白き英雄   作:蕾琉&昇華

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二章が一章より長くなってしまった~。(笑)
途中でアイリを呼ぶ、呼び方が呼び捨てになりますが、真剣になったからです。
気にしないで下さい。



3.二章

 寮での初めての夜が終わり、現在朝の1時。早朝から起きることが普通になっている。

 そしていつも通り起きようとしたら「すー、すー」と言う可愛らしい寝息が聞こえてくることに、少し苦笑しながら、ベッドから降り、窓を開けるため、歩こうと足を動かすと、足に何かが引っ掛かり、エインが寝ているだろうベッドに上からのしかかるようにこけて行く。

 

「っっ!」

 

 手をベッドにつき、頭から行くことを避けようとした、すると手に(むにゅ)っとした感触が感じられる、そして顔がエインのすぐ目の前に行く。

 

「んんんっ...何かしら?」

 

 エインは起きたのか、影になって表情はわからないが、

 

「あら、一日目から襲おうとするの? 可愛らしい顔に似合わず男らしいのね、後、胸から手をどけてもらっていいかしら?」

 

 と、平然と言うが月光が差し込んで来ると、エインの顔は真っ赤に赤面しながらそんな事を言っていた。

 

[--可愛い--]

 

 そう思っていると、

 

「あら、私の胸がそんなによかったかしら? でもどけてくれないかしら?」

 

 そう言われ、少し顔を赤らめながら手をどける、するとエインは起き上がり、クスクスと笑いながら、こちらを見てくる、その姿が妖精のようで可愛らしく、思わず、

 

「可愛いな」

 

 そんな事を言うと、エインは驚いたような表情で赤面しながらも、

 

「ありがとう、男の子からは、初めて言われたわ」

 

 そんな風に返され、どちらも赤面しながら、時間が過ぎて行く。

 

「じゃあ、俺は朝の日課をしに行く」

 

 そう言って支度をすると、

 

「あら、じゃあ、私も同行しようかしら」

 

 そうエインが言うと、布すれ音がする。

 それに驚くが後ろを振り向かず、支度を進めて行く。

 そして、支度が終わると、扉を開ける、そしてエインを待つ。

 

「あら、優しいのね、ありがとう」

 

 エインが外に出るのを確認すると、扉を閉め、鍵をかける。

 そして寮を出て、訓練場に向かう。

 そして、朝の鍛練を終えると、校舎に向かう、もう時間としては、8時ごろ、朝のHRに間に合うようにエインと行く。

 

 

*

 

 

 俺はルクスと同じクラスで2-甲で、リーズシャルテともエインとも同じクラスだ。

 

「はじめまして、ルクス・アーカディアです、よろしくお願いします」

 

「はじめまして、シオン・オルバートです、よろしく」

 

 俺達は、他の女子生徒達に挨拶をする。

 ライグリィ教官が席を決めて俺達に説明する。

 俺はエインの隣、ルクスはリーズシャルテの隣に決まった。

 俺はエインの隣の席に座る。すると、エインが、

 

「ふふ、よろしくねシオン君、そう言えば、教科書はある? 貸してあげましょうか?」

 

 そんな事を言って来たので、俺はうまくあしらう。

 

「いや、持っている、大丈夫だ」

 

 そう言うと、エインは残念そうに、しかし、面白そうに、笑った、そんな風に会話をしていると、

 

「あっ、ルーちゃんだ」

 

 そんな声が聞こえてきた。ルクスがふんわりとしたピンク色の髪と印象を持つ少女と話していた。

 

「フィルフィ?」

 

「そうじゃない、フィーちゃんでしょ」

 

 その少女の名前はフィルフィ、レリィさんの妹で、俺とルクスの幼い頃からの知り合いで、仲の良い存在にはあだ名で呼ぶ事を求める。

 

「フィーちゃんも来ていたんだね」

 

「うん、それにおにぃも久しぶり」

 

「ああ、そうだなフィーア、久しぶり」

 

 そんな会話をしていると、後ろから「フィーちゃんだってー」「何あれー、ルーちゃんだって可愛い」なんて会話が聞こえてくる、しまいには、生真面目そうなライグリィ教官までも「く、くくくっ」と笑いを噛み殺す始末、ルクスは恥ずかしそうに、顔を赤らめ、うつむいている。

 俺は笑いながら、これからの生活が楽しみに感じていた。

 

 

 

 授業が終わり、俺は寮に向かおうとすると、

 

「おーい、シオン、少し手伝って欲しい事があるんだけど、お願いできるかな?」

 

 ルクスがそんな事を言ってきた、答えはもちろんYesだ。

 

 

 

「ふー、これは気持ちいいな」

 

