艦これの世界に引きこもりの青年がやってくるそうですよ? 作:因幡凛空
プリンツ「第一水上打撃部隊と第二水雷戦隊の連合艦隊、ただいま帰還しました!」
大淀「お疲れ様です」
出撃から帰還した俺たちを3日前と同じように大淀さんが出迎えてくれ、手に持っているメモ用紙にメンバーのダメージ及び敵の撃破状況を記録している。
彼女はこうやって帰還した艦隊の成果を記録する役割を担っている。今回は潮が少しながら傷を負ったもののそれ以外は特に大きな被害は無く鎮守府に帰還する事が出来た。
潮「少し被弾してしまいました……」
リク「大丈夫?」
潮「はい、このくらい大丈夫です……」
何せ初出撃ながら敵の半数以上を撃沈させたのだから、多少なりともダメージを負う事は仕方ない。
プリンツ「(リク君)」
リク「(どうした?)」
プリンツ「(深海の統率者と出くわした事を伝えましょうかね……)」
リク「(いや、伝える必要はないと思う。交戦しなかったんだし)」
プリンツ「(分かりました)」
大淀「二人ともどうしました?」
リク「なんでもないです」
プリンツ「はい」
大淀「ならいいんですけど」
まあ、伝えないほうが賢明だな。記録係の彼女を混乱させるわけには行かないし。奴らに忠告された事も今は俺とプリンツちゃんの心の中に留めておこう。
大淀「では潮さんは入渠するとして、他の皆さんはどうしますか?」
リク「お願いします」
プリンツ「私達もダメージは負わなかったとは言え、疲労抜きは大事ですし」
ビスマルク「それに出撃の後は入渠が基本ですしね」
陽炎・不知火・黒潮・浜風・鹿島・浦風「お願いします!」
大淀「分かりました、ではそこの入渠施設の中に入ってくださいね」
一同「はい!」
入渠は言い換えれば入浴なので、疲労も回復する効果がある。たとえノーダメージだとしても疲労は蓄積されると後に響くため、基本的に帰還後は全員入渠することにしているのだ。
リク「なあプリンツちゃん」
プリンツ「はい?」
リク「やっぱり男子風呂ってないよねここ……」
プリンツ「そもそも男の人が来るなんて想定してませんからね、明石さんに頼めば職人妖精さんを通して造ってもらえるかもしれませんが」
リク「わがままは言えないな……」
当然というか、今入渠しているのは俺を除いて全員女の子だ。現実ではまずありえないシチュエーションであり、混浴を除けば即捕まるレベルと言ってもよい。
もちろんそんな状況で全裸になるわけにはいかないので入っている間は海パンを着用しているものの、それでも第三者視点からすれば一人の変態野郎が女子風呂に忍び込んでるようにしか見えない。無論彼女達も大事な所が見えないよう水着を着用している。
最初はほぼ全員が俺が湯に浸かっているのを変な目で見ていたが、最近では慣れた為か平然としている。それはそれでいいのだが、俺からすれば無理している感も否定できない。自分も風呂に男一人のため今だ恥ずかしいし、しかも慣れる気がしない。
数分後、バケツがかけられ傷が癒えた為俺たちは風呂から上がる。プリンツちゃん達は自分の着替えが入っているロッカーの前に立ち、俺はすぐ近くにある個室に入っていく。
勿論、彼女達が着替えてる横で俺がいたら間違いなく他の子達からの印象が悪いし、絵面的にも極めてよろしくない。陽炎達からの評価も著しく低下してしまうだろう。まあ、プリンツちゃんは大して気にしてないと思うが。
リク「さて、そろそろ終わったかな」
着替えを終えて2分ほど経ったため、個室から出た俺だが……。
プリンツ「あっ……」
リク「……」
ガチャン
プリンツ「なんで戻ったんですかね?」
ビスマルク「早く着替えを終えなさい……」
プリンツ「はわっ」
リク「プリンツちゃん……まだ着替えてなかったのかよ……」
そんなこんなで入渠を終え、司令室にて長門さんに戦果の報告を行った後、食堂に向かい昼食を取った。戦いを終えて帰ってきたためか結構お腹が空いていたため、ご飯を3杯もおかわりしてしまった。他の皆は鹿島を除いて6杯だった……。
リク「ふう食った食った」
不知火「もう少しおかわりすればよかったですね」
リク「いやまだ足りないのかよ」
不知火「別にそういうわけでは……」
プリンツ「私はまだ食べたかったです」
リク「俺はもういいよ……」
ビスマルク「艦娘たるものたくさん食べて体力をつけないとね」
リク「つまり俺も見習えと?」
ビスマルク「別にそういうわけじゃないわよ」
陽炎「リクったら言葉通りの解釈しすぎよ」
リク「すまん……」
それにしても入渠したおかげで疲労は取れたものの、これからどうしようか。長門さんから今日はゆっくり身体を休めろとは言われたものの……。
とりあえず、部屋に戻って寝るか。
リク「ん……ど……どこだここは……」
ふと目をあけると、真っ暗な闇が広がっていた……。確か俺、ビスマルクさん達と別れた後、プリンツちゃんと一緒に眠りについていたはずだ……。だが彼女の姿はここにはない……。てことはこれは俺の夢なのか……?にしては現実的過ぎないか……?
