作:歌猫

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 1時間前に幕間2も投稿しています。読んでいない人はそちらをお読みください。


第壱章:集う絆たち
1-1:新たな出逢い


 先代誓約者、レヴィさんとの邂逅から二ヶ月以上の月日が流れた。その間、レヴィさんが夜天の魔導書の中に創った精神世界で試練のための修行をしているが、思うようにいかない。「始めの内はこんなものだよ」とレヴィさんは言ってくれたけど、それでも基礎中の基礎段階で直ぐ駄目になるのは不味い気がする。

 

(身体強化はスムーズに出来た、魔力運用に関しても御墨付き。問題は……格闘技)

 

 誓約者はその性質上、身体強化以外の魔法が使えない。素質の全てが召喚術に振られているかららしい。強力な召喚術を一人で行使できる代わりに、魔力を用いて魔法を使うことが一切出来ないのだ。故に護身用として、レヴィさんの身近にあった流派の格闘術を習っているのだが、これが中々コツを掴むことが出来ない。おれとその流派の相性が悪いのか、はたまたおれのセンスの問題か。レヴィさんが何も言ってこないことから、元々修得するのが難しいものなのかもしれない。

 

(格闘技は一生を使って修練するものだとは聞くけど……)

 

 はやてと夜天の魔導書のことがある手前、あまり時間を掛けられない。付け焼き刃の戦闘が危ないものだということは漫画や小説で良く取り扱われているけど、それでも直ぐ目に見える形で成長したことを実感したいと思ってしまう。

 

(まぁ、召喚術の勉強は進んでいるだけマシか)

 

 召喚術に関して、レヴィさんは自身の持てる知識をおれに開示してくれる。四界の世界観についてのより深い内容の話だとか、召喚獣達の生態系や習性、得意なこと苦手なこと等ゲームだけでは知らなかったことを教えてくれるのだ。だが、問題もある。あの精神世界で喚べるのはレヴィさんの記憶を元にした疑似召喚獣だけで、本物を喚ぶことは出来ない。だから、召喚獣との触れ合いは現実でしか行えない。小さい子達は自宅で喚べば問題はないが、力も体も大きい子達を喚ぶ場所がない。

 今は良くても後々行き詰まるのは目に見えていた。

 

(こんな時、父さんがいてくれたら良いのに)

 

 海鳴に引っ越してから半年弱。その期間で父さんの顔の広さは嫌という程理解した。だから父さんなら広い場所を貸し切って、更に周りに情報が漏れないように徹底的に規制することくらい朝飯前な気がする。

 

(幸いおれの誕生日も近いし、その時にお願いしてみよう)

 

 管理局の仕事で忙しい時でさえ、おれの誕生日には必ず会いに来て祝いの言葉を投げ掛けてくれる人だ。いくら旅に出て以降音信不通とはいえ、その日は必ず帰ってきてくれるだろう。

 

「――――とと、ああごめんなー。ちょっとボーッとしてた」

 

 思考に一区切りつけた頃合いを見計らったのか、はたまた我慢が限界を迎えたのか、今日友好を深めようと思っていたポワソ――星マークのついたトンガリ帽子を頭に乗っけた、可愛くデフォルメされたお化けの見た目をした召喚獣――が、「構ってよー」と抗議するようにおれの胸元をペシペシ叩いてきた。そんな愛らしい姿に頬を緩むのが止めきれず、「ホントに反省してるのかー!」と言わんばかりに胸元叩きが激しさを増した。それでも痛く感じないことから力加減をしてくれていることが分かるポワソの優しさに、とても心が癒される。

 

「ああもうホントかわいいなぁ!」

 

 苦しくならないように気を付けながら、おれはポワソを抱き締めた。突然のことにポワソは驚いたみたいだが、嫌ではないみたいで擽ったそうに身を捩らせている。そんな行動に益々頬を緩ませ更に可愛がろうとした時、玄関のチャイムが鳴った。タイミングが悪いと思ったと同時に、一体誰が来たのかと不思議に思う。今の時間は夜の八時半を回っているから、配達系の人じゃないことは確かだ。

 

「ポワソ、おれが良いって言うまでそこから動いちゃダメだよ」

 

 今日ははやての家で夕食を取ったから、おれの家にはおれとイヌマルしかいない。万が一のことを考えて、防犯グッズとデバイスを手にし、ポワソに指示を出したおれは、ゆっくりと玄関の扉を開けた。

 

「はい――て、はやて?」

「こないなじかんにごめんな。ちょっとええ?」

 

 扉を開けたら、申し訳なさそうな表情のはやてがいた。

 

「どうしたのさこんなじかんに」

「いやぁちょっとな……ちょいはなしながなるから上がってもええ?」

「まぁいいけど」

 

 頷きながら、おれは引っ越した当初から家に置いてあった折り畳み車椅子を取り出し、はやてが移動しやすい位置に置く。礼を良いながら完全に座ったはやてを確認した後、おれは車椅子を押してリビングへと向かう。

 

「それで、いったいどうしたのさ?」

「それがなー、じつはあした、うちに――……」

 

 そうしてリビングへと入った瞬間、はやての言葉が途切れた。一体どうしたんだと彼女の視線を追ってみれば、そこには宙に浮いているポワソの姿。

 どう誤魔化したものかと頭を回転させながら冷や汗を多分に流すおれへ、はやてはにっこりと笑みを向ける。

 

