作:歌猫

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 一ヵ月ぶりです。どうにか無事に書けたので投稿します。
 プロローグ以来登場しなかった、TS主以外の転生組のお話です。



0-6:その頃の彼ら

 気が付けば赤ん坊だった。

 その事実を認識し、自身が死んだときのことを思い出したとき、僕の巻き込まれ人生もこれ極まりと思ったのも仕方がないことだと思う。

 

 生前の僕は彼の有名な幻想殺しの主人公程というわけじゃないけど、結構な巻き込まれ体質だった。

 自動車衝突事故に巻き込まれるのは日常茶飯事、迷子騒動から果ては銀行強盗事件まで選り取り見取りの巻き込まれっぷり。ありとあらゆるものに巻き込まれる僕は、月に最低でも五回は骨を折っていたし入院も結構な頻度でしていたりする。

 流石にこのままじゃいつか死ぬなーって思って影を薄くしたり神経を鋭くして危険回避に努めたりと色々やってみたけど、巻き込まれるのは変わらない(変わったのは重傷を負わなくなった程度だ)。

 

 御祓いに行っても効かず、高名な占い師からも諦めなさいと匙を投げられたこのとんでも体質のせいで、雷に巻き込まれて死亡って……と何とも言えない気持ちになったりもしたが、最期が人災じゃなく自然災害だったってだけで良しとした。

 

 こうして自分が死んで、転生したことを自覚し、受け入れ、心機一転とばかりに新たな人生を楽しもうかと思った矢先、鏡で自分の姿を見た瞬間に何とも言えない気分に陥った。

 特殊能力を持って転生する、というのは小説ではよくある話で、今回僕もその例に漏れず能力を持っていた。僕は、目で見た相手のステータスが見れる能力を持って生まれたらしい。流石に写真や映像に映っている存在のステータスを見ることは適わないが、鏡越しであれば問題なく視れるようだ。

 そのステータスを視る能力は、ゲームでいうステータス表示の上位互換どころの話では無いレベルの詳細が分かる最高位のものだった。例を挙げて言うと、相手の現在の能力値は勿論のこと、極めた際の限界値はどこまでか、何を取得し何を取得できるのか、対象が自覚していないような得手不得手まで、ありとあらゆるものが把握できる反則染みた能力だ。

 それで僕自身を鏡越しで見た結果、今世でも巻き込まれ体質が治っていないことが判明したのだ。

 

(幸運値『平穏:-EX』とか、人生全てに於いてありとあらゆる事象に巻き込まれることが決定したも同義じゃないか……)

 

 幸運値というものは、神社の御神籤なんかで良く目にする、『願望・健康・金運・学問・恋愛・商売・転居』等といった個別の運勢の総称の事のことだ。その幸運値の『平穏』のステータスがマイナス方向に振り切っていた。ただ、それ以外の幸運値がプラス方向に振り切っていたため、前世みたいに生死を彷徨うことが何回も無さそうなのは幸いだった。

 

(全治一カ月以上の怪我は負わない、一生お金に困ることは無い、学校にもちゃんと通うことが出来て、前世ではいなかった友達が出来て、普通の人達みたいに高校受験が出来て、就職して結婚して、子や孫に看取られながら布団の上で大往生が出来る、かもしれない……)

 

 前世から考えて十二分以上もある破格の待遇に思わず頬が緩む。だが、どうしても看破できないステータスも視てしまったせいか、今度は頭を抱えてしまう。

 

 魔力量A+(限界値SS-)、古代ベルカ式魔法資質、電気魔力変換資質。

 

 これらもまた、僕のステータスに載っているスペックだ。そしてこれらを見て、僕がどんな世界に転生してしまった(・・・・・・・・・・・・・・)のかを理解した。

 

 魔法少女リリカルなのは。

 前世で、TOP10に入るくらいには好きなアニメだった。好きなアニメなだけに、頭を抱えた。いや、これは酷い。何が酷いって僕が住んでいる場所が『海鳴市である』という一点に尽きる。

 ミッドチルダやアルザスといった地球以外の世界や、同じ地球内でも海鳴市以外の場所であればそう問題は無かった。原作で起こった事件に巻き込まれることが前提とは言え、僕という存在が彼女達に及ぼす影響は少なければ少ないほど良い。僕の体質が体質なだけに綱渡りでどうにか乗り越えられるはずの事態が悪い方向に転がる可能性はあるのだ。

