もしモンストの堕天使が銀さんみたいな感じだったら   作:ネルゲル

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第五話〜軽い気持ちで他人の過去を見るもんじゃない①〜

煉獄。

 

石を積み立て城の様な建物を造ろうと地道な作業をしている黒い毛だまのような集団、クロッチという種族がいた。

 

その中で一回り大きいクロッチがいる。

 

キング・クロッチ。集団をまとめ上げる長だ。

 

「積み重ねて五百年…ついに夢を果たす時かきたっチ!!」

 

「「「チーっ!!!」」」

 

その一言に集団も歓喜に包まれる。

 

キング・クロッチは蒼く光る宝石のような物を一番上の空洞に嵌めると光輝き、れっきとした城。キング・クロッチ城が完成した。

 

より歓喜が増し、全体が嬉し涙に包まれる。

 

突然、悲劇は起こる。上空から小型飛行機が真っ逆様に落下してきたのだ。城に向かって。

 

「駄目だっチー!!こっちに来るなっチ!!」

 

それも敵わず無残にも城にぶつかり、崩壊した。

 

間一髪避けたキング・クロッチはガックリと肩を落とした。

 

落下した飛行機から出てきたのはうつ伏せの金髪の女性と

 

「これは!?オーブだっチ!!!」

 

虹色の玉であるオーブが転がっていた。クロッチ達も悲鳴を上げた。

 

とりあえず顔を見る為に仰向けにする。

 

「こいつ、大天使長じゃないっチか?名前は…忘れたっチ」

 

一匹がそう言うとキング・クロッチは考えた。

 

オーブを持ってこっちに来たと言う事は何か悪い事をし、追われて逃げてきたと言う筋書きが頭に浮かんだ。

 

ならば、こいつの心を除けば何か分かるかもしれないと思った。

 

「シンクロっチー!!」

 

思い立ったが期日。王にしかできない芸統な技を使い、魂を半透明化した自身に預け、女性の身体に入って行こうとすると三匹のオマケが付いてきた。今回は仕方なく連れて行く事にした。

 

 

 

・・・

 

任務で暴れている魔物の討伐に煉獄に来ていたサンダルフォンとメタトロンの二人は窮地に立たされていた。

 

引き連れていた仲間達も殆どがやられ、相棒の二人も疲弊していた。

 

その周りを魔物達は囲んでいる。

 

「ハァ…ハァ…これはヤバイかも…」

 

「こうなったら…契約して、最大出力で…」

 

「だ、ダメだよ!そんなことしたらメタお姉ちゃん…死んじゃうよ!?」

 

最後の手段としてメタトロンは相棒のヨエルとの契約で最大限に力を得ようとするが、サンダルフォンは泣きながら止める。

 

「これで、サンちゃんを守れるなら…」

 

「嫌だよ!私から居なくならないでよ…!ずっと一緒にいたいの!!!」

 

自己犠牲を厭わない姉に妹は大声で叫んだ。

 

「生きる時も一緒。死ぬ時も一緒…だよ?」

 

メタお姉ちゃんと一緒なら何も怖くない。

 

ニコリと笑う妹にメタトロンは漸く馬鹿な考えをしていた事を自覚した。

 

「グォオオオオオ!!!!!!」

 

魔物達がトドメを刺そうとしている。だが、もう抵抗しようとはしない。

 

二人一緒なら、死んでも怖くない。

 

姉妹はその覚悟で目を瞑る。

 

「待て待て待てぇえええええええええええええ!!!!!」

 

誰かの叫び声とザシュっと斬られた音が聞こえた。

 

「「…え?」」

 

斬られたのは姉妹でも、二人の小さな相棒でもない。

 

「うぉおおおおおおおおお!!!!!!!」

 

目に映ったのは。

 

背中に白い六枚の翼を広げ

 

金色の長い髪を靡かせ

 

自由自在に木刀を振り

 

魔物達を真剣を使ったかのように

 

斬り伏せている

 

