艦これの世界に引きこもりの青年がやってくるそうですよ?   作:因幡凛空

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20話 総力戦 中編

いよいよその姿を現した巨大飛行型海異鬼「ヴァルチャー」。

明らかなデカブツで倒せるかどうかは怪しく、手下共の放つ砲撃すらまともに当たれば一発で中破する可能性が高いというのに、さらにそのボスであるあいつが放つ砲撃の破壊力など想像するだけでも恐怖で身が縮んでしまう。だがそれでも俺達は奴を倒さなければならない。この世界を救う勇者の名に掛けて。

 

リク「プリンツちゃん、あいつは真正面から立ち向かって勝てる相手か?」

プリンツ「ただ闇雲に突っ込んでしまえば間違いなく返り討ちに会います。だから精密な戦法を用いないと……」

リク「だよな……」

 

奴は空高く飛翔していてそのまま砲撃しても大したダメージは与えられないはず。配下の奴らみたいに低空飛行になったところに砲弾をぶっ放したいわけだが……。

 

ヴァルチャー「ガァァァ……!!」

飛行海異鬼「フシャアアアァ!!!」

 

奴は子分に指示らしきものを出し、こちらに襲わせた。

 

陽炎「来るわ!」

黒潮「砲撃やで!」

不知火「沈め!」

 

すかさずトリオが子分を撃墜しようと砲撃を放つが……。

 

飛行海異鬼「フシャアアアァ!!!」

 

なんと攻撃を容易くかわした後、砲撃しながら突撃するという今までに見せなかった挙動を起こし、トリオが避けようとするも……。

 

トリオ「ぐっ!」

 

明らかにスピードの増した状態で放たれ勢いに乗ったその砲撃を避けきることが出来ず被弾してしまう。

 

リク「あいつら早くなってねえか!?」

プリンツ「ボスが指示を出したせいか子分たちの動きが俊敏になってます!」

 

これが奴らの本気というわけか……。ボスがいることで張り切りだしやがった……。いいとこを見せようとしているんだなあいつら……。生意気すぎる!!!

 

リク「3人とも!大丈夫か!?」

陽炎「別になんてことないわ!」

黒潮「ちょっとかすっただけや!」

不知火「お気になさらず!」

 

さすが戦い慣れてるだけはある……。3人ともダメージを負っても意にも介してないようだった。多少のダメージなどどこ吹く風の様子。数多くの戦いを乗り越えた身ならばあれくらいどうという事はないということか。

 

リク「早く周りの雑魚を仕留めないと戦況が苦しくなるぞ……」

プリンツ「ですね……」

ビスマルク「リク君!プリンツ!危ない!」

リク・プリンツ「ッ!?」

飛行海異鬼「フシャアアアァ!!!」

 

ビスマルクさんの声とともに後ろを振り返ると、そこに不意を突いた海異鬼が俺たちの背後にいたのだ!いつの間に背後を取ったんだ!?やはり動きが俊敏になっている影響だというのか……。

 

リク・プリンツ「……!!」

潮「危ない!」

飛行海異鬼「フシャア……」

 

不意を突かれ零距離から攻撃を食らいそうになった俺達だったが、間一髪それに気づいた潮の砲撃が敵を沈め事なきを得た。

 

潮「大丈夫ですか?」

プリンツ「問題ないです」

リク「ありがとう」

潮「いえいえ」

 

危ねぇ危ねぇ……。ちょっとでも遅れたら被弾していたところだったぜ……。あの時の教訓がまったく生かせてない事に、俺は恥ずかしくて恥ずかしくてたまらなかった。こんなんじゃこの世界を救う勇者として示しがつかねえよ……。

 

潮「二人とも、子分の海異鬼はボスがいる影響で勢いを上げてスピードが増しています。おそらくそのまま動きを捉えることは厳しいでしょう」

 

やっぱりな……。

 

リク「じゃあどうすれば……」

潮「あのボスを倒すしかありません」

 

ボスを失えば群れの求心力が低下し、奴らの勢いが弱まるってことか。それならやることは一つしかない。

 

潮「それに、彼は普段は子分に戦いを任せ、敵が自分に近づいてきた場合にのみ攻撃してくるようです」

プリンツ「ってことは?」

潮「彼に接近して叩くという戦法が有利と思われます」

リク「なるほどな」

 

