白き英雄   作:蕾琉&昇華

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どうも蕾琉です。
ついに、UAが5000を突破しました。
いつも読んでくださる方々、本当にありがとうございます。
これからも昇華と共に頑張っていきますので、よろしくお願いします。


9.八章

「明日の探索スピードは三倍にするぞ」

 

 私はこう馬鹿なことを言っている男と共に第三遺跡(ルイン)の方舟を探索しないといけない。はあ、何故このような阿呆と共にいなければいけないのでしょうか、ここにあのお方がいるはず。

 早く会いたい、そして私の手であの帝国を復活させる。そのために、速くルクス様に会わなければ。

 

 

 四日目は朝から探索をすることになった。方舟は広く、いくつかのグループに別れて探索をすることになった。俺はシャリス先輩とセリス先輩と同じグループになった。全部で四つのグループに別れている。俺は先輩達と共に探索を進めていたが、

 

『シオンさん、聞こえてますか?』

 

 ノクトちゃんから竜声が送られてきた。

 

『うん? 聞こえてるけどどうしたんだい?』

 

『ルクスさんからシオンさんを呼んでくれと言われましたので、大丈夫でしょうか?』

 

『ああ、大丈夫だ。すぐに行こう』

 

 俺は先程の話をセリス先輩達にし、ルクス達に呼ばれた地点に向かうとエインも来ていた。ルクスに詳しく聞くと、ノクトちゃんの《ドレイク》に謎の生態反応があったらしく、ノクトちゃん達の護衛として俺が、遺跡に詳しいことからエインが呼ばれたらしい。

 

「アイリちゃんとノクトちゃんは離れておいて、ユミル教国に人形の罠があったなんてことを聞いたわ」

 

 嘘だな、確実に嘘だ。俺はなかなか遺跡に詳しいし、何よりそんな物を作っていた記憶がない(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「わ、わかりました。気を付けてください」

 アイリちゃんとノクトちゃんはそう言って俺達の近くから離れる。

 

「クルルシファーさん、今のって」

 

「ええ、嘘よ」

 

 やはり、さすがにアイリちゃん達をここから遠ざけるためには有効だけど、もう少し何かいいのがなかったのか?

 そう思いながらも俺は生態反応があるという岩をどかす。

 

「あはは、すごいね僕たちじゃ動かせなかったのに」

 

 そうルクスは言うが俺にとっては重くなかった、俺が岩をどかしたその下には小さな少女に見える何かがいた。

 

「こいつは?」

 

 俺は思わず呟く、エインもルクスも俺の呟きに賛同するようにうなずく。

 俺達がその少女の姿をした何かを見ていると唐突に目を開け、むくりと起き上がり辺りを見渡した後、俺達を見て、

 

「お呼びじゃなかったようですね......、お休みなさi」

 

「いや待て!」

 

 俺は思わずその何かに叫ぶ、その何かはあたふたとしながら捲し立てるように、

 

「わ、私はこの状況に覚えがないのですできれば記憶を再度復旧させて頂きたいです。鍵の管理者(エクスファー)様」

 

 俺に向かってそんな爆弾発言をした。

 一瞬でその場の空気が凍りつく。ルクスはエインが遺跡の生き残りだと言うことを知っている。そのためエインに向かって言うのであれば特に困らなかったのだが、俺?

 

「ま、待て、それよりお前は何だ?」

 

「私ですか? 私はネイ・ルーシュ。この遺跡の統括者(ギア・リーダー)で、この方舟を統括するシステムを擬人化したもので、自動人形(オートマタ)です」

 

 そう、俺に向かって恭しく礼をする。

 

「まあ、合流してからだな」

 

 俺がそう言うとネイはうなずき、エインは微笑を浮かべ、ルクスは苦笑いを浮かべながらも賛同してくれた。

俺は二人に礼をいい、合流地点にネイを連れていく。道中は幻神獣とは遭遇せず不気味なほど静かだった。

 そして七層に降りる階段の前に全員が集まった。

 ネイは途中で見つけた自動人形だと言ったのだが、騎士団の面々はすぐに馴染みネイはいろいろと遊ばれていた、と言うか今も遊ばれている。耳は弱いとかそんなのが聞こえて来るが気のせいだろう。うん。

 

「シオン君、少しいいかしら?」

 

「ん? レリィさん? どうしたんですか」

 

 不意にかけられた声はレリィさんで、その声はいつにもなく真剣なものだった。

 

「あの子は貴方のことを鍵の管理者(エクスファー)。鍵を管理するものと読んだのよね」

 

「ええ、確かにそういわれました」

 

「なら、前に箱庭(ガーデン)を探索したときにより下の層に行けたのは貴方の鍵の管理者(エクスファー)としての力があったからじゃないのかしら? どう思うの?」

 

「うーん、俺はよくわかりません。俺は幼い頃の記憶がありませんし」

 

「......そう、ごめんなさいね」

 

「いいえ、大丈夫ですよ。そこまで気にしてないですし」

 

 レリィさんでは申し訳無さそうに俺に謝る、それを大丈夫だと言ってそこではそれ以上話はしなかった。

 

 そして、

 

「これから下の七層と八層の探索を行います! これから複数の部隊に別れて中央の幻神獣の生産プラントを避けて進みます!」

 

『はい!!』

 

 セリス先輩が全体をまとめ、部隊分けが始まる。俺はティルファーとノクトちゃんとアイリちゃんとの部隊になった。

 

「よろしくねー! シオっち!」

 

「応、よろしくなティルファーにノクトちゃんも」

 

「Yes.よろしくお願いしますシオンさん」

 

 俺が二人に声をかけていると、アイリちゃんがぼそりと、

 

「私には何もないんですね...」

 

「うん? アイリちゃんもよろしくな」

 

「うー、わかりましたけど、守ってくださいよ?」

 

「応、もちろんだよ」

 

 俺達がそういう風に話ながら七層を進んでいると右側が大きなガラスのようなものになっていて、そこから見えるものは、

 

「うわっ、何あれ」

 

「あれは幻神獣の生産プラントだな幻神獣の反応が百を越えてる。中央を進むよりかこういった脇道を通った方がいいな安全が段違いだ」

 

「Yes.それに先程のネイ・ルーシュも中央を進もうとすると方舟(アーク)が警戒体制を取るといっていました」

 

