛同できるようなものではないが、メルは面白そうに聞いていたが自分が一番上ではないと言うことに反発していた。

 俺はそのような制度を容認できるわけもなく反発したわけだが、それに対してやけに面白そうに笑みを深めていた。

 そして次にルクスが反論したときに何やら意味深な言葉を吐き、それに何やらやけに焦ったような様子のルクスが口を開こうとしたとき、ゴォォォン、ゴォォォンと鐘の音が響き渡った。その鐘の音は夜を知らせるもので、さすがのシングレンもこれ以上拘束するつもりはないのか最後に考えておけと最後まで傲慢な態度でいた。

 

 

「部屋が足りてない......?」

 

 俺とルクスが帰ってきたときに告げられた言葉はにわかに信じがたいもので、レリィさんは俺やルクスをクルルシファー達と同じ部屋にすればいいと思っていたらしいが、どうもうまくいかなかったらしく一人用の部屋しか確保できなかったと言われたわけなのだが、すぐさまルクスがその部屋を使うこととなり俺は適当なホテルなどに泊まるつもりだったが、

 

「あ、それでしたら僕の部屋のベットが一つ空いているのでいかがでしょうか?」

 

 コーラルの思ってもいない申し出に俺は甘えさせてもらうことにした。

 広間に置いていた荷物を抱えてコーラルの案内のもと宿舎の廊下を歩く。

 

「さっきの学園長さんの話だとシオンやルクス君は女の子たちと一緒に寝ているみたいだけど本当なの?」

 

「ん? そうだな。なし崩し的だったけどいまだとそれが普通になってきてるな......」

 

「そ、そうなんだ......」

 

 俺の苦笑の混じった言葉にコーラルは少し引いたような声音で返答する。そうこうしているうちにコーラルが泊まっている部屋につき、コーラルはミルミエット公女様に挨拶だけしてくるということで部屋を出ていき、この部屋に一人残されてしまう。

 荷物を端に置いて少し体をほぐし一人思考に耽る。

 この国は旧帝国時代に軍事介入という名の侵略を近隣国家におこなっており、このヴァンハイム公国もその被害を受けている国の一つで旧帝国の後釜のような立ち位置にいる新王国に対する心情はあまりよくない。とくに軍人は反新王国の風潮が強く男尊女卑の風潮を残っているため新王国の特に王立士官学園(アカデミー)に対する風当たりはひどい。と聞いてはいたがここまでひどいとは。前に昇格試験を受けた時もこんな感じだったのだろうか......

 

「あんまり考えすぎても意味がないか......」

 

 俺はそこまで考えて思考を放棄しベットに体を投げ出す。明日のためにも早めに体を休めるべきだと判断し目を閉じればすぐさま闇に意識は落ちていった。

 

 

 

「んん、ふぁぁ~......? シオン......?」

 

 俺が起きて三十分ほどが経ったあと同室で寝ていたコーラルが目を覚ました。

 緑色のいつもは三つ編みにしている長い髪を下ろし、中性的な顔立ちの彼が無防備にあくびをし、俺の名前を寝ぼけた声で呼ぶのに思わず男同士なはずにも関わらずドキッとしてしまったが、それを表に出すことなく俺はコーラルにすでに入れておいた紅茶を渡す。ただのレモンティーだがほんの少し蜜柑を絞って入れているため眠気には効くだろう。

 

「迷惑だったか?」

 

「ぁ、ううん、ありがとう......」

 

「ならよかった......一応朝食なんかも作れるが......あ、そういえば朝食は食堂で食べるんだったな、いつも作ってるからつい癖でな」

 

 いつもクルルシファーに朝食は何が食べたいか聞くためその感覚で聞いたがそういえばここはヴァンハイム公国でコーラルの部屋に泊まらせてもらっている形だった。

 

「いつも、シオンが作ってるの?」

 

「ああ、つくらないときもあるけどな」

 

「......なら、僕にも作ってもらえる? シオン君が作る料理を食べたくなってきちゃったからさ」

 

 そういう彼に俺はうなずき食堂に向かう。厨房を使う許可はもう得ているため俺は寝間着から着替えるコーラルよりも先に部屋を出て厨房に向かう。そういえば何を食べたいとか聞かなかったな......とりあえずエーリルの好きな白身魚のソテーと山菜の胡麻和えでも作っておくか......? なぜ俺は彼の記憶に出てきた少女の好物を作ろうと思ったんだ? いくら名前が似ているからってそんな間違いをするか? 髪を三つ編みにしているところや中性的な顔立ちも彼の記憶の中に出てくるエーリルと似ているが......

