「おっし裕太、ヘルメットしたかね?」
「うん!」
「おっしゃ行くかぁ!」
「おー!」
ハンドルを回してエンジンを蒸かし公道を走っていく、2人乗りは大丈夫なバイクだからまぁ良いとしよう。何が良いのかは俺自身も良く分かってない。4月9日の今は裕太を学校に送っているところだ。
こちらもそろそろ大学が始まるが、準備は既に終わってるし何も問題は無い。にしてもこの辺りは本当に静かで過ごしやすいな、いっその事移住も良かったり……せめて妖怪からは少し遠くから見守る感じの関係性でありたいんだけどなぁ。
ほら所々変なの見える、やだやだ本当にもー。妖怪じゃなくて幽霊なんだけどさ、それでも見ているこちら側としては不気味に思えて……思えて……やばいこれを普段通りと思ってる自分が居るんだが。
裕太の通う学校の校門前に到着し降りて、裕太からヘルメットを返してもらい裕太を降ろす。
「裕太、学校で何かあったら言いよ。あ、また迎えに来るきね。終わったら電話しいよ。」
「うん! 行ってきまーす!」
「行ってらっしゃい。」
ふぅー……こうして送り迎えするのも良いもんだ。裕太の良い顔が見れて満足満足。
『ご主人の周りに亡霊共が集まってくるのも知れて満足満足。』
「おい馬鹿止めぃ、現実逃避してたのに戻すな。」
『仕方なかろう。実際危険な目に逢いそうなのに、警告を出さぬものは居らんよ。』
「あー聞きとう無かった。ちょっと撒くかね。」
『おー。』
いそいそとバイクに乗って時速は守って走りましょう。それで俺を見ている亡霊どもは追いつけなくなりますので……いやホント誰に言ってんの俺は。街並みは大体覚えたからちょっとお出かけって感じで行けば楽しめるな。
何かゴミ漁ってる変なの居たけど、気にしない!気にしないったら気にしない!
『さっきの半妖じゃったな。喜べご主人、同類が居ったぞ。』
「やったねタエちゃ……って乗らせるな阿呆。」
『乗らんのかいご主人、そこは波に乗るみたくノリノリで乗らんかい。』
「ヤダわこんちくしょう!」
信号交差点で止まる。通勤中の街並み、交通量の多い車が大体見かける幽霊や妖怪エトセトラが加えられて普段の街並みが微妙な紫のモヤで不快な色合いで装飾されてマース、やだよこんな街並み。
頭が痛くなってくるわこんなん、普通の街かと思ったら妖怪絡みのきな臭いもんがプンプンしてるじゃねぇか。そして一番奇妙なのが……目に見えて分かるぐらい妖力が、いんや邪気か。1本線みたく伸びてる、コイツを追ってみるか。
「
『合点承知之助、行くかのぉ。』
古臭い受け答えをしつつこの漂ってる邪気を追跡してみる。追いかけてみるが何処まで続いてるのか分からなくなってくるものの、必ず原因に辿り着くのは確証していた。そうして暫く走り、中学校の最寄りの公園に着いた。
入口付近に停めてヘルメットを脱ぎ抱えて公園を探索する。親子で遊んでいるところを他所に俺は周囲や上を見るが……痕跡があるだけで何も分からなかった。
『逃げたかもしれんな。いんや若しくは、相手にもされんかったとかの。』
「まぁ……何も無けりゃ良いんじゃけどの。そっちの方がありがたい。」
『違いない。』
ただこの時俺が呟いた願望は、叶わぬものとなっていくことには何者であれ気付きはしなかった。