あとタイトルの「俺」のところを「オレ」に変えておきました。作中でも「オレ」だからね
「えーと、モモ肉とキャベツ、ケチャップに味の素にサラダ油…あとキッチンペーパー〜〜。よしッ、全部あるな!」
夕刻、商店街近くのスーパーで買い物を済ませたナランチャは、買い物メモとレジ袋2つの中身を交互ににらめっこしていた
BOOM!!!
「ン?」
ナランチャが帰ろうとしたその時、商店街の方から聞き覚えのある爆発音が聞こえた。音の方を見れば、商店街の入り口に多くの野次馬が殺到していた
ナランチャは1番近くにいたよく会う魚屋の店主に声をかける
「なあーオヤジ、なんかあったのか?」
「おお、緑谷のボウズか。中学生の子供がヴィランの人質にされててな、ヒーローたちは手をこまねいてんだよ。よく見りゃああの制服、ボウズのとこの中学じゃあねえか?」
「フ〜ン…」
そう言われたナランチャは軽く背伸びをするが野次馬が邪魔で見えない
「オッサン、ちょっとどいてくれよ〜」
「! 君は…」
ナランチャは前にいた金髪のガリガリに痩せた男を押し退けて野次馬の中を突き進み、最前列に移動する
すると視線の先に写っていたのは……オールマイトが捕まえたハズのヘドロのヴィランと、ヘドロに捕まりながら必死に抵抗する
「!!」
その瞬間、その眼は日和った中学生のものから、覚悟を決めたギャングのものに変わった
バッ!
ナランチャは野次馬を押しのけ、ヘドロのヴィランに直進で走り出す!
『『『!?』』』
その行動はそこにいた誰もを驚かせた
「馬鹿ヤロ──!!止まれ!!止まれ!!!」
ヒーローの1人が静止の声を上げるがナランチャは止まらない。一方ヘドロヴィランは飛び出してきたのが自分の右目を奪った忌々しいガキだと気づき、怒りが湧き上がる
「あのガキ、また邪魔しに来やがったか!」
(デクッ!!?)
ヘドロで覆った爆豪の体を操り右腕を上げるが、そこをナランチャが狙う!
「『エアロスミス』!!」
ドガガガガ!
ドバ!ドバ!ドバ!
しかし機銃の弾丸は腕周りのヘドロを吹き飛ばすだけ
「バカがッ!ヘドロで覆ったんだぜ!?並みの攻撃が効く訳ねェェーだろぉぉお!!」
BOOOM!
その腕を横薙ぎに叩きつけ、ナランチャを爆殺した
ガシッ!
だが、ヘドロのない右腕を掴む者!ナランチャは傷1つついていない。手に持っていたカバンで爆破を遮ったからである
「何!?」
「効かなくていいんだぜ。ヘドロ吹き飛ばすのが狙いだからよォ──!」
そのまま爆豪の掌をちょうどヴィランの左目の前に動かし、ナランチャは叫ぶ
「カツキィッ!!」
「ッ…!」
行動の意図を即理解した爆豪は意識を集中して“個性”を使う
『
カッ!!!
すると普段の爆発とは違う、相手の意識を奪うことに特化した光と音の爆発が掌から起こる
「がああああ〜〜〜!!!?」
少し距離が届かなかったため気絶まではしなかったが、ヘドロヴィランの隙を大きく作るのには充分すぎた
「気ィしっかり持てよカツキ────!」
自分のスタンドと爆豪の間に2つの買い物袋を挟み、『エアロスミス』をヘドロ内の爆豪めがけて突撃する
バリバリバリ!バシャア!カツン ガツン!
買い物袋の中身がバラバラになりながらも徐々に爆豪を押し出しヘドロ内を移動させる。袋は爆豪を高速回転するプロペラで傷つけないための緩衝材なのだ!
ドッパァン!!
やがて『エアロスミス』は爆豪と一緒にヘドロの塊を貫通する!爆豪はブチまけられた買い物袋の中身と共に落下する
「げほぉ!…ッハア!ハァ、ハァー!」
「や、やったぞ!人質が!」
ずっとヘドロに捕まって呼吸すらできなかった爆豪は思いっきり息を吸う。人質のおかげで動けなかったヒーローたちも無事に安堵する
しかし安堵したのもつかの間!