 俺はルクスと風呂に入っていた、寮はもちろんのこと女子寮だ。

 俺は女子寮の風呂の掃除をルクスと共にした、そのあと、時間もあるし風呂に入ろうと言うことになった。

 他の女子生徒達は何かをしていて女子寮の中に居ないので、遠慮なく入らせてもらう。

 こんなタイミングじゃないと入れない、俺達は久しぶりに風呂にしっかりと浸かった。筋肉をほぐし、体を洗い、全身を洗い流して行く。

 そして、湯船に浸かっていると、誰かが入って来る音がした。

 

「だっ、誰かが、入ってきた!? どうして、札掛けてなかったかな!?」

 

「いや、掛けていたからな」

 

 俺は冷静に返す、そして、入口の方を見ると、そこにはアイリちゃんとノクトちゃんがいた、制服で。

 

「やあ、アイリちゃん、ノクトちゃん、何か用事かな?」

 

 冷静に話を振ると、ノクトちゃんが、

 

「Yes.お二人とも、後で学園長室に来てください。内容はそこでわかります」

 

 ノクトちゃんはできる子だ、分かりやすく話をまとめて話してくれる。

 

「了解した、じゃあ、上がったら素早く、行くよ」

 

 素早く話をまとめて、俺は上がる、前に友人からもらった「水着」を着ているため、恥じなく、上がる、アイリちゃんとノクトちゃんは少し驚いたが「水着」を着ていることを見ると、少しジト目で見つつ、そのまま、通すとルクスの世話を始める。俺はそのまま、部屋に向かい、支度をする。

 支度が終わり、ルクスの部屋の前に行く、部屋の前で少し待っていると、部屋からルクスが制服で出てきた。

 

「よお、それじゃ行くか」

 

 ルクスがうなずき、俺達は学園長室に向かう。

 学園長室前に着くと、扉をノックする。すると、中から、リーズシャルテの声がする。

 

「おー、シオン達か? いいぞ入って」

 

 許可が出たので、扉を開け、中に入ると、クラッカーの音が響きわたる。

 

「「「「編入、おめでとう!!」」」」

 

 学園長室には、数多くの女子生徒がクラッカーを持ち、「おめでとう」と言いながら、編入を歓迎してくれている。

 

「ほらルクス、こんなにしてくれているんだ、ほら」

 

 そう言ってルクスの背中を押し、アイコンタクトを取る。するとルクスは顔を赤くしながら、少し前に出る。

 

「その皆、僕達のためにこんなことまでしてくれてありがとう、すごく嬉しい」

 

 ルクスがそう言って頭を下げる、それにあわせて、俺も頭を下げる。

 すると、それを見た、リーズシャルテが代表してか、

 

「その、喜んでくれて嬉しいぞ、それで今日は皆で料理を作ったんだが、その、口にあうかは、わからんがその、楽しんでくれ」

 

 リーズシャルテは顔を赤らめながら言う。それを後ろからティルファーが、

 

「リーシャ様は楽しんでくれって、言いたいんだよ。と言う訳でルクっちとシオっち、今日は楽しんでね!」

 

 そう補足する。

 

「ああ、そうさせてもらうよ」

 

 それから、編入祝いのパーティーが始まった。

 

 

 

「やぁ、シオン君、楽しんでいるかな? どうだい? ワインなんかどうかな」

 

 そう、首に手を回し、意外とある胸を押し付けてくる、すでに出来上がっている先輩、シャリス先輩だ。

 

「ええ、ワインは飲むので、もらいます。しかしシャリス先輩、出来上がってますよね、大丈夫ですか?」

 

 ワインをもらいつつ、シャリス先輩の世話をする、出来上がっている先輩に肩を貸し、扇子で扇ぐ。

 

「ふぅ、ありがとうシオン君、しかしその道具はなんだい? 見たことはないが」

 

 そんな事を聞かれたので、扇ぎつつ答える。

 

「ああ、これは扇子と言って、東洋の熱を下げるための道具だとか」

 

 俺は席にシャリス先輩を座らせると、他の友人のところに向かう。

 

「シオン君、ありがとう、そして楽しんでくれたまえ」

 

 うなずき返し、次はリーズシャルテとルクスが話していたので、そこに行く。

 

「よぉ、リーズシャルテ、それとルクス、楽しんでそうだな」

 

 すると、リーズシャルテとルクスはこちらを向き、

 

「おお、シオンそちらこそ、楽しんでくれてるか?」

 

 リーズシャルテが笑いながらそう言い、グラスをこちらに向けて来たので、

 

「ああ、もちろん楽しんでいるよ」

 

 リーズシャルテに答えを返して乾杯する、そしてルクスにグラスを向ける。

 するとルクスは乾杯をし、一口飲む、

 

「ルクスは白ワインか、俺は赤の強いのをもらったな」

 