「やはり危ないですね、こちらも十二分に広いですし幻神獣も全く出現しませんし」

 

「そうだな、まあ、いつ現れるかわからないし注意しながら行こうか」

 

「「「はい!」」」

 

 

 それからも特に危険な幻神獣とも会わず交戦は一度だけ、〈ケラーケン〉と呼ばれる烏賊のような姿で、特に危険なわけではなく三人で協力し圧倒的優位で戦い破損もなく進んだ。

 そして七層の後半に近付いた頃です不意にノクトちゃんが俺に対して、

 

「そういえばシオンさんは亡オルバート王国の第一王子だったと言うことですが、どういう国だったんですか?」

 

「うん? オルバート王国か。そうだなこれはほんとに信じがたいだろうけど、王族と民が共にいるような国だったな」

 

 俺が言ったことは本当に嘘みたいな話だ、民と王族が共にいる、すなわち王政を真っ向から否定するような王族だと言うことだ。まあ、そんなつもりはないんだが、それでも普通の王族がとるような行動とは真逆だからこそ信憑性がない。

 

「うーん、まあ、それの代表的なことを言うなら、俺達王族も民と一緒に畑を耕したり、王宮は解放してあったりとかかな?」

 

「そ、そうなの? ......何て言うか想像できないや」

 

「Yes.まったく想像できません」

 

 俺の言ったことは事実なのだが、まあ、自分で言っていても凄いところだったよなー、と客観視したらほんとに王政必要だったのかなんて思うぐらい王族と民は距離が近かった。うん、わけわかんないわ王政いらないだろ。

 

「それにだな、機竜使いが一人一人特級(エクス)クラスぐらいだったしな。わけわからないぐらい強かった。帝国の兵士五人ぐらいを一人で相手取って勝ってたからな。一般の兵士でだぜ?」

 

「一般の兵士で!?」

 

「応、そんな人たちに鍛えられたしな、あはは、懐かしいや」

 

「シオンさんが何かを思い出して変なことになっています!?」

 

「大丈夫!? シオっち!?」

 

 俺はガクガクとティルファーとノクトちゃんに揺さぶられ、はっと我に帰った。

 

「あ、ああ、大丈夫だ。すまん」

 

「ならよかったです」

 

 アイリちゃんにそう言われたのでもう一度謝っておく。

 俺たちはそんな風に雑談を緊張感なくしながら探索を進めて行った。

 そして七層の探索が終わり、八層を進んでいたときだ、不意に周りにあった白い明かりだったものが赤色に変わり、警報のようなけたたましい音が鳴り響き、四百メートル程先に大型の幻神獣の反応があった。

 

「気を付けてっ! 前から大型の幻神獣が来るよっ!」

 

 そう言うと、前方から色濃い殺気が漂ってくる。俺はジャバウォッグに接続を切り替え、待ち構えると、高速で走ってきた巨大な双頭の狼がその巨大な爪で俺を裂こうとする。

 俺はそれを壊竜鋭爪で防ぎ素早くカウンターを決める。しかし、あまりにも大きな体と硬すぎる毛に阻まれあまりダメージを与えられなかった。しかもすぐに反転し暗闇の奥に消えていったが、色濃いさっきとジャバウォッグの探知機能に反応があるため油断ができない。

 

「アイリちゃんを守ってくれ! さっきのは俺が殺す!」

 

 素早く武装を構え再度飛び込んできた狼の爪をそらし左目にカウンターを決める。

 狼はうめき声をあげながらくるりと反転し逃げようとするが俺はその前に転移し、右目を切りつけ視界を完全に奪い取る。しかし、背中から生えていた複数の蛇が伸び、俺に噛みつこうとする。その口には猛毒だろう液体でまみれている。

 俺は素早く蛇を切り裂き、脅威を退ける

 

「ノクトちゃん! 大丈夫か?」

 

「Yes.特に流れ弾は来てません」

 

 俺はノクトちゃん達の無事を確認して、俺は狼のがむしゃらに振り回す腕を避けカウンターを入れながら核にダメージを入れるため、胸部を集中的に狙って攻撃を繰り返す。そして少しずつ肉が無くなり核が露出する。

 俺はその核を大振りな攻撃を避けて壊竜鋭爪で貫く。

 核を貫かれた狼は大きく痙攣し絶命する。俺は死んだことを確認するため、再度核を貫く、しかし特に反応はなく俺は安心する。そしてティルファー達の無事を確認しようとしたとき、上から烏賊型の幻神獣、〈クラーケン〉が落ちてきた。

 

「なぁ!?」

 

 俺は素早く回避してカウンターを叩き込み怯ませる。

 しかし俺の視界に新たな〈クラーケン〉が現れる。ティルファー達の背後に、だ。

 ティルファー達は背後に落ちてきた〈クラーケン〉の着地音に気付くが、すでに遅く〈クラーケン〉の触手が攻撃始まろうとしていた。

 

「ティルファーァァァァ!!!」

 

 俺は瞬間的に加速する。今までより多く背翼にエネルギーを送り込み今までで、最高の速度に到達する。

 

「ティルファーにぃ! 手を出すなぁぁぁ!!!」

 

 最速で〈クラーケン〉の前に飛び込み〈クラーケン〉の触手を切り刻む。

 

「死ぃぃぃねぇぇぇぇぇ!!」

 

 俺は〈クラーケン〉の本体を切り裂き核を砕く。

 俺はまた落ちてきた〈クラーケン〉を攻撃し殺すが横合いからの触手に叩かれ吹き飛ぶ。

 

「うぐぎぃぃぃぃ!」

 

 そのうえ叩きつけられた壁が脆く、崩れ落ち、何かが二の腕に突き刺さる不快感が脳をかきみだす。

 奥歯を噛みしめ、〈ジャバウォッグ〉を操作しさっき攻撃してきた〈クラーケン〉を切り裂き殺す。

 

「シオン兄さんっ!」

 

 アイリちゃんの叫び声が聞こえ、俺が後ろに振り向き様に背後にいた〈クラーケン〉を核ごと両断する。

 ティルファーとノクトちゃんはそれぞれ〈クラーケン〉を一体ずつ討伐し、気を抜いた瞬間だった。

 一人だけでいたアイリちゃんの背後に、〈クラーケン〉が落ちてきた。

 あまりのことで対応できないティルファーとノクトちゃん、そしてアイリちゃん。

 そして〈クラーケン〉の触手がアイリを殺そうと迫る。

 

「アイリィィィ!!!」

 

 しかし、俺はそれを許さない!

