アクセル・ワールドに白龍皇を! 作:グウィビ丸
ノイズが空を埋め尽くすと、一番酷いノイズからあの夢に出て来た黒き騎士の禍々しい剣よりもっと禍々しく見ているだけでも背筋が凍る様な感覚を覚える程のオーラを放つ黒き邪龍がこの加速世界に降り立つと、
『GYAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』
龍は地に降り立つと、耳を塞ぎたくなるほどの声量を持つ咆哮を放った。
龍が放った咆哮による衝撃波はギャラリー達が観戦しているビルだけでなく、本来なら壊することの出来ない地面さえ破壊し、この《世紀末》ステージを一瞬にして、瓦礫の山と化した。
「全くこんなエネミーが現れると思ってもなかったよ」
何処か達観した様な感じでオレの隣に来たディエンドは、オレの向き合ってくる。
「今日は情報屋としてキミに顧客になって貰おうとしたのにこんな事になるとはね。困ったものだね?」
「別に顧客に関してはある程度要望を答えてくれるなら別にイイがアレはどうするんだ?」
「バーストリンカーたる者、「加速したなら戦闘あるのみだろ」勝手に人のセリフを取らないでくれたまえ」
そう言ってディエンドは二連式の銃から光弾を放ちながら、オレは翼で飛翔しながら龍への攻撃を開始した。龍は全くオレ達の事など眼中に無くステージを荒らし回る。オレは上空からのダイブ・アタックによる攻撃を繰り返し、時折来る龍からの薙ぎ払いを避ける。ディエンドも必殺技ゲージを貯めるため光弾を撃ち続ける。
『GYAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!』
そうしている内にちまちま攻撃を仕掛け来るオレ達を等々邪魔と思ったのか、龍は先程よりも凄まじい咆哮を放った。
これにより地上にいるディエンドは咆哮による余波で怯んでしまった。この致命的な隙を見逃す龍ではなかった。龍は、ディエンドを視界に捉えると口から自身のオーラより禍々しさを出す熱線を放った。
先程まであった瓦礫の山は一瞬で灰と化し、ステージを火の海に染めた。邪魔なゴミを排除した龍は此処にもう用は無いのか、翼を広げ、元来たノイズが覆い尽くす空へ戻ろうとすると、
「「何処へ行く気だ?」」
2つの目障りな声を耳にした。
「《
『Divide』
そして、1つの必殺技の発声が聴こえた後に鳴り響いたのは、静かな電子音だった。
しかし、この電子音を耳にした龍は自身の体に
それはまるで自身のチカラが根こそぎ半分まで奪われた様な感覚を覚えたのだ。
龍は自身の体に起こった異変に気を取られている隙に背中に猛烈な痛みが襲ったのだ。痛みの正体を確かめるため龍は痛みの原点へ首を向けると、ノイズが覆い尽くす空でも一様輝き放つ真っ白なアバターが自身の背中に拳を打ち込んでいたのだ。
「よおぅ、会いたかったかクソドラゴン?」
真っ白なアバター、ホワイト・アルビオンは龍の返答も待たずにそのまま背中に拳のラッシュを打ち込んでいく。先程まで全くダメージを与えられなかったのに、今度のパンチはちゃんと龍へと届いており、先程より急速に龍の体力を減らしていく。
龍元つまりホワイト・アルビオンのチカラが上がったのにはあるカラクリがあるのだ。
その正体は、飛行アビリティを発現したその日に共に発現していたアルビオンの必殺技だったのだ。
必殺技名は《
必殺技発動時に翼とアバターに埋め込まれている宝玉から青い光を放つと同時に『Divide』という電子音が鳴り響くのである。
そして、その効果とは、『半減』。
触れた相手のチカラの半分を我が物とし、自身のチカラにプラスという恐るべく効果を持つ必殺技だったのだ。
これによりノイズから出現した黒い龍のチカラの半分を奪い取り、黒い龍の半分のチカラをプラスした自身の拳で黒い龍へとダメージを与えたのだ。