 少し会話をした後、俺はスイーツをルクスとリーズシャルテに渡す。

 

「ほら、ルクス甘いものだ、リーズシャルテにも、リーズシャルテはアップルパイでよかったよな?」

 

 そう言い、リーズシャルテにアップルパイを、ルクスにモンブランを渡す。

 

「それじゃ、ルクス頑張れよ」

 

 そう言い、ルクス達から離れ、アイリちゃんとエインのところに行く。

 

「やあ、アイリちゃん、エイン、二人とも楽しんでるみたいだな」

 

 グラスを向けながら、アイリちゃんとエインに話しかける。

 

「はい、楽しんでますが、エインとは? 何があったんですか?」

 

 アイリちゃんが乾杯をしつつ、俺に質問をしてくるが出来上がっているようで、ふらふらしている。

 

「あら、聞いてなかったの? シオン君が私を呼ぶときのあだ名よ」

 

 エインが説明をしているが、あまり聞こえてはないようだ、あまりにもふらふらしているので、エインと話し、アイリちゃんを部屋に連れて行くことになった。

 

「じゃあ、ルクス達が聞いて来たら、説明を頼むぞ、エイン」

 

 そう言い、アイリちゃんをお姫様抱っこする。すると、アイリちゃんはいきなりの事に驚き、俺の顔を見るが、

 

「いいだろこれで、相当酔ってるみたいだしな」

 

 そしてアイリちゃんを問答無用で連れて行く。

 

「お、降ろしてください、自分で歩けます」

 

 アイリちゃんがそんな事を言うが、疲れているのか、全く力がない。

 

「駄目だアイリ、疲れきっているそんな状態で歩けると言われても、休んでもらうために、アイリを連れて来たんだから、休んでくれ」

 

 アイリちゃんをお姫様抱っこしたまま、アイリちゃんの部屋に着く、扉を開け、アイリちゃんをベッドまで連れていき、降ろしてあげる。

 

「寝なくてもいいから、休むこと、アイリちゃんもルクスと同じくらい無茶しているみたいだからな」

 

 そう言い、部屋を出ようとすると、

 

「待って...待ってください!」

 

 後ろから、アイリちゃんが俺の制服の裾を引っ張り、そう言ってきた。

 

「すいません、わがままを言って、一人は、その......寂しくて」

 

 顔を赤くしながら俺にそう言って来る、アイリちゃんが可愛いと思う、なんてことは言わず、アイリちゃんと話しをする。

 

「いや、いいさ、アイリちゃんがわがまま言うなんて珍しいからね」

 

 からかいながら、俺は自分の考えを伝える、そんな事を言われると思っていなかったのか、アイリちゃんは少し驚いた表情をしたが、からかわれていることを感じたのか、少しジト目で、しかし嬉しそうに、

 

「もうっ、シオンさんっ! からかわないでください、恥ずかしいです」

 

 そんな風に、頬を膨らませて言って来るのだが、あまり怒っている感じがしないので、笑いがこみ上げてくる。

 

「なっ、なんで笑うんですか!?」

 

 アイリちゃんがそう言いながらベッドから立ち上がり、詰め寄ろうとしたが、まだ酔いが回ったままだったのか、ふらりとアイリちゃんが倒れそうになったので、肩をつかみ、倒れるのを防ぐ。

 

「大丈夫か? アイリちゃん?」

 

 そう言いながら、アイリちゃんを座らせる。

 

「すいませんシオンさん、ありがとうございます」

 

 なんて、礼を言ってきた。

 

「アイリちゃん、その(さん)っていう言い方、やめないか? 前みたいに呼んでくれよ」

 

 そう言うと、アイリちゃんは驚いた表情で、

 

「えっ、その、えっと、いいんですか? 前みたいに呼んでも」

 

 そんな風に言ってきたので俺の方が驚いた。

 

「悪い訳がないだろう? 全然呼んでいいし、逆に呼んで悪い訳があるのか?」

 

 アイリちゃんにそう言うと、アイリちゃんは照れているのか、顔を赤くしながらも、

 

「そ、それじゃあ、シ、シオン兄さんこれからはそう呼ばせてもらいます」

 

 何だか、俺も呼ばれるのが少し恥ずかしくなってきた、アイリちゃんを見ると、アイリちゃんも顔を赤くし、うつむいている、そんな感じで会話もなく、少し時間が過ぎた後、

 

「本当に、シオン兄さんですね」

 

 そんな事を言い始めた、当たり前の事なんだが、どうしたんだろうと、思い、アイリちゃんを見ると、

泣いていた。

 

「えっ!? アイリちゃん!? なんで泣いているの、何か俺がしたのか!?」

 

