もしモンストの堕天使が銀さんみたいな感じだったら 作:ネルゲル
翌日。
ルシファーは部下達の出発を見届けた後、自宅へと帰って寛いでいた。
「ルシお姉ちゃん〜」
「ルシ姉」
突然の双子姉妹の訪問に彼女は苦笑した。
(随分と懐かれたもんだ)
メタトロンとは後輩として可愛がってはいたが、サンダルフォンにまですぐに懐かれた。
ウリエル達に見られてたら何を言われていた事やら。
(こんな姿見たら、ガブがどう思うかな?)
自分に一番懐いているガブリエルがどんな表情をするのか想像していると自然に笑みがこぼれる。
「まっ、遅くならんうちには帰れよ」
「「はーい」」
とにかくルシファーがわかるのは三人が可愛すぎて、癒されるということだった。
ルシファーの心の中の一つを覗きこんだキング・クロッチ達は最初に思っていたものとは違っていた。
犯罪に手を染めた罪人ではなく、誰よりも仲間を大切に想い、失わないように護り抜こうとしている。そんな優しい心と強い魂を持ち、大勢から慕われる大天使長の姿を目の当たりにした。
「……こいつ、いい奴ッチね…でも、なんであんな風になってるッチか?」
そんな彼女がどうしてあんな傷だらけでここに来たのが謎だった。
「もう少し覗いてみればわかるかもしれないっチ」
悪い奴とは思えなくなったキング・クロッチはルシファーと言う存在をもっと良く知る為にさらに深く心の中に入っていく事を決めた。
ルシファーは内心、爆発しそうになっていた。
「メタお姉ちゃんばっかりずるい!!」
「サンちゃんだって私がいない時にルシ姉と寝てるなの」
ベッドで休んでいたところに両端からの窮屈感を覚え、目を開けようとするが二人の声が聞こえた。
両端からギュウギュウと抱きしめられて身動きが取れない。
(うぉおおおっ!?何これ??こんなことガブちゃんにだって恥ずかしがられてしてくれないのに!!嬉しいけどね!?動けない私にどうしろってんだぁああああ!!!!)
まさに悶絶どころか爆発寸前だった。
そんなやばい状態になっているルシファーを二人は知らずに腕を引っ張り合ってまだ争っている。
ガタンと外から音が聞こえてピクッと反応した。
二人も音に気づき動きが止まる。
「…ちょっと見てくる」
ウリエル達ならばすぐに声をかけるのだが、それがない、
ルシファーは不信感を露わにしながら二人をその場に置いて部屋を出て、外を確認すると
「なっ…!」
自分の隊の一人がボロボロになって倒れていた。
「おいっ!!しっかりしろっ!!」
「ル、ルシファー…様、すいません……まんまとやられました…」
息も絶え絶えにした隊員はなんとか伝えようとする。
「もう喋るな!サンダルフォン!!メタトロン!!コイツを頼むっ!!!」
ルシファーは黙らせ大声で二人を呼ぶ。
非常事態だと察した二人はすぐ様駆けつけると顔を顰めた。
無数の傷だらけで血まれになっている。生きてるのが不思議だ。
「ルシ姉さん、これは…」
メタトロンは悲痛な声を上げるが
「そんな事は分かってんだよ……!!」
彼女も分かっているようだ。そして怒りでどうにかなりそうだった。
ルシファーは翼を広げて飛び出して行った。
「ルシお姉ちゃん!!」
「ルシ姉さん!!」
二人は止めようとしたがもう遅い。すぐに追いかけようとしたが、声が聞こえる。
「君達にお願いがっ…ルシファー様を…守ってください…」
「「………っ!!」」
それが最期の言葉だった。
(クソっ!私も行けば良かったっ!!おかしいとは思ってたんだっ!)
場所は彼らが行く前には聞いていた。
しかし、ウリエル達には知らせずに自分のとこに来たのか。
こう言うケースは初めてで怪しいとは思っていた。
でも仲間の強い意志を無碍には出来なかった。
目的地である洞窟のような場所に着いた。
中に入っていく。段々と血の匂いがし始め、ピチャっと足元から聴こえ、それを見るとそこは血溜まりだった。これは仲間のではないと無理やりに思い込みながら奥に進む。
たどり着いた先は
「あ……」
地獄絵図だった。敵もそうだが、多くの仲間が串刺しにされていたり、横たわっていたりしていた。
「ぁああああああああああああああっっっ!!!!!!」
膝から崩れ落ち、これ以上ないくらいに叫びあげた。
「ルシファー様…」
息があるのが一人いた。彼女はすぐに駆け寄る。
「罠、でした。待ち伏せされてました。奴らの狙いは…貴方なんです」
つまりは敵の術中に嵌められたということだ。
そんな事よりもルシファーは言いたい事があった。
「罠だとわかったなら何で逃げなかった!?」
彼らなら出来た筈だ。なのに何で。
「言った、でしょう。俺達は貴方の役に立ちたかったんです。…貴方の役に立って死ねるのなら…これ以上の、幸せは…ない……です」
そう言って息を引き取った。
「………馬鹿野郎だ。本当に…」
彼女はただ仲間達が居ればそれで良かった。
自分の幸せを壊した奴らを許せる筈が無かった。
近くで何かが動いた。
…敵がまだ生き残っていた。ルシファーは一瞬で近寄り頭を掴み上げた。
「壊す前に、吐け。洗いざらい全部だ」
「ぐっ…だ、誰が話すかっ!!死ぬのはオマエダっ!!」
どうやら話すつもりはないらしい。
「そうか。なら、死ね」
グシャっと頭が潰れた。彼女は何も思わずに死体を投げ捨てた。
洞窟を出ると大勢の魔物が出迎えていたのを見てニヤリと笑った。
探す手間が省けたからだ。
「安心しろ。吐くまでは全部は壊さないようにしてやる」
木刀を持って敵を見据える姿はまさに夜叉(おに)のようだった。
数分後。
一匹だけ息がまだあるボロボロになっている敵と無傷で木刀を突きつけているルシファーしかいなかった。
「…吐く気になったか?」
「吐いたところでどの道助からない。そうだろ?」
「……」
分かっている事は答えない彼女に肯定と見なしてフッと笑った。
「いいだろう。お前の敵は俺達だけじゃない。もっと身近にいる」
そこで一息ついてから更に続ける。
「俺達を動かしたのは……ケテルだ」
彼女は目を大きく見開いて驚愕した。そして壊れたように笑う、
「ははっ…ははははははははは!!あはははははははははははっ!!!お前のお陰で目的が出来た。
その前にオマエらはこれ全部じゃないよな?
