艦これの世界に引きこもりの青年がやってくるそうですよ? 作:因幡凛空
本格的な描写でのリク君達の戦いっぷりをご覧ください。
演習での経験から、海上での移動に慣れなければ話にならない事が分かったため、翌日不知火の指導の下、プールで移動の練習をすることにした。彼女、指導出来る事が分かった瞬間妙に張り切りだしちゃって、厳しく教え込まれた。
不知火「上出来です」
リク「大分慣れてきたな」
不知火「では、今日はここまでにしましょう」
リク「おう」
30分ほどで移動にも慣れてきたため、ここで一先ず練習を終えることにした。
このあと陸に上がり、あそこで俺達の練習の様子を見ていたいつものメンバーの下へと向かう。不知火によれば海上での移動はいかにバランスを取れるのかが課題らしく、慣れるまでにはそれほど時間はかからなかった。
その後朝食を終えてしばらく経った後、今から読み上げる部隊に所属する艦娘は10時30分にグラウンドに集合して欲しいというアナウンスが入った。どうやら、この鎮守府から少し離れた各3ヶ所に敵の生体反応があったらしい。
その呼ばれた一つの部隊にプリンツちゃん、陽炎型トリオも所属しているらしく、さらに3つの部隊の後、俺の名前も読み上げられたため、彼女達と一緒にそこに向かうこととなった。
グラウンドには、呼ばれた部隊に所属すると思われる艦娘達が集まっていた。
リク「これで全員なのか?」
プリンツ「みたいですね、皆読み上げられた部隊に所属する人たちですよ」
リク「うーむ……」
辺りを見回してみるも、浜風、鹿島、浦風の姿はなかった。
リク「あの3人がいないな……」
陽炎「3人はさっき呼ばれたのとは別の部隊に所属しているからね」
リク「理解」
それじゃあ共に戦うことは出来ないな、残念だ。
その他には、一昨日演習にて大活躍を見せた時雨や夕立、秋月や照月の姿も見え、空母勢の4人の姿も目に映った。
後の艦娘も確認しようとするが、その前に長門さんと陸奥さんがやってきたため一先ずは一瞥をやめる。
長門「ええ、今回皆に集まってもらったのは先ほども読み上げたとおり、この鎮守府から少し離れた各3ヶ所に敵の生体反応があった。諸君にはその迎撃に向かって欲しい。迎撃担当は一番強力な反応があった東に赤城率いる空母機動部隊、弱い反応の西に夕立率いる水雷戦隊、そして南にプリンツ率いる水上打撃部隊がそれぞれ向かってくれ」
一同「はい!」
陸奥「それと、リク君は南を担当する部隊と同行してね」
と陸奥さんが俺に指示を出す。
陸奥「そっちは他の部隊よりも数が少ないから、補強として向かわせるわ」
リク「分かりました」
聞けば、プリンツちゃんの率いる部隊は一枠の空白があり誰も入る予定がなかったとのこと。おそらく、プリンツちゃんが俺をここに連れてきたことを受けて、一番彼女と信頼関係が持てる俺を入れるつもりだったのだろう。
長門「それでは、ご武運を祈る」
そう言い終えると二人は去っていった。
プリンツ「それでは行きましょう!」
リク「待って、今この場にいるのは5人だけど、もう一人は誰が所属しているの?」
ビスマルク「私よ」
リク「ビスマルクさん!?」
この人も所属していたのか……。
リク「ま、まあ予想は出来ていましたけど」
もちろん、嘘である。
ビスマルク「まあ、プリンツの義理の姉だしね、この子一人だと心配だし」
リク「なるほど……」
不知火「絶対分かってませんでしたよね?」
リク「言うな!」
ビスマルク「別に分からなかったから何か変わるわけでもないわよ」
リク「ですよね」
プリンツ「雑談はいいから早く行きますよ!」
5人「あ、はい」
プリンツちゃんがやる気に満ち溢れている……。俺もこれが初めての出撃で敵と相見えるので、彼女に負けないようやる気全開で行くぞ!