 焦る、なぜ泣いているのかがわからないので何をすればいいのかわからず、俺は何故かわからないがアイリちゃんを自分の胸に抱え込み、抱きしめる。

 

「なんで泣いているか、すまないが俺はわからない、でも泣きたいなら、声を出していいから、思い切り泣いてくれ」

 

 そう言い、アイリちゃんを抱きしめる、すると、アイリちゃんは声をあげて泣き始める、それを俺は抱きしめ、ずっと聞いていた。

 

 

 

 それから、三十分ぐらいたっただろうか? アイリちゃんは泣き続けていたが、少しずつ落ち着いていき、泣き止むと、少し俺に抱き付いたままでいて、落ち着いたのだろうか、

 

「すいませんシオン兄さん、少し取り乱してしまいました、ごめんなさい」

 

 そう言って謝ってきた、まだアイリちゃんの目は赤いままで、泣いた後がしっかりと残っている。

 

「いや、いいさ。それに俺の制服が一枚こうなっただけで、アイリちゃんはすっきりとしたんだろう?なら安いもんさ」

 

 少しからかいを入れながらも、アイリちゃんの頭を撫でながらそんな事を言う。

 

「もうっ! からかわないでくださいよっ! ......でも、すっきりとしましたシオン兄さん、ありがとうございます」

 

 少し嬉しそうに頬を緩めながら、感謝の気持ちを伝えてくる。

 

「すっきりとしたならいいさ、何だか悩んでいるような表情のアイリちゃんを見ていると、何だかモヤモヤした気持ちになってしまうからな」

 

 そんな風に言うと、アイリちゃんの頭を撫でるのを止め、椅子に座る。

 アイリちゃんは少し残念そうな表情をしたが、顔を引き締め、俺をしっかりと見据えて、

 

「すいません、またこんな風に『シオン兄さん』なんて呼べるなんて思ってもいなくて、また呼べると思ったら嬉しくて、泣いてしまったんです。だって、シオン兄さんが生きていると思わなかったんですから。あの日兄さんだけが、帰って来たとき、目の前が真っ白になって、シオン兄さんが死んでしまったと思ったんです。そしたら、とても苦しくて、ずっと苦しくて」

 

 アイリちゃんは今にも泣きそうな顔で、それでも独白を続けていく。

 

「でも、シオン兄さんがこの学園に来たと知った時、生きていたんだってそれが嬉しくて、でもそれを人前で言うのは恥ずかしくて、それでも、シオン兄さんがまた、そう呼んで欲しいってそう言ってくれた事が嬉しくて、それ以上にシオン兄さんがまた、私達のところに帰って来てくれた事に、実感が湧かないまま、時間がたって、こんな感じに二人になることもなく、いきなり二人になってしまったら感情が押さえきれなくて、泣いてしまったんです」

 

 アイリちゃんの独白を聞いて俺は思わずアイリちゃんを抱きしめた、

 

「!? シオン兄さん!?」

 

 アイリちゃんが驚いているが、抱きしめることを止めない、

 

「すまない、アイリ。俺が悪かった、手紙も出さず、心配させてしまった、すまない」

 

 抱きしめたまま、アイリちゃんに謝罪の言葉を伝え、解放する。

 

「これからは、アイリを一人にしないし、誰も死なせない」

 

 そう、アイリちゃんと外にいる誰かに聞こえるように宣言する。

 アイリちゃんは、驚いたように表情を変えるが、落ち着いてうなずく。

 

「じゃあ俺は戻るよ、後は頼むよノクトちゃん」

 

 すると、アイリちゃんは驚いたようだが、扉があき、入って来た人物は、

 

「Yes.任されました、後、あの宣言は少し響きました」

 

 頬を赤らめつつ、真顔でそんな事を言って来るノクトちゃんが部屋に入って来た。

 

「じゃあ、宜しくね。二人とも良い夢をね」

 

 そう言って、部屋から出る。

 

 

 

「あら、遅かったわね」

 

 部屋に戻ってエインが言った第一声がそれだった、少し突き放したような、そんな言い方だった。

 

「ああ、すまないな、待っていてくれたのか?」

 

 謝罪をし、俺のベッドに座る。

 

「ええ、誰も話す人がいないもの」

 

 少し照れたように言い、こちらを向く。

 

「貴方もルクス君と同じように、依頼を受けたりしているそうね」

 

 いきなり、本題について話を始めた。

 

「あ、ああ、一応だが、依頼は受けているな、しかしどうしてそんな事を?」

 

 エインにそう聞くと、少し口ごもり、

 

「貴方に、依頼したいことがあるの。『黒き英雄』と『白き英雄』を探して欲しいの、それがこの国に来た一つの理由だから」

 

 真剣な口調で依頼について話しをする。

 