皆殺し確定だコラ」
ルシファーはここから完全に闇の中に堕ちた。
狂いに狂ったルシファーは敵陣を斬り込み、騒ぎを耳にしてやってきた天聖達にも御構い無しに襲いかかる。
特にケテルを目にした瞬間、憎悪が膨れ上がった。
「ケテルゥウウウウウウウ!!!!!!!!!!」
その瞬間、意識は途切れた。
そこで心の中を見る事に限界が来たのだろう。ガラガラと崩れていくのが分かる。
キング・クロッチ達は早急にルシファーの体の中から脱出した。
戻ってきた彼らを待ち受けていたのは
「ルシ姉に…何をしたの?」
心の中にも出てきたルシファーの後輩で妹のメタトロンが睨みつけていた。
「コイツの心の中を覗いたっチ」
「!」
全部白状するとメタトロンは更にキツく睨む。
「…うっ」
するとルシファーが呻きを上げて目を開け、上体を起こす。
「ルシ姉ぇっ!!!」
メタトロンは涙を零しながら力強く抱きしめた。
「うぉっ!?メタちゃん!?……じゃないな。ヨエルだな?」
「えっ!?何で分かったエル??って、あっ!!」
アッサリと見抜けられ、本来の口調に戻ってしまい、メタトロンもといヨエルは変身を解いた。
「メタちゃんはそんなに泣かないし、積極的じゃないからな。サンちゃんだったらバレなかったかもな?」
シュン、落ち込んだ彼をよしよしと宥める。
「サンメタに何か言われたんだろ?…心配しすぎなんだよアイツらは。まぁでも、ありがとうな」
こうやって誰か一緒に居てくれるのは彼女自身も心が安らぐし、嬉しくなる。
「あっ!!そういえばザドキエルが協力してくれてるエル!!」
「……はぁ?」
ルシファーはヨエルの発言に意味がわからなかった。説明を求めると
サンメタ宅にザドキエルが個人的に訪問していて、それに気付かずに二人は、これからについて話してしまっていた所を追求されたらしい。
白状し、メタトロンが話を聞いた上で協力してほしいと頼んだ。
ザドキエルはそれを承諾したという。
「ザドキエルってたしか、ガブの後輩だよな?如何にも真面目そうでウリエルタイプの天使だよな」
そんな奴がコッチにくるとは…
「メタちゃんも侮れないねぇ」
(もう一人だなんて思わないでっ!!私達は死なない!!居なくならない!!ルシ姉を裏切らない!!信じてなの!!私達が必ず、貴方が進む道を切り開いて見せるから!!ルシ姉も私達の前から居なくならないでっ!!!!)
随分と逞しくなったもんだ。あの時を思い出して彼女は苦笑した。
「ヨエル、ちっと予定変更だ。メタちゃんとサンちゃんに伝えろ」
彼の耳にボソっと内容を吹き込む。
「本気エルか!?」
「私はやると決めたらやる女だぜ?それに抱き込めれるならその方が有利に進めれるもんだ」
驚いている彼に本気だと頷くルシファー。
「わかったエル…ルシちゃんの思うままに」
納得したヨエルは飛んで行った。
「大天使長ルシファー!!我輩の名をキング・クロッチ!勝手ながら、心の中を見させてもらったッチ!!」
今まで空気だったキング・クロッチが話しかける。
「……で?」
無表情で見つめる彼女に冷や汗をかきながら続ける。
「微力ながら協力するッチ!!我輩達も入れてくれたら、その傷が消える場所を教えるッチよ!!」
ドーンと胸を張っていう彼に疑う気になれずに笑って
「なら、頼むは」
そう言って立ち上がった。
そして
「ようやく、見つけましたよ。ルシさん」
「待ってろよ、ルシ君」
ミカエル、ガブリエルも彼女を追うために動きだした。