作:歌猫

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 この話から週一投稿!! を、目指したいなぁ…………(遠い目)


第零章:始まりの始まり
0-1:どうやら転生したようで


「まぁ、何だ」

 

 こんなことを言っても理解はされていないだろうと、男は自らが抱いている赤子を見て思った。しかしそれでも男は言う。

 

「俺様は子育てなんて出来る気しねーしやる気ねーからレジアス辺りにお前を丸投げするが――」

 

 それは誓い、それは楔。

 不本意とは言え産まれてしまった生命(いのち)に対しての、男の決意でもあった。

 男が死ぬまで、この赤子はこれから狙われ続けることとなる。男の行動を快く思っていない勢力から見れば、十分に弱点となり得るからだ。

 男には目標があった。そして、その目標を達成するためには多くの障害が待ち受けていることを理解していた。故に男は到達するまで妻子を持たないと決めていたのだが、何の因果かこうして、血の繋がりのある赤子を得ることとなってしまった。

 しかし、こうして出来てしまったからには、男には赤子を護る義務があった。だからこそ男は、自身と同じく深緑の色を持つ赤子の目をしっかりと見て、こう言った。

 

 

 

「――お前が独り立ち出来るまでは、ちゃんと俺様が護ってやるから安心しろ」

 

 

 

 その言葉を聞いた赤子――男の息子は、特に反応を返すこと無く瞼を閉じ、静かに眠りについた。

 

 

          *   *   *

 

 

 突然だが、私には前世の記憶というものがある。何を馬鹿なことをと言うだろうが、まぁ事実なので仕方が無い。

 前世の自分はAO入試で大学合格を迎え、高校卒業を間近に控えた女子高生だった。センター試験も無事受け終えた私は、大学入学まですることが無いため、受験生になってから控えていたゲームを再開し、日々ゲーム三昧の生活を送っていた。それが何の因果か、気が付けば赤ん坊になっていたのだから驚きだ。

 きっかけと言えばゲームのディスクを取り出そうとした時に突然発せられた光だと思う。と言うか、それ以外に奇妙なことは無かったため、間違い無くそうだろう。

 誰か説明してくれと思ったが出来る存在がいる訳も無く、結局は転生したという事実に納得し、自分の中に落とし込む以外の方法が無かった。

 まぁ、受け入れてしまえばこっちのもので、割と第二の人生を満喫していたりする。

 

 …………正直、暇だけど。

 

 父さんとおじさんは仕事、姉さんは学校、アイリスさんは私がお昼寝している間に買い物に出かけたらしい。まだこの世界(・・・・)の言葉も文字も完全に覚えていないため、テレビを見ても詰らないし、新聞や書籍はおろか、絵本ですらも読めやしない。身体年齢的には当然のことだけど、精神年齢的にはプラス十八歳なだけに何とも言えない気分になる。

 

 それがいくら、知らない言語だったとしても、だ。

 

(発音は英語に近いけど……文字が違うから全く分かんねぇよちくしょう)

 

 よくよく見てみたらどことなく似ている字もあるが、間違って覚えた場合目も当てられないため、文字の勉強は絵本の読み聞かせでしか出来ない。唯一見れるテレビ番組はMHK(ミッドチルダ放送協会)の教育番組――しかも幼児向け――だが、生憎と今は幼児向けの番組では無く、『正しく学ぼうロストロギア講座』――アイリスさんに教えてもらった――の番組があっている。映像を見る限りではとても面白そうな内容なのだが、未だに言葉が分からない身では十分に楽しめるはずもなく、フラストレーションが溜まる一方だ。

 

(ここが日本であればそんなことは無かったのに……)

 

 いや、日本じゃなくても地球上の何処かの国であれば良かったのだ。そうすれば、まだやりようもあったのに。

 

 そう、溜息を一つ零す。

 

 端的に言えば、ここは地球では無い。第一管理世界ミッドチルダ、それが今住んでいる世界の名前である。“第一”と頭についてあるように、このミッドチルダは数多く存在している次元世界――人や生物がおり、文明を持っている世界――の中心的立場にある世界らしい。