「わかった、依頼を受けよう、誰かわかったら教えればいいんだな」

 

 そう言って話しを終え、ベッドに入る。

 

「それじゃあ、お休みなさい」

 

 エインもベッドに入り、どちらとも寝る。

 

 

*

 

 

 次の日、夜明け前に起き、日課をこなし、エインと共に学園に行く。

 学友に挨拶をし、2-甲の教室に向かう、教室の中はルクス達がすでにおり、周りに守ると決めた少女達がいる。

 

「よぉ、ルクス、皆、おはよう」

 

「あっ、シオン、おはよう」

 

 短く挨拶を終えると、教科書を読み始める。

 

 

 

 授業は特に何もなく進んで行く。

 そのまま、放課後になり、訓練場に向かう。

 訓練場に着くと、何故かアイリちゃんや、ノクトちゃん、リーズシャルテにエイン達までいた。

 

「お、来たな、いつも放課後は訓練場にこもっていると言うのは本当らしいな」

 

「なんでここにリーズシャルテ達が?」

 

 シンプルに疑問をリーズシャルテにぶつけると、エインが、

 

「貴方の機竜操作が上手いから騎士団に入れたい、と、リーシャ様が言っているのよ」

 

 俺の問いに答えてくれた、

 

「いや、しかしルクスは? あいつも相当上手いぞ、なんであいつは?」

 

 そこにルクスがいないことに疑問を覚えていると、リーズシャルテが、

 

「あいつは、その、攻撃を全くしないから、入団を他の団員が断ったんだよ」

 

 なるほど、納得の理由だ、それで俺か。

 

「しかし、俺を入団させるとして、どう審査をするんだ?」

 

 入団審査の内容を聞くと、リーズシャルテは赤いソードデバイスを抜き、

 

「それはもちろん、機竜同士での戦闘でだ!!」

 

 そう言うが早く、騎士団の団員が次々とソードデバイスを引き抜き、パスコードを唱える。

 

「まじかよ、さすがに全力出さないときついかなー?」

 

 俺はあくまでも、陽気に、しかし真剣に戦略を組み立てる。戦略を組み立て終わり、〈ドレイク〉のソードデバイスを引き抜き、パスコードを唱える。

 

「来たれ、根源に至る幻想の竜、幾重に瞬き姿を為せ、〈ドレイク〉」

 

 詠唱が終わると、俺の後ろに〈ドレイク〉が現れる。

 

「接続 開始」

 

 自身に装甲を纏い武装を構える。

 

「準備はいいな? ならばいくぞ!!」

 

 リーズシャルテの声を始めとし、一斉に武装を構え、戦闘が始まる。

 

 

 

「はあっ、はあっ、お前本当に人間なのか? 何故疲れていない?」

 

 リーズシャルテが装甲を解除して、大の字に寝転びながら聞いてくる。

 

「何故かって? それは俺が肉体操作だけで機竜を操作しているからだよ」

 

 さらりと言ったが、本来機竜は、肉体操作と精神操作の二つを組み合わせて操作を行う、片方だけでの機竜操作をすることは、至難の技、と言うかほぼ無理に近い。それをしていると言ったのだ、リーズシャルテだけでなく、近くにいた騎士団の団員も驚いている。

 

「で、俺は騎士団に入れるのか?」

 

 周りでは騎士団の団員が装甲を解除しているのに俺だけが装甲を纏ったまま、そんな事を聞くと、

 

「当たり前だ、団員半分以上で戦ったのに、装甲を解除することなく、こちらだけが装甲を解除させられるなんていう、それだけで、十二分だ」

 

 と言う訳で、俺は騎士団に入団することになった。

 

「それじゃあ、これから宜しく頼む、リーズシャルテ達」

 

 そう言って、俺は寮に戻る。

 

 

*

 

 

 次の日、日課を終え、エインと共に学園に登校していると、時間を知らせる鐘ではなく、激しく、打ちならす、そんな風な鐘の音が聞こえてきた、

 

「っ!! 早く集まらないと!」

 

 エインがそう言い手を引っ張られ、学園に走って行く。

 

「皆落ち着いてくれ! 出現した幻神獣は大型の幻神獣だが、新王国から増援が来ている、落ち着いて避難してくれ、騎士団の団員は幻神獣の討伐に向かってくれ! 以上だ」

 

 良かったーと安堵の息をもらす生徒達がいるなか、俺は装衣に着替え、騎士団の団員がいるところに向かう。

 

「早速すまないな、騎士団は幻神獣が出たら、率先して戦いに行かないといけないんだ」

 

 リーズシャルテがそんな事を言いながらソードデバイスを引き抜き、機竜を呼び出す。それを境に、一斉に機竜を呼び出し、接続を開始する。

 