だけど子分共のスピードが速くなっている以上、あいつとの戦いに専念するってのはちょっと厳しくないか?仮に近づいたことが出来たとしても、子分共に邪魔されるのがオチだと思うが……。

 

リク「でも子分は……」

プリンツ「いえ、配下は皆に任せてボスを私とリク君で相手にすればちょうどいいじゃないですか!」

リク「う……うむ……」

潮「私たちのことは心配いりません。もし子分がリクさん達に襲いかかろうとしても私達が何とか食い止めて見せます。だから安心してください」

リク「わ……分かった……」

 

他の皆で周囲の雑魚を任せ、俺とプリンツちゃんで大将を倒す……。これ結構完璧な流れなんじゃないか?ヒロインと共に敵の総大将を倒すというどこか王道な気がする展開やな……。

 

潮「では、ご武運を!!!」

リク・プリンツ「おう!(はい!)」

 

彼女は俺達の安全を信じ、他の皆に襲い掛かっている最中の海異鬼の元に向かって行った。

俺達も子分に戦いを任せ踏ん反り返っているボスの迎撃に向かうとするか。

 

リク「俺達も行こうか」

プリンツ「はい!」

 

奴は相変わらず高いところを飛翔しており、こちらが自分の元に向かおうとしていることに感づいていないようだ。ふざけた奴だぜ。自分は戦わないくせに子分共には偉そうに命令する。

……あれ?これ俺が言えたことじゃないよな。だって俺もここに来る前は自室に引きこもって……なんてそんなことは今はどうでもいい。戦場に私情を挟んでいる暇はない。

 

ヴァルチャー「ガァァァ……」

リク「あの野郎余裕だな……」

プリンツ「手下に任せれば自分は戦わなくていいっていう魂胆なんでしょうね」

リク「だがその余裕もここまでだ」

プリンツ「ですね!」

 

あちらから来ないのならこちらから近づくまで!先手必勝だ!

 

飛行型海異鬼「フシャアアアァァァ!」

リク「邪魔だ!」

プリンツ「そこをどいてください!」

飛行海異鬼達「フシャァ……」

 

ボスに近づかせまいとこちらに向かって遠距離攻撃を放ってくる海異鬼達だが、難なく避け即座に反撃して仕留めていく。お前達の攻撃なんざもう見切ったってんだよ!

 

ヴァルチャー「ガァァァ……!」

 

やがて自分目掛けて接近してくる俺達に気づいたのか、こちらに標準をあわせた奴は攻撃態勢に入った。お前の静観の時間はここまでだ!

 

ヴァルチャー「ガァァァ!!!」

 

バァン

 

大きな轟音とともに翼の主砲から放たれた砲撃は、子分共の物よりも桁違いのスピードでこちらに向かってくる。あんなのまともに食らったらワンパンでやられるだろう。もはや戦艦すらも一撃で轟沈してしまいそうだ。

 

ザバァン

 

リク・プリンツ「うわっ!」

 

何とか避けるものの、海に着弾した時の衝撃でバランスを崩しそうになってしまう。

 

ヴァルチャー「ガシャァァァ!!!」

 

絶え間なく次々と攻撃してくる大型飛行海異鬼ヴァルチャー。普段はじっくりと静観していてやる気が微塵も感じられないが、いざやる気を出すとこうも攻撃が激しいとは。さすがはボス海異鬼と言ったところか。

さて、こちらも攻撃を加えたいところだが、おあいにく相手は相変わらず空高く飛び上がっていてこちらの攻撃は届きそうもない。低空飛行になるタイミングを狙いたいところではあるが、どうもあの位置をピッタリと維持していて一向になる気配がない。

 

リク「どうしたものか……」

 

そう考えてるうちにも、奴の攻撃は激しくなるばかり。そればかりか、口から子分を召喚し始めたのだ。

 

リク「何だあいつ……」

プリンツ「どうやら体内に手下を収納しているみたいですね……」

 

奴を今ここで倒さなければ戦況が苦しくなるのは目に見えている。向こうでは今皆が子分共の相手をしているため、召喚された子分を仕留め損ねあちら側に行かれてしまってはめんどくさい事になる。ただでさえスピードが増して目視できるのにも疲れるのに、数の暴力にまで発展すればいよいよ手がつけられなくなってしまう。一刻も早く攻略法を見つけねば……。

 

リク「どうすればいいんだ!?」

プリンツ「低空飛行になってくれないとなると……ちまちまと遠距離で攻撃するしかないです……」

 