??「思イ知ラセテヤル……我々ノ……海異鬼ノ恐ロシサヲ!」
リク「ッ!?」
突然、何者かの声が聞こえてくる……。海異鬼って言ってたよな……?
??「マズハ、一人ノ人間ガヤッテキタラシイアノ鎮守府ノ奴ラヲ血祭リニ上ゲル!」
リク「何言ってるんだ……!?」
何なんだよ……。何で俺達がいる鎮守府を狙ってやがるんだ!?しかも奴は俺があそこにやってきたことを知っている……。俺の動向を監視していたとでも言うのか……?分からない……。
それに奴らは深海棲艦が制海権を奪取したことによって海が汚染された結果、無念の内に果てた海洋生物の怨念が実体化して生まれたと聞いているぞ?攻撃する標的が違う!
おそらくこれがビスマルクさんの言っていた艦娘を自分達が死んだ要因を作った元凶と見ているという事なのか……。
何にせよ、これは皆に伝えるべきか?それとも深海の統率者と会った事のように内密にすべきなのか?とりあえずは早くこの薄気味悪い空間から脱出したい……と俺が願った直後、ここで意識は途切れた……。
リク「うーん……」
プリンツ「あ、目を覚ました」
リク「プリンツちゃん……」
目を覚ますと、プリンツちゃんが心配そうな眼差しで俺を見つめていた。
プリンツ「大丈夫ですか?随分魘されていたみたいですけど……」
リク「あ……ああ」
プリンツ「変な夢でも見ました?」
リク「ちょっとな……」
プリンツ「でもなんともなくてよかったです」
あれは海異鬼が見せた悪夢?それとも統率者の一人が言っていた事の暗示だったのだろうか……。とりあえずあの事はプリンツちゃんにも言わないことに……いや、彼女にだけは伝えておくべきかもしれない。
リク「実は……」
プリンツ「なんでしょう?」
リク「俺、奇妙な夢を見たんだよな……」
プリンツ「奇妙な夢?」
リク「ああ……」
俺は彼女に夢で見た事の詳細を伝える。
リク「というわけなんだ」
プリンツ「なるほど……海異鬼がここを襲撃することをほのめかしていたと」
リク「ああ、過去にも海異鬼が襲ってきたことってあるのか?」
プリンツ「はい、何度かありましたね。そのたびに数多くの艦娘達が傷を負いましたが、死人は出ませんでしたよ」
リク「そうか……」
だが奴らによって命を落とした人は数多いだろうな……。この鎮守府の皆はおそらく戦闘慣れしているから死者が出なかったのだろうが、他の鎮守府の艦娘はどうなんだろう……。
プリンツ「彼らは水中型と陸上型、それに加え空中型の3つに分けられるのですが、襲ってきた海異鬼はほとんど陸上型ですね」
リク「ふむふむ……」
奴らにも種類があるな……。これは俺の独断だが多分彼女たちにとって一番不利なのは空中型だな。空を自在に駆ける敵相手には標準を合わせ辛いし、なにより滞空時間が長すぎて低い位置に中々下りてこないという事態にもなりうる。まあ、これは某狩ゲーをやったことがあるため持ち出した考えにしかすぎないが。
リク「なあ、伝えようか……?」
プリンツ「いや、接近に気が付いたらアナウンスがあると思うのでわざわざ伝える必要はないと思います」
リク「そうか……」
プリンツ「それよりももう一眠りしますか?」
リク「そうするよ……」
そう返答して俺は再び目を閉じる。
プリンツ「おやすみなさい」
男性船員「前方後方、左右何の異常もありません」
船長「そうか」
波も風も穏やかなどこかの海域にて、海上を航海している一つの船があった。四方のどこにも異常はなかったように思えたが……。
ガシャン
船長「なんだ!?」
女性船員「船長!下のほうから強い衝撃とともに何かが衝突した模様です!」
船長「なんだと!?」
突然船底から強い衝撃が聞こえてきたのだ。周囲には岩らしきものは確認できず、衝突するような要素は何一つなかったにも関わらずだ。
船長「深海棲艦の仕業か!?」
女性船員「潜水艦でもなければそれは不可能です!ですがそれらしき影は海面からは確認できず……」
船長「じゃあ一体何が……まさか!?」
船長が感づいた時にはもう既に遅く、一瞬の内に大穴が空けられ姿勢を維持できなくなった船は海の底に沈んでいった。
そして、そこの海中にいた5体ほどの角を生やした生物のような影が共に沈んだ船員達を捕食し、姿を消したのだった……。
船を襲撃したのは恐らく……。