 

「シオン君~! やっと追いついたよ。すぐに行っちゃうんだから......って、それって白身魚? のソテーに山菜の胡麻和え......やけに手際がいいんだね」

 

「あ、コーラル。わるい、早く作っておいしく食べてもらおうと思ってたんだが好物を聞き忘れててな。知り合いが好きなものを作ってみたんだが、嫌いなものとかじゃないか?」

 

なんだ、ボクの好物をおもいだしてつくってくれたのかとおもっっちゃったじゃないか

 

 俺の手元にあった料理を見て目を輝かせたかと思えば知り合いの好物を作ったといえば何やら機嫌を損ねたみたいで聞き取れないほど小さな声で何かをつぶやいた

 

「あ、どっちも僕の好きなものだよ。本当はグライファーにでも聞いたんじゃないの?」

 

 そういいながらも作り終えた料理を持ってまだがらんとしている食堂の一席に座って食べ始める。

 俺はその姿を見ながら料理に使ったフライパンなどを綺麗に洗ってもともと置いてあった場所に戻し、自分用に作っておいたオムライスを持ってコーラルの正面に座りコーラルがおいしそうに俺の作った料理を食べるのも見ながら俺も作ったオムライスを匙でとって食べる。

 そのまま無言で料理を食べていた俺とコーラルはほぼ同時に完食し、俺が後かたずけをするの際にコーラルが手伝ってくれたこともあり、他の士官候補生だったりが来る前にかたずけが終わった。

 その後俺はルクスたちと合流し、食事を終えた後試験会場に向かったのだが、ティルファー達が意外にも緊張していたようなので後ろからそっと近づいて驚かせて緊張を解いたり、他国の士官候補生の観察をしていたが特に注意するべき危険性や技量を持っていそうなのもいなかった。

 

「そういえばシオンは上級階層(ハイクラス)なのよね? 今の私達は中級階層(ミドルクラス)から上がれるかしら?」

 

「ん? クルルシファー......今の実力ならへまをしない限りは上がれると思うぞ。まあヴァンハイム公国の武官が妨害してくるだろうからその対策もしないといけないのが面倒だけど......」

 

 クルルシファーの少しも気負ってなさそうな唐突な問いに困惑したが、その手が緊張で強張っているのが見えたため、背中を押してあげる。そのままそっと物陰に隠れて制服の下に着ている一般的な装衣とは違い、全体的に女性用に近い形ながらも太ももまてある下半身や女性用のように胸元に少々余裕のあるという、やけにちぐはぐな装衣の胸元を少し緩め、俺は女装用に仕込んでいた女生徒用の制服を身にまとい意識を集中させる。女性の部分を意識すると体がよくわからない何かに覆われ、体が徐々に変化していき一分もすればその姿身長クルルシファーと同じぐらいの薄紫色の若干光沢のあるブロンドの髪にかわいらしい容姿と、出るところはしっかりと出ており引き締まるべき場所はしっかり引き締まっている絶世の美少女に変わっていた。

 

「やっぱり変えた後は違和感があるな......まあ、仕方がないか......」

 

 俺はその姿のまま試験会場に向かって歩き出した。

 

 

 昇格試験の試験内容は現在の階級によって難易度は異なるが大きく分けて四つだ。

 ・一つ目、筆記試験による機竜についての基礎知識などを問うもの。

 ・二つ目、基礎体力や白兵戦の技能、身体能力を図るもの。

 ・三つ目、動作実技、受験者が主に扱う機竜の性能を把握しているのかや応用することができるかを見るもの。

 ・四つ目、先頭実技、使用する型の機竜での対幻神獣(アビス)想定でどこまで戦えるかを見るもの。

 この四つが主な試験内容となるが筆記試験はヴァンハイム公国の武官も嫌がらせをしようにもする方法が無いため警戒せずともよいが、これから行われる身体能力を図る試験ではおそらく女生徒達を狙って妨害を仕掛けてくるだろう。それを阻止するためにこの姿になったのだが妨害行為を起こさないでもらえるのが一番だが、そううまくはいかないらしい。

 最後尾から俺とセリスはそこそこのペース――といっても周りから見れば十分すぎるほどハイペース――で走っていた時、前方で女生徒にちょっかいをかけているヴァンハイム公国の武官の姿が見え、それにセリスが反応するが、俺がどうにかすると言ってセリスはそのまま走らせる。

 

「おいおい嬢ちゃん、大丈夫か? おぶっていってやるぜ?」

 