んなもんものすごく時間がかかるじゃないか!今何時かは分からないが、このまま長引けば奴を追い詰めた頃には日が落ち始めて疲労困憊に陥ってしまう。

 

飛行海異鬼「フシャアアアァ!!!」

 

その時、対抗策を考え中の俺達を見て勝利を確信したのか、子分共がグンタイアリの如く隊列を組んでこちらに突撃してきたのだ。一気に決着つけるつもりのようだ。

 

プリンツ「まずいですね!」

リク「……こうなったら」

 

ふとここでいい案を思いついてしまった。

 

プリンツ「リク君……?」

リク「奴が低空飛行にならないなら……こちらか近づくまでだ!」

プリンツ「でもどうやって……あっ!」

リク「そうだ……あいつらを足場にするんだ!」

 

正直、奴らに飛び乗れるかどうかは賭けだ。もし失敗して海面に着地し、バランスを崩した所をボスに狙われたらそのままお陀仏もありうる。だが善は急げだ。失敗したらその時に考えればいい!

 

リク「準備はいいな!?」

プリンツ「はい!」

 

いっせーの……。

 

リク・プリンツ「とおりゃあああぁぁぁ!!!!」

 

腹から大きく声を発しながら、こちらに突撃してくる子分共に飛び移った。

 

飛行海異鬼「ッ!?」

 

子分共は想定外の行動を起こされたためか、組んでいた隊列を崩してしまった。それどころか進路を皆がいる方向からボスの方向に変更してしまった。

 

ヴァルチャー「ガァアッ!?」

 

さすがのボスもこれは予想外のようで、まるで俺の言う事を聞けと言わんばかりに子分に向けて砲撃を放ってきた。これが反面教師というものか。これは一気に畳み掛けるチャンスかもしれないな。

 

リク「ついてこれるか?」

プリンツ「もちろんですよ!私はあなたと共に敵を倒すんですから!」

リク「じゃあしっかりついてこい!」

プリンツ「はい!あとそれ私の台詞ですからね!?」

 

あはは。なんか知らんが言ってみたかったんだ!俺ってかっこいい!?

……今のは聞かなかった事にしてくれ。

 

プリンツ「こんなこと思いつくなんて私達って……」

リク「いいコンビだな!」

 

子分共を足場にジグザグに乗り移りながら、ボスのいる方向へと向かっていく。奴は相変わらず自分の部下に向けて攻撃をぶっ放しており、子分共も想定外の事が重なり呆然としているようだった。

悪いな、ちょっとばかしお前達を利用させてもらうぜ。

 

リク「この距離なら……!!!」

プリンツ「彼に決定打を与えれそうですね!!!」

 

奴との距離約数メートル……覚悟しろデカブツ!!!

 

ヴァルチャー「ガァァァ!!!」

リク「まずは……」

 

あの強力無比の砲撃を真っ先に潰し、奴の攻撃手段を潰す!!!

それが成功したら次は一箇所に集中的に攻撃を当ててダメージを蓄積させていく!!!

 

ヴァルチャー「ガァァァ!!!」

リク「食らえ!!!」

プリンツ「ファイヤー!!!」

 

俺達の狙いはお前の主砲!!!それを潰せばお前は砲撃できなくなる!!!

 

ヴァルチャー「ガァ……!?」

 

狙い通りだ!主砲を破壊したぞ!俺が右、プリンツちゃんが左の砲を破壊した!

次は脆そうなところを重点的に狙う!

 

リク「どこが脆いか分かるか?」

プリンツ「胴体、頭部は頑丈でしょうね」

リク「……待てよ?俺達は低空飛行をしないあいつに近づくために子分共を足場にするという作戦に出たはずだ」

プリンツ「ええ」

リク「それなら翼を攻撃して、奴を強制的に低空飛行にすればいい!!!」

プリンツ「なるほど!リク君頭いい!!!」

 

……冷静に考えれば誰でも思いつくよなこれ。

 

ヴァルチャー「ガァァァ……!!!」

リク・プリンツ「ッ!?」

 

火炎放射!?こいつもまた別の攻撃を持っていたのか!

 

リク「この野郎!抵抗する気か!?」

プリンツ「往生際が悪いですよ!!」

 

不用意に近づけば丸焼きにされちまう……。だが近づかねば倒せやしない!