この後、出発地点である湾岸へと足を運び、海面に立ち出撃準備が整った。
ビスマルク「さあ皆、私が旗艦を務めるからしっかりと着いていらっしゃい」
リク「他の部隊はもう出発したのかな?」
プリンツ「はい、後は私達だけです」
ビスマルク「それでは抜錨、出撃よ!」
プリンツ「あの、それ本来は私の台詞なんですけど……」
ビスマルク「ちょっと言って見たかっただけ」
この人、意外とお茶目なんだな……。
ビスマルク「大丈夫、あの台詞は今回限りだから」
プリンツ「絶対ですよ?」
ビスマルク「分かってるわよ」
プリンツ「それでは、プリンツ部隊!出撃します!」
リク「何その名前……」
そう心の中で突っ込んだ。
さて、生体反応は80mほど離れた場所に確認されたらしく、そこに向かうことに。
ビスマルク「おそらくここね」
リク「やべ……うまく出来るか不安になってきた……」
出撃前は自信満々だったにも関わらず、ここに来て突然何かミスをやらかして部隊の皆の足を引っ張らないかという不安が押し寄せてきた。
それどころか、俺のミスによって皆に壊滅的被害が及ぶのではないかという、最悪な方向に考えてしまった。
ビスマルク「どうしたの?」
リク「俺、ここに来て不安になって来ました……自分のミスでこの部隊が壊滅的被害を被るのではないのかと……」
ビスマルク「私も初めての出撃ではあなたみたいな不安を抱いていたわ」
プリンツ「当然、私もそんな感じでしたよ」
リク「マジか……」
陽炎「皆、初の実戦は不安を抱くものなのよ、だから気にしなくてもいいんじゃないかな?」
不知火「そんなことを気にしていては戦いに支障が出ます、最悪な方向には考えないようにしましょう」
黒潮「大丈夫や、うちらが着いてるで」
リク「ありがとう、皆」
どうやら、俺のさっきみたいな不安を抱くのは当然らしい。それを聞いて幾分気持ちに余裕が出来た。
皆、悪い方向に考えるもんなんだな。世の中完璧な人間はいないということを実感させてもらえるやりとりだった……とその時。
プリンツ「皆さん!敵影です!」
とプリンツちゃんが叫ぶと、前方の海面に3体の影が見えた。
ビスマルク「皆!戦闘準備に入って!」
??「「「シャアアアァァァァ!!!」」」
リク「うおっ!」
プリンツ「来ましたね!」
陽炎「不知火!黒潮!迎え撃つわよ!」
不知火・黒潮「おお!」
そしてそこから3体の駆逐イ級が現れ、その内の1体が口の中にある主砲から陽炎目掛けて砲撃を放ってきた。
陽炎「甘いわ!」
それを難なく避けた彼女はそこから反撃に転じてその個体を倒し、続いて不知火と黒潮も別の2体を仕留める。俺は彼女達と初めて会った時に感じていた息のあったコンビネーションをまじまじと見つめていた。
不知火「ざっとこんなものです」
黒潮「リクはん、見てた?」
リク「ああ」
プリンツ「また来ます!」
イ級「シャアアアァァァ!」
すると再び前方からまた敵影が現れ、そこから別の個体が飛び出して来た。
リク「やってやろうじゃねえの!」
咄嗟に砲口を奴に向け、先ほど3人がやって見せたように速攻で撃沈させる。殺られるまえに殺って見せた。
プリンツ「敵に攻撃される前に倒すなんて……」
ビスマルク「リク君、あなたすごいわね」
リク「すごくはないですよ?3人の真似をしただけです」
本当に彼女達の真似事をしただけなので実際はそれほどすごくはないと思う。攻撃される前に倒したというのもただのまぐれだろう……なんて考えている俺の背後から、今度は軽巡ホ級が現れた。
