もしモンストの堕天使が銀さんみたいな感じだったら 作:ネルゲル
木刀にも特別な力がある設定です
「…ルシファーが反逆ですか?」
ウリエルはルシファーが反逆を企てているとケテルからの報告に信じられない気持ちがあるが、ルシファーが見せたあの表情が頭から離れない、
「何も根拠がなくて言っているわけではありませんよ」
彼女の心境を見抜くようにケテルは更に信じたくない言葉を発した。
「懐にオーブを隠しているとの情報が入っています」
「!?そんな…ルシファーがっ!?何かの間違いではっ!!」
この世界で最も重要であるオーブを盗む事は重罪だと。ルシファーもよく知っているはずだ。
これには流石のウリエルでも彼女がそんな事をする筈がないと信じている。
「忘れたわけではないでしょう…オーブを持ち出され、この天界が滅びかけた事を」
ケテルは険しい顔をして
嘗て、魔界からの者達から攻め込まれて応戦していた所に、一体の体の中にオーブが埋め込まれており、天使諸共、消滅しかけた時の事を。
ウリエルも、他の大天使長達も知っている。
「…ならば、呼び出された理由は私に、ルシファーをケテル様の所に連れて来い。と」
「親友である、貴方ならば」
ケテルはコクリと頷く。
側近が《天使殺しの剣》をウリエルに渡そうと近づく。
「分かりました。ですが!それはルシファーの無実を晴らす為にです。それはいりません!」
親友であるルシファーを刃を向けるなど、彼女には到底出来ない。
受け取らない彼女に側近はこう言う。
「万が一、の為なので…我々もコレを使わなくても済むのならと、深く…心から願っています」
万が一と言う言葉にウリエルは更に顔をしかめたが
「それに、ルシファーさんの実力もそうですが…あの木刀は我々にとっても脅威なのです」
ケテルがルシファーが持っている木刀を警戒しているのだ。
ウリエルにとってあの、何でも斬れる摩訶不思議な木刀について彼が何か知っていると確信した。
「…あれは一体、何なんです?本当に只の木刀なんですか?」
ケテルは一息ついてから話し始める。
「実は、ルシファーさんには《光をもたらす者》の他に呼ばれてる名があります。それはルシファーさんが隊長を務めいていた頃…部下が全滅をしたのを目の当たりにし、たった一人で敵の本地へ突撃して…
そこに居る者達全てを木刀で葬ったのです」
初めてケテルから聞かされた事実に戸惑いを隠せない。
「我々、天聖達が到着した時に見た者は“金髪の髪に返り血を浴びながら切り倒す姿はまるで夜叉(おに)のようだ”と。それに、止めに入った私にも狂ったように攻撃した時は本当に恐ろしかった。あの状態の、仲間を失って激情していた彼女は、天聖達でも手こずる程に厄介なのです」
また何が起こるかわからない。あの時のルシファーさんを目覚めさせてはいけない。
最後にそう付けて、ケテルは話を止めた。
ウリエルは言葉を失った。
彼女が知っているルシファーは面倒くさがりで、不真面目で、甘いものには目がない。
それに、やる時はやり、誰よりも優しく、誰よりも仲間を想って大切にしている彼女の姿でしか、見た時がない。そんな暴走したルシファーを想像できなかった。
「非公開で我々は彼女をこう呼んでいます」
「《金色の夜叉姫》と」
金色の夜叉姫。
初めて知ったルシファーの異名にウリエルはグッと拳に力を入れた。
「もし…もし、ルシファーが反逆を実行したら…どうなりますか?」
ウリエルは彼女が本当に天界を捨てて攻めてきたらどうなるか?
ルシファー自身どうなるのかを含めた想いで聞いた。
それもケテルにはわかっていたみたいだ。
「今度は我々でも手に負えなければ、天界は滅ぶでしょう。それを止める事が出来たとしても…ルシファーさんは反逆者として処分される事になる」
勝っても負けてもウリエルにとっては最悪な結果でしかならない。
負ければ天界は神諸共に死ぬ。
勝てばルシファーが死ぬ。どちらにせよ、そんな結果は耐えられない。
意を決して側近から剣を取り、ケテルに宣言する。
「必ず、ルシファーの無実を晴らして見せます」
だからこそ、親友を信じたい。その想いが更に強く出たウリエルだった。
「我々が何故、あの木刀を恐れているのかを教えましょう」
だが、飛び出す前にケテルからルシファーの木刀の本当の力を知ってしまう。
そして、ルシファーを捜しに飛び回る際に彼女行動がわかってしまう。
彼女が帰る前にオーブの保管方法などを聞いていたり、何やら調べ物をしているとの情報を耳にして、ますます不安を募らせる。
(ルシファー……)
嫌な汗を垂らしながら、ルシファーの部屋へと飛んでいく。
そんなウリエルを見ていた天使がいたとは知らずに。
「……ウリエルさん?」
ベランダでラファエル、ミカエルの二人と過ごしていたガブリエルはウリエルが険しい顔で急いで飛んでいるのを見つけた。
彼女が見る方向に二人も見た。
またいつも通りの事だと思い