「幻神獣は大型が一体だ、さっさとかたずけるぞ」

 

 リーズシャルテが閧の声をあげ、一気に、飛び立つ、俺は胸に嫌な感触を抱えながら、幻神獣の討伐に向かう。

 

 

 

 大型の幻神獣は腕を二本、体の左右から生やし、体の上に目玉が二つ浮いているゲルに包まれた核をもつただそれだけのスライム型の幻神獣だった。

 

「よし、ぶっぱなすぞ」

 

 そう言って、リーズシャルテは半々の体を持つ見たことのない機竜の巨大な砲身を幻神獣に向け、放つ。

 しかし、スライムは全くダメージを受けた様子はなく、それどころか、ゲルに酸があるようで、ゲルが当たった草が溶けている。

 

「なるほど、あのゲルが衝撃を逃がしているのか、ならば、一斉に遠距離からの一点砲撃で仕留めるぞ!」

 

 リーズシャルテの掛け声に合わせ、一斉に武装を構える。

 

「秒読み開始、5、4、3、2、1、......」

 

イィィィィィー

 

 そんな不協和音が聞こえてきた、すると狙っていた核が膨らみ始める。

 

『っ!! 皆っ! ハウリングロアに加えて、全面に全力で障壁を展開しろっ!』

 

 いきなりの事に驚きつつも、全員が従ってくれたが前衛にいたノクトちゃんが少し遅れて障壁を展開し初めたが、スライム型の幻神獣が大爆発する。

 俺はノクトちゃんの前に飛んでいき、全力で障壁を展開し、守ろうとした。

 

 

 

『皆っ! 大丈夫か!?』

 

 先ほどの大爆発に巻き込まれ、ゲルが当たり、武装や、装甲が溶けている団員達もいたが、そこまで被害は大きくなかった。

 

『ああ、大丈夫だ、左腕は動かないがまだ、動ける』

 

 竜声を通して、団員の無事を確認している最中、また不協和音が聞こえてきた。

 

イィィィィィー

 

 すると、先ほどのスライムのゲルから気泡が現れ、急速に大きさを増していき、破裂する。そこから現れたのは、数日前に学園上空まで飛んで来た幻神獣〈ガーゴイル〉だ、それが何十匹と現れる。

 

ー何、あの幻神獣の量ー

ー私まだ、二体以上の幻神獣と戦ったことないのにー

 

 と言う、声が竜声を通して加速度的に恐怖が膨らんでいく。

 

「しっかりしろっ!! 王国から援軍が来るまで少しずつだが、撤退しつつ、幻神獣を倒していくぞ!! 私とシオンが前衛に出る、援護をしてくれ!!」

 

 リーズシャルテの掛け声に、はっとしたように竜声での声が止み、ガーゴイル達を見る、するとその奥に灰色の機竜が見える。

 

「ふふふ、学園の皆さん、ご機嫌よう」

 

 そう言うとその機竜はいきなり俺に向けて、砲身を向けて、砲撃してくる。

 

「っ!!」

 

 大きくバックステップをとり、砲撃を避ける。

 

「何故、王国軍が私達を射つんだ!!」

 

 そう、リーズシャルテが灰色の機竜使いに向けて問う、すると短い笑い声の後、

 

「何を言っているのですか? 私が来たのは帝国からですよ、リーズシャルテ姫」

 

 その、機竜使いはそんな事を言うと手に持った、金の角笛を口に当て、吹いた。すると、ガーゴイル達は敵意を向けて来る。

 

「何かあの角笛にからくりがありそうだな、シオン行けるか」

 

 リーズシャルテがそんな事を聞いてくるが最後が疑問系じゃないことに苦笑しつつ、

 

「もちろんだ、囮ぐらいにならなれる」

 

 リーズシャルテは機竜の接続を切り、赤いソードデバイスを引き抜き、パスコードを唱える、現れたのは、赤く巨大な機竜〈ティアマト〉だ。

 

「いくぞ!!」

 

 幻神獣との死闘が始まった。

 俺は団員達の支援を受けつつ、五匹ぐらいを倒し、リーズシャルテは特殊武装と神装それぞれを使い、ガーゴイル達を倒していく。

 

『シオン、私はあいつに一騎討ちを挑む、ガーゴイルが多すぎて行けなかったが、今なら行けそうだからな』

 

 竜声を通してリーズシャルテがそんな事を言いながら灰色の機竜に一騎討ちを挑みに行った、俺が助けに行こうとしたが、ガーゴイルに阻まれ、リーズシャルテと灰色の機竜使いの一騎討ちが始まった。しかし、一騎討ちと言ってもリーズシャルテは全力で戦っており、血反吐を吐くほど疲れている。