 次元世界には、大きく分けて四つに分類されている。次元を渡る能力を持つ「管理世界」、逆にその能力を持たない「管理外世界」、人間が存在しない「無人世界」、何らかの理由で滅亡した「遺失世界」だ。例を挙げると、ここミッドチルダや、良く読み聞かせてもらっている絵本の舞台になったアルザスは「管理世界」に、前世の故郷であり父さんの出身世界である地球は「管理外世界」に、御伽噺や伝承に出てくるベルカやアルハザードなんかは「遺失世界」と分類されるといった感じだ。

 次元を渡る能力などと仰々しい言葉を使われているが、魔法を使わなければ次元を渡る手段は確認されてないらしいので、「管理世界」と「管理外世界」の違いは、魔法の有無だと見た方が良いのかもしれない。

 ここで言う魔法とは、前世の世間一般が認識する様な「杖を振って呪文を唱えれば火が出る」といったファンタジー色が強いものではなく、「プログラム化された術式に魔力を通して発動する」……即ち、理数色が強い超科学的なものらしい。

 その事実を知った時、彼の子供先生の世界の様に属性毎に精霊がいないことにがっかりしたのは記憶に新しかったりする。

 

(まぁ、生活や文化水準は地球とそう大差無いから、そういった意味で良しとしとこう)

 

 これが万が一、サモン・ゼロ魔・ドラクエ・モンハンといったいかにもファンタジーが前面に押し出され、電気・水道・ガスといったものが無い世界だったらと思うとぞっとするどころの話じゃない。日本という世界中で最高水準の治安の良さを維持している国でぬくぬくと育った平和ボケ学生の軟弱さを舐めんな。

 

 

 

 

 

「ただいまー」

 

 そんなこんなで最終的に自分を卑下していた思考は、帰宅を知らせる言葉によって打ち切られた。まだ幼いと称して良いほどの声とちょっとだけ忙しない感じの足音に、一体誰がこの家に帰ってきたのかを悟る。

 

「ただいま、ワタル! いい子にしてた?」

「おかーり、ねぇちゃ!」

 

 勢い良く開いた扉と共に姿を現したのは、明るい茶色の髪をした可愛らしい女の子。まだ舌が上手く動かせないせいか舌っ足らずな言葉しか発することの出来ない自分に恥ずかしい思いをしつつも、それをおくびにも出さずに満面の笑みで出迎えた。

 

 オーリス・ゲイズ。

 仕事が忙しく滅多に帰って来ない父さんに変わって面倒を見てくれている、ゲイズさん宅の一人娘。

 前世の年齢含めると年下である少女ではあるけど、初等部の遊びたい盛りで、両親に対して甘えたい盛りでもあるのにも拘らず、突然やってきた血も繋がってない赤ん坊を嫌がりもせず可愛がってくれる人。

 

「ワタル、おねえちゃん今からしゅくだい終わらせてくるからまっててくれる?」

 

 何というか、良い子すぎるよねホント。宿題終わらせたら面倒を見る気満々だよ。

 

「うん!」

 

 まぁ思いっきりその好意に甘えるんですけどね!

 宿題を終わらせるために自室に向かった姉さんを見送った後、縁側に移動する。姉さんが宿題を終わらせるまで、庭を見ながら待つことにした。

 

(これでまた文字の勉強が再開できるよ……)

 

 基本的に漢字や英単語を覚えるのを苦としていた前世なだけに、ミッド語勉強は苦痛でしかないけれど、これをマスターしない限り何も出来ないなら覚えるしかない。

 英語を身につけたいなら留学しろ、という暴論は正しかったのだと実感する今日この頃だ。

 

 

 

 前世女子大生間近改め、現世二歳児如月(きさらぎ)(わたる)

 性別も、住んでいる世界も前世とは異なるけれど、今日も今日とて見た目相応になる範囲内で、語学勉強と格闘しています。

 

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