プリンツ「やあ!」
それに反応したプリンツちゃんが瞬時に俺の背後に忍び寄るホ級を仕留める。
プリンツ「リク君!油断は禁物ですよ!そこで気を緩めると大変です!」
リク「あ、ごめん」
ビスマルク「初めてだから無理はないと思うけど、戦場では常に警戒を怠らないでね」
リク「以後気をつけます……」
今度からは気をつけないとな……。俺は奴の接近に気づけなかったから、もしあの時プリンツちゃんの反応が遅れていたらと思うと恐ろしくてたまらない。
また死ぬのは嫌だからしっかりと反省するとしよう……。
陽炎「また別の奴らが来るわ!」
リク「まだいるのか」
黒潮「今度は重巡と雷巡やな」
そこに先ほどの個体よりもさらに強力な深海棲艦、雷巡チ級と重巡リ級がそれぞれ2体ずつ現れた。
おそらく、奴らが主力なのだろう。チ級は女性の身体に近くなってるし、リ級はもう完全に女性体となっている。
ビスマルク「ここは役割分担しましょ」
5人「はい?」
ビスマルク「まず重巡を私がやるから、あなた達は雷巡をお願い」
プリンツ「分かりました!」
リク「それじゃあ陽炎型トリオ、俺とプリンツちゃんの二チームに分かれようか。まとめて相手にするのもいいが、それよりも分担してそれぞれ相手にして倒すほうが合理的だからな」
陽炎「分かったわ、そっちはよろしく!」
リク「おう!」
こうして役割を決め、4人とは一旦別行動を取ることに。
ビスマルクvs重巡リ級2体
ビスマルク「さあ、かかってらっしゃい」
リ級2体「……」
ビスマルクに促されるがまま、2体の重巡リ級が挑発に乗るように砲撃を放つ。
ビスマルク「効かないわ」
だが2体が放った砲撃は彼女には通用せず、当たったはずの砲弾は弾かれて水中に落下し沈んでいった。
ビスマルク「いい?砲撃というのはこういうものよ!」
逆に彼女の放った砲弾が、1体のリ級を沈める。
リ級「ッ!?」
仲間が一撃で倒されたのを見たもう1体は連撃によって彼女を沈めようとするが、焦っていたためかすべて不発に終わり……。
ビスマルク「では、さようなら」
彼女に砲弾を命中させられ撃沈した。
ビスマルク「ざっとこんなものよ」
まさに秒殺である……。
陽炎型トリオvs雷巡チ級
陽炎「3対1、おとなしく退散してくれれば見逃してあげてもいいけど?」
不知火「あなたに勝ち目はないです」
黒潮「ほな、どうするんや?」
トリオは対峙している雷巡チ級に降参の猶予を与えるが……。
チ級「……ッ!!」
チ級はなめるなと言わんばかりに砲撃を放ち抵抗してくる。どうやら逃げる気はさらさらないようだ。
陽炎「あくまで私達とやり合うってわけね」
不知火「しょうがありません、ここは散っていただきましょう」
黒潮「覚悟するんやで?」
チ級「……ッ!!!」
トリオはチ級を包囲するように陣形を組み、逃げ道を封じた。
チ級「……ッ!!」
周囲を囲まれ逃げ場を失ったチ級は砲撃で抵抗するものの……。
陽炎「私達を本気にさせた時点で、あなたの負けは決まっているの」
不知火「それでも諦めないのは賞賛に値しますが……」
黒潮「でもな、それを無駄なあがきと言うんやで」
3人「さようなら」
トリオをやる気にさせてしまったチ級にもはや逃げ場などなく、3人の集中砲火によって倒された。
3人「任務完了っと」
リク・プリンツvs同名
リク「さあやるk……」
チ級「……ッ!!」
リク「やべ!」
プリンツ「横に避けましょう!」