 リーズシャルテは角笛を壊すつもりで、一騎討ちを挑んだとわかった、リーズシャルテは真っ直ぐに飛んで行き、途中でソードデバイスを二本投げつける。しかし、大型のブレードを振り抜いた後だったはずの灰色の機竜使いは神速の斬撃をリーズシャルテに直撃させる、リーズシャルテの纏っているティアマトの装甲が砕けちり、赤い花が空中に咲いた、リーズシャルテは空中から落ちていく中、ティアマトのソードデバイスを灰色の機竜使いに投げつける、それを避けきれず、頬に、切り傷を作り、リーズシャルテが地面に落ちると、

 

「ふふふ、ははは!! 良いだろう、やはり気が変わった、貴様の死体を王国に送り込んでやる、ここで死ね!リーズシャルテ、偽りの姫よ!!」

 

 そう言い、灰色の機竜がリーズシャルテに向け、キャノンを射つ。

 

「あぁ、悔しいな、最後まで泣かないって決めて、いたのにな」

 

 リーズシャルテが涙を流し、キャノンが直撃するのに対して身構えたが、前に、俺は飛び込む、そして俺のドレイクにキャノンが直撃した。

 

「リーズシャルテ、泣くな、ルクスが後少しで来るから、まだ諦めるな」

 

 俺はリーズシャルテにそう言い、大破したドレイクのソードデバイスをしまい、もう一つのソードデバイスを引き抜く。

 

「顕れろ、森に潜みし最恐の怪物よ、その忌まわしき姿を今見せろ〈ジャバウォッグ〉!」

 

 パスコードを唱え、顕れたのは真っ白な、禍々しい形の装甲を持つ竜だった。

 鋭利な装甲に特装型の機竜ならではの補助脚に加えて、飛行型の特徴である、背中にある大きな翼を模した推進装置を持つ、恐怖を人に与えるそんな機竜だった。

 

「シオンっ!? その機竜はいったいどこで!?」

 

 リーズシャルテが驚きながら聞いてくる。

 

「すまない、リーズシャルテ、今は答えている暇はない。そこの灰色の機竜使い、名前はなんだ?」

 

 俺は空中に飛んでいる、灰色の機竜使いに問いかける。

 

「ふむ、私の名はベルベットだ、帝国近衛騎士団長の座につかせて頂いている」

 

 あの灰色の機竜使いはベルベットと、言うらしい、

 

「そうか、俺の名は、シオン・オルバートだ、わからないか?」

 

 そう言ったが、ベルベットは特に思い出す訳ではなく、

 

「わからんな、で、貴様はその女を守って何をしたい、女に仕えて何がいい、男の方が上だ! 女なんてものは只の道具だ!

 そこの姫だって、帝国の道具だ! それが上手くいっただけで、王国の姫になんてなったから調子に乗って......」

 

 そこまで言って、顔が恐怖に染まった、何故なら、シオンから恐ろしいほどの殺気が漏れ出ていたからだ。

 

「そうか、言いたいことはそれだけか、ならば、死を持って償え世界喰(オムニスゲイル)

 

 ジャバウォッグの神装が発動する。

 ベルベットは焦ったのか、ガーゴイルを押し掛けるが、一定の距離まで近付くと、ガーゴイルはメキメキと嫌な音をたてて、地面に落ち、潰れていく、核が砕けたのか、体が灰になっていく。

 

「俺は帝国に潰された亡国の王子だ、そして、貴様ら帝国を潰した怪物の一人だ、帝国なんぞないほうがいいに決まっている!」

 

 ガーゴイルがどんどん数を減らす中、遠くに灰色の機竜達が百機ほど見受けられる。

 

「何を言っている! こちらには後百機もの機竜がいるのだ、貴様なんぞ、叩き潰してくれる!」

 

 ガーゴイルは潰され、全て、倒し終わり、ベルベットとの一騎討ちになる。

 

「貴様なんぞ、神速制御の餌食だ!!」

 

 そう言い、ベルベットは神速制御を使い、神速の斬撃を繰り出して来る。

 しかし、神速の斬撃を同じ神速の斬撃で弾く、

 

「なっ!!」

 

 俺はベルベットの神速制御に神速制御を重ねて、弾いただけだ。

 

『ごめん、シオン、百機の機竜は僕に任せて! そのまま、シオンはベルベットをお願い!』

 

 ルクスからの竜声が届き、学園の方向を向くと、漆黒の機竜が今現れたところだった。

 

「ベルベット、お前の相手は俺だ」

 