 さっきティルファーを助けようとしてでた速度よりも速く、アイリと〈クラーケン〉の間に割り込む、が、そこまでだ。俺が〈クラーケン〉を切り裂く前に〈クラーケン〉の触手が俺に到達するだろう。

 その衝撃や、〈クラーケン〉の攻撃でアイリが傷付く可能性がある。ならば俺がすることは、

 

 アイリを俺の体と〈ジャバウォッグ〉で、包み守ることだ。

 

 俺は素早くアイリを強引に抱き寄せる。そのままハグをするようにして更に密着させる。そうしてアイリを守るように俺がアイリを抱き締めた時、背中から触手による攻撃を受けた。

 俺は吹き飛ばされるが、アイリを包み込むようにして。衝撃がアイリに伝わらないようにうまく衝撃を逃がす、

 そして俺はアイリを抱き締めたまま壁に激突する。この方舟(アーク)事態が脆くなっていたのか壁が崩れ俺とアイリは崩落に巻き込まれることなく奥の通路に投げ出されたが、瓦礫で俺達とティルファー達は分断されてしまった。まあ、あれ以上の幻神獣の反応はなかったのだが。

 俺はそう冷静に判断しながら〈ジャバウォッグ〉を解除し、壁に寄りかかる、俺は意識が朦朧とし始め、暗黒の中に吸い込まれていった。

 

 

 私はとても弱い。

 

 当たり前でごく普通な事実。だけど、私はその事を今回再度思い知らされた。

 

「シオン兄さんは大丈夫でしょうか?」

 

 〈クラーケン〉の大量発生によって私達とノクト達は分断され、ノクト達は〈クラーケン〉を倒しきり無事なようだが、すぐに助けに来ることは無理らしい、シオン兄さんの左腕には鉄のような何かが突き刺さっていて、今は気絶している。

 私はシオン兄さんの〈ドレイク〉の機攻殻剣を拝借して、護身用として使わせてもらおうと思っている。

 私は辺りを危険だとわかっていながらも探索をする。特に幻神獣などはおらず、安全なのはわかりシオン兄さんが気絶している場所に戻っていた途中、壁越しに話し声が聞こえた、それは何度かこの島に来て出会ったドバル侯爵のものだった。

 

『ふむ、今はどこら辺まで進んだのかな?』

 

 ドバル侯爵の偉そうな声は共にいた部下に向けているのだろう、

 

『はい、幻神獣との遭遇もあり、進みは遅いですが八層の半分はすでに越えているかと』

 

 部下の代表であろう人物の声が聞こえてくる、

 

『ふむ、それではあの女達に遅れをとってしまうのではないか?』

 

 私達のことを『あの女達』と言い、見下すような声音はやはり帝国の思想に毒されているのだろう。

 私はそんなことを考えながら壁に耳をあて、会話を傍受する。

 

『まあ、あと少しで我らは遺跡(ルイン)の宝物を手にすることの出来る』

 

 やはり、ドバル侯爵の言い方からして、ドバル侯爵はこの遺跡(ルイン)から宝物を発掘し、自分の物としようとしているのだ。

 ドバル侯爵の性格からしておおかたそんな理由だとは思っていたが本当だったとは、私は呆れを覚えた。

 しかしこの状況はどうするべきか、とりあえずはシオン兄さんを起こし、助けを待つべきだろう。

 私はそう判断し、壁から体を離してシオン兄さんのいる場所に向かおうとしたとき、

 

『そう言えば、私気付いたことがあるのですが』

 

 カシュン

 

 特装型特有の小さな駆動音、それと共に私がさっきまで耳をあてて、寄りかかっていた壁が綺麗に斬られ崩れていく。

 

「おお、これはこれはアイリ皇女殿下ではありませんか」

 

 ドバル侯爵は私の姿を見ると今までと態度を変え、にこやかな雰囲気で話しかけて来るが私は警戒を解かない。

 

「大丈夫ですか? こんなところにお一人で、夜架近くに機竜の反応はあるか?」

 

 ドバル侯爵はさっき壁を斬った異国風の衣装を纏った女の私でもドキリとする色気を纏いながらも発する濃厚な殺気がその色気を打ち消し、異様な雰囲気を待とう少女、夜架と呼ばれた少女は少し機竜を操作していたかと思うとにっこりとした笑みを浮かべ、

 

「機竜の反応はありませんわ」

 

 夜架と呼ばれた少女の答えを聞くとドバル侯爵はうなずき、いかにも普通のように、

 

「そうか......では、殺せ(・・)

 

 私はいかにも普通のように吐かれた言葉に、思わず私は凍り付いた。

 

「なんだ? 昔仕えていた王族に刃を向けるのはためらいがあるのか?」

 

 ドバル侯爵は夜架と呼ばれた少女にそう問いかける、すると夜架と呼ばれた少女は艶然と微笑みながら、

 

「ええ、そうですわね。ためらいがないとは言い切れませんわ」

 

「そうか、なら、お前達、誰かが殺せ」

 

 するとドバル侯爵は後ろにいた部下にそう命じる。すると部下はためらうが、ドバル侯爵に逆らえず、〈ワイバーン〉を纏った部下の二人がブレードを持ち歩いてくる。

 

「すまない、だが、これも命令なんでな」

 

 部下の一人が謝りながらもブレードにエネルギーを送り込んでいるようで肩の装甲の下にあるフォースコアが輝きを増している。

 私はこんなところで死ぬんでしょうか?

 嫌だ、まだ生きていたい。シオン兄さんにこの気持ちをしっかりと伝えたい。

 私はまだ死にたくない!