流石にずっとやられっぱなしの龍ではなく、自身に取り付いているアルビオンをすぐ様振り払うが、
「随分と僕たちを舐めまくっているようだね」
《FINAL ATTACKRIDE DDDDEND》
「ディメイションシュート」
左眼へ向けて放たれたエネルギー波により、左眼を失う。
2人の息のあったコンビネーションにより左眼を失った痛みで龍はのたうち回る。意味もなく暴れ回るため距離を置き、観察していた左肩から先を無くしたディエンドの真横に龍元は翼を畳み降り立つ。本来ならディエンドは先ほどの龍が放った熱線に全身を包み込まれ、跡形も無く消し飛んでいたのだが、ギリギリのタイミングで龍元が助けに入ったことで左腕だけで済んだ。そして、左腕を失ったことで生まれたダメージによって必殺技ゲージを満タンにしたディエンドは龍元ことアルビオンの必殺技によって生まれた隙に自身の必殺技を叩き込んだ。
「よし、行けるぞ!」
「安心は出来ない。着々とダメージを与えていこう」
「しっかりとカバーしろよ」
「さっきの借りは返すから安心したまえ」
即席とはいえ作戦が成功したことに2人は密かに喜びながら、追撃を行うため龍へ駆け出す。
▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
結果的に言えば負けた。2人して。
左眼をヤラれてブチ切れた龍は、最初の倍くらいのスピードで俺たちを翻弄した。更に加えるなら、動きのキレも
『親愛なる白き龍へ
さっきのバトルは中々楽しかったよ。
色々アクシデントはあったが、
キミのアバターを知ることができた。
何かあれば、遠慮なくボクに言いたまえ。
チカラになろう。
では、近いうちにまた逢おう』
という内容のものだった。メールにはディエンドの紋章が付いていたためディエンド本人で間違いないようだ。加えて、メールの中にメアドがあった。連絡があればここに送りたまえと書かれていたから、ディエンドのメアドとみて間違いないようだ。ディエンドとの一戦以降、誰からも対戦を申し込まれることもなく学校へ着いた。その後、授業を受けながら美早に話があるとだけメールで知らせておいた。あのエネミーについて美早なら知っているのではと思って。そして、数秒と待たずにOKの返信が来た。
そして、時間は流れて昼休み。
もはや恒例となりつつある美早と直結を行い、今朝あったことを話す。
『——ということがあったんだが、美早はどう思う?』
『バーストリンカーの中でそんなエネミーと遭遇したって言う事は耳にした。でも、リュウが巻き込まれるなんてビックリ』
『ディエンドのヤツも想定外って言っていたけど、アイツは何者なんだ情報屋とか名乗ってたけど』
『彼は元黒のレギオンのNo.3』
『マジか!?』
『マジ』
自分が戦った相手の経歴に驚きを露わにし、思わず持っていたコップを握りつぶしそうになってしまった。また無意識のうちにリミッターを解除してしまったことを恥じてしまう。
『彼の情報収集能力はかなりのモノ。その上、その実力は折り紙つき』
『そーか。悪いなわざわざ』
『NP。私はリュウの親。レクチャーするのは当然』
あの頃から、ずっと美早には助けてもらってばかりいる自分に不快感を感じてしまい、このままずっと美早に甘え続けていくかもしれない自分に嫌気を募らせてしまう。
その結果、
『そう言ってくれるのは有難いが、俺はやっぱり……………美早に頼りたくないな』
『………え?』
最低なことを言ってしまった。
この時、俺は美早がどんな表情をしていたのかはわからない。ただ、くだらないプライドが邪魔をして見れなかった。いや、見ようとしなかった。
『美早だってプロミネンスのサブリーダーとしてやる事があるのに、だから、こんな奴のいつまでかまっ「バカ!」ッ!?』