「またルシ君が何かしてやらかしたんだろ」
ミカエルが言う。
だが、ウリエルの初めてみる表情に不安を募らせ
「何も起こらないといいんですが…」
ガブリエルはそう呟いた。
「……で?お前らは、いつ帰んの?」
遅い時間になっているにもかかわらずに居座っている二人に、ルシファーは頭を掻きながら呆れていた。
「む〜。ルシお姉ちゃんは私達がいるのは嫌なの?」
「…そうなの?ルシ姉」
ルシファーの態度に悲しそうに目に涙を滲ませながら見つめる二人の視線が突き刺さる。
「…別にそういうつもりで言ったわけじゃあ……わかった!わかったからっ!!気が済むまで居ていいからっ!!そんな目で私を見つめないで!!!」
あまりにも寂しそうな目に耐えられなかったルシファーは折れた。
「「やったー!!あっ、ハモっちゃった」」
さっきまでの涙目が嘘のように消えて喜んでいるサンダルフォンとメタトロンに演技かよっ…とボソっと呟いて笑った。
「そういえば帰り遅かったみたいだけど?」
サンダルフォンがルシファーに尋ねる。
「まぁ……準備だよ。準備」
ルシファーの準備という言葉に、成る程と頷いた。
すると、ベランダから
『ルシファー?いないの?入るよ?』
ウリエルの声が聞こえた。
「……どんだけ人ん家に集まるのが好きなんだ?」
その声に険しい声で呟くルシファー。
「お前らはここにいろ。絶対に出てくるなよ」
「う、うん…なの」
「ホントに言わなくていいの?」
心配する二人に優しく笑う。
「いいんだよ。お前らがいればそれで」
二人を宥めて、ウリエルの元へ行くと白い箱を持って中身を確認しようとしていた。
「夜遅くに不法侵入して泥棒ですかぁ?コノヤロー」
「っ!?」
ウリエルはルシファーの声にピクッとしながら反応する。
「何の用ですかぁ?ケテルにでも何か言われたか?」
「ルシファー…あのね?」
図星を突かれたのか、言いづらそうにしているウリエルに対してルシファーは溜め息を吐く。
「まさか、お前にまで疑われてるとはねぇ……」
面倒そうに見つめてくる彼女にウリエルの中で不安が大きくなる。
「わかっているのなら…どうしていつも通りなの?この箱は一体、何が入っているの?」
「なら、開けてみろよ?お前らが思っているようなもんが入っているといいな?」
真面目に聞いているのにニヤニヤしながら答えるルシファー。
ウリエルは彼女の言う通りにし、白い箱を開けると
「……オルゴール?」
綺麗な音色で人形がクルクルと回っているオルゴールだった。
「あーあ。せっかくサプライズでお前に渡すつもりだったんけど……台無しだな。こりゃ」
やれやれ、とわざとらしくするルシファーにウリエルはまさか彼女からのプレゼントされるとは思わなかった。
「どうしたの?急に」
「アレだよ…アレ。いっつも、ウリエルには迷惑かけてるからな。ちょっとした詫びだよ…。まぁそんなんで詫びになってるかはわからんがな」
彼女が少し申し訳なさそうにしてるのがおかしいのか、クスっと笑って首を振った。
「…ううん。まさかルシファーはそんな事するなんて思わなかったから。ありがとう…大切にするね」
本当に嬉しそうにする姿を見て、ルシファーは恥ずかしいせいか、こそばゆい気持ちになった。
「それでね…今から一緒にケテル様の所に行こう?貴方が無実だと言うことを証明しましょう?」
「あーわかったよ。けど、明日でいいか?なんか疲れたのか怠くてさ」
断れそうにないな、と思いそう答えた。
最も、ここに二人を残して置くのもマズイのが一番だが、ウリエルはそんな事は知らない。
自分以外の誰か居るなんで思ってもいないだろうから。
「約束だよ?じゃあ…コレは貰っていくね」
明日行く事を約束し、オルゴールを大切そうに持って帰ろうとするが
「待て。それも纏めて明日渡すから、置いて行ってくれない?」
ルシファーに止められ、オルゴールは置いていけと言った。
ウリエルは不思議に思った。
「ちょっとそれ、調子悪くてさ。明日までには完璧にした状態で渡したいんだよ」
「そうなの?…綺麗な音色だと思うけど…」
何もおかしくないオルゴールだと思っていると、ルシファーが少し雰囲気を変えて近づいてきた。
さっきまでの穏やかなものから一変、険しい表情でこっちにきている事に怖いと感じた。
「ル、ルシファー…?急に怖い顔して、変…だよ?」
「何も変じゃないだろ?とにかく渡せば済む話だ」
ジリジリと迫られ、ルシファーの手が近づいた時に手を滑らせたのかオルゴールを床に落としてしまった。
その反動で箱が開いて綺麗な音色が響く。
「ごめんね!ルシファー……っ!?」
ウリエルは慌てて拾おうとしたが、箱の中の隙間から見覚えのある光が輝いているのが見えた。
その中身はやはり、オーブそのものだった。
「バレちまったのは仕方ないか。痛い目に遭いたくないなら、大人しく返してもらおうか」
ウリエルが見たものは
両手に紫の紫電を纏い、戦闘態勢に入ったルシファーの姿が目に映った。