 そう心のなかでは思っていても体が恐怖ですくんで動かない。そうしている間にもドバル侯爵の部下はブレードにエネルギーを送り終わり、私の命の芽を刈り取るようにブレードを振り上げる、私がそのブレードの輝きを見て死を覚悟したその時、ブレードを振り上げていた、ドバル侯爵の部下の右腕まるごと装甲腕が吹き飛んだ。

 

 

 俺は真っ暗な何処かにいた。

 今までいた方舟(アーク)のようなものは見えず、ただただ暗く、光の見えない。

 俺は辺りを見渡そうとするが光源が無いので周りを見るも何もまず見えない。

 俺はどうすべきか迷っていると視界に光が入ってきた。俺はいきなり光が入ってきたため、思わず腕で視界を塞ぐ、俺はゆっくりと腕を下げると、顔に靄のかかった銀髪の男二人が、薄紫の髪のやはり顔に靄のかかった少女を襲い、その少女の尊厳を踏みにじり嘲笑っていた。

 俺はその光景を何処かで見たことのある記憶があった。そんな記憶は今まで無かったのに、だ、そしてその光景は薄紫髪の少女が無惨に殺されて終わる。

 そして次に現れたのは、真っ白な肌で、やはり顔には靄のかかった少女が、紫がかった白い髪の顔に靄のかかった少年と共にいる光景。

 白い少女は何かを操作していると、紫がかった髪の少年に何かの触手のようなものが突き刺さり、激痛に悶えるように体を強張らせながら、手術が進み、少年は成功したようで、ゆっくりと立ち上がる、そしてここでまた光景は途切れる。

 俺はその光景もみたことがある気がするのだ。

 するとより強い光が見えたかと思うと、助けてと聞こえて来る。

 俺は光に向かって歩き出す、そして。

 

 

 俺が目覚めると左腕の二の腕に鈍い痛みが走り、見てみるとこの方舟(アーク)を構成していた鉄骨が突き刺さっていて、血が流れているが、鉄骨が大きな血管や大切な神経を傷付けていなかったのだろう。激痛は走るが動かせないことはない。

 俺はジャバウォッグの機攻殻剣を右手でもち、アイリちゃんがいないことに気付き俺は急ぎ足で探す、しかし、すぐにアイリちゃんは見つかった。

 ドバル侯爵の部下が機竜を纏いエネルギーを伝達し、殺傷能力を上げたブレードを振り上げたその下にいた。

 俺はそれを見たとき頭の奥に砂嵐がおき、走馬灯の様に記憶がフラッシュバックする。

 

 それはさっき見た銀髪の男が薄紫の髪を持つ少女が尊厳を踏みにじられ無惨に殺される光景、その靄のかかった光景の靄が無くなりより鮮明にその光景。いや、記憶がよみがえる。

 そして再度光景が切り替わり、少年に何かの触手のようなものが突き刺さり何かの手術が終わる記憶。

 そしてその手術を受けている少年は俺だ。この手術の意味も知っている。

 俺は思い出した、なぜ俺はあの手術を受けたのかを、何をしようと俺は機竜を纏い続けたのかを。

 

 俺は即座にジャバウォッグを呼び出し、思念でジャバウォッグを纏わずに操作しブレードを振り上げていた、ドバル侯爵の部下の腕ごと装甲腕を切り裂く。

 血しぶきが斬られた断面から吹き出し、辺りに血を撒き散らす。

 腕を斬られたことが信じられないと言った様子のドバル侯爵の部下は激痛に悶え聞くに絶えない濁った悲鳴をあげる。

 俺はアイリへの驚異が一旦は無くなったためジャバウォッグを接続する。

 

『ようやく戻ったか、主よ』

 

 俺がジャバウォッグと接続をすると久しぶりにジャバウォッグの声を聞いた。

 

『そうだな、久しぶりだな』

 

 ああ、よろしく頼むぞジャバウォッグ。

 

 俺は壊竜鋭爪を右手に持ち、アイリのすぐそばにいたもう一人の部下の首を切り飛ばし、殺す。

 そのときにアイリちゃんの前に立ち死ぬところを見せないようにする。

 

「シオン...兄さん?」

 

 アイリちゃんの言葉に答えず、神装を発動させ、残りのドバル侯爵の部下四人に超重圧をかけ圧殺する。

 

「なぁ......!? 何をしているんですかっ!?」

 

 アイリちゃんが俺にそう問いかけるが何も言わない、俺は腰を抜かしているドバル侯爵の首に壊竜鋭爪の切っ先を突きつける。

 

「何をしようとした?」

 

「ひっ、ひぃぃぃっ!? まっ、待ってくれぇ!? 出来心だったんだ!」

 

 そうドバル侯爵は言うが、その一言が俺の何かを破壊した。

 

「てめぇは俺の大切な人を! アイリをそんな理由で殺そうとしたのかぁっ!?」

 

「ま、待ってくれ! 金はいくらでも......」

 

 それ以上を言う前に首を絶たれて絶命した。

 ドバル侯爵の首を絶ったのは侯爵と共にいた異国風の露出の多い衣装を身にまとった少女だ。

 その少女の身に纏う、特装型特有のリングと補助脚のついた鋭利なフォルムの機竜を解除し、俺の前にひざまずく。

 

「お久しぶりですわね? シオン兄様」

 

「ああ、久しぶりだな夜架」

 

 俺に親しく話しかけて来るこの少女は、切姫夜架。オルバート王国が帝国に潰されてから身を寄せさせて貰った古都国の王女で、人の心がないと言われ王位継承権を剥奪され、弟の懐刀として活躍していた少女だ。

 

「そしてそちらにいらっしゃるのはアイリ皇女殿下でいらっしゃますね?」

 

「え、ええ」

 

 アイリは夜架にそう問われ困惑しながらも答える。

すると夜架はアイリに近付き、

 

「でしたら貴女様のお兄様である、ルクス皇子がいらっしゃいますね?」

 

「っ! ......いいえ、兄さんはいません」

 

 アイリは嘘をつく、それに気付いているだろうが夜架は、そうですか。と呟き、それでは。と俺に言って何処かへと消えて行く。

 そして少ししてアイリは力なく座り込む。

 

「大丈夫かい? アイリちゃん」

 

「ええ、大丈夫です」

 

 アイリちゃんは相当疲れているようだが、気丈に振る舞っている。

 俺はそれをみて機竜を解除し、アイリちゃんを抱き締める。

 

「ごめんな、一人で怖い思いさせて」

 

 短い言葉だったがアイリちゃんの心を癒すことができたのだろうか?