美早の顔を見ようとせず話していると、普段から物静かな美早が声を上げて俺を怒鳴った。美早の声にビックリしたため、改めて美早に向き合うとしたが引っ叩かれてしまい、それは叶わなかった。そして、思っていた以上に美早は力を入れて引っ叩かれたようで椅子から転げ落ちてしまう。立ち上がって美早に文句でも言おうとしたが、そんなことなど美早の顔を見てしまった時点で消え失せる。
なぜなら、
彼女が瞳に涙を溜めて今に泣き出しそうな顔をしていたから。
「っ!?」
この時、漸く俺は気づくことができた。
美早を深く傷つけたこと。
「ご、ご———」
「———もうしらない!」
俺の謝罪なんてクソ喰らえかのように美早は言葉を遮り、走って出て行ってしまった。追いかけようとしたが人混みで見失い、昼休みが終わるギリギリまで探すものの美早にきちんと謝ることができなかった。放課後もちゃんと謝ろうとしたが話を全く聴いてもらえず、美早は誰よりも早く帰ってしまう。
自分がしてしまったことへの重大さを痛感し、屋上で電話やメールを送っても美早は返信してくれなかった。屋上で来るはずの返事を待っていると、
「オヤ?先客ガイマシタカ」
「ショーン先生?」
担任のショーン・コネコネ先生が屋上のドアを開けて入って来た。そして、ショーン先生は入ってくるや否や俺の隣へ腰を下ろす。
「彼女サンと喧嘩ヲシタヨウデスネ?」
「美早は彼女じゃないですけど……俺が傷つけたのは事実です」
「彼女ハ何ト?」
「いえ、何も。話を聴いてもらえず仕舞です」
「ソレハ困リマシタネ」
「いえ、当然です。今までも色々助けてくれたのに、俺の自分のくだらないプライドの際で……」
もう美早との関係は元には戻らないとネガティブなことを考えていると、いきなりチョップを喰らわされる。
「イデッ!?」
「ソコマデ反省シテイルノデシタラ、尚ノコト謝ルベキデス!!どんな方法デモ貴方ノ想イヲ彼女二伝エナケレバ、彼女ハ貴方ノ気持ちヲ理解デキマセン!逆モまた、然リナノデス!!」
割と痛かったため頭を抑えようとすると、ショーン先生が頭を撫でながらどうするべきなのかを伝えて来てくれた。
「……ありがとう先生。ちょっと荒療治かもしれないけど聴いてもらうよ」
ちょっとショーン先生を父親みたいだなって密かに思いながら、荷物を片付け、バイト先であるパティスリー・ラ・プラージュに電話をかける。すると、運が良かったのか美早が出てくれた。
「美早、俺だ!切らないでくれ!!」
「……………………」
「営業中なのにゴメン!!それと、さっきは本当にごめん!!すまなかった。俺のくだらないプライドの際で、美早を傷つけたこと、美早の気持ちを全く理解しようとしなかったことをちゃんと謝らせてくれ」
「……………………」
「幾らでも殴っても、クビにしてくれても構わない。だから、お願いします。ちゃんと面と向かって謝りたいから……俺は美早に逢いたい」
「………………K」
「ありがとう。それと本当にごめん。ワガママばっかり言って」
「もうSRYはいい。リュウが何でも私の言う事聞く権利、今日使うK?」
「ああ、何でもすると言ったのは俺だ」
「明日は休日。学校休み。だから、今晩リュウの家に泊まるから迎えに来て」
「え?」
「返事は?」
「えぇ!?わわ、分かりました!!」
「19時丁度に店まで迎えに来て」
「ちょッ!?美早『プツン』……マジか」
ちゃんと面と向かって謝る機会を与えてもらったが、とんでもないモノを要求されることになるとは予想外だった。半ばヤケクソ気味になりながら、きちんと美早に謝れると気持ちを切り替えてるのであった。
ちょっと書き切れなかったので、次回へ持ち越します。
次回は少々甘々な展開になります。
それでは次回もいつになるかはわかりませんが、でき次第投稿しますので気長にお待ちください。