美しい女性の姿だった。その女性は姉妹と小さな相棒を守るように魔物に立ち塞がる。

 

「ったく。ウリエルが働けってうるさくてサボる為に下に降りて来たってーのに…こっちの方が面倒な事起きてんじゃないか」

 

こんなんなってるって聞いてないぞ。

 

はぁ…とため息を吐いた後、首だけサンダルフォン達に向けた。

 

「お嬢さん達、大丈夫…じゃなさそうだな。ギリギリだったな」

 

それでも無事である事にホッとしたように紫色をした瞳の目を細めた。

 

その容姿に気づいたのはメタトロン。

 

「貴方は…もしかして」

 

「グァアああああああああっっっ!!!!」

 

その名を言おうとしたところで、生き残りが仲間をやられたことに腹が立ったらしい。女性に向かって突進してきた。

 

「まぁ、なんだ…自己紹介は後だ。すぐに終わるから待ってろ」

 

そう言って彼女は宣言通りに直ぐに終わらせた。

 

「す、凄い……!」

 

サンダルフォンは魔物達をたった一人で圧倒的な実力差を見せつけて全滅させた彼女に驚きを隠せない。

 

メタトロンは納得したかのように冷静に見つめた。

 

「あーぁ。ボーナスでも出ないと割にあわないぞこりゃあ。…その前に勝手な事をしたって怒られるな」

 

うわぁ…とテンションが下がった彼女は振り向き、姉妹に近づいた。

 

「ありがとうなの…ルシファー先輩」※この小説では新天使達は各属性の旧天使達の後輩になってます。

 

「……よく見たら、後輩じゃん。メタちゃんよぉ」

 

名前を当てられて目を見開いたが、彼女の姿を見て思い出したルシファー。

 

「え!?貴方がルシファーさん!?」

 

キラキラと目を輝かせるサンダルフォンに若干、引いた。

 

「お、おぉ。オマエがサンダルフォンか。メタちゃんからよーく聞いてんぞ。大変だなぁ?こいつ、滅茶苦茶シスコムガッ!!!」

 

「ル、ルシファー先輩!余計な事言わないなのっ!!」

 

ルシファーが言い切る前に慌てて口を押さえて冷や汗を流すメタトロンにサンダルフォンは首を傾げた。

 

ルシファーが苦しそうな表情をしているのに気づき

 

「あの、メタお姉ちゃん…ルシファーさん離してあげて…」

 

姉に困ったように言うと、ハッとしたように手を離す。

 

「っっっはぁっ!!オマっ押し付けんの強すぎ!!窒息するわコノヤロー!!」

 

「ご、ごめんなさいなの…」

 

少しシュン、としたメタトロンにルシファーは

 

(しっかりしてるようで抜けてるところあっからなぁ。この子)

 

「オマエらしいとこは変わってなくて何よりだ」

 

彼女の頭を優しく撫でて微笑んだ。

 

「エリヤ達、空気リヤね」

 

「そうエル…でもルシちゃん久しぶりエル!!助けてくれてありがとうエル!!」

 

小さな相棒であるエリヤとヨエルは空気になっている雰囲気に苦笑いし、ヨエルはメタトロンの相棒なのでルシファーと面識がある。

 

「うわっ。急に飛びつくなよ…」

 

お礼と一緒に肩に飛びついた。

 

ビックリしながらも嬉しそうに引っ付く子供のような彼を受け入れた。

 

主であるメタトロンは羨ましそうに見ていた。

 

そこにゴォオオオ!!!と空から一機の大きな飛空船が姿を見せた。

 

「げっ…」

 

それを見たルシファーは嫌そうにする。地に着陸して中から下級天使達が出てくる。

 

「ルシファー様ぁっ!!貴方は大天使長である事を自覚してんですかぁあああ!?毎度、毎度抜け出して…特にウリエル様の鬼のような形相はどの位見て来てると思ってんですかぁ!!それに煉獄は今、紛争起こしてんの知らないんですか!?」

 