 アイリちゃんは俺の胸に顔を埋めて泣き始める、俺はアイリちゃんの頭を撫でながらより強く抱き締めた。

 

 そして数分後、泣き止んだアイリちゃんの涙を拭き取り、俺は思い出したように左腕の二の腕に突き刺さっていた鉄骨を抜き取る。するとその傷口がみるみるうちに塞がって行く。

 やはり、と言うか体の再生能力だったりがはねあがっている。

 俺は血のついた鉄骨を投げ捨て、〈ジャバウォッグ〉を呼び出す。そしてそのまま接続し、竜声を発動させる。

 

『ノクトちゃん。聞こえてるかい?』

 

『シオンさん!? 無事だったんですね!』

 

 珍しくノクトちゃんは声を大きくして感情が読み取れる声だった。

 

『ああ、アイリちゃんも無事だ。今から九層に降りる階段を目指す』

 

『わかりました。皆さんにも伝えます』

 

 そうして通信を終える、そしてアイリちゃんに竜声で話したことを伝える。

 アイリちゃんもノクトちゃんと通信する手段があったらしいが俺が助けたときに壊れてしまったらしい。

 俺はアイリちゃんをお姫様だっこの形でアイリちゃんを抱き抱え、高い機動力を活かして素早く探索を進め下層に行くための階段を探す。と言ってもジャバウォッグの探知機能が複数ある機竜の反応をとらえているため、安全だろう。

 そして俺はアイリちゃんを抱き抱えて道を進みノクトちゃん達、はぐれた仲間達と合流した。が、ルクスとフィーアが外に戻ったようだ。理由は巨大な狼、オルトロスと言うらしい幻神獣を討伐するためだと言うことだ。

しかし、俺もとある問題に直面していた。それは、

 

「シオン、そう言えば貴方の左目水色だったわよね?」

 

「そう言えば、そうだな。シオン、お前の左目、緋色だったか?」

 

 俺の左目が緋色になっているらしい。

 俺はティルファーに手鏡を借りて見てみると左右の瞳の色が真逆になっていた。

 右目はいままで通り薄いきれいな水色だったが、左目は深く濃い緋色に変わっていた。

 

 しかし、俺はそれに違和感を覚えず、当たり前の様に感じていた。

 何故ならこの色が前からそうだったと言う記憶がある(・・・・・・・・・・・・・・・・)からだ。

 特に困ることはなく、逆にいままでうっすらとしか見えなかったエネルギーの流れがはっきりと見える。

 

 俺はティルファーに手鏡を返し大丈夫だと言うことを伝えて地上に戻ることを急ごうと言うと、全員が賛同し、さらにネイが次からはここに飛んでこれると言ったので、すぐに戻ることとなり、急いで地上に戻った。

 

 

 地上に戻った俺達はルクスとフィーアを探した。

 すぐにルクスとフィーアは見つかったが、ルクスはやけに暗く、フィーアは高熱を出していた。

 俺はルクスと二人きりになったときに聞いた、

 

「どうした? 何かあったんだろ?」

 

「シオン、ごめん。僕はフィルフィを守れなかった」

 

 突然返ってきた予想外の言葉に俺は思わず硬直した。

 

「守れなかった? どういうことだ?」

 

「フィルフィは半分が幻神獣と同化しているんだって」

 

まさかの爆弾に俺はさっき以上に硬直した。

 

 

 時間は少し遡り、ルクスはフィルフィと共に外に出たオルトロスを討伐したのだが、赤黒い斑点と金色に染まり真っ黒な瞳孔を開いたフィルフィに首を絞められていた。

 ルクスは動揺しながらもどうにかフィルフィの腕を振りほどこうとするが圧倒的な怪力に振りほどけずにいた。するとふっとフィルフィの怪力が無くなり、倒れこむ。

 ルクスは咳き込み、フィルフィを見るがフィルフィは力なく横たわっている。しかし、息はしており、高熱はあるが大丈夫だと安堵から息を吐いたとき、

 

「こいつぁ、お楽しみの最中だったかぁ?」

 

 後ろからかけられた悪意と殺意の籠った、嘲るような声。

 ルクスが後ろを振り返ると、そこには彼と同じ銀髪に灰色の瞳と青色の瞳を持つ少女。ヘイズがいた。

 ルクスは即座に機攻殻剣を引き抜きヘイズに向ける。

 するとヘイズは両手を上げおどけるようにして、

 

「おっと怖い怖い、そこの化け物女の命はオレ様が握ってんだぜ? わかったらさっさと剣をおろせエセ皇子」

 

「っ!」

 

 ルクスはヘイズが吐いた言葉に聞き逃せないものがありゆっくりと剣を降ろす。

 

「ふふふ、よくわかってんじゃねぇかよ」

 

 ルクスは何も言わずヘイズに対する警戒心を増しなからヘイズの話を聞く。

 

「俺はその化け物女の命を握ってんだ。そいつはなどう頑張っても後先みじけぇ、何でかって言うとな、そこの化け物女は『宿り木(ラスタトク)』と言った俺が操る終焉神獣(ラグナロク)の寄生を受けていてな」

 

 ヘイズは恐ろしいことを言う、ルクスは思わず顔をしかめ、警戒心をより強める。

 

「そこの化け物女は『宿り木(ラスタトク)』としての最大の禁忌を犯した。そいつは俺が操る終焉神獣(ラグナロク)のユグドラシルの命令を受け続けていた。お前を殺せって言う命令をな。

そして、それを拒否し続けたんだよそこの化け物女はな。その結果高熱だったり体の異常が起こったりしたんだよ」

 

 ヘイズの言葉に思い当たる節のあるルクスは思わず怒りを滲ませる。

 

「それにも限界が来て今に至ったってわけさ。ヒャハハハ、エセ皇子! お前のせいでこいつは苦しんでいたんだぜぇ!?」

 

 ヘイズの言葉がルクスの心に突き刺さる。思わずルクスはヘイズに機攻殻剣を向けるがヘイズは狂笑を浮かべ、

 

「エセ皇子が、調子にのってんじゃねぇぞ? わかったらさっさと剣をおろせよ」

 

 自分のしていることが無意味だとわかっているルクスは機攻殻剣をさげる。

 

「それに俺はお前にしてもらわないといけないからな、おっと拒否権はないぞ?」

 

「何をすればいい」

 

「わかりいいじゃねぇか。方舟(アーク)の最奥にいくためにな。てめぇに最下層の扉を開けてもらいたいんだよ」

 

 ルクスはその言葉の意味を理解しかねる。

 

「察しがわりぃな、お前が最下層まで行けるようになればいいんだよ」

 

 ルクスはヘイズが言おうとしていることを理解した。そしてヘイズは何処かへと消えて行った。

 