 

(いやまぁ正直今更だけどさ……)

 

 既にそれぞれ一度ずつバニングス家のアリサさんや月村家のすずかさんの誘拐事件に巻き込まれている手前、影響云々以前の話だし、目の前で起こった事象は解決するまで関わらないと更に酷い事態になることは前世で確認済みなため、身の安全のために逃亡することすら許されないのだ。ホント、世の中って儘ならない。

 

 そんな、先は色々と詰んでいる状況だが、それでも良かったと思えることもあった。

 まずは、彼の有名な翠屋のシュークリームを食べることが出来たということ。

 母さんが買い物帰りに寄って買ってきてくれたシュークリームは絶品の一言だった。クッキーみたいにサクサクしたシュー皮に、さっぱりとした甘さのカスタードと生クリームは僕の好みにどんぴしゃで、しかも他の洋菓子店よりも値段が格段に抑えられているという素晴らしさ。父さんも母さんも気に入ったらしく、週に一回の頻度であるが持ち帰りの常連となっている。

 

 そして、秘密を共有できる仲間である幼馴染が出来たということ。

 あいつとは家が隣同士であることと、両親同士が小学校以来からの親友であることから、赤ん坊の時からの付き合いらしい。らしい、と態々他人事のように言うのは、三歳になる前後に僕の意識と言う名の自我が芽生えたから……つまり、それ以前のことは一切覚えてないんだよね。おかげで自我が芽生えた直後、偶々傍にいたあいつのスペックを見てしまった時思わず叫んでしまい、そのせいであいつに僕の異常性がバレてしまったのはご愛嬌。まぁそれがきっかけであいつに隣の家の子供から観察対象兼幼馴染認定に格上げされてしまったのだから人生どう転ぶか分からない。

 尤も、僕の異常性がバレた瞬間人生詰んだと本気で思ったけれど。

 

 

 

 そこまで考えてふと我に帰る。

 長い間延々と自分の世界に浸かっていたのにも拘わらず、あいつから横槍を入れられていないからだ。いつもならもう少し前にあいつが改造した変幻自在のマジックハンド――『完成版・つまむんです君』――が僕の頬を思い切り引っ張っているはずなのに、と考えて、昨日あいつが言っていた言葉を思い出した。

 

(そういえば、新開発したロボットの試運転を公園でするとか言ってたなぁ……)

 

 何でも防犯用として開発した物で、敵認定した相手に『とりもち君』――普通のとりもちを凶悪に改造したとりもち。どんなに頑張っても一週間の期間が経たない限り取り外すことが出来ず、これを喰らった相手は必然的に一週間そのままの状態で過ごさなければならない――がオートで発射されるという代物らしい。

 どうも嫌な予感がしたから動作テストの見学は丁重にお断りした。あいつもあいつでそれを当然の様に受け取っていたため一人で意気揚々と出掛けたのだろう。

 試運転であるため周りに人がいない事をきちんと確認してからテストを行うだろうが、それでも心配は心配である。何せあいつは僕の巻き込まれ体質に巻き込まれたとしても予想だにしない行動で、別の意味でもっとややこしい事態を引き起こしてくれる稀代の天才にして天災だ。頭脳スペックは前世同様変わらないみたいだし、前世の知識も完全に残っている。あいつの両親のおかげで犯罪行為をしない程度には丸くなったとは言え、自分が面白いと思ったら敢えて常識を無視して突き進む嫌いがある。

 

「…………だれも、まきこまれていなきゃいいけど」

 

 僕以外に誰もいない室内で、僕こと二ノ月(にのつき)(さとる)は溜息交じりにそう呟いた。

 

 

          *   *   *

 

 

 私の名前は田中叡智(まさとも)、前世の記憶を持ったまま転生したという極めて奇特な体験をしている科学者だ。

 前世では生命操作技術に関して数多くの遺法研究を行っていた狂科学者(マッドサイエンティスト)だったが、今となっては関係が無い。真の自由というものを手に入れ、この生活を気に入っている今、犯罪に手を染めて追われる身となるのもまた面倒な話だからね。

 確かに生命操作技術の完成には至っていないが、それに不満を覚える以上にこの世界は未知に満ちあふれている!