「い、今初めて知ったよ。まぁ、この辺の片付いたし…終わりよければ全てよし、だろ?」

 

「んなわけないでしょおおおお!!!我々がどれだけ貴方の心配をどれだけしてるか、苦労してるかわかってください!!!!!」

 

「お、おぉ。悪かったよ…」

 

それからもガミガミと続く部下達の不満と説教にゲンナリしていく彼女にいつの間にか離れていた二人は苦笑した。

 

「ルシちゃんも変わってないエル」

 

「そうだね…やる気時は凄くカッコいいのに。締まらないのがルシファー先輩なの」

 

でも、自分達の知っているルシファーで良かったと思った。

 

それにせっかく会えたのにすぐに離れたくない。何故なら彼女を勝手に姉のように慕っているから。

 

「やぁーっと終わったよ……」

 

とても疲れたようにルシファーはメタトロンに目を向ける。

 

「じゃあ…またな」

 

ポン、とまた頭に軽く手を当てて直ぐに離した。

 

「あ…」

 

それが嫌で彼女の袖を掴んだ。とっさに掴んだので思わず顔を下に向けた。

 

「……?どうした?」

 

ルシファーは不思議そうにしゃがみ込んで覗こうとする。

 

「まだ…一緒、いたい…なの」

 

それを言ったメタトロンの顔は茹でダコのような真っ赤になり、抱きしめたくなるほどの可愛らしさに

 

(見ないうちに何でそんなキュンとなるような仕草を会得してんのォオオオ!!!可愛いよメタちゃん!!クソォ!抱きしめたい!!いいよね!?いいよな!?)

 

悶絶しながら欲望と葛藤していた。

 

「……駄目、かな?…ルシ…姉さん」

 

トドメに目を潤ませ、自分を姉さんと呼んだ。プツン、と理性が切れてヨエルごと抱きしめた。

 

「じゃあ…私の妹になるか?」

 

「うんなの!!」

 

フッと笑って優しく答えた。すると嬉しそうに頷いた。

 

「じゃあ、少しなら大丈夫だろ。私んとこ来いよ」

 

(駄目な訳ないだろぉおおおおおおお!!ごめん、ガブちゃん…妹が増えました)

 

実際は興奮していた彼女だった。

 

「これって、私もルシファーさんの妹になるって事だよね?」

 

「そうなる…リヤ?」

 

姉のあんな姿をみて二人は混乱した。

 

 

 

 

 

 

第1セフィラに戻ったルシファーは、双子姉妹を自分の家に入れて後で、食料を持ってくると言って仲間のいる基地へと一人で向かった。みんな、素顔さらけ出して好き放題飲み散らかしていた。

 

一人の男性がルシファーが帰って来たのに気づいた。

 

「お、ルシファー様ぁ!!お帰りなさい!聞きましたよぉ?また無茶苦茶やったんですねぇ!!酷いですよ、一人で暴れるなんて…我々を少しは頼ってくださいよ…!!」

 

酔っているのか、足が覚束ない。

 

「なら、飲み比べで私に勝ってみろよ」

 

ニヤっと笑うと大きめな樽を掲げる。

 

「上等ですよぉ!!!」

 

男性は挑発に乗り、同じサイズの樽を掲げた。周りもいい感じに盛り上げる。

 

数分後。

 

「ま、参りましたぁ…」

 

「いや〜まだまだだね。酒も、実力も。もっと強くなってからでかい口叩けってんだ」

 

先に潰れたのは男性の方だった。後から来たとはいえ、彼女は男性の数倍の量を飲み干した。

 

おぉ〜!!流石ルシファー様っ!!次は俺だっ!!私だっ!!