 

リク「この野郎!おとなしく攻撃を受けやがれ!!!」

ヴァルチャー「ガァァァ!!!」

プリンツ「リク君!!!」

リク「クソッ……!!!」

 

空中では避けきれねぇか……!!!右肩を負傷してしまった……。

 

プリンツ「リク君に何するんですか!!!」

 

ボォォン!ボォォォン!!ボォォォォン!!!

 

どうやらプリンツちゃんがキレたみたいだな……。怒涛の三連撃であのデカブツの左翼を破壊したみたいだ……。

 

ヴァルチャー「ガァァァァッッッ……」

 

奴は片方の翼が潰れた事によってバランスを崩し、落下していった……。

 

プリンツ「大丈夫ですか!?」

リク「あ……ああ……」

 

こんなの今までに経験した事のない痛みだぞ……?まるで皮膚が焼け焦げて落ちていくような激痛……。よく漫画やラノベとかで敵の攻撃を食らって痛みに悶えるキャラの姿を見るが、あんなのをよもや異世界で実体験する事になるとは……。

 

リク「でもこんなの、お前達は日常茶飯事なんだろ……?」

プリンツ「そうですけど……」

 

俺はあくまでただの一般人だぞ……。艦娘とは違い非戦闘員のはずだ……。やむを得ずこの世界を救う勇者になって、それで数日の間トレーニングをしたくらいの……。

思えば、昨日までの戦闘であまりたいしたダメージを食らった事なかったのは不幸中の幸いだったよな……。単なる雑魚ならともかく、今回のボスみたいに高い戦闘能力を持つ怪物相手だと、このダメージを負う事になるのはさけられないな……。

 

リク「そんなことより……一気に畳み掛けるぞ……いてて……」

プリンツ「無理しないでください」

 

右肩の痛みに顔をしかめながらも、彼女と共に墜落した奴に接近する。

 

リク「さあ、観念しろ」

プリンツ「あなたはここで終わりです」

ヴァルチャー「……」

リク・プリンツ「ファァァイヤァァァーーー!!!」

ヴァルチャー「ガァァッ……」

 

奴は諦めたのか、無防備のまま俺達の集中砲火を食らい爆発四散した……のだが。

 

リク・プリンツ「ッ!?」

飛行海異鬼「フシャアアアァァァ!!!」

 

なんと、倒されたボスの中から、実に1000は超えるであろう無数の海異鬼共が飛び出してきたのだ!

 

 

 

陽炎「動きが遅くなった!」

黒潮「リクはんたちがやってくれたんやな!!」

不知火「これなら倒せます!!!」

ビスマルク「ボスが死ねばもうこちらのものよ!皆!一斉掃射!!!」

一同「はい!!!」

 

バァン!バァァン!!バァァァン!!!バァァァァン!!!!

 

ビスマルク「ふぅ……」

浦風「これで雑魚も一掃したな」

浜風「あとはリク達が戻ってくるのを待つだけ……」

 

フシャアアアアァァァァ!!!!

 

一同「ッ!?」

磯風「なんだ!?」

 

リク達のいた方角から、1000体もの飛行海異鬼の軍勢がこちらに向かって接近していた……。

 

鹿島「なんですかあの数!」

時雨「そんな!リク達がボスを倒したはずだよ!?」

秋月「まさか増援!?」

プリンツ「おーい!」

ビスマルク「プリンツ!リク!」

陽炎「リク!どうしたのよその傷!」

リク「話は後だ……そんなことよりも……」

飛行海異鬼の軍勢「フシャアアアァァァ!!!」

リク「ボスは討伐した……だがその際に奴の中から……」

黒潮「なんやて!?」

リク「肩の傷の事は後で話す……今はこいつらをどうにかするのが先決だ……!」

不知火「ですがこの数相手では……」

ビスマルク「……やるしかないわ。私達の任務はこの海域で敵を全滅させる事よ」

プリンツ「その通りです!皆さん!」

潮「もう一押しです!頑張りましょう!」

一同「おお!!!」

 

これは総力戦、逃げるわけにはいかない。潮が鼓舞したことで皆もやる気だ。何、ボスを倒したんだから動きは鈍くなっているはず、やるしかない!




本当は前編と後編で終わりたかったですが、終わりきらなかったため前編、中編、後編と分けました。

それにしても、キャラが多いといろいろと苦労するもんだね……。てか総力戦とあるけど結局リク君とプリンツちゃんの戦闘描写が主なんですよね……ある意味タイトル詐欺ですねこれは。
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