 

「と言う訳なんだよ」

 

 ルクスから聞いた話を理解した俺は、即座に答えを出す。

 

「なら、俺達はヘイズの企みまるごと叩き潰すだけだな」

 

「あ、あはは、シオン、なんだか変わったね」

 

 ルクスは苦笑する、俺はそれに対して特に考えることもなく、

 

「俺は変わってない、ただ戻っただけだよアーカディア」

 

 うん? とルクスは首を傾げるが俺は特に気にせず歩き出す。

 

 

 そして時間が進みその日の夜、俺は周りに黙って方舟(アーク)に潜入する。そして方舟(アーク)にいる幻神獣を片っ端から殲滅していく。痕を残さずこれから来るであろうレリィさんのために恐ろしい勢いで殲滅していく。

 そして俺は九層までたどり着く、

 

「あ、鍵の管理者(エクスファー)様」

 

「よう、ネイ。ここで少し待っていていいか?」

 

「はい、鍵の管理者(エクスファー)様と共に入れるなんて嬉しいことはありません!」

 

 これでも機械なんだな、何て無駄なことを考え、ネイと話しながら数十分待っていると、

 

「シオン!? 何でここに!?」

 

「シオン君? なぜかしら?」

 

 俺が待っていた、ルクスとレリィさんの二人と騎士団の皆がきた。

 

「いや、ルクスが話していた内容から今日の夜にでも行動を起こすんじゃないかと思ってな。待ってたんだよお膳立てをしてな」

 俺の言葉の意味を理解したのか、

 

「じゃあ道中で幻神獣がいなかったのは」

 

「もちろん俺が殺し尽くしたからな」

 

「あはは、シオンはそんなことしてたんだ」

 

 俺はゆっくりと立ち上がり、ルクスの胸に拳を付け、

 

「ルクス、さっさとヘイズの企みを叩き潰してフィルフィを助けるぞ」

 

「うん、もちろん!」

 

「それじゃあネイ、いいか?」

 

 俺はネイに確認するとうなずく、俺は最後の扉に手をかざす。

 

鍵の管理者(エクスファー)の要請を受託』

 

 辺りに機械のような作られた声が響くと扉が上にスライドする。

 俺達は最下層、十層に到達する。しかし、そこには思っていた宝物庫ではなく中心に向かってうっすらと丸くなっている闘技場のリングのようなものだった。

 

「ネイ、ここが十層であっているのよね? 記憶を取り戻したんでしょう?」

 

 エインがネイに問いかけると、ネイは今まで通りの笑みを浮かべ、

 

「ええ、取り戻しましたよ。そして思い出したんです。私のすべきことは、貴方達を一人残らず殺すことだと」

 

 そう言った瞬間、後ろの扉が降りてきて閉じ込められる。

 

「っ!? こい! ジャバウォッグ!」

 

 俺がそう叫び機攻殻剣を掲げると、俺の背後に恐怖を撒き散らす純白の装甲の神装機竜が出現し、即座に装甲が半分に割れ、俺の身を守る鎧となる。

 それと同時に上から〈ワイバーン〉型の無人機竜が上から三体降りて来る。

 俺はそれらの奇襲をさばきカウンターを繰り出すが、激しい光を出しながら普通のワイバーンとは格が違う、異次元の速さで首を狙ってくる。

 俺は驚きながらも素早く機攻殻剣に触れクイックドロウを発動させ弾く。

 

「あれを防ぎますか鍵の管理者(エクスファー)様!」

 

 驚いた様子のネイはさらに操作を洗練させていくが、それより前に圧倒的な重力によって押し潰される。

 そして俺は押し潰された機竜に再度斬りつけ、動かなくなっているのを確認する。

 そして俺が〈ジャバウォッグ〉を解除すると背後から二つの足音がしてきた。

 俺は振り向くとそこには、

 

「よぉ、エセ皇子今日ぶりだな?」

 

「ヘイズ」

 

 一つはルクスと同じ銀髪と灰の右目、そして青の左目を持つ、黒いコートを羽織った少女。

 二つ目は顔の見えないヘイズと同じぐらいの背の少女。

 

「てめぇが、ヘイズ、か...」

 

 俺はそのヘイズの顔を見て、何かが頭の奥でよみがえり再生される。

 それは俺が銀髪の少女達数名と何処かにいき、何かを約束する記憶。

 

「ヘイズ? 俺は...あぁっ! わからん!」

 

 俺は頭をかき、機攻殻剣を引き抜く、

 

「俺は大切な人を助ける為に敵を叩き潰す! それだけだっ!」

 

 俺は壊竜鋭爪を左装甲腕で持ち、ヘイズを殺さんと一気に接近するが、その間にもう一人の黒コートが入り込む。

 

「邪魔だっ!?」

 

 しかしその黒コートの下の顔に俺は驚き、その間に黒コートの正拳突きを綺麗にもらう。

 障壁に阻まれ衝撃だけが俺の体に伝わり、大きく吹き飛ばされる。

 

「おい、何でだ、何でここにいるっ! フィーア!!」

 

 俺は叫ぶ、黒コートに、フィルフィに向かって叫ぶ。

 さっきの攻撃によって生じた風圧が黒コートのフードをはがし、ピンク色の髪と赤黒い斑点の浮かんだ顔が露になる。

 

「ひゃははははっ!! 俺がそいつだけに集中するように指示を出せばすぐに操れるんだよ!」

 

 ヘイズは片手で角笛を弄びながら狂笑を浮かべ、種明かしをする。

 俺がヘイズに向かってダガーを投げつけ、世界喰(オムニスゲイル)を発動させる。転移させ、複数の方向からヘイズに向かって飛んで行くが謎の枝がすべてを弾く。

 俺がヘイズを殺そうと再度ダガーを持ったその時ガクンと機竜の出力が大幅に下がる。

 

『特殊な神装だ、おそらくフィルフィのものだろう』

 

 了解、どうにか抵抗(レジスト)できないか?