 強引に攻撃を加えて、こちらを向かせる、ベルベットは〈エクスワイバーン〉、強化型の機竜を使い、鋭い斬撃を繰り返してくるが、俺は弾き、反らし、大振りの攻撃を誘う、すると、しびれを切らしたのか、大振りの攻撃をしてくる、それを弾く、するとベルベットは神速制御を使い、神速の斬撃を繰り出して来るが、俺も神速制御を重ねて使い、ベルベットの大型のブレードをへし折る。そのまま、俺は特殊武装を引き抜き、ベルベットを特殊武装の〈竜激鋭爪〉の腹で叩き、吹き飛ばす。

 俺がベルベットと少し戦っている間にルクスは百機いた灰色の機竜を次々と落としていく。

 俺はベルベットを神装を使い目の前に転移させる、そのままベルベットに〈竜激鋭爪〉で斬りつけるが、予備のブレードで弾かれるが、ベルベットの予備のブレードが粉々に砕けた。

 

「なっ!? 何故だ!?」

 

 理由は単純明快、フォースコアから供給されるエネルギーと、神装の効果で、得たエネルギーを特殊武装に過剰に注ぎ込み、自壊させる技、〈壊竜剛撃(デストラクションブレイズ)〉俺が編み出した技を当てただけだ。

 

「ルクス、後は、頼むぞ」

 

 ベルベットは意味すらわからず、予備のブレードを引き抜き、神速制御で俺を斬りつけようとしたが、俺よりも倍ぐらい早い神速制御を使ったルクスのブレードによって弾かれる。

 

「何故だ! 何故貴様が使える!?」

 

『あなたも無謀ですね、最初にその技を生み出した人に同じ技で挑むなんて、兄さんはその技を最初に生み出したんですよ?』

 

「嘘だ! その頃まだ貴様は十歳にもなっていないはず」

 

 ベルベットはまだ諦めず、反撃を試みるが、

 

「〈暴食(リロード・オン・ファイア)〉」

 

 ルクスの機竜〈バハムート〉の神装を使った〈即撃〉によってフォースコアに機竜の手首、ソードデバイスを破壊する。

 

「僕にはもうお前を裁けない、だけども、僕はこの人達を守ると決めた、だから僕はお前を倒す」

 

 そう言い、ベルベットを倒す。

 ルクスと共に降りると、エインがいた事に驚いていると、ルクスがふらりと倒れる。

 

「おい!? ルクス! 大丈夫か!?」

 

「うん、少しだけ疲れたよ」

 

 そう言い、ルクスは気絶する。リーズシャルテも気絶しており、俺はルクスをエインがリーズシャルテを学園まで運ぶ事になった。

 

 

*

 

 

「おーい、ルクっちが起きたみたいだよー」

 

 ティルファーがそう伝えてから約一週間、ルクスはベッドから起き上がることすらできず、アイリちゃんに叱られていたようだ、俺は神装機竜を使えると言うことだけが知られただけで、《黒き英雄》が誰かがわからず、話題になっていた。

 

「ルクス、大丈夫か? リーズシャルテが学園長室に来いと、呼んでいたぞ、歩けるか?」

 

 俺はルクスを呼びに医務室に行く、ルクスはすでに起きており制服に着替えている最中だった。

 

「おはようシオン、わかった、大丈夫だよ歩けるから」

 

 そう言い、ルクスは着替え終わり、一緒に学園長室に行く。

 

「失礼します」

 

 俺は扉を開け、ルクスを中に入れる、俺も入る。

 するとリーズシャルテがルクスに学園に正式に編入してくれと言っていた。俺はそれを後ろから見守る、ルクスはリーズシャルテの提案を飲み込み、この学園に正式に編入することが決まり、俺が守ると決めた少女に囲まれ、照れているルクスを少し離れて見ていると、

 

「あら、あなたは入らなくていいのかしら? シオン、どうなの?」

 

「そうですよ、シオン兄さんも頑張ったんですから、シオン兄さんも入ったらどうですか?」

 

 エインとアイリちゃんからそんな事を言われるが、

 

「いや、いいさ、ルクスがベルベットを倒したんだ、ルクスが称えられて当然さ」

 

 そう言うとエインが間近まで、近付いて来て、

 

「ふふっ、そう言うところが好きよシオン」

 

 そう言うと、エインが俺の頬にキスをしてきた。

 それを見ていたアイリちゃんが顔を赤くして、エインを見ている。

 

「依頼の報酬よ、ありがとうねシオン」

 

 俺は後から状況を理解し赤面した。

 

「シオン兄さん」

 

 それを見てアイリちゃんがジト目で見てくるのを見て、自然と笑いが込み上げてきた。これからここでルクスやアイリちゃん達と暮らして行くのは中々楽しそうだ、こうして、学園の危機は去って行った。




どうも、蕾琉&昇華の蕾琉です。
これで一巻分が終わりです。
長かった~。
次からは二巻です。
これからも頑張っていくので、これからもよろしくお願いします。
それではまた。
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