こちらが戦闘態勢に入ろうとするなり先制攻撃を仕掛けてきたチ級だったが、サッと難なく避ける。
チ級「……ッ!?」
リク「これでも食らえ!」
プリンツ「えいっ!」
奴の先ほどの攻撃を回避した後背後に回りこみ、お返しと言わんばかりに息ぴったりに反撃を仕掛け命中させる事に成功した。
リク「決まった!」
チ級「……ッ!?」
プリンツ「効いてるみたいですね!」
リク「それじゃあ一気に畳み掛けるぜ!」
チ級「……ッ!!」
だが奴も負けじと反撃してきたためそれを回避した。
リク「危な……」
プリンツ「まだ弱い部類とはいえ、そう簡単に倒させてはくれませんね」
リク「ああ……だがあいつの攻撃の中で一番脅威なのが雷撃なんだよな……」
プリンツ「雷巡ですからね」
その間にも、奴はこちらを仕留めようと砲撃の手を緩めなかった。それでも何とか避けていく。
リク「なんとか雷撃をぶっ放してくるまでに仕留めたいな……」
プリンツ「でも攻撃が激しいから反撃に転じれないし、このままだと次第にジリ貧になっちゃいますよ」
リク「早いとこカタつけねえときついな」
だがそうしようにも奴の砲撃が鳴り止まない以上は……。いや、待てよ?艤装を破壊すれば奴は何も出来なくなるんじゃないか!?
そう思い立ち、奴の猛攻を回避しながらプリンツちゃんにとある作戦を耳打ちする。
リク「いい事思いついちまった!」
プリンツ「なんですかそれ!?」
リク「攻撃手段を潰せばいいんだ!」
プリンツ「なるほど!そうすれば棒立ちに出来ますね!」
リク「おそらく艤装を破壊されたあいつは逃げようとするだろうから、直ぐに逃げ道を封じるように立ちふさがって、そのままジエンドって寸法だ!」
プリンツ「いいですねそれ!」
よし!実行しよう!
リク「俺があいつを引き付けるから、君はその隙に艤装を破壊するんだ!」
プリンツちゃん「はい!」
リク「こっちだぜ!」
チ級「……!!」
奴を引き付けるため、わざと砲撃を外し注意をこちらにそらす。
プリンツ「行きます!」
チ級「……ッ!?」
俺の思惑通り、奴はこちらに意識が集中し、その隙を突いてプリンツちゃんが砲撃で奴の艤装を破壊した。
リク「トドメと行くか!」
プリンツ「はい!」
チ級「……ッ!!」
艤装が破壊され何も出来なくなった奴はその場から逃走しようとするが、もちろん逃がすわけには行かないためすかさず奴を囲い逃げ道を封じた。
リク・プリンツ「行けぇ!」
そして、奴は一歩も動けないまま艤装を破壊した後すかさず挟み込むという俺の作戦によって倒されたのだった。
リク「終わったな」
プリンツ「リク君のあの作戦、完璧です!」
正直前と後ろに陣取っただけで左右には普通に逃げ道があったためそこから逃げられる可能性はあったが、ああいう作戦を決行した上に逃げるという選択肢まで消そうとした俺達を前にさすがに観念したのか、そのまま棒立ち状態で一切動くことはなかった。
今回こうやって初めて敵と戦い倒したわけだが、ふと俺の中で正体不明の罪悪感がこみ上げてきた。
リク「……」
プリンツ「リク君?どうかしました?」
リク「いや、なんでもない」
多分、それは敵とはいえ殺めた事なんだと思う。放っておけばいずれ取り返しがつかない事態になる恐れがあるため倒すのは当然の事なのだが、それでもどうも落ち着かない。これについてはひたすら慣れるしかないな……。
その後、俺達に続いて敵の討伐を終えたビスマルクさん、陽炎型トリオと合流し、鎮守府へと帰還したのだった。