「くおのッ!!ガキィガァァア!!」
ついてない状況、人質の奪還、同じガキに2度もしてやられた事実にヴィランは完全にキレた。目の前にいたナランチャを体内に捕え、ヘドロの水圧で首を締め付けた!
「なッ…デク!!」
「ま、マズイ、また人質を取られたぞ!」
逆上したヴィランは血走った眼で叫ぶ
「ぜってェェェェ許さねェッ!!2度も俺の邪魔しやがって!タダじゃあ殺さねえ!体内に入り込んで、肺も腸もグチャグチャに潰して、ケツの穴から内臓全部ブチまけてぶっ殺してやるぅううッ!!」
恐怖の悲鳴を上げさせるため、体内に侵入するためにナランチャの口だけをヘドロの表面上に出す。そして体内に入ろうとヘドロを口の前に持っていき…
「……今日よぉ……」
その時、唐突にナランチャが何かを言い出す。命乞いか遺言かと思ったヴィランは無視をして
「唐揚げなんだよな…ウチの晩飯が…」
「………ハァ?」
急に今晩の献立を言い出したナランチャに、ヴィランは思わず動きを止めた
「オメー唐揚げ知ってるよな?
「……テメェ、何言ってやがる?」
「特にサラダ油を切らしてたから2本買ってきてくれって言われたんだよなあ…」
「テメェーッ、この状況で何言って…!」
ブクブク…ポタ ポタ
「はッ!」
その瞬間、ヴィランはようやく気づいた。自分のヘドロ内の中で穴だらけになったプラスチック容器、そして表面に浮かび上がってる液体の臭いに
「さっき袋を挟んだのはクッションにするため
「お、俺の中に油が…!ま、周りは火の海なんだぞ、正気か!?ま、マズイ!」
このままでは油に点火してしまう!それを恐れたヴィランはナランチャを抱えながら近くのマンホールに逃げ込もうとした
グアアアアア!
しかし、ヴィランは忘れていた。自分が人質にしているガキは躊躇なく攻撃してくるイカれたガキだということを!
低空飛行する『エアロスミス』はヴィランの近くまで寄ると下部に取り付けられた小さなソレを切り離す!ソレの正体は!
「ば、ばくだー」
ドグァァァ───ン!!
「ギャァアアアアーッ!!!!」
爆発による火種が油に着火し、ヘドロヴィランの体をメラメラと燃やした。あまりの熱さにヘドロ内の物を全て吐き出し、ゴロゴロ転がったナランチャはヘドロを落としながら立ち上がる
「ハァー、ハァ──。ちくしょう、買い物袋がよォ──、全部焼けちまったじゃあねーかよォ───!でも、ま…ヘドロに溺れない平気な場所ってのは見晴らしがいいぜェ───ッ」
「ぐがぎぎぃ───!!ごおお、ごぉのッ」
火だるまでのたうち回るヴィランは熱さと痛みに苦しみながらも必死にナランチャを見つけて、怨嗟の絶叫を上げる
「ぐぞがぎィィ!!ぶっぐおご、ロォ──────オオオオッ!!!」
メラメラ燃え盛る体で焼き殺そうとヘドロを伸ばす。それを見たナランチャは『エアロスミス』を呼び
バチャッ
「!」
そのヘドロの触腕は突如現れた太い筋肉の腕に阻まれた
「情けない…本当に情けない!」
体から煙を出し、喀血しながら
「子供が命懸けで戦っているのに、大人がそれを見ているだけなど!!」
オールマイトはそれでも笑顔を見せる
「プロはいつだって命懸け!!!」
『
パァァン!!
「ぶべェッ!!」
ヘドロヴィランに向かって近距離パワー型のスタンドをも上回るパンチを放つ。その威力は風圧だけで物理攻撃の効かないヴィランを爆散させ、ヴィランや商店街についてた火を吹き飛ばし、上昇気流を起こすほどだった
「…スッゲェ──…」
ナランチャもこの圧倒的パワーにはそんな感想しか出なかった
ポツッ ポツッポツッ…
やがて上昇気流で出来た雲から雨が降り注ぎ、雨音をかき消すほどの歓声が響いた