 

と次々に挑戦してくる者がいたが、誰も敵わなかった。

 

ルシファーはそんな部下達の姿に呆れた。

 

「全く…情けないな…でも」

 

ゴクッと新しい酒を一口飲み

 

「それでも、無理してでもお前らを守りたいんだ」

 

ボソッと呟いた。

 

「るぅぅぅしぃふぁああああああああ!!!」

 

バタン、と大きくドアが開くと同時に聞き覚えのある怒声が耳に入ってきた。

 

「ウ、ウリエルさぁん…何の用でございますでしょうか?」

 

覇気を纏って近づくウリエルに冷や汗を流しながら後ろに下がる。

 

「…私もいますよ。ルシさん」

 

「うげっ!?が、ガブちゃん…」

 

ウリエルの後ろには更なる般若がいた。妹な存在、ガブリエルだ。

 

滅多に怒らないガブリエルがこんなに怒っている。

 

理由はわかっている。それでも捕まるわけにはいかない。

 

ルシファーは紫電を右手に纏い、天井に放って穴を開けた。

そして、そこから

 

「あっ!!待て!ルシファー!!!」

 

「待ってください!ルシさん!」

 

逃げた。二人はすぐ様、追いかけた。

 

「だぁああああ!!!何処まで追いかけてくんだぁ!!」

 

「貴方が反省するまでよ!!」

 

「あーハイハイ。反省しましたー二度と勝手な事しませーん。許してくーだーさーいー」

 

「完全に馬鹿にしてますよね!?それ!!」

 

空を飛び回っている三人の天使を二人の天使は見ていた。

 

「あっはははははは!!!やっぱりルシ君は最高だねっ!流石、僕の相棒だ!」

 

「ミカエルさん、感心しないでください…」

 

ミカエルは豪快に笑い、ラファエルはそんな彼女を盛大に呆れ返っていた。

 

結局、ルシファーはウリエルとガブリエルに捕まり、ダブル説教と言う拷問を受けた。

 

ボロボロになった彼女は基地から余りの食糧を持ち、癒しを求めて双子姉妹の待っている自宅へと帰って行った。

 

一週間後。

 

「はぁ?調査だぁ?」

 

ルシファーはウリエル達四人と自分の基地で寛いでいる所に部下が入り込んできた。

 

「何やら…また煉獄で怪しい連中が動いているとの事でして」

 

それを聞いたルシファーはウリエルを見る。

 

「そんな報告来てないけど…」

 

「あ、ルシファー様の軍で、との事ですが」

 

ウリエルは知らないと言った瞬間に部下はすぐに補足した。

 

「……それは私も行かなければいけない事案か?」

 

真意を探るような目に慌てて口を開く。

 

「そ、その事なんですが…我々だけでやらせてはくれないでしょうか!ウリエル様方にも知らされていないと言う事は現段階ではそこまで大した事案ではないと言う事。それにルシファー様の力を頼る前に小さい内に叩いてみせます!!」

 

自分達の熱意をぶつけ、負けずに力強い目で彼女を見る。

 

自分達だってルシファー様の力になりたい。頼りにされたくて厳しい訓練や実戦を乗り越えてきた。

 

足手まといとは思われたくない。

 

そんな熱意に折れたのか。

 

「……わかったよ」

 

目を伏せて行かせる事を許可した。

 

「!本当ですかっ!!」

 

「あぁ。これだけは約束しろ…一人も死なずに私の元に帰って来い。頼りにしてるから言ってんだからな」

 

「はいっ!必ずしや、その約束守って見せましょう!!

 

その言葉が何より嬉しくて大声で返事をしてその場を去って行った。

 

「……アイツらも逞しくなったもんだな」

 

「嬉しい?ルシファー?」

 

フッと笑うルシファーにウリエルは微笑みかける。

 

「アイツらは芯の通った強い魂を持ってる。そう簡単に砕かれやしない。いつの間にかそこまで信頼を置いてしまってたんだ」

 

嬉しい以外、何があるってんだ?

 

すごく嬉しそうに部下が去って行ったドアを見つめる。

 

ウリエルもガブリエルもミカエルもラファエルも安心したように彼女を見る。

 

 

 

 

 

その選択こそが最大の間違いだったと気付く事は誰一人も居なかった。

 

 

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