 

『少ししてみよう。ただほぼ無理だろう』

 

 すまない、無理を言って

 

 俺は素早く〈ジャバウォッグ〉を建て直し、背後を見る、そこにはフィーアが紫色の神装機竜を見に纏い、セリス先輩達と戦っていた。

 しかし、フィーアの神装によって動きが鈍り、無力化を出来ずにいた。

 俺は俺で、機竜の接続を切り素早く枝の背後に周りこみ、ヘイズに機攻殻剣で斬りかかるも、避けられる。

 が、素早く蹴りに繋げ、手で弄んでいた角笛を蹴り飛ばす。

 

「ってぇな! この糞どもが!」

 

 ヘイズは激昂し、機攻殻剣を振るが、俺は素早く離脱し角笛を回収し一旦ルクス達の元に戻る。

 そこにはくたりと横たわったフィーアがいた。

 

「大丈夫だったのか?」

 

「はい、命令の上書きができました」

 

「なら、これはいらないな」

 

 アイリちゃんから無事にフィーアを助けることができたときき、俺は手にあった角笛を粉々に砕く。

 

「てめぇぇ! 俺様をむげにしやがってぇ!!」

 

 それを見たヘイズが叫び、俺達がいたドームの中心部に黒い影が現れる。

 

「ちっ!」

 

 俺は素早く〈ジャバウォッグ〉を呼び出し、その状態で神装を発動。全員を離脱させる。

 そして俺達が離脱した後にさっきまでいた場所に巨大な肉の木が落ちてきた。

 

 

 イィィィィエォォォォォォ!!!

 

 

 その巨大な肉の木から人が使う言葉では表せない絶叫を響かせ、大きく窪んだ顔のようなものが現れる。

 

「そいつはユグドラシル! 俺が操る終焉神獣で最強の幻神獣だ!」

 

 ヘイズはユグドラシルの枝に守られながらもそう叫ぶ。

 それと同時に恐ろしい勢いで枝が襲いかかってくる。

俺は壊竜鋭爪を手に枝を反らし切り裂き攻撃をさばくが、変な感覚を覚える。

 

「っ! こいつ機竜と同じことをできるぞ!」

 

 よくみると幹の各所にフォースコアが埋まっており、ブレードと同じ輝きをまとっている。

 俺がそう叫び、一旦距離を取るとルクスは無人機竜と戦っており、セリス先輩達がうごけそうだった。

 

「セリス先輩! 手伝ってもらえますかっ!」

 

「っ!わかりましたっ!」

 

「私達も手伝うわ」

 

 結果ルクスを除く神装機竜の使い手四人でユグドラシルと戦うことになった。

 しかし、最初は慣れずに攻撃があたったりしたが、徐々に慣れ始め、

 

「なんだ、期待外れだ」

 

 リーシャのその声を皮切りに俺達は一気に攻勢に回る。

 俺とセリス先輩で枝を反らし、斬り、貫き、燃やす。

その間にリーシャとエインが遠距離攻撃でフォースコアを砕き、弱体化させていく。

 そして、

 

星光爆破(スターライト・ゼロ)

 

 セリス先輩の纏う機竜(リントヴルム)の肩に装着された砲身から光球が放出され、窪んだ口のような部分に入り、内部から破壊し尽くす。

 そうして星光爆破(スターライト・ゼロ)の光がおさまった後には丸い断面を残したユグドラシルが残っていた。

 

「大したことないな」

 

「ええ、呆気ないわね」

 

「油断しないでください。まだ核の破壊を確認してません」

 

 セリス先輩がそう言った時、小さな声でヘイズが、

 

「あーあ」

 

 何らかの意味を持った呟き、それに注意が向いた瞬間、

 

 ゴバァッ!!!

 

 恐ろしい勢いで丸く抉れた幹から枝が溢れ出す。

 俺は素早く重力による擬似的な結界を張るが、軽くしなって枝は耐えきり、高速で枝を伸ばし襲ってくる。

 俺は素早く壊竜鋭爪を振るい枝を切り裂くが硬質な感触をえる。

 

「こいつは俺達の攻撃に耐性を持っている! おそらく、高速で耐性を取得するタイプの幻神獣だ!」

 

 俺が大声で全体に伝えると、ヘイズが笑いながら、

 

「ああそうだ! ありがとうよ! ユグドラシルをより強くしてくれてよ!」

 

 ヘイズは笑い、手に赤い宝石を持ち、それを強く握りしめる。

 

「ぐっ!」

 

 ルクスはルクスで、激しい光を放つ無人機竜と戦っており、加勢は期待できない。

 

「ははは! 所詮お前達はその程度なんだよっ! わかったらさっさと消えろ!エセ皇子ども!!」

 

 ヘイズの言葉に反応したかのようにさっきよりも速い枝がセリス先輩とエイン、そしてリーシャに直撃し、吹き飛ばされ、機竜を解除させられる。

 

「後はお前だけかよ、さっさと消えろよ」

 

 そういい、ヘイズは手に持つ宝石を握り締める、すると恐ろしい勢いで枝が展開され、襲ってくる。

 俺はそれを無視し、極限まで集中を高める。

 そして枝が後少しで到達する、その瞬間、俺は壊竜鋭爪を振り下ろす。

 

 そして世界が喰われる。

 

 直線上にあった枝は消失し、本体の六割を抉りとっておさまった究極の奥義。

 

「次はどうだ? ヘイズ」

 

「っ! 調子に乗るんじゃねぇ! エセ皇子の仲間の分際でっ!!」

 

 しかし、即座に再生したユグドラシルの枝が襲いかかる。

 俺は転移を多用し、反撃も入れながら逃げに徹し始める、すでに硬質な感触が強まっているからだ。

 俺の視界の端でリーシャが〈キメラティックワイバーン〉を接続していた。何かしらの策があるんだろう。俺はこのまま注意を引き続ける。

 

「エセ皇子とお前だけじゃ何も守れねぇんだよっ!!」

 

 ヘイズは、既に機竜を接続できない者が増え俺とルクスだけになっていることを見ていったのだろうか?

 しかし、俺にとってそれは聞き捨てならない。俺は大切な人達を守る為にあれ(・・)を見に宿したのだから。

 

「ちがう、よ。ルーちゃんは私達を守る為にここにきた。守れていない訳じゃない」

 

 フィーアがそう言ったことに俺は思わず苦笑する。ルクスはどうかと見てみれば、機竜を操作している。俺も見たことのあるあれ(・・)を使用するため。

 

「悪いがヘイズ! 俺達は守る為にお前の罠にかかった!」

 

 いくぜ? 〈ジャバウォッグ〉!

