ヘドロヴィランを捕獲して30分。商店街の火は完全に鎮火し、ヴィランも大怪我を負ったとはいえ問題なく連行された
そして野次馬とヒーローが3人をそれぞれ囲む姿があった
1つ目は今回のヘドロヴィラン事件の功績者として注目されてるオールマイト。マスコミの取材を笑いながら受けている
2つ目は捕まりながらも必死にヴィランに抵抗した爆豪。捕まりながらも意識を保っていたタフネスと“爆破”という強個性をヒーローたちから賞賛されていた
そして3つ目が…
「なぜあんなことをしたんだ!?君が危険を冒してまで救けに行く必要はなかったんだぞ!」
「しかも“個性”を使って戦うなど完全に犯罪だ!!お前のしたことはヴィランと何も変わらない!!」
同じくヒーローに囲まれているナランチャだった。ただしその内容は心無い批判の嵐で、ナランチャはその場でうずくまりながら頭を抱えていた
「………」
黙り込むナランチャに人の話を聞けと怒る
(オレはカツキを救けたかっただけなのに大人たちは怒ってる…オレ、間違ってたのかな……?)
精神年齢でいえばもういい年齢なのだが、もともと子供っぽい精神のナランチャ。そして精神とは肉体に引っ張られるものであるので、今のナランチャはかつて限界までに追い詰められてる精神状態だった
このまま何も考えたくないナランチャはさらに塞ぎ込み
『甘ったれた事言ってんじゃあねーぞッ!このクソガキがッ!もう一ぺん、同じ事をぬかしやがったら、てめーをブン殴るッ!』
「ハッ!!」
その時、ヒーローの声が聞こえたナランチャは思わず顔を上げた。見えるのはヒーローではなく自分を叱る大人たちの顔だった
(そうだ、オレはあの時ブチャラティに救けられたんだ……無関係なだけのガキのオレをブチャラティは救けてくれた………)
そう考えると、ナランチャはだんだん目の前の大人たちにムカムカし始めて
「聞いているのかねッ!!?」
「……ウッセェよ」
「何……?」
「ウッセェェ──っつってんだよ!!」
我慢できずに大声で叫んだ。突然のナランチャの豹変に大人たちが怯む
「さっきから黙って聞いてりゃあよォ〜〜〜〜、オレがヴィランと戦ったとか“個性”を使ったとか……じゃあオレが救けなかったら、誰がカツキを救けたっつ──んだよォ!」
「そんなの、相性のいい“個性”のヒーローやオールマイトが来れば…」
「オレが戦ってなきゃ、どっちも間に合わず逃げられてたじゃあねーかよ!」
ナランチャの言葉は正論だった。ナランチャが戦った5分という時間があのヘドロヴィランの自由時間だったかもしれないことを考えると…大人の1人は爆豪をチラリと見てブルリと震えた
「だがお前のしたことは法律違反でしかない!!未成年だろうと許される訳がない!」
そしてその反論も正しかった。ヒーローや一部の大人が持つ“個性許可証”がない限り、ナランチャの戦闘行動は間違いなく違法でしかなかった
「だったらなんだよ?」
「え…」
だから、ナランチャのなんてことない反応に大人たちは面食らった
「オレはよォー、「正しい」と思ったからやったんだ。後悔はねえ…こんな世界でも、オレは自分の『信じられる事』をやるだけだ!」
かつて命令されることを望んだナランチャは幼馴染を救けた自分の行動を信じて決めた。それは確かな『成長』だった
ナランチャはカバンを持つと爆豪の方へ行き帰りを催促する
「帰ろーぜ、カツキ」
「………ああ………」
長い沈黙の後の返事を聞くとそのまま一緒に帰ろうとする2人
「コラッ!!まだ話は半分…」
「……チッ!」
GRAP!
「へ?」
しつこく付きまとう連中に嫌気がさした爆豪は、舌打ちしてからナランチャに自分のカバンを(無理やり)持たせて、制服の襟首を掴む
BOOOOM!!!
「うおおおおッ!?」
「なッ!!?」
そしてその場の全員に考えるヒマも与えず、“爆破”を使って跳躍、野次馬の外側に脱出した
「ボケっとしてんなやクソカスデク!!テメーが帰るっつったんだろが!!」
「だからっていきなり飛ぶ奴があるかよッ!!」
「察しろクソが!!」
爆豪から始まった罵り合いをしながら2人は走って逃げていった
「テメーまたド低脳って言いやがったな〜〜〜殺すぞカツキ!!」
「できるモンならやってみろや!!ブッ殺し返してやっからよぉ!!」
ある程度離れた静かな住宅街まで離れても2人のケンカは終わらなかった。カッターナイフと爆発で威嚇し合う怖すぎる中学生が夕焼けに照らされていく
『…………』
沈黙が続く中、急に爆豪がナランチャに叫ぶ
「……おいデク!なんで俺を救けやがった!」
「あん…?」
「恩売ろうってか!?あ!?なあ!?救けた俺を見下して上に立ったつもりかァ!!?」
「イミわかんねー……」
長年、幼馴染として過ごすが、未だに爆豪の無駄に高過ぎる上昇志向が理解できなかった
「1回だ!!!」
そんなことを思っていると、爆豪はナランチャに大きく宣言する
「俺はお前に救けられた!お前もさっき俺が救けてやった!だからお前は俺に恩なんざ作ってねぇんだよッ!!クソが!!」
息を吐くように暴言を吐き捨てて先をズカズカ歩いていく爆豪。しかしナランチャは爆豪の言いたいことをなんとなく理解していた
『さっきの借りは確かに返したぞ』ということだ
「ったく、カツキも素直じゃあねえ〜なァ〜〜」
「そのニヤケ面やめろや!!」
結局のところ、特に大きなわだかまりも作ることなく2人はいつも通り帰路につく
「私が来た!!」
「うお!?」
「…ッ!!オールマイト…!?」
……には、もう少し時間がかかりそうだった