 あいつらはバテてきた女生徒にいやらしい笑いを浮かべて接近していたのを見つけ、俺はヴァンハイム公国の武官と女生徒の間に入り込む。

 

「この子にかまっている必要なんてあるんですか? あなたたちに」

 

「ああん? なんだとぉ? てめえみたいな貧弱そうなお貴族様とは違うんだよ」

 

「ほう、そうですか......ならワタシと勝負をしましょう、どちらが先にゴールできるかで。ワタシが勝ったらこの子たちへの嫌がらせをやめてもらいますよ」

 

「勝負だぁ? おもしれぇ、ならこっちが勝ったらお前の体を好きにさせてもらうぜぇ?」

 

 欲望を丸出しにしたその言葉に俺は頷きその瞬間に男たちは加速し俺を引き離した......かに思えたがすぐさまその横を走り抜け追い越していく。そしてこれを数回繰り返すだけで勝手に相手はペースを崩して順位を大きく下げる。そのままのペースで走り切った俺を含め、途中経過での成績上位者は王立士官学園(アカデミー)の生徒が占めていた。

 しかし、それをこころよく思わないものたち......ヴァンハイム公国の武官たちは渋い顔をしてこちらを睨んでいる。今回のような全体でいっせいに行うような試験ならば他の生徒達に対する妨害も防げるのだが、これから行われる試験は単独かペアで行うものばかりで、これからは彼女たちの実力を信じるしかない。

 

「はっ、こんなお嬢様が相手じゃ試験にならいぜ!」

 

 そういいながら相手の男は木刀を大上段から振り下ろしてくるので手に持つ木刀で威力を完全に殺しながらも、押し負けたように後ろに大きく下がり、勢いのない下段からの振り上げをあてに行くが避けられる。しかし空ぶった攻撃の合間にシャリスに倒されたにも関わらず審判のジャッジはなく、相手の男がシャリスを逆に押し倒そうとしているのが見えた。

 

「よそ見なんてしていいのかぁっ!?」

 

 その時ちょうど上段から木刀を振り下ろす相手の男が視界に入った瞬間助ける方法を思いついた。

 そのまま上段から振り下ろす木刀の根本を普通の人には見えない速度で打ち抜きへし折る。そのままへし折れた木刀がシャリスの装衣の胸元の金具に手をかけようとしていた男の後頭部にぶち当たり、シャリスの横に吹っ飛ぶ。

 

「シャリス、大丈夫? 木刀が脆すぎてそっちまで飛んで行っちゃった」

 

 そこで試験官をしていたバスハイムという男が今回の妨害の数々を支持していたらしく、その妨害は第三試験でも続き、

 

「うおっと、嬢ちゃんあぶねえぜ」

 

 機竜の動作試験では無理やりチャージをこちらにし、こちらをバスハイムが減点する算段だったのだろうが、俺とルクスがその妨害を防ぐどころか無理なチャージで体勢を崩したヴァンハイム公国の武官助けたことで相手は恥をかきこちらの評価は相対的に上がっていった。

 そして第四試験、俺は〈ドレイク〉を使い〈エクス・ワイバーン〉を使う試験官二人と戦うとなった。

 特に苦戦することもなく、一時的に出力を跳ね上げたり、本来であれば出力の差で〈ドレイク〉が押し負けるであろう打ち合いをしたりと、半場実戦形式の実験のような感覚で試験を受け、どちらの機竜も背翼の推進装置を破壊しさらに武装も全部破壊して勝利したが、俺はルクスがノクトとともにバスハイムと試合をしていた時に唐突に乱入してきたシングレンの使っていた俺のやっているような唐突な出力の増大に違和感を覚え、観察していると試合中に調律(チューニング)を発動させることで出力を操作し、攻撃を障壁を使って受け流したり火力を一時的に爆発的に上げたりしているようだった。

 そのままルクスはシングレンの攻撃をさばききれず負けてしまったが、なにやら考え事をしているようだった。

 俺はといえばこれから潜ることになるであろう第二遺跡(ダンジョン)を上から押さえつける蓋の役割を持つ天宮(パレス)を見上げ、胸の内でざわめく嫌な予感の正体を探っていた。

 

 




いかがでしたか?

前回おふざけでやってしまったアレをどうするかに悩んでほとんど筆がすすまなかったのは内緒のお話。

ようやく七竜騎聖編に入ったわけですが、まだまだこれからなので、楽しみにまっていただけたらありがたいです。

感想、評価などいただけると励みになるので、ください(図々しい)

それでは次のお話でお会いしましょう
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