 

『もちろんだ、主よ』

 

 俺は思い出した限界突破(オーバーリミット)のコードの操作を高速で行う、かかった時間は五秒。

 そして、ルクスも同じタイミングでコードの解除を出来たようだ。

 

「「限界突破(オーバーリミット)開始(オン)!!!」」

 

 漆黒の装甲と、純白の装甲から激しい光が溢れだし、さらなる装甲が追加される。

 ルクスの〈バハムート〉は今までの威厳ある装甲ではなく、鋭利なフォルムに攻撃性を極限まで引き出した恐ろしい装甲に変化し、暴君の本性を現している。

 俺の〈ジャバウォッグ〉は恐怖を与える今までの装甲ではなく、畏怖の念を敵対者に与える、神々しささえ覚えさせるような綺麗な装甲に変化し、絶対なる怪物の姿を真に表した。

 

「いくぜ? ヘイズ」

 

 俺はルクスが無人機竜と戦っている間に全力で斬り結ぶ。

 高速で放たれる枝を切り裂き、転移し、重力で押し潰し、少しずつ成長させていく、俺の技術を奪わせて。

 さらに速く、禍々しく変化した枝は、すべてを貫くような鋭さの枝。視界すべてを多い尽くすような枝。叩き潰さんと巨大な鎚のような形をとる枝。傷を広げ切り裂かんとする鋸のような枝。

 すべてを避け、反らし、転移し、避け続ける。

 

「ごめん、遅くなった」

 

「いいや。大丈夫だ」

 

 俺とルクスは短い言葉のやり取りで、次に何をするのかを決める。

 俺とルクスは同時にユグドラシルに接近する。複数に別れた枝が襲いかかるが、クイックドロウで切り裂き、怯んだタイミングで転移し、枝を回避し、本体である幹に攻撃と抑制の真逆の動作から繰り出されるルクスの奥義の一つ、そして圧縮された衝撃を放つ、俺の奥義の一つ、それぞれがユグドラシルの幹を抉る。

 そして俺達は抉れた幹に飛び込み、肉体操作と精神操作を掛け合わせて動きを繋ぎ続けるルクスの奥義。エンドアクションを二人で繰り出し、さらに抉り、核まで届く。

 と思ったその時、横から加わった衝撃によって吹き飛ばされ、幹が再生する。

 こうなるともはや勝てるかどうかギリギリになる。

 

「ひゃははははっ! どう頑張っても貴様らじゃ勝てねぇんだよ! 最強の幻神獣、ユグドラシルにはなぁ!!」

 

 ヘイズが狂笑を浮かべユグドラシルの窪んだ顔のような部分に穴が開く。

 

「ルクス、次で決めるぞ?」

 

「もちろん」

 

 ルクスと俺は素早く作戦を組み立て、俺が接近する、

ユグドラシルは枝を伸ばすが、俺は素早く神装を発動させ、空間ごと壊竜鋭爪で切り裂く。

 その間にルクスは神装、『暴食(リロード・オン・ファイア)』を発動させる。俺はそれにあわせて神装を重ねる。

 

「今さら神装を使おうと意味がねぇんだよ!!」

 

 ヘイズが叫び、それに答えるようにして、ユグドラシルの窪んだ穴から銀色の角のようなものが見える。

 そしてそれは斬りかかったルクスに向かって一気に伸びる。

 

「使ってやるといったなヘイズ」

 

「なら、使える物は最大限に使うべきだぜ?」

 

 そして角がルクスの構える大剣に当たったとき、角はへし折れ、ユグドラシルの本体である幹に罅が入る。

 

「なっ! 何故だ!?」

 

 ヘイズは叫ぶが、時既に遅し。

 ユグドラシルの全身に入った罅は加速度的に広がり、崩壊する。

 

「ヘイズ」

 

 俺は壊竜鋭爪をヘイズに突きつける。

 

「貴様、っ!? シオン?」

 

 俺の名前を呼ぶヘイズの表情は今までのような狂笑ではなく、年端もいかない少女の表情で、俺はその隙に強引に赤い宝石を転移させて奪い取る。

 

「なっ!? 返せ!!」

 

 ヘイズの表情は狂笑に戻り、怒りにその表情を染めて機攻殻剣で、斬りかかって来るが一気にさがり、その途中で宝石を砕く。

 

「貴様ぁ!!!」

 

 ヘイズは俺に殺気と怨嗟を絡み合わせた視線を向けるが、

 

「すまないが、ここまでにしてもらうぞ? 第三皇女よ」

 

 上から響いてきた声に遮られる。

 そこには侍女姿の美女と、俺とルクスの怨敵であるアーカディア帝国の第一皇子。

 

「フギル・アーカディア!!」

 

 俺はそいつを睨む。

 

「悪いが今回は争いに来たわけでは無いのでな」

 

「ま、まだだ! 俺の部下をこの近くに!!」

 

 ヘイズがフギルに食らいつくが、

 

「愚弟の意図を見抜けなかった時点でもう無理だ。そこの愚弟は何も恐れる最弱の敵ではないからな」

 

 嘲るように、しかし、称賛するように笑う。

 フギルはヘイズを捕まえると、ドームの上に空いた穴から何処かへと消えていった。

 俺はその直後に倒れたルクスをおぶり、方舟(アーク)を出た。

 ネイは方舟(アーク)に残ったらしい。

 そして俺達は学園に帰ることにした。

 

「お兄」

 

 その道中、船で戻っていたときだ。

 夜風に当たるため、外に出ていた俺は、後ろからかけられた声に振り替える。

 

「どうしたフィーア?」

 

「ありがとうって、言いたかったから」

 

「そうか、偉いな」

 

 俺は笑い、フィーアの頭を撫でる、フィーアは頭を撫でられて嬉しそうにしながら、俺に抱きついてくる。

 

「どうした?」

 

「ぎゅってしたくなったから」

 

「そうか、いくらでもいいぞ」

 

 俺はフィーアの頭を撫で、優しく包容する。

そして合宿は終わる。

 




こんにちは、昇華です。
ようやく小説版では四巻目まで終わったところですが、これからも読んでいただけるとありがたいです。
さて、それからですが。少し番外編というか、少しした息抜き編のような物を書きたいと思っていますので、アンケートでもしようかと思っています。
暇でしたら目を通していただきたいです。
それではこれぐらいで感想や評価を送っていただけたらありがたいです。
では次の作品で、また会いましょう。
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