 私が転生したこの世界には前世と違って魔法というものが一切存在しない。いや、正確には魔法というものはあくまで創作物の範囲でしか認識されていないといったところか。

 その魔法も科学が発展した形では無く、杖に魔力を通し呪文を唱えたら効果が発動するといった空想的なものが多い。しかしよくよく調べてみると、その空想的な魔法はどうやら自然の(ことわり)に則っているものようで、魔法の仕組みや理論も実に理に適っているものばかりだった。

 私の知っていた魔法のことを『魔力をプログラミングによって加工して使う人工的なもの』だとすると、この世界で認知されている魔法は『魔力を対価に自然の力を借りて使う自然的なもの』だと言えるだろう。この二種類の魔法を融合することが可能となれば更なる魔法技術の発展に繋がるだろうに…………魔法が現実に確認されていないからという理由で管理外世界に認定した管理局の目は節穴だね、まったく。

 尤も、私にしたって彼女達(・・・)の出身世界ということで認知していたが、魔法技術が存在しない管理外世界ということでそれ以上調べる気を起さなかったから同類なのだろうがね。

 

 それ以外にも、この世界の科学技術には目を見張るものがある。魔法を用いずに宇宙産業にまで足を進めているというのは素直に称賛に値するものだ。今はまだスペースシャトルの段階であるが、いずれSFアニメに登場する様な宇宙船が現実となる日も来るだろう。

 そうなった時に管理局の連中、特にご老人方がどういった反応をするのかが愉しみでならない。

 

 

 

 さて、まだ幼子である私は、前世も含めて初めて得た父と母の後押しもあり、その称賛に値する科学技術の最先端の技術を利用し、思いついた発明品をジャンクパーツで造る日々を送っている。だがいくら金銭面に多少の余裕があるとはいえあまり彼らに負担を強いりたくないため、現在は『自立型対変質者防犯ロボット』を開発している最中だ。

 春先になると幼児や女性に対し自慢にもならない局部を見せつけるという変質者が発生して困るという母の言葉から思いついたものだった。このロボットが完成すればそんな下らない人間は減り、このロボットの有用性に気付いた存在が接触を図ってくることだろう。後は発明品の特許を取り、寄ってきた存在に図面を公表して造らせればお金が入る。そしてそのお金を新たな発明品の開発費用に充てる……うん、実に理想的なサイクルだね。

 

 そして本日、そういった考えの元完成した試作品を公園にてテストしてみることにした。所謂公園デビューといったものだろう。意気揚々と公園に辿りついたのは良いのだが、その場に無粋な先客がいた。

 その先客――今の私とそう変わらない年齢の茶色の髪の子供はただ一人、ブランコに座って俯いていた。座っていただけならば別にどうとも思わない、ここは公共の場であるため、私以外の誰かが何をしようが関係無かった。だが、子供は陰鬱な空気を醸し出していたのだ。

 折角人が嬉々とした気分で公園にやってきたというのに先客がそうであったため、随分と興が削がれてしまった。しかし、だからといって場所を移す気も日を改めてテストを行う気も無かった私は、早々にこの場を立ち退かせようとその子供に近付いた。

 

 私が近付く気配に気付いたのか、子供は肩を跳ねさせた後、俯かせていた顔を恐る恐る上げた。その澄んだ青色の瞳と彼女(・・)の面影がある幼い顔立ちに、この子供が一体誰であるのかを推測する。私の幼馴染にして観察対象兼幼馴染である達君から聞いた話にも合致するため、その推測は正しいだろう。

 子供を公園から追い出そうと思っていたが、それが彼女であるのならば話は別だ。前世の私の野望を阻止した機動六課のメンバーである彼女は興味対象の一人だ。故にここで仲良くなって、近くから観察できる立場になれるならばそれに越したことは無い。

 

 それに、私の作品を見てくれる人が私以外にいないのも、些か詰らないからね。

 

 

 

「いまからこのロボットのどうさテストをするんだが、キミもみるかい? ちょうどいいヒマつぶしになるとおもうよ?」

「ふぇ?」

 

 

 

 涙目になって怯えていた様子から一転して目を丸くした子供――高町なのはの姿を可笑しく思い、私は思わず笑みを浮かべたのだった。

 

 

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