「わたしのはなしのまえに、あのかわいらしい子のはなしをしぃや」

「イェス、マム!」

 

 おれに拒否権は無かった。

 

 

 

「えーとつまり、わっ君はいせかい人で、この子もいせかいにいるそんざいで、わっ君はその『しょーかんじゅつ』とやらでこういう子たちをよんでると」

「そのとーりでーす」

 

 ポワソの説明をする過程で芋蔓式に召喚術や今まで住んでいた世界の情報を吐かされ、テーブルに突っ伏したおれを尻目に、はやてはそんな暢気な声を上げた。

 

「なんではじめから言ってくれんかったん?」

「いせかいのことをかんちしてないせかいのじゅう人にはなすことは、ほーりつできんしされてるから」

「ほーりつならしかたあらへんな」

 

 そう納得してくれたはやては、次の瞬間何かに気付いたような顔をして口を開いた。

 

「じゃあわっ君、おまわりさんにつかまるん?」

「バレなければもんだいないよ」

 

 時空監理局は、滅多なことが無いかぎり周辺区域を巡回するだけで、管理外世界に降り立つことはない。だから、はやてが面白おかしく周りに吹聴して騒ぎを起こさないかぎり、バレることは無い。

 そう告げれば、はやてはかなり安心したように息を吐いた。まぁ例えバレたとしても、はやてはいずれこちら側の人間になるから問題ないけどね。流石にそれを告げる気は無いが。

 

「で、はやての用件は?」

「ああそうやった! わっ君助けてや!!」

 

 はやての事情は、本気で切羽詰まっていた。

 

 

 

「ポワソ、この紙クサリをそこにかざって……そうそう、シシコマもそのちょうし。あ、ゴレムかざりどうぐはそこ置いて……ありがとう」

「ああ、ピリコットありがとなー。ペコもしょっきをはこんでくれておおきに」

 

 次の日、おれとはやてはユニット召喚獣も多数動員しての準備を行っていた。今日ははやてのお兄さんと、その彼女さんが家に来る日だったらしい。「わっ君が来てからまい日がたのしかったから、すっかりわすれとったんよ」とははやて談だが、楽しんでもらえたことを喜べば良いのか、忘れさせてしまったことに謝れば良いのか、判断に困る台詞だった。

 ともあれ、新しい家族が増えると言うことで歓迎会をしたいというはやての気持ちを汲み、おれと、時間に余裕がある仔達に手伝ってもらっての大仕事である。

 

「はやてー、かざりつけ終わった!」

「おおきに。こっちはもうちょいかかるから、『みどりや』でシュークリーム買ってきてや!」

「りょうかい! ……みんなありがとう、また今どお礼はするから、もどって休んでて」

 

 飾りつけを手伝ってくれた仔達に礼を言って還した後、イヌマルを伴って翠屋へ向かった。

 

 

 

「あ、あれ? おかしいな?」

「ねぇ、まさか迷ったとか言わないよね?」

「あーそのまさかだったりするかも……あはははは」

「笑い事じゃなーい!!」

 

 翠屋で無事シュークリームを購入できた帰り道、後少しで家に辿り着くといったところで、家に向かうのとは違う道に入った所から、そんな会話が聞こえてきた。その声に妙に聞き覚えがありふと顔を向けてみると、そこにははやてと同じ髪色の高校生くらいのお兄さんと、もう少し明るい茶色の髪の、お兄さんと同世代のお姉さんがいた。お兄さんは、自分が持っているメモ紙を眺めながら首を傾げており、お姉さんはお兄さんの肩を掴んで揺らしている。

 どこかで見たことがあるような気がしてならないその男女は、けれども知らない人だった。そのことを不思議に思いながら二人を眺めていると、お兄さんの方と目が合った。

 

「あ、イヌマルを連れてるそこの君、ちょっと道を聞きたいんだけど良いかな?」

「ちょっとハヤト! リィンバウムやシルターンじゃあるまいし、ここにイヌマルがいる訳ないで、しょ……」

 

 お兄さんの言葉に呼応するようにお姉さんがおれを見て、動きを止める。正確にはおれと一緒にいるイヌマルを見て固まったのだが、先程の会話で二人が誰なのかに気付いたおれの心情はそれどころじゃなかった。

 おれがまだ私だった前世の頃、ハマりにハマった『サモンナイト』シリーズの第一作目の、主人公とパートナー。

 どうして二人がここにいるんだとか、ここは『とらハ』の世界なんじゃないのかとか思ったけど、一番に思ったことがこれだった。

 

 

(初プレイ時に選んだ二人キター! リアルハヤカシありがとうございます!!)

 

 

 後々思い返すと頭が痛くなるような内容で、今でも思い返すだけで自己嫌悪に陥るが、これが、二代目誓約者である新堂勇人と、そのパートナーである護界召喚師のカシス・セルボルトとの出逢いだったのである。




 サモン初プレイ時はマジでこの二人を選びました。だから自分、ハヤカシには一番思い入れがあります。
 『U:X』の2巻目を読んだ時は結構ショックでした。我が天使たるカシスちゃんマジどこいった。まぁそれはそれこれはこれと受け入れて、今は楽しんで読んでいますが。
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